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ベンチャー法務の部屋

古物営業の許可について(3)

前回前々回と、古物営業法の趣旨や概要、リサイクルショップ、フリーマーケット、バザー、メルカリ等のフリマアプリと古物営業法の関係について紹介してきました。

今回は、平成30年4月25日に公布された古物営業法の概要について紹介します。

第1 はじめに

前回のブログでも紹介したように、古物営業の態様は変化し、内閣規制改革ホットラインには、都道府県単位での許可の見直し(古物営業法第3条第1項、第2項)、営業の制限についての緩和(古物営業法第14条第1項)について要望が寄せられました。

それを受け、警察庁は古物営業の在り方に関する有識者会議を開催し、平成29年12月21日に古物営業の在り方に関する報告書をまとめました。

こういった背景の下、平成30年3月6日に古物営業法の改正案が閣議決定され、同年4月25日には「古物営業法の一部を改正する法律」(以下「新法」といいます。改正前の古物営業法を「旧法」といいます。)が公布されました。

第2 新法の概要

1 都道府県ごとの許可制度について

(1) 旧法下における制度の概要

旧法下の制度では、古物営業を行うためには、都道府県単位での許可を受ける必要があるとされていました(旧法第3条第1項、同第2項)。

(2) 不都合性
前述のとおり、全国展開を図る古物商にとっては、都道府県ごとに許可が必要となることから、時間と費用がかかるという問題がありました。

(3) 新法
新法においては、主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会の許可を受ければ、その他の都道府県に営業所等を設ける場合には届け出で足りることとされました(新法第3項第1項)。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から2年を超えない範囲内とされました(新法附則第1条)。

2 営業の制限について

(1) 旧法下における制度の概要
旧法下における制度では、古物商は、営業所又は取引の相手方の住所等以外の場所で、買受け等のために古物商以外の者から古物を受け取ることができないとされていました(旧法第14条第1項)。
これは、営業所又は取引の相手方の住所等以外の場所において古物の取引をする場合、法に定める各種義務(帳簿記載義務や本人確認義務)の確実な履行が期待できないために設けられた規定です。

(2) 不都合性
百貨店や集合住宅のエントラス等でのスペースを活用したイベント会場での受け取りができないため、古物商にとってはビジネスチャンスが狭まっており、また消費者にとっても古物を売却できる場所の選択肢が狭まっているという問題がありました。

(3) 新法
事前に公安委員会に日時・場所の届出をすれば、仮設店舗においても古物を受け取ることができることとされました(新法第14条第1項但書)。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から6ヶ月を超えない範囲内とされました(新法附則第1条但書)。

3 簡易取消し制度について

(1) 旧法下における制度の概要
旧法下における制度では、所在不明である古物商の許可を取り消すためには、3ヶ月以上所在不明であることを都道府県公安委員会が立証した上で、聴聞を実施する必要がありました。

(2) 不都合性
現在、約77万件の許可件数がある中で所在不明である古物商や、既に廃業しているにもかかわらず返納されていない許可がある一方で、許可を取り消す手続に時間がかかりすぎるという問題がありました。

(3) 新法
古物商等の所在を確知できないなどの場合に、公安委員会が公告を行い、30日を経過しても申し出がない場合には、許可を取り消すことができることとされました(新法第5条第2項、同条第3項)。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から2年を超えない範囲内とされました(新法附則第1条)。

4 暴力団排除について

(1) 旧法下における制度の概要
旧法下における制度では、禁固以上の刑や一部の財産犯の罰金刑に係る前科を有すること等を欠格事由として規定し、該当する者は許可を取得できないとされていましたが、暴力団員は欠格事由として明記されていませんでした。

(2) 不都合性
盗品売買の防止という法目的からは、暴力団排除は当然であるにもかかわらず、暴力団排除が法に明記されていなかったという問題がありました。

(3) 新法
暴力団員やその関係者、窃盗罪で罰金刑を受けた者を排除するため、許可の欠格事由として、「集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」(新法第4条第3号)、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第12条若しくは第12条の6の規定による命令又は同法第12条の4第2項の規定による指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から起算して3年を経過しないもの」(新法第4条第4号)が定められました。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から6ヶ月年を超えない範囲内とされました(新法附則第1条但書)。

