ここから本文です

ベンチャー法務の部屋

中国の知的財産権保護―理解しておくべき事実

日本弁理士会が発行している雑誌「パテント」の2011年2月号(Vol.64 No.2)109頁以下に、中国国家知識産権局局長である田力普さんによる、「中国の知的財産権保護―理解しておくべき事実」という寄稿があります。この中では、中国における知的財産権に対する認識の経緯について、忌憚のないご意見を述べられておられ、大変参考になりました。

まず、田さんが1970年代末に知的財産権分野の仕事に入られたときのお話があります。

当時の中国では、8億の人口のうち、ほんのわずか数十人を除いて、知的財産権に対する認識は、私と同じだったと思います。ゼロに等しく、知識と財産を一緒に結びつけるという概念は全くありませんでした。逆に、当時の人々は一般に、知識は自由に無償で広まり使われるものだと考えており、どんな知識も社会全体、さらには全世界で共有されるべきで、費用の徴収が認められるということは理解し難いことでした。
(中略)
そこで、1970年代に「知的財産権」という語が中国語に翻訳されましたが、2000年になって初めて、中国の数億を数える学生が一般に用いている「新華字典」に正式に収録されました。
(引用終わり)

そして、改革開放時代における、現在の知的財産権制度の実施とその立法過程や討論の激しさが述べられています。

立法が決定して1990年に著作権法が公布されるまで、主要な知的財産権の法律が制定されるのに10年以上かかりました。これが、長い歴史を持つ知的財産権国際規則の、それに疎い中国における初めての運用となったのです。
(引用終わり)

そして、現在の中国の知的財産権制度の実施が中国人の創造力を引き出していることについて述べた上で、一方で、Apple社のiPodやDVDの例を挙げて、知的財産権制度の中国における実施が、欧米諸国や多国籍企業に実際の利益をもたらしている点を指摘しています。

また、中国の現状についても、率直に問題があり、不十分な制度、民衆の意識が比較的低い点、いくつかの場所・分野・製品で突出して知的財産権の侵害があることを認めておられます。

ただ、逆に、海外メディアにおいて、いくつかの問題は故意に、あるいは故意でなく誇張され、歪曲されていることも指摘されています。

最近、私は、多くの外国メディアの、知的財産権の関係した中国に関する報道に、大量のマイナス情報が氾濫しているのを目にします。そこで私の受ける印象は、『欧米諸国で注目を集めたいなら、中国を非難する。中国を非難する際に注目されたいなら、中国の知的財産権保護を非難する』ということです。

しばしば、米国メディアと政治家が引用するデータが誇張されており、事実と符合していないことは明らかなのです。(引用終わり)

中国の立場は、これまで欧米諸国が長年により培った知的財産権制度について、わずか30年ほど実施しているにすぎず、これからも長期的に努力をするということです。実際に、中国における、この10数年で立法された知的財産権関連法の数は、大変なもので、現在では、ほぼ一通りの法律は揃っていますし、改定作業も迅速です。

中国を生産拠点としてではなく、マーケットとしてみる動きはこれからも留まることはないでしょう。日本企業が中国の市場に進出する際には、是非、予め、特許権や商標権の登録等の準備を怠らなければ、仮に模倣品被害にあっても採り得る手段は少なくありません。また、仮に商標権がこちらになかったとしても、中国の商標法や、日本の不正競争防止法に該当する反不正当競争法が活用できる可能性が残っていますので、諦めずに専門家に相談していただきたいです。具体的には、日本の弁護士や弁理士と連携しつつ、現地の法律家に依頼するのが一般的でしょう。

一応、現時点の中国商標法や反不正当競争法の関連条文を挙げておきます。なお、この翻訳は、特許庁及びJETROのものに依拠しておりますので、その正確性等について保証するものではありません。

