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国際法務の部屋

中国における電子送達の普及について

中国民事訴訟法第87条1項では、民事訴訟における訴訟資料の送達について、「人民法院は、送達を受けるべき者の同意を経て、ファクシミリ、電子メール等の送達を受けるべき者の受領が確認できる方式によって訴訟文書の送達を行うことができる。但し、判決書、裁定書、調解書は除く。」と規定されています。

そして、2017年7月19日に公布された、最高人民法院の「民事送達業務の強化に関する若干意見」によると、当事者の同意があれば、電子送達が可能であり、電子送達の例として、ファックスや電子メールに加えて、中国における通信手段として一般的に普及している「微信」(WeChat)による送達も可能であると明記されています。

さらに、この最高人民法院の民事送達業務の強化に関する若干意見を受けて、北京市高級人民法院が発布した「送達業務に関する規定の集約を推進するための規定(試行)」では、①第2条において当事者には優先的に電子送達を選択させること、②第3条では北京法院における送達を集約するプラットフォームを作ること、③第5条及び第6条において、訴訟の第一審、第二審及び執行手続における送達に利用するための送達住所確認書の統一的なひな形を人民法院が作成し活用すること、④第19条において、当事者が電子送達に同意して送達住所確認書において選択した「微信」(We Chat)や電子メール、ファックス等の方法で電子送達が行われるが、判決書、裁定書、調解書は電子送達の対象とはならないこと等が規定されています。そして、第5条に規定されている送達住所確認書の具体的なひな形が、添付資料としてつけられており参考になります。

中国においては、北京以外の都市においても電子送達を優先する動きがみられ、今後は訴訟当事者の同意を前提として、訴訟文書の電子送達が普及していくものと思われます。

文責:河野雄介

2018年06月08日 13:43|カテゴリー:|コメントはまだありません

情報化社会とともに進む中国の執行に関する最新動向(その一)

本稿と次稿の2回の連載で、情報化社会へ急速に進んでいる中国において、近年の執行に関する最新動向を紹介します。
中国ビジネスにおいて、手方が金銭債務を履行してくれない場合、債権回収のための訴訟提起は重要な法的手段の一つとして挙げられます。ところが、せっかく勝訴判決が下されたのに、相手方が判決を無視し金銭債務を履行しなかった場合、強制執行を裁判所に申請しても奏功しないことが多いです。結局、多大な時間や労力をかけたのに、債権回収が実現できないという経験をされた日系企業も多いと思います。
中国では、「執行難」という問題が深刻であると言われてきています。われわれ弁護士としても、訴訟案件に関する相談の際、勝訴の可能性が高い案件でも、将来の執行リスクを予測し、ケースによっては執行に訴訟以上の時間や労力をかける覚悟を持たなければならないと、予めクライアントに伝えることがあります。
「執行難」の背景には、「法治社会」への途上国として、判決の権威性を守る国民意識が弱い以外に、判決の権威性を守るための有効な手段がまだ十分でなく、特に社会信用システムの未整備など、現実面の要因も指摘されます。それを受け、最高人民法院は、「執行難」を解決するための有効な措置を検討し、一連の手を打ってきました。2016年3月に開催された全人代において、最高人民法院長の周強氏の報告では、「2、3年をかけて必ず「執行難」を基本的に解決する」と決意を表明しました。
そのための有効な措置として、大きく分けて二点、挙げられます。
一つは、裁判所と銀行等の金融機構との連動システムによる、被執行人の口座情報、金融資産情報の共有です。
最高人民法院は、2014年から中国銀行業監督管理委員会、中国人民銀行(中央銀行)と共同して、執行を利便化するための被執行人の口座情報、金融資産情報の連動システムの構築を始めました。これまでは、裁判所が強制執行の申請を受けた場合、被執行人の財産情報を把握せず、またはそれを調べることができるとしても、執行案件の担当裁判官の人手不足の関係で、その財産情報の提供をまず執行申請者に要求することが一般的でした。財産情報の探索に困窮した執行申請人が、やむを得ず不法な手段を使ってしまう例もみられました。
口座情報、金融資産情報の連動システムが始動してから、裁判官が被執行人の個人名又は社名の情報を得るだけで、同システムでそれを検索し、全国銀行21行および地方銀行数十行にある被執行人名義の口座情報、金融財産情報を調べることができるようになりました。また、裁判官が同システムで被執行人の口座を凍結し、残高を差し引くこともできます。以前は、裁判官が被執行人の口座情報を探すために各金融機構に回り、口座凍結、残高の差引きなどはすべて金融機構の協力を得ることが必要でした。同システムの利用により、これら執行作業の効率は非常に高くなりました。
なお、近年、中国では電子決済が非常に流行しており、Alipay(中国語:支付宝)をはじめ第三者支払プラットフォームには数億人のユーザがいます。同システムでは第三者支払プラットフォームにある口座情報も調べることができます。ただ、現段階において、裁判所が同システムで口座を凍結し、残高を差引くことはまだできません。その場合、第三者支払いプラットフォームに執行協力通知書を発行し、その協力を要請する必要があります。
(文責:李航 中国弁護士)