(文責:三村雅一)

2018年07月13日 13:46|カテゴリー:その他コメントはまだありません

古物営業の許可について(2)

前回のブログでは、古物営業法が、盗品売買の防止等を図ることを目的とした法律であり、古物営業法はこの目的を達成するために、古物営業を許可制として、種々の規制を加えていることについてお伝えしました。さらに、古物営業法に定められた「古物」とは?「古物営業」とは?ということについても紹介しました。

 

今回は、リサイクルショップ、フリーマーケット、バザー、メルカリ等のフリマアプリと古物営業法の関係について紹介します。

 

第1 リサイクルショップと古物営業法

まず、一般的なリサイクルショップは、買い取った古物を販売するという形態をとるため、「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業」(古物営業法第2条第2項第1号)の「古物営業」に該当することになり、古物営業法の適用を受けることになります。

 

もっとも、無償、または引取り料を徴収して引き取った古物を修理、再生等して販売する形態のリサイクルショップの場合には、(古物の買取りを行わず)「古物を売却することのみを行うもの」(古物営業法第2条第2項第1号)に該当することから、古物営業には当たらず、古物営業法の適用を受けません。

 

第2 フリーマーケット・バザーと古物営業法

バザーやフリーマーケットについては、前回の記事でも解説したとおり、その取引されている古物の価額や、開催の頻度、古物の買受の代価の多寡やその収益の使用目的等を総合的に判断し、営利目的で反復継続して古物の取引を行っていると認められる場合には、古物営業に該当するとされています。(平成7年9月11日警察庁丁生企発104号「古物営業関係法令の解釈基準等について」4頁参照。)

 

もっとも、一体どの程度の取引を行えば、「営利目的で反復継続して古物の取引を行っていると認められる」のかが問題となります。

 

この点については、平成18年1月31日付経済産業省「特定商取引法の通達の改正について」で、インターネットオークションにおいて、特定商取引法の「販売業者」に該当すると考えられる場合として紹介されている内容が参考になると考えられます。

 

対象となるカテゴリー、商品によって基準は異なりますが、「全てのカテゴリー・商品」について、例えば、以下の場合には特別の事情がある場合を除き、営利の意思を持って反復継続して取引を行う者として販売業者に該当すると考えられるとされています。

①過去1ヶ月に200点以上又は一時点において100点以上の商品を新規出品している場合、②落札額の合計が過去1ヶ月に100万円以上である場合、③落札額の合計が過去1年間に1,000万円以上である場合。

 

なお、平成28年9月14日付のニュースで、「嵐」のコンサートチケットを転売したとして、25歳の女性が古物営業法違反(無許可営業)の疑いで逮捕されるという事件が起こりました。チケット転売がなぜ古物営業法違反になるのか、この疑問は、正に上で述べてきた内容が回答となります。すなわち、この女性は、2015年11月から12月の間に、3名に対しコンサートチケット5枚を計4回、インターネットの転売サイトで売っていました。それだけではなく、女性はチケット交換サイトでコンサートチケットを入手した後、転売サイトに出品して高値で販売するという手口で、2014年10月から2018年4月までの間に168名に対してチケット299枚を販売し、約1000万円の売り上げを得た疑いがあり、これが、営利目的で反復継続して古物の取引を行っていると認められたものと考えられます。

 

このように、チケットの転売であっても、その具体的態様に照らし、「古物営業」として、古物営業法の規制の対象となることがあります。

 

 

第3 フリマアプリ、フリマサイトと古物営業法

インターネット上のフリーマーケットアプリやフリーマーケットサイトは、インターネット上において、個人間で直接に物を売買する場を提供するものであり、また、その方法が競りによるものではないため、インターネット上のフリーマーケットアプリやフリーマーケットサイトの運営業者は古物営業法に規定された古物競りあっせん業者には該当せず、法規制の対象外となっています。

 

