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ベンチャー法務の部屋

不動産実務における即決和解

訴え提起前の和解という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
今回は、特に不動産業に携わる方々に、この訴え提起前の和解という制度をご紹介したいと思います。

1 訴え提起前の和解とは

訴え提起前の和解は、裁判上の和解の一種で、民事上の争いのある当事者が、判決を求める訴訟を提起する前に、簡易裁判所に和解の申立てをし、紛争を解決する手続です(民事訴訟法第275条第1項)。この手続を、即決和解手続と呼びます。以下、訴え提起前の和解のことを即決和解と呼びます。この即決和解手続については、当事者間に合意があり、かつ、裁判所がその合意を相当と認めた場合に和解が成立し、合意内容が和解調書に記載されることにより、確定判決と同一の効力を有することになります(民事訴訟法第267条)。

2 ケース1

建物賃貸借契約において、賃借人の賃料不払いがあったため、賃貸人・賃借人で協議を行った結果、滞納賃料について分割で支払うことを条件に建物の明渡しを1年間猶予することで合意した。

この場合、賃借人の、①滞納賃料の支払い、②建物の明渡しという義務の履行を確保する手段として、①については、滞納賃料の支払方法に関する合意内容を公正証書で定めるという方法が考えられます。公正証書を作成することによって、仮に合意通りに支払いが行われなかった場合、強制執行が可能となります。しかし、②の建物の明渡しについては、公正証書による強制執行の対象ではないため(民事執行法第22条第5号)、公正証書を作成したとしても、明渡期限に明渡しがされなければ、改めて訴訟を提起して判決を得て、強制執行手続をとらなければなりません。
そこで、①②について併せてこの即決和解の手続をとっておけば、改めて訴訟手続をとらなくとも、和解調書に基づく強制執行手続が可能となります。

3 ケース2

賃借人が使用中の収益物件が売買の対象となり、買主がその建物を自己使用したい場合、取り壊したい場合など、売買契約後は賃借人の継続利用を予定していない場合には、売買契約の中に以下のような条項が設けられることがあります。

第●条(賃借人退去)
1 売主は、平成●年●月●日までに、自己の費用と責任において本物件賃借人を完全退去させるものとする。
2 前項の賃借人立ち退きを、前項の期日から概ね1ヶ月を目処として履行する旨の本物件明渡しに関する即決和解が、売主と賃借人の間で成立している場合、買主は売主へ売買代金の残代金を支払い、本物件の引渡しを受けるものとする。

このような場合には、売主が賃借人との間で事前に退去交渉を行い、退去に関する合意を成立させることが多いと思われますが、仮に賃借人がその合意に反して明渡期限までに明渡しを行わなかった場合であっても、売主と賃借人との間で即決和解が成立していれば、買主が引渡しを受けた後に改めて建物明渡請求訴訟を行う必要はなくなります。

4 即決和解の手続の具体的内容

(1) 賃貸人・賃借人間の事前の話し合い
即決和解の手続は、事前に当事者間での合意が成立していることが前提です。したがって、即決和解を申し立てる前に、当事者間での合意を成立させる必要があります。なお、申立てから和解期日指定まで平均1か月程度を要することから、建物等の明渡し、金銭の支払いの日程については、この点を考慮に入れて定める必要があります。

(2) 申立て
相手方の普通裁判籍(普通裁判籍については、民事訴訟法第4条第2項から第6項を参照)(相手方が自然人の場合、第一次的には相手方の住所地によって定まります(民事訴訟号台4条第2項))の所在地を管轄する簡易裁判所に申立てを行います。なお、上記ケース2の条項のように、即決和解を成立させなければならない期限が決まっている場合には、申立てに先立って裁判所との間で事実関係や期日候補日について打ち合わせをしておくことでその後の手続がスムーズに進みます。

(3) 申立書審査
申立てがあると、裁判所が申立書を審査し、書類の追完、和解条項の修正等を経て、和解期日の指定手続に入ります。和解期日については、当事者双方が出席する必要があるため、双方が裁判所に出頭できる日を打ち合わせ、裁判所に希望日を連絡します。なお、当事者に代理人(弁護士等)が就く場合には、当事者は出席する必要はありません。
なお、希望日については、裁判所に連絡をした日からある程度先の日を伝える必要があります。これは、裁判所から相手方に対して期日呼出状等を送付する必要があるためであり、仮に相手方に代理人が就いていたとしても、期日呼出状自体は相手方本人が受け取る必要があります。

(4) 和解期日
和解期日当日、当事者双方(代理人の場合は代理人)が和解条項について合意し、かつ、裁判所が相当と認めた場合に和解が成立し、和解調書が作成されることになります。和解調書正本は、原則、和解期日当日に双方に交付されます。

即決和解の手続は以上のとおりとなります。

手続自体が複雑なわけではありませんが、弁護士が代理人に就いて裁判所との事前の細かいやり取りを行うことで手続が非常にスムーズに進みます。即決和解手続が必要になった場合にはぜひ一度ご相談下さい。

(文責:三村雅一)

2018年08月17日 17:32|カテゴリー:未分類コメントはまだありません

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