中国商標法
第 31条 商標登録の出願は,他の者の先の権利を害してはならず,他の者の既に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で先に登録することもしてはならない。
第 41条 登録された商標が第10条,第11条,第12条の規定に違反しているか,又は詐欺的な手段若しくはその他の不正な手段で登録を取得したときは,商標局は当該登録商標を取り消す。その他如何なる組織又は個人も,商標評審委員会にそのような登録商標を取り消す裁定を請求することができる。
登録された商標が第13条,第15条,第16条,第31条の規定に違反しているときは,当該商標の登録日から5年以内に,他の商標所有者又は関係当事者は,商標評審委員会にその登録商標を取り消す裁定を請求することができる。悪意による著名商標の登録の場合,その真の所有者に対しては5年間の制限はない。
前 2段落に定めた状況のほか,既に登録された商標について係争があるときは,当事者は当該商標の登録許可日から5年以内に,商標評審委員会に裁定を請求することができる。 商標評審委員会は裁定請求を受理した後,関係当事者に通知し,かつ,指定の期間内に答弁させなければならない。
引用元(PDF)はこちら

中国反不正当競争法
第5条 事業者は以下に記載する不正手段を用い市場取り引きをし、競争相手に損害を与えてはならない。
(1)他人の登録商標を盗用すること。
(2)勝手に著名商品の特有な名称、包装、デザインを使用し、または著名商品と類似の名称、包装、デザインを使用して他人の著名商品と混同させ、購入者に当該著名商品であるかの誤認をさせること。
(3)勝手に他人の企業名称または姓名を使用して公衆に当該他人の商品であるかのを誤認させること。
(4)商品の上に品質認定標識、優秀著名標識など品質標識を偽造し盗用し、または原産地を偽造して公衆に誤解させる商品品質の虚偽表示をすること。
第9条 事業者は広告またはその他の方法を用いて商品の品質、成分、性能、用途、生産者、有効期間、産地などに対し公衆に誤解を与える虚偽宣伝を行ってはならない。
広告事業者は明確なまたは知りうるべき情況のもとで虚偽の広告を代理、設計、制作、公布してはならない。
引用元(PDF)はこちら

2011年03月11日 06:30|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス, 企業法務||コメントはまだありません

起業と成長しやすい場所であり続ける サンノゼ市の挑戦

10年前であっても、今であっても、シリコンバレーが起業と成長しやすい場所であることに異議を唱える方はあまりいないのではないかと思います。

2月22日に日本経済新聞から配信された「米サンノゼ市長「起業と成長しやすい場所であり続ける」「三度目の奇跡」インタビュー チャック・リード氏 」という記事では、シリコンバレーの中心都市であるサンノゼ市の市長がインフラ整備のために、どのような努力を行っているかが記述されています。

特に、印象に残った内容は、税制面での優遇策の余地はあまりない代わり、「行政が迅速に動くように努めている」という方針を示し、そのために「本社移転の手続きや、拠点拡大などの要望に他の自治体に比べ素早く応じる」という行政インフラの重視を心がけておられる点でした。さらに、「シリコンバレーでは、自治体もベンチャー企業と同じスピードで考えて行動することが大事。」ということで、スピードを重視している点も印象的でした。

政府や地方自治体がベンチャー支援となると、すぐに金銭面でのサポートが念頭に来ることが少なくありませんが、貸付の優遇措置等は、本当にベンチャー支援に資するか疑問の面がないわけではなく、逆に、このような行政インフラがスピード感をもって、使い勝手のよいものに変化するというのは、ベンチャー企業にとってありがたいのではないかと感じます。

日本では、法務局的な手続きは、全国一律ですので、なかなか地域間競争が起きにくいという状況にあるのは確かですが、その中でも、行政ができることについて、参考になるのではないかと考えさせられた記事でした。

2011年02月23日 06:30|カテゴリー:その他, ベンチャー・ビジネス||コメントはまだありません

特許権に関してよくある勘違い

諸事情により、しばらくブログの更新をお休みさせていただいておりました。ご心配をおかけいただいた皆様、ありがとうございました。

早速ですが、今日は、特許権についての基本的な話をしたいと思います。

特許権についてのよくある勘違いとして、次のようなものがあります。

(1) 既にある発明が特許出願済みなので、もうその特許に抵触することができない

(2) 社長が発明した特許は、会社のものである。

これらについて、改めて整理しておきます。

まず、(1)について、検討します。

既に、ある発明が特許出願済みであっても、それが審査請求され、特許料を納付して登録されなければ、特許権となることはありません。特許を出願すると、出願日から1年6月経過後に自動的に公開され、「特許出願20○○-○○○○○○」といった番号で、公開されますが、それだけでは特許権ではありません。単に、過去に出願されたということに過ぎません。勿論、今後、審査請求され、特許権化する可能性はありますので、この点は、十分に検討する必要があります。