もっとも、フリマアプリ等で出品をする場合には、第2で紹介した「インターネットオークションにおいて、特定商取引法の「販売業者」に該当すると考えられる場合」を参考にする必要があり、「営利目的で反復継続して古物の取引を行っている」と認められた場合には、古物営業法の許可が必要となることにご注意ください。

 

この点、古物営業法規制の対象外となっているとはいえ、現在のメルカリ等のフリマアプリにおいては、「盗品売買の防止」等の観点から、利用者には厳格な本人確認を要求するなど、古物営業法の趣旨を踏まえた自主ルールを作成し取り組みを強化しています。

 

なお、個人間の売買を目的としたメルカリではなく、中古品の買取と再販売を想定している「メルカリNOW」については、「古物営業」(古物営業法第2条第2項第1号)に該当することから、古物営業の許可が取得されています。

 

このように、その取引が「古物営業」(古物営業法第2条第2項)に該当するか否かの判断は容易でないため、弁護士等の専門家への相談をおすすめします。

 

次回が古物営業法に関する最終回となります。次回は、「古物営業の在り方に関する有識者会議」ではどのようなことが議論され、古物営業法がどのような方向に向かおうとしているのかについても紹介する予定です。

 

(文責:三村雅一)

2018年06月15日 10:11|カテゴリー:その他コメントはまだありません

古物営業の許可について(1)

第1 はじめに

 

平成29年12月21日、警察庁の有識者会議は、古物営業の在り方に関する報告書をまとめました。

 

同会議では、時代の流れに合わせた古物営業の形態の変化等に伴い、現在のニーズに即した古物営業の在り方について検討が行われました。

 

ところで、皆さんは、「時代の流れに合わせた古物営業の形態の変化」という言葉にピンとくるでしょうか。「古物営業って質屋さんのことじゃないの?質屋さんって減ってるのでは?」という方も多いのではないでしょうか。

 

ところが、「現在のニーズに即した古物営業の在り方」という言葉にもあるように、「古物営業」は現代社会においても我々の生活の一部になっています。たとえば、メルカリ、ヤフオクといったインターネットの発達、古本市場、ブックオフ、コメ兵といった店舗の全国展開によって、我々は容易に中古品を売却し、購入することができるようになりました。このように、時代の流れに合わせた古物営業の形態の変化等に伴い、古物営業法は避けては通れない法律となっています。

 

そこで、今回は、「古物営業法」とはどのような法律なのか、ということについて紹介し、次回以降、メルカリやヤフオク、リサイクルショップやフリーマーケットと古物営業法の関係、そして、「古物営業の在り方に関する有識者会議」ではどのようなことが議論され、古物営業法がどのような方向に向かおうとしているのかについても紹介したいと思います。

 

 

第2 古物営業法とは

 

1 趣旨

 

そもそも、古物営業法とはどういう目的で定められた法律なのでしょうか。

 

この点について、古物営業法は第1条でその目的について、「盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。」と定めています。

 

すなわち、古物商が盗品等の処分先として利用されることが多いことから、盗品売買の防止等を図ろう、というのが古物営業法の目的です。古物営業法はこの目的を達成するために、古物営業を許可制として、種々の規制を加えています。

 

したがって、これから古物営業法に関わる問題を考えていくにあたっては、この古物営業法の目的を念頭においておく必要があります。

 

 

2 どういう時に許可がいるの?

 

それでは、古物営業法は、どのような場合に許可を要すると定めているのでしょうか。

 

(1)「古物営業」とは

 

古物営業法は、第2条第2項において、次の3つの営業を、「古物営業」と定めています。

 

①古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業(例:リサイクルショップ)

 

②古物市場(古物商間の古物の売買又は交換のための市場)を経営する営業(例:古物商のみが参加できる古物売買・交換の場)

 

③古物の売買をしようとする者のあっせんを競りの方法(政令で定める電子情報処理組織を使用する競りの方法その他の政令で定めるものに限る。)により行う営業(例:インターネットオークション(古物営業法施行令第3条)(古物営業研究会著 2訂版「わかりやすい古物営業の実務」14頁、3頁参照)。