2018年06月04日 23:08|カテゴリー:|コメントはまだありません

中国企業とのライセンス契約と源泉徴収

日本企業が、中国企業に対し、特許やノウハウ等をライセンスして、ロイヤリティを受領する契約を締結する場合があります。今回は、こういった契約に関する注意点をご紹介します。

まず、日本企業が中国企業からロイヤリティを受領する契約を締結する場合、当該日本企業が中国国内に拠点等を設定していない場合等は、当該日本企業は非居住企業になります(中国企業所得税法2条3項(日本の法人税法に相当するものです。以下「法」といいます。)。

非居住企業の場合、中国において納税義務が生じる対象は、中国での国内源泉所得であり(法3条3項)、この事例において日本企業が受領するロイヤリティは中国での国内源泉所得に該当します(中国企業所得税法実施条例7条)。

そして、非居住企業が中国での国内源泉所得を取得した場合には、支払者に源泉徴収義務を課しています(法36条)。

したがって、上記のケースでは、日本企業が受領するロイヤリティは、中国での源泉徴収の対象となります。

この場合、ライセンス契約書等に、「ロイヤリティの金額は1000万円とする」といった規定がなされていた場合、後日、紛争が生じることがあります。すなわち、源泉徴収が20%だと仮定すると、日本企業に着金すべき金額が800万円なのか、1000万円なのかについて、当事者間で意見の相違が生じることがあります。
契約書の「1000万円」との記載について、一方は、源泉徴収前の金額であると主張し、他方は、源泉徴収後の金額であると主張することがあります。こういった紛争を避けるために、契約書作成段階において、後日、当事者間において見解の相違が生じないように、「関連法令が要求する源泉控除後の金額1000万円を支払う」といった適切な文言を選択する必要があります。
(文責:藤井宣行)
以上

2018年05月25日 16:43|カテゴリー:|コメントはまだありません

アクシス国際法律事務所参画のご挨拶(李航 中国弁護士)

このたび、オブ・カウンセルとしてアクシス国際法律事務所に参画いたしましたので、ご挨拶を申し上げます。

アクシス国際法律事務所は、中国をはじめ、ASEAN諸国、欧米などに海外展開を行われるクライアント向けのリーガルサービスに力を入れております。私は中国弁護士として、2009年4月から主に北京・天津現地の日系企業向けの中国法サービスを提供して参りまして、今年4月から弁護士10年目に入りました。現地法人(独資・合弁)の設立をはじめ、契約審査や労働問題を含めた企業の日常運営・管理、組織再編・M&A、清算・撤退、紛争解決など、中国法務の全般にわたる法的サポートの経験を有しています。

「中国法務」といえば、特に中国進出をすでに経験された日系企業にとっては馴染みのない概念ではないかもしれませんが、「中国法務」の内実は、常に時代と共に進化しています。中国には13億人を超える巨大市場に加え、近年、生活水準の向上に伴い「中産階層」と呼ばれる人々の数が急増し、「世界の工場」から「世界の市場」へ変化を遂げています。また、電子取引の急速な進化に伴い、IT技術を活用した新しいビジネスモデルが続々と生み出されています。多くの日系企業が、新しいビジネスチャンスを敏感に捉え、積極的に取り組んでいることは、日頃の弁護士としての業務を通じて実感しているところです。これからも、中国ビジネスはより多様化、複雑化していくことが予想されますので、新しい事業を行う際の法的問題の検討には、時代に即した専門知識と経験が必要となります。

