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ベンチャー法務の部屋

「固定残業代」に関連する判例(最高裁平成29年7月7日小法廷判決)の紹介

今回は、「固定残業代」に関連する判例として、最高裁平成29年7月7日小法廷判決を紹介します。

 

1 概説

経営者の方々から、「割増賃金を、予め固定額で基本給や諸手当に含める方法で支払うことに問題はありませんか。」という相談が寄せられることがあります。今回紹介する判例は、時間外労働に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意をしていた医師が、時間外労働に対する割増賃金並びにこれに係る付加金の支払等を求めた事案です。

 

本判決は、
①通常の労働時間に対応する賃金部分と割増賃金部分とを判別できること、
②その上で、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額の額を下回らない場合には、
労働基準法37条に定める割増賃金の支払いがされたと認められる旨示しました。
(当然、①の通常の労働時間に対応する賃金部分が最低賃金を下回らないことも必要となります。)

 

経営者の方々としては、本件のように、「時間外労働に対する割増賃金を年俸に含める」という合意をしていたからといって安心できないという点に注意が必要です。

 

それでは、固定残業代の制度を導入する場合、具体的にどのような定めをおけばよいのでしょうか。以下、参考になる条項案を示します。

 

第●条(固定残業手当)
A:基本給には、第〇条に定める時間外勤務手当の●時間相当分(割増賃金計算の基礎となる時給単価×1.25×●)が含まれるものとする。
B:基本給のうち、●万円を、第〇条に定める時間外勤務手当として支給する。

 

この規定は、基本給に固定残業代を含める場合の規定です。
Aのように時間を表示するパターン、Bのように額を表示するパターンが考えられます。

 

 

第●条(固定残業手当)
・□□手当は、第〇条に定める時間外勤務手当の●時間相当分(割増賃金計算の基礎となる時給単価×1.25×●)が含まれるものとする。
・□□手当は、その全額を第〇条に定める時間外勤務手当として支給する。

 

この規定は、固定残業代を「業務手当」等の名目で基本給とは別途支給する場合の規定です。同じく、時間を表示するパターン、額を表示するパターンが考えられます。

 

 

第●条(固定残業手当)
1 従業員には時間外勤務手当の支払いに充てるものとして毎月定額の固定残業手当を支給することがある。
2 会社が固定残業手当を支給するときは、1ヶ月の時間外勤務手当の金額が固定残業手当の金額を超えた場合に限り、超過額を別に支給する。また、深夜割増賃金、休日割増賃金が発生したときは、固定残業手当と別にこれを支給する。

 

この規定は、従業員によって固定残業代が異なる場合に用いる規定です。
固定残業手当として支給する場合のルールを明確に規定しています。

 

判例によると、このような規定を設けた上で、給与明細を確認したときに、通常の労働時間に対応する賃金部分と割増賃金部分とを判別できることが必要とされています。したがって、タイムカード等による労働時間の管理が必要となることは当然の前提となります。

 

それでは、判例の紹介に移ります。

 

2 事案の概要
医師であるXは、医療法人Yに雇用されており、その年俸は1700万円とされていました。XY間の雇用契約においては、時間外勤務に対する給与はYの医師時間外勤務給与規程(以下「本件時間外規程」といいます。)の定めによるとされており、本件時間外規程は、時間外手当の対象となる業務は、原則として、病院収入に直接貢献する業務又は必要不可欠な緊急業務に限ること、通常業務の延長とみなされる時間外業務は、時間外手当の対象とならないこと等を定めていました。また、XY間の雇用契約においては、本件時間外規程に基づき支払われるもの以外の時間外労働等に対する割増賃金については、年俸に含まれることが合意されていましたが、その年俸のうち、いくらが時間外労働等に対する割増賃金に当たるのかは明らかにされていませんでした。

 

本件は、Yから解雇処分を受けたXが、解雇の無効を争うとともに、時間外労働等に対する割増賃金並びにこれに係る付加金の支払等を求めた事案です。以下、本記事においては、割増賃金の部分についてのみ述べます。