ただ、出願から3年以内に審査請求のない出願は、取り下げられたものとみなされます。以後権利化することはできません。したがって、3年以上前に出願され、且つ未だに審査請求がなされていない場合は、その出願された発明については、特許権化されません。

仮に審査請求され、拒絶査定ではなく、特許査定が下りた場合は、特許料が納付されると特許登録原簿に載り、特許公報が発行されます。この場合は、特許権として有効です。ただ、無効審決や裁判の結果によって無効化した場合、権利存続のための特許料が納付されていない場合、特許権存続期間が満了した場合は、有効ではありません。

次に、(2)について、検討します。

社長が発明した特許は、特許を受ける権利、又は特許権自体を会社に譲渡しない限り、会社は特許権者ではありません。会社は、実施許諾を受けている(通常実施権を有する)に過ぎません。特許を受ける権利を会社に譲渡した場合でも、特許権を会社に譲渡した場合でも、会社は、相当な対価を社長に支払う義務があります。

特許を受ける権利や特許権が、会社に帰属しているのか、社長個人に帰属しているのかという点は、事業上、問題とならないことも少なくありませんが、ベンチャー・キャピタルから資金調達するケースや、上場を視野に入れているケースは、注意を払った方がよいでしょう。また、会社に譲渡済みであったとしても、相当な対価が支払われたか否かも、重要です。

2011年02月17日 06:30|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス||コメントはまだありません

リーダーのタイプ

昨日のエッセイ「90年代のITベンチャー」で御紹介させていただいた『ネット起業!あのバカにやらせてみよう』の中に、トップのタイプについての記述があります。

真田は後の不遇時代に『コンピュータ帝国の興亡』(ロバート・X・クリンジリー著、アスキー刊)という本に出会う。この本の中に、「企業の成長段階に応じてトップは三種類に分かれる」という分析があった。
第一段階は「コマンド―」である。コマンド―は落下傘で音もなく忍び寄って鋭利なナイフで敵の咽をかき切り進入路を切り拓く。第二段階は正規軍で、隊列を整え命令一下、圧倒的物量で敵を制圧してしまう。大きな斧で相手をなぎ倒してしまうのだ。こうした正規軍のトップは技術的知識を持った将軍でなければならない。第三段階として官僚がやってきて軍政を布く。そうなってくるとコマンド―は居場所がなくなるので、次の戦地を求めて放浪の旅に出るというのである。ごく稀に、企業の成長に合わせて コマンド― → 将軍 → 官僚 と変質していく優れた経営者がいる。(『ネット起業!あのバカにやらせてみよう』29頁)

実は、この手のリーダーのタイプ分析は、ほかにも多くの手法や分類方法があります。(例えば、ちきりんさんの分析(ちきりんの日記「変節点」)も面白いですし、シンプルに年商5億円の「壁」とおっしゃる方もいます。)

ただ、この「コマンド― → 将軍 → 官僚」という分類は、シンプルですので、理解しやすいように思います。

起業を志す方、経営者や事業部門のリーダーの方は、ご自身がどのようなタイプかを考えていただけると、良い経営チームの形成していく上で、参考になるのではないでしょうか。自らを企業の成長とともに、変えるということを目指すことも考えられますが、チームで、コマンド―タイプと将軍・官僚タイプを兼ね備えた人材が両輪でやっていくことで、上手く回るケースも少なくないように感じます(参考「営業出身の社長が陥りがちな罠」)。

私個人としても、多くの良い経営チームが、よいビジョン・志を持って、起業に取り組んで欲しいと願っております。

2011年01月27日 18:00|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス||コメントはまだありません

90年代のITベンチャー

90年代というと、もう今から10年以上前です。

2000年10月に出版されたこの本は、日本のインターネットビジネスの黎明期を、明快に記しています。その本は、『ネット起業!あのバカにやらせてみよう』といいます。

今一度、起業しようと考えている方や、いまITベンチャーに携わっている方もお読みいただければと思います。本を購入するのが面倒という方は、ネット上でも、だいたい同じ内容のものが読めます。

