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国際法務の部屋

中国で新たに施行された「民法総則」のご紹介

中国の全国人民代表大会で、2017年3月15日、民事に関する基本原則を定めた「民法総則」が可決・成立し、10月1日、施行されました。

 

民法総則は、前206条であり、第1章「基本規定」以下、第2章「自然人」、第3章「法人」、第4章「非法人組織」、第5章「民事権利」、第6章「民事法律行為」、第7章「代理」、第8章「民事責任」、第9章「訴訟時効」、第10章「期間計算」及び第11章「附則」から構成されています。

 

全国人民代表大会によれば、今後、民法総則に続き、契約編、物権編、権利侵害編などを順次制定し、2020年までに「中国民法典」として完成させる予定とのことです。

 

なお、中国において、現在有効に存続している民事関係法は、民法通則、物権法、担保法、不法行為法、婚姻法、及び、相続法等の9種類でありますが、これらの法律は、民法総則の成立及び施行に際し、廃止されていません。これらの法律と民法総則との間で矛盾抵触関係が生じた場合には、新法と旧法の関係になるため、新法である民法通則が優先的に適用されるものと考えられます。

 

民法総則が規律する内容で、実務上影響が特に大きいと思われるもの2点を、以下、紹介したいと思います。

 

・ 個人情報の保護について

 

民法総則第111条は、「自然人の個人情報は、法律による保護を受ける。いかなる組織及び個人も、他人の個人情報を入手する必要がある場合には、法により取得し、かつ、情報の安全を確保しなければならず、他人の個人情報を不法に収集、使用、加工又は伝送してはならず、他人の個人情報を不法に売買、提供又は公開してはならない。」と規定しています。

 

同条では、他人の情報を入手する際の「法により取得」する義務や、「情報の安全を確保する義務」等を定めていますが、これらの義務の具体的な内容(言い換えれば、どの程度の対応をすれば、これらの義務を履行したといえるのか)については、少なくとも現時点では不明です。かといって、何の対応もせずに、手をこまねいているだけでは、あまりにリスクが大きいですし、企業としての責任ある対応とも言えないでしょう。そこで、実務上は、日本本社において実施されている個人情報保護規程の中国語版を作成し、中国現地法人においても日本本社と同様の運用をするといった対応が考えられます。

 

なお、個人情報に関しては、2017年6月1日、中国サイバーセキュリティ法(中華人民共和国網絡安全法)が施行されており、同法への対応も重要です。これに関しては、別の機会に、ご説明したいと思います。

 

・ 訴訟時効について

 

日本法には消滅時効という制度があり、これが完成して時効が援用されると権利が消滅します。中国においては、訴訟時効という制度があります。訴訟時効では権利自体は消滅せず、訴訟提起して権利を確保することができなくなると一般に解されています。

 

民法総則施行前は、民法通則135条で、原則として訴訟時効の期間は2年間とされていましたが、民法総則では、この原則を修正して3年に期間を延長しました。

(文責:藤井宣行)

2017年10月10日 09:34|カテゴリー:|コメントはまだありません

中文契約書作成の際の留意点

1. はじめに
日中間の貿易量は近年やや減少傾向にあるものの、両国間の取引量は依然として圧倒的なボリュームがあります(財務省貿易統計によると2016年度の日中間の輸出入総額は29兆8915億円です)。
この統計は、日本企業が中国企業間との取引にともない種々の中文契約を締結する機会が非常に多いことを示唆しているといえます。そこで、本稿では、中文契約書作成の際の留意点について検討します。

2. 取引の相手方の情報の調査
まず、中国企業と新規の取引をするにあたっては、相手方企業の企業情報、信用情報等について各種の情報チャンネル(書面、HP、同業者へのヒアリング、信用調査会社、弁護士等)を用いて調査した方が望ましいでしょう。とくに、取引先の営業許可証については、取引先の登録資本金やその払込状況、法定代表者の氏名、経営範囲(中国では、主管機関により認可された経営範囲内でしか企業活動を行えないことから確認必須)などの重要な情報が記載されていることから、取引の前に取得する方が望ましいといえます。

3. 契約書の主な記載事項
日本企業が中国企業と取引をするにあたっては、口頭による契約が許されないわけではありませんが、商慣習や文化の違い等に起因する契約締結後の紛争を予防するという観点からも、契約書を作成して取引の諸条件を書面にて明確にしておいた方が望ましいです。契約書に記載すべき一般的な契約事項としては、当事者に関する情報、定義規定、契約の有効期間、秘密保持条項、契約解除に関する条項、損害賠償に関する条項、契約の修正や変更方法に関する条項、契約書の言語を定める条項、準拠法や紛争解決に関する条項などがあります。
本稿では、実務上よく問題となる、契約書の言語、準拠法及び紛争解決に関する条項について掘り下げて検討します。