 

3 争点
時間外割増賃金が年俸に含まれているか否か(年俸の支払いによって時間外労働等に対する割増賃金が支払われたと言えるか。)。

 

4 裁判所の判断
まず、割増賃金を予め基本給等に含めて支払うという方法自体について、労働基準法37条は、労働基準法37条並びに政令及び厚生労働省令の関係規定(以下「労働基準法37条等」という。)に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまると解され、労働者に支払われる基本給や諸手当(以下「基本給等」という。)にあらかじめ含める方法により割増賃金を支払うという方法自体が直ちに同条に反するものではない、と述べ、その方法自体を直ちに違法とは判断しませんでした。

 

もっとも、他方、割増賃金を予め基本給等に含める方法で支払う場合において、使用者が労働者に対して労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するためには、その判断の前提として、労働契約における基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である、としました。

 

その上で、上記割増賃金に当たる部分の金額が労働基準法37条等により定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、使用者がその差額を労働者に支払う義務を負うというべきである、としました。

 

そして、本件においては、XとYの間に、本件時間外規程に基づき支払われるもの以外の時間外労働等に対する割増賃金については、年俸1700万円に含まれるという合意があったものの、このうち時間外労働に対する割増賃金に当たる部分は明らかにされていなかったことから、Xに支払われた年俸について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない、したがって、年俸の支払いによってXの時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということはできない、としました。

 

5 本判決について
(1) 使用者が時間外・休日労働の規定(労働基準法33条1項2項・36条)によって労働時間を延長し、もしくは休日に労働させた場合、または午後10時から午前5時までの間の深夜に労働させた場合においては、その時間またはその日の労働については、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額に一定の割増率を乗じた割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条)(菅野和夫「労働法[第11版補正版]」492頁~493頁)。

 

(2) もっとも、割増賃金の規定が使用者に命じているのは、時間外・休日・深夜労働に対し同規定の基準を満たす一定額以上の割増賃金を支払うことであるので、そのような額の割増賃金が支払われる限りは、法所定の計算方法をそのまま用いなくてもよいとされています。(菅野和夫「労働法[第11版補正版]」498頁)

 

実務でも、法所定の計算方法をそのまま用いずに割増賃金について「固定残業代」として支払う方法が採用される場合があります。固定残業代としては、①時間外労働等に対して定額の手当を支給する定額手当制と、②基本給の中に割増賃金を組み込んで支給する定額給制の方法が考えられます。この点については、「労働者に対して実際に支払われた割増賃金が法所定の計算による割増賃金を下回らない場合には、労働基準法37条違反とならない」とされていることから(昭和24年1月28日基収3947号)、割増賃金不払いの法違反も成立しないこととなります。

 

そして、「労働者に対して実際に支払われた割増賃金が法所定の計算による割増賃金を下回らない」か否かを判断するためには、①であれば、基本給と割増賃金に相当する部分を、②であれば、定額給のうち割増賃金に相当する部分とそれ以外の部分を明確に区別しておかなければならないとされています。さらに、①②とも、割増賃金に相当する額が、労働基準法37条所定の計算方法に基づく割増賃金を満たしている必要があります。

 

(3) また、年俸制と割増賃金との関係については、「年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区別することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は、労働基準法第37条に違反しない」とされています(平成12年3月8日基収第78号)。

 

(4) 本判決で示された内容は、本判決が引用する過去の最高裁判例(最二小判平成6年6月13日、最一小判平成24年3月8日、最三小判平成29年2月28日)において明らかにされてきた理解に沿うものです。また、本判決の特徴としては、労働者の労働の特徴や高額の報酬額を問題とせずに、専ら、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区別することができるか、という観点から年俸の中に時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金が含まれていたかを判断している点が挙げられるとされています。

 

このように、割増賃金について、労働基準法37条所定の計算によらずに固定残業代として支払うことが許されるか、という問題については最高裁として上記の一定の基準が示されていることが認められます。