 

なお、①については、次の2つの営業形態については規制対象から除外されています。

 

ア (古物の買取りを行わず)古物を売却することのみを行うもの

 

イ 自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの

 

これらが①から除外された理由は、盗品等の混入のおそれが低いためです。

 

アの例としては、無償、または引取り料を徴収して引き取った古物を修理、再生等して販売する形態のリサイクルショップが挙げられます。もっとも、古物の買取を行っている場合には、古物営業に該当することになります。また、いわゆるバザーやフリーマーケットについては、その取引されている古物の価額や、開催の頻度、古物の買受の代価の多寡やその収益の使用目的等を総合的に判断し、営利目的で反復継続して古物の取引を行っていると認められる場合には、古物営業に該当するとされています。(平成7年9月11日警察庁丁生企発104号「古物営業関係法令の解釈基準等について」4頁参照。)

 

イの例としては、AがBに売却した物品をAがBから第三者を介在させずに買い戻すといった行為だけを行うものが挙げられます。

 

(2)「古物」とは?

 

それでは、「古物営業」で取引の対象となる「古物」とは何をいうのでしょうか。

 

古物営業法は、第2条第1項において、

 

① 一度使用された物品

 

② 使用されない物品で使用のために取引されたもの

 

③ これらの物品に「幾分の手入れ」をしたもの

 

を、「古物」と定めています。

 

まず、古物営業法第2条第1項にいう「使用」とは、物品をその本来の用法に従って使用することをいい、衣類についての「使用」は着用、自動車についての「使用」は運行の用に供することをいいます。

 

次に、古物営業法第2条第1項にいう「使用のために取引されたもの」(上記②)とは、自己が使用し、又は他人に使用させる目的で購入されたものをいいます。したがって、小売店等から一度でも一般消費者の手に渡った物品は、それが未だ使用されていない物品であっても「古物」に該当します。例えば、消費者が贈答目的で購入した商品券や食器セットは、「使用のために取引されたもの」に該当するとされています。(平成7年9月11日警察庁丁生企発104号「古物営業関係法令の解釈基準等について」2頁参照。)

 

また、「幾分の手入れ」(上記③)とは、物品の本来の性質、用途に変化を及ぼさない形で修理等を行うことをいい、例えば、絵画については表面を修補すること、刀については研ぎ直すことをいうとされています。(同上)

 

なお、「物品」には、鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手等は含まれますが、船舶、航空機、工作機械等の大型機械類は含まれません。

 

(3)まとめ

 

したがって、(2)に挙げた「古物」を対象とした、(1)の「古物営業」を営もうとする場合には、都道府県公安委員会の許可を受けなければならない(古物営業法第3条1項、2項)ことになります。

 

 

上記の知識を前提として、次回は、メルカリやヤフオク、リサイクルショップやフリーマーケットと古物営業法の関係、そして、「古物営業の在り方に関する有識者会議」ではどのようなことが議論され、古物営業法がどのような方向に向かおうとしているのかについて紹介したいと思います。

 

(文責:三村雅一)

 

2018年05月21日 18:20|カテゴリー:その他, 企業法務コメントはまだありません

新事務所開設のご挨拶

 平成29年9月1日をもって、アクシス国際法律事務所を設立いたしましたので、ご報告とご挨拶を申し上げます。
 新事務所設立にあたって、私たちは、「弁護士の使命を貫徹し、プロフェッショナルとしての『本物』の価値を全力で提供し続けることによって、より良い社会の構築に貢献する。」との理念を掲げました。
 最先端の実務を取り扱ったベンチャー法務の実績ならびにアメリカ・中国・台湾・ベトナムにおける実務経験を活かしながら、全員ががっちりとスクラムを組んで、新事務所を運営していきたいと存じております。
 事務所名に採用した「アクシス」には、「基軸」という意味に加えて、多元的な指標のもととなる「座標軸」という意味があります。私たちは、今後に予想される社会の多様な法的ニーズに柔軟に即応することを目標として、常に高い志を保ちながら絶えざる成長を目指し、挑戦と研鑽を積みつつ、新事務所の理念を実現したいと考えております。
 皆様には、新事務所の理想と目標にご理解をいただき、今後ともご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