4. 契約書の言語
契約書の言語については、届出や認可申請のために中国語で契約書を作成する必要がある契約類型(合弁契約やライセンス契約)を除き、原則として当事者が自由に選択することができます。通常、①中国語と日本語で作成し双方を正本とする、②中国語を正本とし日本語は訳文とする、③日本語を正本とし中国語は訳文とする、④英語で作成するなどのパターンがありますが、①のケースが比較的多いといえます。①を選択する場合で重要となるのは、中国語と日本語の間で解釈の相違が生じた場合にどちらを優先させるかを明確にしておくことです。もっとも、日本語の解釈を優先させる旨規定していた場合であっても、中国の裁判所を管轄裁判所とした場合には、日本語と中国語の解釈の相違を中国人の裁判官に説明することは相当困難であることが想定されますので、できるだけ両言語間で齟齬が生じないように、契約書作成段階から留意する必要があります。

5. 準拠法及び紛争解決方法について
日本企業と中国企業が締結する契約は渉外契約となり、契約紛争の処理に適用する準拠法を選択することができます(中国契約法126条1項)。もっとも、中国国内で履行される中外合資経営企業契約、中外合作経営企業契約、外資企業の出資持分譲渡契約等については準拠法を中国法とする必要があり注意が必要です(中国契約法126条2項)。

6. 紛争解決方法の選択について
日本企業と中国企業が締結する渉外契約であれば、日本の裁判所を管轄裁判所とすることも可能です。ただ、日本の裁判所で得た判決は中国で執行することはできない点に留意する必要があります。たとえば、日本企業が売主、中国企業が買主の売買契約の裁判管轄を日本とした場合で、中国企業に対する売買代金支払請求訴訟の勝訴判決を日本で得たとしても、中国企業の中国における財産に対して強制執行をすることができません。他方で、中国の裁判所で得た判決も日本では執行できません。
また、契約紛争について中国国内の裁判所を管轄裁判所とする場合は、合意により被告の所在地、契約履行地、契約締結地、原告の所在地、目的物の所在地を管轄地として選択することができます(中国民事訴訟法34条)。中国では、地元企業を有利に取り扱ういわゆる地方保護主義がまだ完全に払拭されたとはいえないことから、契約相手方たる中国企業の所在地が中国国内の地方都市である場合は、契約締結地を北京や上海等の大都市としたうえで、合意管轄も同じ場所にして地方保護主義を回避することも検討すべきでしょう。
また、紛争解決方法として、裁判ではなく仲裁を選択することも可能です。日本と中国はニューヨーク条約に加盟しているため、日本、中国又は第三国で得た仲裁判断をそれぞれの国で執行することができます(上述のとおり裁判所による判決の場合は、お互いの国の判決を相手方国では執行できないことから、この点は仲裁のメリットといえます)。紛争解決方法として、仲裁を選択する場合は、契約書に仲裁条項を規定しておく必要があります。

(文責:河野雄介)

2017年09月21日 15:13|カテゴリー:|コメントはまだありません

新事務所開設のご挨拶

 平成29年9月1日をもって、アクシス国際法律事務所を設立いたしましたので、ご報告とご挨拶を申し上げます。
 新事務所設立にあたって、私たちは、「弁護士の使命を貫徹し、プロフェッショナルとしての『本物』の価値を全力で提供し続けることによって、より良い社会の構築に貢献する。」との理念を掲げました。
 アメリカ・中国・台湾・ベトナムにおける実務経験ならびに最先端の実務を取り扱ったベンチャー法務の実績を活かしながら、全員ががっちりとスクラムを組んで、新事務所を運営していきたいと存じております。
 事務所名に採用した「アクシス」には、「基軸」という意味に加えて、多元的な指標のもととなる「座標軸」という意味があります。私たちは、今後に予想される社会の多様な法的ニーズに柔軟に即応することを目標として、常に高い志を保ちながら絶えざる成長を目指し、挑戦と研鑽を積みつつ、新事務所の理念を実現したいと考えております。
 皆様には、新事務所の理想と目標にご理解をいただき、今後ともご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

2017年09月19日 17:15|カテゴリー:|コメントはまだありません
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