この本に出てくる主な登場人物は、次のとおりです。参考として、括弧内に、判明した範囲での現在のお立場を記載いたしました。主にネット上から情報を得ておりますので、異なっていたら、ご容赦願います。

真田哲弥さん (KLab株式会社代表取締役社長)
堀主知ロバートさん (株式会社サイバード代表取締役社長 株式会社サイバードホールディングス代表取締役社長兼グループCEO)
板倉雄一郎さん (株式会社板倉雄一郎事務所代表取締役社長)
松永真理さん (株式会社バンダイ社外取締役)
國重惇史さん (楽天証券株式会社非常勤取締役)
堀義人さん (グロービス・グループ代表)
小池聡さん (3Di株式会社代表取締役社長)
西川潔さん (ngi group株式会社取締役)
松山太河さん
夏野剛さん (慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授)
(同書の冒頭の登場順)

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉があります。少なくとも、ネットやITでビジネスを興そうと考えている方や、携わっておられる方はご一読していただくことをお勧めします。勿論、読み物としても面白いですし、起業家がどのようなタイプの人間で、起業家の浮き沈みとはどのようなものであるかが、良くわかる本です。

同書は、10年前に出版されています。この方々の境遇や、勢いのある会社は、この10年で大きく変化したと考えますが、一方で、ネットビジネスの本質は、あまり変わっていないように思います。その意味で、ネットビジネスのモデル・原型は、だいたいこの時代にあったといえるかもしれませんし、次の時代のビジネスのアイディアが出てくるかもしれません。

2011年01月26日 06:30|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス||コメントはまだありません

今月の重要判例(追加)

昨日も重要判例がありましたので、追加です。

3 「ロクラクII」事件最高裁判決

平成21(受)788 著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件 平成23年01月20日 最高裁判所第一小法廷 判決

原文はこちら(PDFファイル)

放送番組等を録画する機械は会社側において、録画の指示を利用者がするというサービスについて、私的使用を目的とする適法な複製なのか、違法な複製なのかが争われた事案です。すなわち、複製の主体は、録画する機械を管理している会社か、録画の指示を出している利用者かという点が争点です。

この点、本判決では以下のように判示しています。

放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において, テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」とい う。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が 自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容, 程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービ ス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても, 放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。
以上によれば,本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等を認定することなく,親機ロクラクが被上告人の管理,支配する場所に設置されていたとして も本件番組等の複製をしているのは被上告人とはいえないとして上告人らの請求を 棄却した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」

また、次の金築誠志裁判官の補足意見も重要でしょう。

「親機の管理が持つ独自の社会的,経済的意義を軽視するのは相当ではない。本件システムを,単なる私的使用の集積とみることは,実態に沿わないものといわざるを得ない。」
「著作権法21条以下に規定された「複製」,「上演」,「展示」,「頒布」等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れ た解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって,このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。」

最後の補足意見は、結局このサービスは、海外留学中の息子が母親に「今度の○○っていうテレビ番組とっておいて。」「そのテレビ番組をDVDにして送ってよ。」というのとは、社会的、経済的に意味が違うでしょうということを言っているのだと思います。それは、わざわざ利用者のために、複製を容易にするための環境等を整備した上、番組情報の入力等の複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしているという実態があるからということになります。

この判決についても、昨日の「2」の「まねきTV」事件最高裁判決とともに、著作権が関連するサービスに大きな影響を与えるでしょう。判決に対する賛否も両方あり、これから喧々諤々の議論がなされると予想されます。

今月の重要判例

1月も、もう中旬から下旬に差し掛かろうとしています。

昨晩は、体調が少し優れませんでしたので、今朝の更新ができませんでした。今日は、今月出された2つの最高裁判例を紹介します。いずれも、実務に与える影響は大きいと考えます。

1 破産管財人は、労働債権について、支払いの際に源泉徴収義務を負わないとする最高裁判決

平成20(行ツ)236 源泉徴収納付義務不存在確認請求事件 平成23年01月14日 最高裁判所第二小法廷 判決

原文はこちら(PDF)