 

今後、固定残業代の制度を導入する場合には、本判決及び本判決が引用する最高裁判例が示す基準、すなわち、①通常の労働時間に対応する賃金部分と割増賃金部分とを判別できること、②その上で、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額の額を下回らないかを検討して、労働基準法37条に定める割増賃金の支払いがされたといえるか否かを判断する、という基準にご留意頂く必要があります。

 

(文責:三村雅一)

2018年04月13日 11:44|カテゴリー:企業法務, 未分類||コメントはまだありません

定型約款に関する民法改正(2)

前回は、改正民法における定型約款に関する規定の概要についてご説明しました。今回からは、その各論について紹介します。

 

改正民法第548条の2は第1項で、定型取引合意をした者は、次に掲げる場合には、定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなす、として、約款の内容が契約内容とみなされるための要件について定めています。

 

ここで、

(1)どういった約款が改正民法の規定する約款に関するルールの適用対象となるのか、

(2)どのような場合に、契約当事者の一方が作成した約款を契約内容とみなすことができるのか、が問題となります。

 

(1)について

まず、改正民法は、新たに設けられる約款規定の対象となる約款=定型約款について、「①定型取引において、②契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」と定義しています。

 

①について

改正民法は、「定型取引」について、

ア ある特定の者が不特定多数の者を相手として行う取引であり、かつ、

イ 内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの

と定めています。

 

アについては、相手の個性に着目しない取引であると説明されており、労働契約等、相手の個性に着目した取引はこのアの要件を満たさないとされています(部会資料86-2 1頁)。

 

イについては、一方当事者において契約内容を定めることの合理性が一般的に認められている取引でなければならないとされています。すなわち、多数の人々にとって有用なサービスが平等な基準で提供される場合、サービスの性質上、多数の人々にとって平等な基準で提供されることが要請される場合など、具体的には、銀行取引における預金規定などがこれに当たるとされます。

 

②について

一方当事者から示された契約条項の内容を他方当事者が十分に吟味することが通常とされる場合には、この要件を満たさないことになります。

 

したがって、事業者間取引において利用される契約書のひな型や約款については、相手方の個性に着目する場合には①アの要件を欠き、交渉力の格差によって契約内容が画一的なものになっている場合には①イの要件を欠き、そのひな型をたたき台として交渉が行われ、条項の修正が行われることが想定されている場合にはこの②の要件を欠くことから、事業者間取引において利用される契約書のひな型や約款については、基本的には定型約款の定義には該当しない、とされています。

 

(2)について

改正民法第548条の2第1項は、(1)①の定型取引を行うことを合意した者が、

①定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき

②定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき

に、定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなすことができる旨定めています。

 

まず、定型取引の合意とは、あくまで定型取引を行うことの合意であり、約款の内容を了解して行う契約の意思までは求められていません。

 

①について

①の合意については、定型約款によることの合意があれば足り、約款の個別の条項の内容を了解することまでは求められていません。

 

②について

①と同じく、定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していれば足り、定款を示された相手方が、個別の約款条項の内容を了解することまでは求められていません。

 

このように、改正民法では定型約款が契約内容になるかどうか、という点について、契約の相手方に対して定型約款の内容の開示や認識可能性を要件としていません。もっとも、次回紹介する第548条の3の規定が存在することに照らしても、実務上は、相手方に対して約款の内容が示されることなく、上記①②の合意がなされることはないと考えられます。

 

なお、取引自体の公共性が高く、かつ、定型約款による契約の補充の必要性が高いもの、すなわち、鉄道・軌道・バス等による旅客の運送に係る取引、高速道路等の通行に係る取引、電気通信役務の提供に係る取引その他の一切の取引については、定型約款を準備した者が定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ「公表」していれば、「表示」までしていなくとも、当事者がその定型約款の個別の条項について合意をしたものとみなす旨の特別規定を設けています(鉄道営業法第18条ノ2、軌道法第27条ノ2、航空法第134条の3、道路運送法第87条、海上運送法第32条の2、道路整備特別措置法第55条の2、電気通信事業法第167条の2)。

