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ベンチャー法務の部屋

ベンチャー・ファイナンスに関連する用語の整理(その2)

今回も、ベンチャー・ファイナンスに関連する用語の整理です。
前回の「ベンチャー・ファイナンスに関連する用語の整理(その1)」の続きです。

 

6.CVC(シーブイシー・シーヴィーシー)
CVCとは、コーポレート・ベンチャー・キャピタルのことです。ベンチャー・キャピタルは、前回「4.VC」で触れています。
CVCは、GPが大企業の子会社で、LPがその大企業であることが多いです。大企業がこのようなベンチャー・キャピタル事業をする主な目的は、一般的に、資産運用だけではなく、最先端の技術を探索して、情報を得つつ、出資元となる大企業に有用な技術を獲得することにあると言われているように思います。ここ数年はCVCが乱立する傾向にあり、歴史のあるVCと比較すると、例外もありますが、歴史や経験の浅いCVCも少なくありません。自社の株主としてCVCを選ぶ場合には、どのような連携や協業ができそうか等もよく検討した方がよいかもしれません。
 

7.ステージ
ベンチャー・ファイナンスの世界では、ステージとは、投資を実行する際に、発行会社がいる段階を意味します。シード・ステージ、アーリー・ステージ、ミドル・ステージ、レイト・ステージなどという使われ方をします。
シードとは「種(seed)」のことであり、企画と構想の段階で、ざっくりと500~1000万円程度の資金調達額を目指すようなステージを意味することが多いです。勿論、これに当てはまらない調達額のファイナンスも数多くあります。そもそも、ファイナンスを「シード」や「ミドル」と言っていたところで、何か特別な効果があるわけではありません。あくまで目安です。

 

8.投資契約
ベンチャー投資における投資契約は、株式総数引受契約(会社法第205条)とは別に、投資家と発行会社の間で、締結する投資に関する契約です。ほとんどの場合、投資家側の要望により締結されます。投資家は、投資契約を締結することにより、(i)会社法に定められた株主としての権利以上の権利を得る、(ii)表明保証条項により投資契約締結時点の状況を把握しやすくしつつ、虚偽の情報や誤解に基づく投資を避ける、(iii)投下資本の回収についての想定する手段と時期を発行会社と共有する等のメリットを得ることができるためです。これらのメリットは、VCの業務執行者(=GP)が、VCにとっての投資家(=LP)への説明責任を果たすためにも、必要であるといえます。発行会社は、VCから投資契約書の提案を受けた場合、VC側の事情も理解しつつ、自社にとって、過大な負担や過度に不利益な条項を排除するための交渉をすることになります。目的が理解できない条項がある場合や、相場がわからない、すなわちどの程度の条件であれば、一般的といえるか、わからない場合は、ベンチャー・ファイナンスに詳しい弁護士に質問されるのがよいでしょう。
 
具体的には、投資に係る発行概要(株式等の種類、種類株式の内容、数、価格、払込期日等)、資金使途、表明保証等の投資の前提条件、投資実行の条件、契約違反が生じた際の取り決め等が骨格となります。他に、誓約事項、事前承認事項、事前通知事項、事後報告事項、取締役の指名権、オブザーバーの指名権、希薄化防止条項、秘密保持、一般条項等が定められることも少なくありません。

 

9.株主間契約
株主間契約は、発行会社、創業株主及び主要な投資家の間で定められる、株式の異動や株式に係る権利行使に関連して、株主間の権利義務関係を取り決めたものです。投資契約は、その株式引受自体に関する事項を骨子とする契約であり、株式引受という取引そのものを対象としていることと比較すると、株主間契約は、投資家が株主となった後、Exitするまでの期間を対象とした長期間の契約関係を対象としているといえます。
 
具体的な条項は、投資語の会社経営に関する事項、情報開示に関する事項、株式に異動に関する事項、投資家のExitに関する事項等で構成されています。

 

10.財産分配契約
投資家、エンジェルや従業員株主と創業株主が当事者となって、株主が会社と利害関係を有しなくなった場合や、発行会社にM&Aが生じた場合、個人株主が死亡等のアクシデントに見舞われた場合を想定して、株式の異動等について明確にするの契約書です。実際の契約書名は、「合意書」「買収に係る株主分配等に関する合意書」「株主間における合意書」「株主間契約書」となっていることが多いです。
 
具体的には、みなし清算条項(Deemed Liquidation)、共同売却権/売却請求権/同時売却請求権(Drag Along Right)や、株式買取請求権が規定されています。みなし清算条項とは、発行会社にM&Aが生じた場合に、発行会社を清算したものとみなして投資家に対して分配を行うことを内容とする定めをいいます。共同売却権/売却請求権/同時売却請求権は、多数の投資家の賛成等の任意に設定された一定の要件を充たした場合、発行会社、創業株主に限らず、他の株主に対しても買収に応じるべきことを請求することができる権利を意味します。株式買取請求権とは、死亡や成年後見開始決定等、退職等のイベントが発生した場合に、経営支配株主が当該イベントが生じた者(又はその包括承継人)から会社株式を買い取れるように、株式の買取りを請求することができる権利を意味します。
 
続きます。
 
(文責:森 理俊)

2018年06月01日 21:35|カテゴリー:ベンチャー・ファイナンスコメントはまだありません

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