「破産管財人は,破産手続を適正かつ公平に遂行するために,破産者から独立した地位を与えられて,法令上定められた職務の遂行に当たる者であり,破産者が雇用していた労働者との間において,破産宣告前の雇用関係に関し直接の債権債務関係に立つものではなく,破産債権である上記雇用関係に基づく退職手当等の債権に対して配当をする場合も,これを破産手続上の職務の遂行として行うのであるから,このような破産管財人と上記労働者との間に,使用者と労働者との関係に準ずるような特に密接な関係があるということはできない。また,破産管財人は,破産財団の管理処分権を破産者から承継するが(旧破産法7条),破産宣告前の雇用関係に基づく退職手当等の支払に関し,その支払の際に所得税の源泉徴収をすべき者としての地位を破産者から当然に承継すると解すべき法令上の根拠は存しない。そうすると,破産管財人は,上記退職手当等につき,所得税法199条にいう「支払をする者」に含まれず,破産債権である上記退職手当等の債権に対する配当の際にその退職手当等について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負うものではないと解するのが相当である。

このほか、管財人は、管財人報酬については、源泉徴収義務がある旨、破産管財人の報酬に係る源泉所得税の債権は財団債権に当たる旨を判示しています。

「破産管財人の報酬は,旧破産法47条3号にいう「破産財団ノ管理,換価及配当ニ関スル費用」に含まれ(最高裁昭和40年(オ)第1467号同45年10月30日第二小法廷判決・民集24巻11号1667頁参照),破産財団を責任財産として,破産管財人が,自ら行った管財業務の対価として,自らその支払をしてこれを受けるのであるから,弁護士である破産管財人は,その報酬につき,所得税法204条1項にいう「支払をする者」に当たり,同項2号の規定に基づき,自らの報酬の支払の際にその報酬について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負うと解するのが相当である。

そして,破産管財人の報酬は,破産手続の遂行のために必要な費用であり,それ自体が破産財団の管理の上で当然支出を要する経費に属するものであるから,その支払の際に破産管財人が控除した源泉所得税の納付義務は,破産債権者において共益的な支出として共同負担するのが相当である。したがって,弁護士である破産管財人の報酬に係る源泉所得税の債権は,旧破産法47条2号ただし書にいう「破産財団ニ関シテ生シタルモノ」として,財団債権に当たるというべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第6号同43年10月8日第三小法廷判決・民集22巻10号2093頁,最高裁昭和59年(行ツ)第333号同62年4月21日第三小法廷判決・民集41巻3号329頁参照)。また,不納付加算税の債権も,本税である源泉所得税の債権に附帯して生ずるものであるから,旧破産法の下において,財団債権に当たると解される(前掲最高裁昭和62年4月21日第三小法廷判決参照)。」

この判決は、管財実務に大きな影響を与えるでしょう。管財人にとっては、基本的に、従来の実務の取扱いが認められたことになり、良かったのではないでしょうか。なお、この判決は、一般の企業法務には、全く関係ないといって、差し支えないと考えます。

2 「まねきTV」事件最高裁判決

平成21(受)653 著作権侵害差止等請求事件 平成23年01月18日 最高裁判所第三小法廷 判決

原文はこちら

送信可能化権については、以下のように判示しています。

「送信可能化とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力するなど,著作権法2条1項9号の5イ又はロ所定の方法により自動公衆送信し得るようにする行為をいい,自動公衆送信装置とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され,又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう(著作権法2条1項9号の5)。

自動公衆送信は,公衆送信の一態様であり(同項9号の4),公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。

そして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。

これを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能化に当たるというべきである。」

そして、公衆送信権侵害については、以下のように判示しています。

「本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記(1)ウのとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。」

この判決がインターネットビジネスについて、どこまでがこの判決の射程となるのかは分析もしておりませんし、不明ですので、今回は紹介のみにとどめさせていただきます。ただ、書籍配信ビジネスや動画配信ビジネスについても影響する可能性は否定できません。この判決については、これから評釈が多く出てくると思いますので、それらにも注目した方がよいでしょう。