 

上記の通り、改正民法第548条の2第1項に定められた要件を満たした場合、定型約款の個別条項が契約内容となります。もっとも、同条第2項では、第1項の要件を満たした約款条項であっても契約の内容にはならない場合について規定しています。

 

すなわち、

(1)相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項

(2)その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして、第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの

については、合意をしなかったものとみなす旨定められています。

 

本条項の趣旨は、定型約款が一方的に準備されるものであることから、条項内容の合理性が担保されておらず、約款取引を巡るトラブル事例も多いという約款にまつわる問題に照らし、約款を示される相手方を保護することにあります。

 

なお、条項内容自体が不当条項に該当しない場合であっても、同条項における重要な事項について相手方にとって予測し難い内容が含まれているような場合には、その内容を容易に知り得る措置を講じなければ、信義則に反することとなる蓋然性が高いとされています。このように、本条項は、不意打ち条項規制と不当条項規制に関する規定を一本化した規定と言われています。

 

なお、消費者契約において、「定型約款」が使用され、同約款内に不当条項が含まれている場合、消費者は事業者に対し、改正民法第548条の2第2項に基づく主張と、消費者契約法第8条~10条に基づく主張を選択的に行使できることになります。

 

以上の通り、一般的に「約款」と呼ばれているものの全てが改正民法の定型約款に関する規定の対象となるわけではない点には注意が必要であり、個別のケースごとに「定型約款」の要件を満たすかどうかを検討しなければなりません。また、改正民法第548条の2第1項第2号の「表示」とは具体的にどの程度のことをすればよいのか、どのような条項が改正民法第548条の2第2項の定める条項に該当するかなど、判断が困難な部分もありますので、この改正を機に、いわゆる約款を用いた取引を行われている事業者の方々は、一度、弁護士にご相談されることをおすすめ致します。

以上

2018年02月19日 10:58|カテゴリー:企業法務||コメントはまだありません

代表取締役の全員が日本に住所を有しない内国株式会社も登記可能になりました

 
法務省は、平成27年3月16日付けで、下記のとおり、取扱いを変更しています。

 「昭和59年9月26日民四第4974号民事局第四課長回答及び昭和60年3月11日民四第1480号民事局第四課長回答の取扱いを廃止し,本日以降,代表取締役の全員が日本に住所を有しない内国株式会社の設立の登記及びその代表取締役の重任若しくは就任の登記について,申請を受理する取扱いとします。」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00086.html

 従前、代表取締役のうち、少なくとも1名の住所は日本になければ登記申請は受理されませんでした。また、取締役会設置会社以外の会社の場合、取締役の少なくとも1名の住所は日本になければ登記申請は受理されませんでした。

 上記取扱いの変更により、代表取締役の全員が外国に居住していても、登記可能になるものと思われます。なお、取締役会設置会社以外の会社の場合、取締役の全員が外国に居住している場合の登記の取扱いは、上記の取扱いの変更と同様に変更されるかは、明確ではありません(私が変更を発見できていないだけかもしれません)。ただ、同様に変更される可能性はあると思います。

 したがって、海外在住者が代表取締役という内国法人が、事実上、許されることになりました。なお、代表取締役の氏名・住所を登記しなければならない点(会社法第911条第3項第14号)は変わりませんので、登記の添付書面には、当該代表取締役の住所に関する宣誓供述書又は在留証明書が必要になると思われます(実際の登記実務については、ご依頼の弁護士若しくは司法書士、又は法務局にご確認下さい。)。

 また、外国会社が日本において取引を継続しようとするときは、日本における代表者を定めなければならず、この場合に、その日本における代表者の一人以上は、日本に住所を有するものでなければならない点(会社法第817条第1項)に変更はありませんので、注意が必要です。