海と山に恵まれる神戸で4年間留学生活を暮らした私は、神戸の皆様をはじめ、多くの日本の方にお世話になりました。また、渉外弁護士を目指し、留学期間中、ほぼ毎月、大阪で行われた中国法務交流会に参加した際に、関西地域で活躍される日中両国の弁護士や企業法務担当者の方々と交流した場面は、今でも鮮明に記憶にあります。それから10年が経った今、大阪の川縁を歩くと、その頃とあまり変わらない景色が目に入り、「逝者如斯夫。不舎晝夜。(逝く者は斯くの如きか。昼夜を舎(お)かず。)」という論語の言葉を思い出します。世間の景気がどのような場面であろうとも、渉外弁護士になった頃の初心を忘れず、常にクライアントの信頼を得られるように探求する姿勢を忘れずにいきたいと考えております。

これから、アクシス国際法律事務所の一員として、ご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

文責:李航(中国弁護士)

2018年05月14日 13:05|カテゴリー:|コメントはまだありません

国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書について

平成30年4月、経済産業省より、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」(以下、「研究会報告書」といいます)が発表されました。

研究会報告書では、第1章で日本企業の経営環境の変化と法務機能に対する時代の要請について、第2章で日米企業の法務部門の実態について、第3章でこれからの日本企業に求められる法務機能について、第4章で課題と克服について、第5章で関係機関による課題対応の在り方について報告されています。

渉外法務を含めた企業法務に携わる弁護士としてとくに興味深かったのは、第1章と第3章の部分ですので、本稿で取り上げさせていただきます。

まず、第1章では、日本は、少子・高齢化の進展やエネルギー・環境問題といった大きな社会問題に直面しており、2050年過ぎには人口が1億人を割るなど、長期的な人口減少が予測されており、国内の需要減少が続く中で、日本企業にとって、グローバルなビジネス展開の加速は、喫緊の課題となっていると問題提起をしたうえで、日本経済を取り巻く環境変化として、①ビジネスのグローバル化のさらなる進展に伴い、多様なリーガルイシューに対応する必要性が高まったこと、②第4次産業革命(IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミー等)のイノベーションの加速に伴い法制度が整備されていない市場の創出・拡大が進んでおり、各企業にとっては、これまで経験したことのない新たなリーガルイシューに対応する必要性が増していること、③2017年秋から、製造業のデータ改ざん等の問題が明らかになったが、企業の社会的責任に対する期待や要求の高まりから、企業のレピュテーションリスクは増大しており、SNSの普及によりレピュテーションリスクは従前よりも広く拡散する傾向にあり、コンプライアンスの強化の重要性が高まっていることを挙げています。

次に、第3章では、上記の日本経済を取り巻く環境変化に対応するための法務の機能として、守り(ガーディアン機能)と攻め(パートナー機能)の2つの観点から整理しています。

まず、守り(ガーディアン)の機能としては、①「最後の砦」として企業の良心となること(「合法かどうか」の判断だけでなく、ビジネス環境・経済・社会・政治・テクノロジー等に関する知識を踏まえた上で、「正しいかどうか」を判断する必要がある)、②コンプライアンス・ルールの策定と業務プロセスの構築及び徹底(グローバルレベルで変わりゆくレギュレーションを自社ビジネスに落とし込み、自社のルール、契約、オペレーションを最適なものとし、企業が法令に則って活動するように業務プロセスを構築しモニタリングする)、③契約による自社のリスクのコントロール、④自社の損害を最小限に抑えるための行動(民事訴訟で訴えられた場合の応訴、消費者クレームや不祥事への対応)が挙げられています。

他方で、攻め(パートナー)の機能としては、①ビジネスの視点に基づいたアドバイスと提案、②ファシリテーターとしての行動(集まってくる情報をもとに、必要な作業とスケジュールを把握した上で、社内外のリソースを迅速に確保・差配し、案件を進行させる)、③ビジョン(社会に提示できる新しい価値)とロジック(現行法における一定の解釈で成立し得るか)を携えた行動、④法令・契約に基づいた正当な主張(取引上のトラブルによる損害の賠償請求など)が挙げられています。

さらに、第3章では、企業が、外部弁護士を活用すべき場面として、①高い専門性が必要となるとき(社内でノウハウが蓄積しない分野)、②セカンドオピニオンを取りたいとき(リスク、インパクトの大きな事案についてステークホルダーへの説明責任を果たすため)、③訴訟、行政処分等へ対応するとき、④中立性・客観性が求められるとき(ex.第三者委員会の委員への委嘱)、⑤リソースが足りないときが挙げられています。