何もしないリスク

多くのベンチャー企業の経営者の話を聞かせていただくと、「何もしない」ことによるリスクは大きいことをよく耳にします。

変化の激しい昨今のビジネス環境においては、「挑戦するリスク」より「何もしないリスク」の方がずっと大きいという話です。

例えば、一橋大学イノベーション研究センターのセンター長米倉誠一郎教授と板倉雄一郎さんの共著である『敗者復活の経営学
』という本には、「チャレンジを続ける人だけが成功する」(表紙)とか、「変化が激しいいま、「挑戦するリスク」より「何もしないリスク」の方がずっと大きい!!」(帯)という文言が並んでいます。

このような視点でネットで検索していると、農業の世界でも、同じ文言で議論されている方がいました。

涌井代表のブログ『農業維新』 : 「『何もしないリスク』と『挑戦するリスク』」
(中略)
 一昨年のリーマンショック後の経済不況を受け、協会の主力業務である白米営業をやめて米の加工食品の営業に特化した決断が今の協会の原点だ。

 この一年間、協会がそれまでの営業を続けていたらどうなっていたのだろうか。今とは全く違う協会の姿があるに違いない。

 人生にも会社にも、常に分岐点がある。そして、常にルビコン川を渡る決断をする時がある。その決断をするか否かによって、それぞれの人生や会社の方向性が全く異なる。人間も会社も、「何もしないリスク」と「挑戦するリスク」のどちらかを選択する時には、「挑戦するリスク」を選択したいものだ。

 国の新しい農業政策も、農家に対して選択を求めている。国の政策に参加することもしないことも自由ですよ、という選択である。

 農家は、まさに、新しい農業政策に「参加しないリスク」と「参加するリスク」を選択する時が来たのではないか。
(中略)
(引用終わり)

正直なところ、「何もしないリスク」というのは、激しく移り変わる業界(IT業界等)だけに、主に適用されるものであり、普通は、何もしない方が安全だろうと思っていたのですが、必ずしもそうではないようです。農業の世界でも、その他の世界でも、「何もしないリスク」は、想像以上に大きいのかもしれません。

勿論、ここでいう「挑戦する」とは、無謀な挑戦ではなく、よく考え、可能な限りリスクを下げる努力をした中でのチャレンジを意味し、無謀な経営や法的倫理的な挑戦をする経営を意味するわけではありません。

ところで、このビジネスの世界では、ある種、当たり前の「何もしないリスク」が「挑戦するリスク」より大きいという考え方は、法律家の取締役の責任についての判断枠組みに馴染みにくいのかもしれません。

一般に、取締役に対して作為義務(何かをすべき義務)が認められること可能性はそれほど高くなく、それよりは、無謀な買収等により会社に損害を与えた場合に、取締役が責任追及されることの方が多いのが現実です。昨年7月15日のアパマンショップHD事件最高裁判決(PDFファイル)は、まさにその事例であろうと思います。(勿論、従業員や第三者等の身体・生命・財産等の権利に対する侵害が生じることが予想可能であったり、現に発生している場合等には、相応の安全配慮義務が発生する等、取締役が「何もしない」ことによって、責任が生じる可能性は十分あります。)

昨年のエントリー「経営判断原則に関する最高裁判決について」では、この点について、少し検討しました。会社法のスタンスとしては、経営者の誠実な挑戦については、できる限り自由にできるようにして、「挑戦する」ことに萎縮効果が及ばないように、そして、挑戦することに取締役個人的に課され得る法的なリスクが大きいのであれば、「何もしない」方がいいという結論になってしまわないように、十分配慮する必要があるように思います。

この点、弁護士は、多くの場合、挑戦した場合のリスクをお伝えすることが、どうしても多くなりがちであり、その意味では経営者に疎まれがちなところがあります。ただ、多くの企業法務の弁護士は、それはそれとして、よりリーガルリスクが低い形で、挑戦し続けてほしいと思っていることも確かであり、そのあたりの対話は、これからも、まだまだ弁護士サイドも経営者サイドも工夫する余地があるのかもしれません。

2011年01月19日 06:30|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス, 企業法務||コメントはまだありません