2015年03月19日 11:23|カテゴリー:企業法務||コメントはまだありません

会社法の監査役設置会社と平成26年会社法改正

非常に久しぶりの更新です。
今回は、平成26年会社法(平成26年6月27日公布(法律第90号))改正に関して、ややマイナーではあるものの、会社法務上、見逃せない点を取り上げます。

会社法の監査役設置会社とは、会社法第2条第9号により、監査役の監査の範囲が会計に関するものに限定されていない監査役を置く株式会社をいいます。

すなわち、監査役がいても、「監査役設置会社」ではない株式会社が存在します。
特に、資本金の額が1億円以下の小会社で非公開会社の監査役は、整備法(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)第53条の規定により、定款を変更しない限り、定款に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定め(会社法第389条第1項)があるものとみなされます。

したがって、大多数の中小企業は、監査役がいたとしても、会社法の「監査役設置会社」ではない場合にあたることになります。

この点が、いわゆる株主代表訴訟を提起しようとする場合に問題になることがあります。
株主代表訴訟を提起しようとする株主は、まず、会社を代表する者(会社法第386条)に対し、提訴請求(責任追及等の訴えの提起の請求)する必要があり、この会社を代表する者を選択する場合に、問題となるのです。

会社法の監査役設置会社の場合、取締役に対する提訴の請求は、監査役宛に行うことになりますが、非監査役設置会社では、代表取締役(会社法第349条第4項)宛となります。非監査役設置会社では、代表取締役の責任を追及するために、その代表取締役宛に、提訴請求をするという、一見奇妙な請求をしなければなりません。

ところで、現在の会社法では、監査役を置く限り、(非監査役設置会社であっても)登記簿上「監査役設置会社」と記録され(会社法第911条第3項第17号)、登記事項証明書を見て「監査役設置会社」と記載されていても、会社法上の監査役設置会社ではないことがあり、混乱を招いていました。株主は、提訴請求前に正確な定款を確保しなければ、監査役設置会社であるか否かが判然としないのです。

今回の会社法改正で、会社法第911条第3項第17号イとして、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社であるときは、その旨」が登記簿に記録されることになりました。

したがって、今回の会社法改正後、株主代表訴訟を提起したいと考える株主は、会社の現在事項証明書等をチェックして、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定め」の有無をチェックすることで、監査役階設置会社であるかを知ることができるようになるはずです。

なお、広く影響があるという意味では、今回の会社法改正により、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある場合に、その株式会社は、その旨の登記申請をしなければなりません(会社法施行前から存在する会社で、会社法施行後、特にこの点について定款変更をしていない小会社は、原則として、登記義務が生じます。)。但し、改正法施行時に当該定めのある会社は、改正法施行後最初に監査役が就任し、又は退任するまでの間は、登記をすることを要しないとされています(改正法附則第22条第1項)。

2014年12月05日 16:12|カテゴリー:企業法務||コメントはまだありません

金融商品取引法の緊急差止命令


最新の判例時報平成23年4月21日号(No.2104)130頁以下に、金融商品取引法192条1項に基づき、金融商品取引法違反行為の差止めが命じられた事例(東京地裁平成22年11月26日決定)が掲載されています。

この事例は、「抜かずの宝刀」が抜かれたとして、話題になりました。

金融商品取引法192条1項とは、次のようなものです。

金融商品取引法
(裁判所の禁止又は停止命令)
第百九十二条  裁判所は、緊急の必要があり、かつ、公益及び投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣及び財務大臣の申立てにより、この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行い、又は行おうとする者に対し、その行為の禁止又は停止を命ずることができる。
2  裁判所は、前項の規定により発した命令を取り消し、又は変更することができる。
3  前二項の事件は、被申立人の住所地の地方裁判所の管轄とする。
4  第一項及び第二項の裁判については、非訟事件手続法 (明治三十一年法律第十四号)の定めるところによる。

この条文を読むと、金融商品取引法違反や同法に基づく命令違反の行為は、全て対象となるように読めます。政府が緊急性があり、且つ必要性及び相当性があると判断すれば、いつでも申し立てることができ、さらには、審理も短期間で行われることが想定されていると考えられますので、運用には非常に慎重で謙抑的であったと考えられます。