2017年09月19日 17:14|カテゴリー:その他コメントはまだありません

お知らせ「会社が成長するために知っておくべき契約の知識」の開催

今回は、第1回SUEセミナーとして開催する「会社が成長するために知っておくべき契約の知識」のお知らせです。

SUEセミナーとは、スタートアップエンジンから派生した企画で、ベンチャー企業や中小企業を念頭にして、会社の経営陣や法務担当者が会社を成長させるために絶対に知っておくべき知識をお届けすることを目的としたセミナーです。

今回は、第1段として、「会社が成長するために知っておくべき契約の知識」というタイトルで私が講師を務めさせていただく予定です。

下記の要項で開催しますので、皆様のご参加をお待ちしております。

◆日時
2011年9月22日(木)19時00分 ~ 20時30分

◆参加費
2,000円

◆場所
大阪市北区梅田2丁目5番25号 ハービスPLAZA6階

お申し込みはホームページをご覧ください。
http://startup-engine.com/event/379

2011年09月05日 06:30|カテゴリー:その他コメントはまだありません

「挑戦せよ」国立国会図書館館長からのメッセージ

先週末に、出席したSessionの中で、事前の予想に比して最も面白かったものが、5月29日(日)に京都大学で開催された超交流会2011の「情報学の学生よ、挑戦せよ」でした。

このSessionでは、国立国会図書館館長であり、京都大学の第23代総長でもある長尾眞京都大学名誉教授がご登壇されました。

正直、私は、法学部出身で、長尾先生の業績は全く存じ上げず、入学時に総長をされていたといった記憶しかありませんでした。

しかし、長尾先生は、パワーポイント等をいっさい使わずとも、力強いメッセージを発することができるということ、そして、チャレンジ精神、ベンチャー精神に年齢等全く関係ないことを、このSessionで証明されました。充実した講演でした。

長尾先生は、情報学という学問の礎を作られた先生でおられ、言語処理等の分野で、相当以前から、今のGoogleやWikipediaで実現しようと挑戦している内容を既に30年近く前に提唱されていたとのことです。そのご講演の中で、私が印象に残った話を取り上げさせていただきます。

(過去を振り返って)
・ 機械翻訳はいずれ必ず成功する。今は、日韓で97~8%、日英で85%、日中で70~5%くらい。
・ 1994年には電子図書館というテーマで、いずれは、本単位から欲しい情報のユニット単位で検索・調査し、hypertext構造によって自動発見+リンクで、情報がリンクされる時代になると考えていた。
・ その時代に、情報端末とそのインターフェースが重要となるはずとも考えていた。

(若い人へのメッセージ)
・ 何でも面白いことをやりなさい。
・ 電電(京都大学工学部電気電子工学科の意)の同窓会に出席したが、あまり熱気がない。規制(既成?)の枠、よろしくない。
・ 今の時代、40代の人より、20代、30代の人の方が面白い。特に、判断力があり、仲間とやることに慣れており、孤立していない。競争相手と上手にコミュニケーションをとっている。
・ 他の分野の人間ともっと交わること。今の情報学の世界、エンジニアの人は、法学や社会学の視点がかけていることが少なくない。
・ 関西は、せっかく京都・大阪・神戸・奈良等と文化の違うエリアがあるのに、バラバラのままで、切磋琢磨がないのがもったいない。
・ 自分たちの文化をもっと大切にせよ。浮世絵等の江戸文化は、それそのものが世界に誇れるものだし、通用するものである。外ばっかりキョロキョロ見るのではなくて、「自分は、これをやることで世の中の役に立つ」ということをやっていると、結果的に世界に通用する。
・ 20世紀は科学技術の時代。21世紀は確立した法則を用いて新しいものをクリエイトする時代。
・ 情報学を情報科学という名前にしなかったのは、「科学」という枠にとらわれないようにするため。
・ 国立国会図書館の全ての情報を電子化したい。
・ 日本の著作権法の問題は深刻。
・ (「「面白いこと」の判断基準はありますか」という質問に対し)常に何が面白いかということを発見するには、惨憺たる苦労が必要。常に考え続けるべき。こんなことが面白いんじゃないか、あんなことが面白いんじゃないかと辛抱強くいろいろ考えているうちに、ある瞬間に「これだ」というのが出てくる。辛抱強く考えるというのが、簡単そうで意外に難しい。
・ (「素敵だと思う人はいますか。どういう基準ですか」という質問に対し)セネカやキケロをはじめ、本の中には沢山いる。現に会った中では、業績や肩書きではなく、やっぱり人間的魅力。人柄。