売掛の管理と社長の仕事

今回は、ほとんどの人にとって、「何をいまさら」と思うであろう話をしたいと思います。

それは、中小企業やベンチャー企業においては、売上の管理は、社長の仕事ということです。

これは、多くの社長にとって、当たり前の話でしょう。なぜなら、かなりの数の中小企業やベンチャー企業では、社長が最大の営業マンであり、社長自身が、請求書や回収状況をチェックし、売掛先の状態の把握、顧客の性質や割合、割引の有無や内容、取引が生じることとなったきっかけ、売掛金回収期間、回収できなかった売掛の割合やその理由等を把握しているからです。

しかし、時折、社長が、営業や売掛の管理に関する業務について全くの人まかせという会社に出会います。社長が大企業の研究・開発部門出身である場合や、創業者の二代目である場合に、比較的多いように思います(勿論、そうでない方も多いです。)。以下の売掛にかかる業務について、どこまで把握しているでしょうか。

1 請求書の内容を把握しているか。
2 顧客リストをいつでも確認できる状態にあるか。
3 主な売上は、どの顧客、どの商品、サービスから生じたものであるか、その他の売掛に関する情報を把握できているか。
4 請求書の内容、契約の内容、会計上の処理が一致しているか。
5 不履行となったままの売掛は、どのように処理するか、対処方法が明確になっているか。
6 回収作業が放置されたままの未回収債権はないか。
7 不履行となった債権がある場合、その原因を分析し、契約締結時の業務にフィードバックできているか。

上の3つは、当たり前の業務です。創業から、かなり長い間、全ての請求書に社長が目を通している会社も少なくないでしょう。決して、社長が人任せにしてはならない業務の1つだと思います。

4は、特に、代理店契約等が絡んでいる場合に、生じがちです。代理店に仲介業務を依頼しているのか、卸をしているのかが異なると、法的な意味も、会計上の処理も全く異なります。しかし、意外と区別されていないことが少なくありません。代理店に仲介業務を依頼している場合は、最終顧客(代理店に紹介してもらい、契約することとなった顧客)との間に直接契約が成立しているはずです。法的責任(物を引き渡す責任や瑕疵担保責任等)も当該最終顧客に対し直接することになります。代理店には、仲介手数料のみが支払われるのが通常であり、お金の流れが代理店経由であっても、売上は、最終顧客との間で発生した売上が全額計上されるはずです。一方、代理店に物を卸している場合は、その代理店との間の契約しか成立せず、最終顧客との間で契約は成立しません(別途、保守契約や保証契約がある場合は、別です。)。この場合、卸価格が売上となるはずです。

5についても、決まっていないことが少なくないように感じます。特に、未回収の兆しがあれば、早め早めの行動が肝要です。早目に電話やファックス、メール等で、督促するのが基本であり、それでも支払われないようであれば、関連する資料を全て持参の上、弁護士等の専門家に依頼します。そして、回収の可能性を踏まえて、その金額、相手方の性質、会社の方針(コストに見合わない回収はしない、費用倒れになっても会社の評価の問題があるので徹底的に回収する等)等に応じて、最終的な処分方法を決めます。具体的には、内容証明郵便による請求、支払督促、訴訟提起、担保の実行等が考えられます。

6については、放置していることによる様々な問題を知る必要があります。税務上、未回収債権について費用化できず、税務上の負担が大きくなる点や、利益率を押し下げる点をよく理解しておく必要があるでしょう。利益率5%の会社での100万円の未回収は、さらに2000万円の売上に匹敵します。2000万円の売上確保の努力が100万円の未回収によって、不意になるのです。

7も重要です。未回収に陥ることを防ぐために、どうすればよいか、フィードバックする必要があります。もちろんビジネスモデル、特に入金のタイミングや方法によっても、大きく異なりますので、一概には言えません。常に、現金で回収できるコンビニエンスストアであれば、契約が成立したものの未回収となることはほとんどあり得ませんが、万引きを防ぐ手だてを講じることは重要でしょう。一方、webサイト構築業務等であれば、先に半額もらうことや、契約書又は契約書に準じるような書面やメールの取得等、証拠化の方法を考えるべきでしょう。契約書や発注書の見直し、担保取得の可能性、与信管理に応じた対応基準の策定、前金や作業途中での入金等の方法も検討するべきでしょう。

これらの内容は、冒頭で申し上げたように、ほとんどの人にとって、「何をいまさら」ではあると思いますが、会社経営にとっては非常に基本的であり、重要な内容です。また、既に、売掛の管理を励行されている社長や役員の皆様も、是非、見直すきっかけを作っていくと良いかと思います。