本件は、同法の緊急差止命令が発令された初めての事例ということで、注目を集めました。
本件では、「一種免許なく、募集又は私募の取扱い」→「財務局からの照会」→「金商法違反に該当する行為をしていたことを認める旨の回答」→「警告書」→「当該行為を中止する旨の回答」→「金商法違反の勧誘行為の継続」という流れの結果、緊急差止命令の申立てにいたったようです。

緊急差止命令の相手方となるケースは、非常に稀と考えますので、その意味では、本件は、例外的な事件と言えるかもしれません。
しかし、本件は、どのような事例が「募集又は私募の取扱い」に該当するかの参考事例とも言えます。

本件では、相手方は、ある会社の株式等の取得の申込みの勧誘行為を行うことを引き受けて、一般投資家に対し勧誘・斡旋をし、実際に制約した場合には、発行会社から手数料として出資金の払込価額の3分の1の支払いを受ける旨合意した上で、一般投資家に同社の株式等の取得の斡旋・勧誘を行ったようです。その結果、一般投資家延べ112名が、同社に対して直接又は相手方を経由して、合計9885万円の出資金の払込みを行ったようです。また、この発行会社以外にも、少なくとも4社の株式についても勧誘行為を繰り返していたようです。

この事案は、「私募」どころか「募集」に該当している可能性が十分あり、発行会社の方も問題となりそうな事案です。また、「私募の取扱い」を業として行うことは、第一種金融商品取引業の免許が必要です。なお、「業として」の判断については、裁判所の決定では、「反復継続して」とありますので、営利性より、反復継続性が重要な要素となっているようです。

株式や新株予約権を発行して、資金を集めようとする会社は、「募集」に該当しないかの検討を十分にしていただきたいですし、自社の株主となるように勧誘する行為を、証券会社ではない第三者に依頼すると、その第三者は、「募集又は私募の取扱い」に該当する可能性があるということを、よく理解していただきたいです。「募集」と「私募」の要件及び効果の違い、「募集又は私募の取扱い」の該当性は、実行前に、弁護士に相談することをお勧めします。

2011年04月27日 06:30|カテゴリー:企業法務, 法務関連ニュース||コメントはまだありません

震災に伴う労災保険給付(震災に伴う法律上の問題)

震災に伴う労災関連について、質問を受けることが少なくありませんので、この場でも、基本的な情報を共有しておきます。

今回の震災の当日付けで、厚生労働省労働基準局労災補償部補償課長から、下記の内容を含む、「東北地方太平洋沖地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務処理について」(基労補発0311第9号)という文書が、都道府県労働局労働基準部労災補償課長宛に出されています。同文書には、「兵庫県南部地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務取扱いの留意点について」(事務連絡第3 号 平成7年1月27日)や「兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について」(事務連絡第4 号 平成7年1月30日)も添付されていますので、是非、ご参照ください。

http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T110316K0010.pdf (PDF)

「東北地方太平洋沖地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務処理について」

1 労災保険給付請求に係る事業主証明及び診療担当者の証明

今回の地震により、被災労働者の所属事業場等が倒壊した等の理由から、労災保険給付請求書における事業主証明を受けることが困難な場合には、事業主証明がなくとも請求書を受理すること。
また、被災労働者が療養の給付を受けていた医療機関が倒壊した等の理由から、診療担当者の証明が受けられない場合においては、診療担当者の証明がなくとも請求書を受理すること。
なお、この場合、請求書の事業主証明欄の記載事項及び診療担当者の証明欄の記載事項を請求人に記載させ、当該証明を受けられない事情を付記させること。

2 業務上外等の基本的な考え方

今回の地震による業務上外の考え方については、平成7年1月30日付け「兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について」に基づき、業務上外及び通勤上外の判断を行って差し支えない。
したがって、個々の労災保険給付請求事案についての業務上外等の判断に当たっては、天災地変による災害については業務起因性等がないとの予断をもって処理することのないよう特に留意すること。