上記の第1章及び第3章を読んで、当事務所としても、日本経済を取り巻く環境変化に対応できるように最新のビジネス及び法律上の知見の習得を怠らず、守りと攻めの2つの法務機能を意識しつつ、外部弁護士に求められる上記の役割をあまねく充足できるように日々研鑽を積む必要があると感じました。

以下、経済産業省のリンクを挙げておきます。

http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180418002/20180418002.html

 

文責:河野雄介

 

2018年05月14日 10:15|カテゴリー:|コメントはまだありません

売掛金の貸倒損失

今回は、税務面について、日本と中国での違いをご紹介いたします。

 

日本では、法人の貸倒損失について、法人税法22条3項3号で損金の額に算入するものとされていますが、貸倒損失該当性については明確に規定されていません。これを受けて、実務上の指針である法人税法基本通達では、9-6-1、9-6-2及び9-6-3において、具体的に規定しています(なお、通達は法的拘束力を有するものではないため、これらの通達に該当しない場合でも、貸倒損失に含まれる場合が存在しえますので、ご留意ください。)。

 

例えば、同9-6-2では、次のように規定されています。

 

9-6-2 法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。

(注) 保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。

 

実務では、これを前提に、取引先の資産状況や支払い能力示す資料を収集しておくことになります。

 

中国においても、上記とほぼ同様の規定がおかれています。すなわち、「財政部・国家税務総局の企業の税前控除政策に関する通知」4条で、貸倒損失として処理できる場合について、「債務者から期限経過後3年以上返済が行われず、かつ、債務を完全弁済する能力がすでにないことを証明する証拠が確実であること」等が規定されています。取引先が、債務を弁済する能力を喪失していることを立証しなければなりませんので、契約書、弁済を求める交渉の経緯、訴訟等がなされた場合には判決書、及び、入手できるのであれば取引先の計算書類等をいかに確保するかが重要になります。これらの客観的資料を可能な限り整備したうえで、税務職員に対し、法的根拠を示し、論理的に、粘り強く説明することが重要でしょう。

(文責:藤井宣行)

2018年04月20日 15:34|カテゴリー:|コメントはまだありません

中国における民事訴訟と出国制限リスクについて

第1 はじめに
今回は、設例をもとに、中国において民事訴訟を提起された場合の出国制限リスクについて検討したいと思います。

第2 設例
日本企業A社が、中国に100%出資子会社として、現地法人B社を持っており、A社の代表取締役CがB社の法定代表者を兼務しているとします。この中国現地法人B社を被告として、中国の人民法院に民事訴訟が提起された後に、Cが中国に入国した場合、Cの出国が制限されるリスクはあるのでしょうか。

第3 回答
出国制限については、中国民事訴訟法255条で、「被執行人が法律文書により確定された義務を履行しない場合には、人民法院は、当該被執行人に対し、出国制限並びに信用情報システム記録及びメディアを通じた義務不履行情報の公表並びに法律に定めるその他の措置を自ら行い、又は関係単位に協力を求めてこれらの措置を行うことができる。」と規定されています。
そして、中国の最高人民法院が制定した、「『民事訴訟』の執行手続の適用における若干問題に関する解釈」において、①被執行人が単位(法人を含む)である場合は、その法定代表者に対して出国制限を行うことができる(同解釈37条)、②被執行人に対して出国制限を行う場合は、執行申立人が執行人民法院に書面の申し立てを提出しなければならず、必要がある場合は、執行人民法院が職権により決定することができる(同解釈36条)と規定されています。
そうすると、B社の敗訴判決が確定したにもかかわらず、判決で認められた義務を履行しない場合には、B社の法定代表者であるCは相手方当事者から出国制限措置の申し立てまたは人民法院による職権判断により出国制限の決定をされてしまうリスクがあります。とくに、勝訴判決が確定した相手方当事者は、当該確定判決に基づいてB社による任意の履行を得るための戦略として、Cの出国制限の申し立てをしてくる可能性がありますので、Cとしては敗訴判決が確定し、当該判決に基づいた履行を行っていない場合の中国への入国は避けた方がよいでしょう。
他方で、判決が確定していない段階であれば、上記の中国民事訴訟法255条に基づいた出国制限措置がとられることはありません。
もっとも、上記の民事訴訟法の規定とは別に、中国の出入国管理法の第28条では、「外国人が次の各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、出国を許可しない」と規定されているところ、同条2号において「未決の民事事件があり、人民法院が出国不許可の決定をした場合」が挙げられています。
このように、中国において民事訴訟が提起され、敗訴判決が確定していない段階であったとしても、人民法院によりCに対して出国不許可の決定がなされるリスクは残っています。したがって、中国において民事訴訟を提起された企業の法定代表者は、たとえ判決確定前であっても、不要不急の中国への入国は差し控えた方が無難といえます。