なお、実際に、売掛の未回収が生じた場合や、回収できない債権の額を減らしたい、契約書や契約締結の過程を見直したいという方は、当事務所か、企業法務に詳しい弁護士まで、ご相談ください。

2011年01月17日 06:30|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス, 企業法務||コメントはまだありません

ビジネスモデルの落とし穴 弁護士法72条

ベンチャー企業に限らず、企業のビジネスモデルは、違法なものであってはならないことはいうまでもありません。ただ、違法かどうかの判断は、直感だけでは難しいのも事実です。今回は、ベンチャー企業でもしばしば問題となる弁護士法72条を取り上げます。

弁護士法72条というのは、次のような条文です。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条  弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

少しわかりにくい条文かもしれません。弁護士資格なく、報酬を得る目的で、法律事件に関して、法律事務を取り扱ったり、これらの紹介をしたりすることを禁止するということです。

昨年、賃貸物件の立ち退き交渉について、弁護士以外の者が行った場合に、この条文に抵触するか否かが問題となった事案(刑事事件)について、最高裁の決定がありました(最高裁平成22年7月20日第1小法廷決定(判例時報2093号161頁))。

この事件は、土地家屋の売買業等を営む被告人A社の代表取締役である被告人Bが、同社の義務に関し、C社から、C社が所有権を取得したビルについて、74名の賃借人らとの間で、賃貸借契約の合意解除に向けた契約締結交渉を行って合意解除契約を締結した上で各室を明け渡させるなどの業務を行うことの委託を受けて、これを受任したという事件です。

この事件について、最高裁は、次のように判示しています。

被告人らは、多数の賃借人が存在する本件ビルを解体するため全賃借人の立ち退きの実現を図るという業務を、報酬と立ち退き料等の経費を割合を明示することなく一括して受領し受託したものであるところ、このような業務は、賃貸借契約期間中で、現にそれぞれの業務を行っており、立ち退く意向を有していなかった賃借人らに対し、専ら賃貸人側の都合で、同契約の合意解除と明渡しの実現を図るべく交渉するというものであって、立ち退き合意の成否、立ち退きの時期、立ち退き料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るものであったことは明らかであり、弁護士法七二条にいう「その他一般の法律事件」に関するものであったというべきである。そして、被告人らは、報酬を得る目的で、業として、上記のような事件に関し、賃借人らとの間に生ずる法的紛議を解決するための法律事務の委託を受けて、前記のように賃借人らに不安や不快感を与えるような振る舞いもしながら、これを取り扱ったのであり、被告人らの行為につき弁護士法七二条違反の罪の成立を認めた原判断は相当である。(最高裁平成22年7月20日第1小法廷決定(判例時報2093号161頁)より引用。下線は筆者)

この判決には、事件性の要否について、重要な判示があります。「その他一般の法律事件」といえるためには、従来、争いや疑義が具体化又は顕在化していることが必要とする事件性必要説と、そこまで事件化していることを要するものではないという事件性不要説がありました。本件では、具体的事情を詳細に検討した上で、「交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの」は、「その他一般の法律事件」に含まれると判断されています。

この判断が従来の事件性必要説に属するのかはよくわかりませんが、過去の下級審では「争訟ないし紛議のおそれのあるもの」も「その他一般の法律事件」に含むと解するものがあったところ、今回の判断では、少し限定した表現として、「交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの」という基準を用いているように考えられます。今後は、この判決が参照されることを多いであろうと考えます。

ビジネスモデルが違法又は違法である可能性が高い場合(いわゆるグレーの場合)、上場(IPO)は勿論、バイアウトも難しいです。また、本件のように、刑事事件となると、逮捕・起訴された上で、有罪判決を受ける可能性さえあります。確かに、新規事業は、従来なかった事業であるため、開示しした時点では、違法であるかが不明なケースは決して少なくありません。しかし、予め弁護士に相談の上、少なくとも、どの法律に反する可能性があるのか、どの程度、違法となる可能性があるのか、違法と判断された場合のペナルティー等は把握していて絶対に損はありませんので、早め早めの相談をお勧めします。