私見が混じってしまったものや、意訳や誤解等があるかもしれませんが、お許しいただければ幸いです。間違いがあれば、訂正いたします。

実際の講演では、国立国会図書館館長という肩書きからは想像もつかない程、今もチャレンジし続けておられることがよくわかる話が満載でした。株式会社はてなの近藤淳也社長が、1人の京大卒業生として、「卒業式のときに、旅行にいって出席せず、先生の話を聞けなかったことをとても後悔しました。」と言っておられたのが印象的でした。

なお、長尾先生は昨年、自叙伝「情報を読む力、学問する心 」を出版されたとのことです。この本を見れば、だいたい同じようなことが書かれているはずとおっしゃってました(私もまだ購読できていません。悪しからず。)。

2011年06月01日 06:30|カテゴリー:その他, ベンチャー・ビジネスコメントはまだありません

スタートアップエンジン2011の御報告

昨日、スタートアップエンジン2011(SUE2011)を開催させていただきました。大勢の素敵な方が会場に来て下さいました。

私自身、このようなイベントを主催するのは、初めてのことで、いろいろと不手際があったかと思いますが、総じて、大変好意的な感想をいただいており、心から嬉しく思っています。

個別のSessionの具体的な内容は、いずれまとめて、お伝えしたいと考えています。

お越し下さった皆様、そして、開催にあたり甚大なご尽力を賜りました営業創造株式会社及びアルファクリエイト株式会社の皆様、また、ご後援下さった大阪証券取引所様及びご協力くださった株式会社幕末様に御礼申し上げます。

P.S. Session 1にて、素晴らしい御講演をしてくださったライフネット生命の岩瀬さんの新刊本「入社1年目の教科書」が、昨日発売開始になりました。ご興味のある方は、是非お読みください。

2011年05月21日 13:50|カテゴリー:その他, ベンチャー・ビジネスコメントはまだありません

法律問題Q&A情報(震災に伴う法律上の問題)

震災関連の法律問題について、Q&Aが各所から出ています。主なものを紹介させていただきます。

■ 日本弁護士連合会災害復興支援委員会からは、「東日本大震災法律相談Q&A」が出されています。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/special_theme/data/soudanQ&A.pdf (PDF)

関東弁護士連合会が出版した「災害時の法律実務ハンドブック」(新日本法規出版(株))の設問及び回答を簡略化し編集し直し,それに今回の震災に特有と考えられる津波災害と原発災害の設問,回答を追加した構成での御提供とのことで、「同書籍は2006年(平成18年)の出版であり,その後に改正された特定商取引法や被災者生活再建支援法などの改正内容は反映されておりませんので,ご注意ください。」とのことです。

なお、このQ&Aについては、「第17章原子力被害に係る問題」Q170以下については、そもそも法律問題ではない問題が混じっている点や、水戸地裁平成20年2月27日判決、東京高裁平成21年5月14日判決等、参考とすべき裁判例の内容が反映されていない(Q190)点等、実務家を中心に批判が少なくありませんので、ご留意下さい。