文責 河野雄介

 

2018年04月04日 22:03|カテゴリー:|コメントはまだありません

白眼視事件と民主主義

中国の北京で全国人民代表大会が開催され、3月11日、2期10年までと定められている国家主席の任期上限を撤廃する憲法改正案が賛成多数で可決されました。このことは、日本でも報道されているところです。

 

このことに関し、白眼視事件と呼ばれている事件が起こりました。簡単に内容を説明すると、全人代の記者会見で、中国政府の意向を汲んだと思われる記者が、政府の決定に賛同するような内容の質問(というより意見の表明?)を、冗長に行ったところ、その隣に座っていた記者が、睨んでいるとも見られる表情をしたり、天を仰ぐようなリアクションをとった、というものです(詳しくは、古畑康雄氏による3/19(月)7:00配信の現代ビジネス「習近平の晴れ舞台に冷や水をかけた全人代「白眼視」事件をご存じか」(https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180319-00054907-gendaibiz-int)をご覧ください。)。

 

私が所属している中国の友人たちとのグループチャットでも、その場面の写真や動画がアップされたり、中国では話題になっているようです。

では、なぜ、この事件が、それほど話題になるのでしょうか。国民性等も理由になるかもしれませんし、当事者の2名の記者が美人(と一般に言われる風貌)の女性であるということも理由になるかもしれません。

しかし、上記の記事でも指摘されていますが、本質は、実質的には民主主義ではない中国において、共産党や政府に対し、異論や反論があったとしても、公にそれを明らかにできない(またはしにくい)ことや、自らの意見を国政に反映させる実効的な手段がないことが、この事件で真相であるとも考えられます。

 

その意味では、日本では、ある記者が、別の記者の発言に対して、あからさまに不満を表現するリアクションをしても、それほど話題にはならないと思われますし、そのことは、民主主義が実現されていることの裏返しだと言えるようにも思います。

 

森友学園に端を発する問題について、連日、報道がなされていますが、上記の事件と併せて考えてみると、民主主義を享受しているということが、感謝すべき有難いことであり、大切にしなければいけないと、改めて感じました。

2018年03月27日 11:53|カテゴリー:|コメントはまだありません

アリババ上場にみるVIEストラクチャーの分析

1 はじめに

本稿では、2014年9月19日に、中国の電子商取引最大手のアリババ集団(Alibaba Group Holding Limited)が、米国ニューヨーク証券取引所に上場した際に、Alibaba Group Holding Limitedが、上場前に1933年アメリカ証券法(THE SECURITIES ACT OF 1933)に基づいて提出したF1フォーム(登録届出書、REGISTRATION STATEMENT、参考ウェブサイト①)に記載されている、VIEストラクチャー(契約支配型ストラクチャー)についてご紹介します。

ニューヨーク証券取引所に上場したAlibaba Group Holding Limitedは、中国で設立された会社ではなく、ケイマン諸島で設立された会社であり、中国国内外に複数の子会社を持っています。

中国国内では、インターネットコンテントプロバイダー等の付加価値情報通信サービス事業等は、規制により100%外資会社では行うことはできません。

そこで、インターネットコンテントプロバイダー等の許認可を有しており、創業者であるJack Ma氏等を株主(VIE株主:Variable Interest Entity Equity Holders)とする中国内資会社(VIE:Variable Interest Entity)が規制事業を行います。そして、Alibaba Group Holding Limitedが中国国内に設立した100%子会社(WFOE:Wholly-foreign Owned Enterprise)は、当該VIEやVIE株主と種々の契約を締結することにより、VIEへの支配権を確保し、VIEの利益をWFOEに帰属させるスキームを採っています。

 

2 VIEストラクチャーにみる各種契約

次に、上記のVIEスキームを実現するために、Alibaba Group Holding Limitedが締結している種々の契約の概要を、同社のF1フォームより抜粋します。

① WFOEとVIE株主の間の融資契約(Loan Agreement)

WFOEからVIE株主への無利息融資により、VIE株主はVIEへの出資を行う。資金使途はVIEへの出資に限られる。WFOEはいつでも早期返済を要求することができ、その場合、融資額面でVIE株主からVIE株式を買い取る。VIE株主は,VIE株式を第三者に譲渡してはならない。VIEは重要資産,知的財産権を含むいかなる事業も第三者に譲渡してはならない。

 

② WFOEとVIE株主の間のコールオプション契約(Exclusive Call Option Agreement)

WFOEはVIE株主からVIE株式を払込資本額面もしくは中国法で認められる最低価格のどちらか高い方の金額で買い取る権利を有し、またVIEから保有資産を簿価もしくは中国法で認められる最低価格のどちらか高い方の金額で買い取る権利を有する。WFOEが指名する第三者に購入させることも可能。また、WFOEは、VIEが行う配当その他の分配及びVIE株主がVIE株式の譲渡により得た対価のうち払込資本を上回る額を受け取る権利を有する。

 

③ WFOEとVIE株主の間の委任契約(Proxy Agreement)

VIE株主はWFOEが指名する者に対してVIEに係る権利行使を委任する。

 

④ WFOEとVIE株主の間の株式担保契約(Equity Pledge Agreement)

VIE株主はWFOEからの借入にかかる担保としてVIE株式を供する。WFOEにVIE株式の処分権限があり,競売若しくは売却代金からの優先回収の権利がある。株式担保契約は,中国の工商行政管理部門で登記済みである。

 

⑤ WFOEとVIEとの間の包括技術支援契約(Exclusive Technical Services Agreement)

WFOEによる技術支援の対価として、VIEは税引き前利益のほぼ全額をWFOEに支払う。

 

3 VIEストラクチャーの適法性に関する中国法律事務所の見解

F-1フォームでは、上記のVIEストラクチャーの適法性・有効性に関する、中国の法律事務所の見解として,①VIEストラクチャー及びWFOE、VIE、VIE株主間の各種契約は、現時点においては中国の法規制に準拠しており有効である,②ただし、中国の法解釈には重要な不確実性があり、将来において中国当局が違法との見解を示す可能性があり、その場合、事業停止等に追い込まれるリスクがある,という趣旨の見解が添えられています。

4 最後に

アリババによる上記のニューヨーク証券取引所上場後も、現在に至るまで、中国におけるVIEスキームを用いて、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場する例が複数ありますので(参考ウェブサイト②)、VIEスキームに関する今後の中国当局の対応が注目されるところです。

 

【参考ウェブサイト】

①Alibaba Group Holding LimitedのForm F-1 REGISTRATION STATEMENT

http://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1577552/000119312514184994/d709111df1.htm

②Council of Institutional Investors (CII)が2017年12月に公表した、中国企業とVIEストラクチャーに関する意見書 “Buyer Beware: Chinese Companies and the VIE Structure”

https://www.cii.org/files/publications/misc/12_07_17%20Chinese%20Companies%20and%20the%20VIE%20Structure.pdf

 

2018年03月20日 14:35|カテゴリー:|コメントはまだありません

仲裁機関と裁判所の比較(まとめ)

仲裁機関と裁判所の比較(まとめ)

 

 

以前、本ブログにおいて、「日中間におけるクロスボーダー契約での裁判管轄の定め方」及び「日中間におけるクロスボーダー契約での仲裁条項の定め方」というタイトルで、裁判所での紛争解決と、仲裁機関での紛争解決の相違点について、言及しました。本稿では、この点について、中国の裁判所と中国の仲裁機関、及び、日本の仲裁機関と中国の仲裁機関の比較について、まとめてみました。ご参考になれば幸いです。

 

 

日本の裁判所 中国の裁判所 仲裁機関
手続の迅速さ やや遅い(三審制) 二審制でもあり、相対的には早い 速い(1回の裁決で完了し、不服申立が出来ない。もっとも、仲裁人の事情等によって、申立から裁決まで1年を超えるような場合もある。)。
 

手続の公開

 

原則は公開(例外的に非公開とする手続あり)

 

非公開

 

 

公平性・中立性

 

非常に高い

 

都市部を中心に改善傾向にある

 

高い

 

 

費用

 

低い

 

仲裁人費用等の負担が必要な点で、訴訟よりも高いといえる。といえる(もっとも、一審制であることから、三審制や二審制である訴訟よりも弁護士費用が低額となる可能性がある。)。

 

 

執行

 

中国では不可

 

日本では不可

 

日中双方で可能

 

2018年02月27日 15:51|カテゴリー:|コメントはまだありません