新日本法規出版株式会社さんのWEBサイトでは、下記の案内があります。
「災害関連法令一覧とQ&A災害時の法律実務ハンドブックの改訂について」

この中で、同社の御好意で、平成18年版の「Q&A災害時の法律実務ハンドブック」の内容がテキストデータで提供されています。

http://www.sn-hoki.co.jp/shop/new/300.html

■株式会社商事法務さんのWEBサイトでは、『地震に伴う法律問題Q&A』(近畿弁護士連合会編、平成7年3月刊行)のほか、「NBL」の災害関連記事をPDFで公開中とのことです。

http://www.shojihomu.co.jp/

弁護士の方は、弁護士会のeラーニング等もご活用ください。

2011年04月08日 13:30|カテゴリー:その他コメントはまだありません

心よりお見舞いを申し上げます。

今回の大地震の被害に遭われた皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。特に、地震やこれに伴う津波・火災等により生命や財産を失われた方々にお見舞いを申し上げるとともに、罹災地にて人命救助や避難所での生活支援に従事しておられる方々、その他の地域にて様々な形でご協力されている方々に心より敬意を表します。

現在の段階では、私にできることは限られております。当ブログでは、震災に関連する情報については、出来る限り正確なもののみを発信しようと心がける所存です。

2011年03月14日 17:00|カテゴリー:その他コメントはまだありません

すぐ役に立つことは、すぐに役立たなくなる


「スピードが大事なんじゃない。すぐ役に立つことは、すぐに役立たなくなります。何でもいい、少しでも興味をもったことから気持ちを起こしていって、どんどん自分で掘り下げてほしい。そうやって自分で見つけたことは君たちの一生の財産になります。そのことはいつか分かりますから」

(引用終わり。「週刊ポスト2011年3月4日号」より)


ネットで話題になった記事からの引用です。『銀の匙』1冊を横道に逸れながら中学3年間かけて読み込む授業をした、ある国語教師の記事です。

私も、この考え方を、普段から心がけたいです。

振り返ってみると、学生時代に学んだことのうち、当時、興味をもって、じっくりと時間をかけて、自分なり考えたことが、今でも一番、生きているように思います。

司法試験であれば、「国民主権とは何か」「憲法とは何か」「「すべて国民は、個人として尊重される。」とは、どういう意味か」「法の下の平等とは何か」等という問いに真剣に考え、自分なりの答えを出し、先人の見解から学ぶというプロセスは、決して遠回りの道ではありませんでした。

しかも、これらのことを考える時に、小野紀明教授の政治思想史の講座とゼミで3年に渡って教えてもらったことは、大きく影響しました。この頃に学んだことは、長い目で見て、私の糧になっています(講座の単位は1年目で取得していましたが、その後も興味本位で授業に出ていました。)。小野紀明教授の授業は、プラトン、ソクラテスからニーチェにいたるまでを1年間で、その後、ニーチェから現代哲学(フーコー、サルトル、デリダ等)までを1年でするものでした。ゼミでは、古典をずっと読み、私のときは、ヘーゲルの『歴史哲学講義』を通読しました。あと、個別発表というのもあり、各人が興味をもったテーマについて、政治哲学的に議論するというもので、今にして思えば、こちらも本当に勉強になりました。

なぜ、民法は、総則、物権、債権とあるのか、ということも考えてみると面白いかもしれません。私なぞは、世の中の事象を「物」か「人」で分けようとする考え方(特に19世紀以前の西洋哲学の考え方)が背景にあったと考えています。物に対する権利が物権で、人に対する権利は債権ですが、それ以外の概念に対する権利については、民法には書かれていません。古来から、日本では、西欧ほどには、物/人という2項対立で考えてきたわけではなさそうですので、民法制定時に輸入されてきた考え方だと思われます。ちなみに、現代では、物といえるかわからないものや、物か人かわからないものが、いろいろ出てきて、修正を余儀なくされています。知的財産権や動物の問題もそうです。電気については、刑法でわざわざ「この章の罪については、電気は、財物とみなす。」という規定が置かれたくらいです。

法科大学院の学生や受験生は、日々お疲れだとは思いますが、時には、法律の構造や順番、なぜその文言が使われているのかということを味をかむようにして考えることも、如何でしょうか。

2011年02月26日 15:30|カテゴリー:その他コメントはまだありません