「地震による災害の業務災害又は通勤災害の考え方」

地震による災害事例

1 業務災害

事例1 作業現場でブロック塀が倒れたための災害
ブロック塀に補強のための鉄筋が入っておらず、構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。

事例2 作業場が倒壊したための災害
作業場において、建物が倒壊したことにより被災した場合は、当該建物の構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。

事例3 事務所が土砂崩壊により埋没したための災害
事務所に隣接する山は、急傾斜の山でその表土は風化によってもろくなっていた等不安定な状況にあり、常に崩壊の危険を有していたことから、このような状況下にあった事務所には土砂崩壊による埋没という危険性が認められたので、業務災害と認められる。

事例4 バス運転手の落石による災害
崖下を通過する交通機関は、常に落石等による災害を被る危険を有していることから、業務災害と認められる。

事例5 工場又は倉庫から屋外へ避難する際の災害や避難の途中車庫内のバイクに衝突した災害
業務中に事業場施設に危険な事態が生じたため避難したものであり、当該避難行為は業務に付随する行為として、業務災害と認められる。

事例6 トラック運転手が走行中、高速道路の崩壊により被災した災害
高速道路の構造上の脆弱性が現実化したものと認められ、危険環境下において被災したものとして、業務災害と認められる。

2 通勤災害

事例1 通勤途上において列車利用中、列車が脱線したことによる災害
通勤途上において、利用中の列車が脱線したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。

事例2 通勤途上、歩道橋を渡っている際に足をとられて転倒したことによる災害
通勤途上において、歩道橋を渡っている際に転倒したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。

2011年04月11日 06:30|カテゴリー:企業法務||コメントはまだありません

お知らせ「Startup Engine 2011」の開催

大変、ご無沙汰しております。諸事情により、更新が滞っておりました。

今日は、5月20日に開催予定の「Startup Engine 2011」というイベントについてのお知らせです。

来る5月20日の午後1時から、大阪中之島の国際会議場にて、「Startup Engine 2011」というイベントを開催させていただきます。

関西では、ベンチャーや起業に関連したイベントが少なくなりつつあるという話を聞き、全くの手弁当で、友人知人に声をかけて、志に賛同してくださる方々と立ち上げたイベントです。

今こそ、関西が頑張るべき時であるという声は少なくありません。関西は、古代から江戸時代や近代にかけて、起業や金融という意味では、最先端の地でした。今も、高い技術や志を持つ方が大勢いらっしゃいます。また、商人の地、大阪だけではなく、伝統と新しい価値が融合する地、京都、先端技術の拠点を持つ古都奈良、新しい文化とバイオベンチャー等のシードも多い神戸等、素晴らしい土地が近接しているという地の利があります。一方で、ここ数年、「最近の関西・大阪は元気がない」という言葉を聞くことも少なくありませんでした。

そこで、微力ながらも、関西でも、起業家精神とそれを支えるネットワークを構築するため、そして、その土壌を耕し続けるため、志を同じくする人と一緒に、関西、そして日本が、新しい産業のエンジンとなることを祈念して、「Startup Engine 2011」というイベントを開催させていただく運びとなりました。

新進気鋭の素晴らしいスピーカーに、お話をいただけることになっております。
僭越ながら、私も最後にお話をさせていただく機会を設けさせていただいています。

【日 時】 2011年5月20日(金)13:00〜17:30
【会 場】 大阪国際会議場
【後援・協力】 [後援]大阪証券取引所 [協力]株式会社 幕末
【セッション】
Session 1 ライフネット生命の挑戦

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役副社長 岩瀬 大輔 様

Session 2 マイノリティのすすめ

日本マイクロソフト株式会社 コミュニケーションズ・セクター

クラウド・ソリューション営業部 統括部長 今井 早苗 様

Session 3 等身大の経営者が語るBuyout

株式会社オークファン 代表取締役 武永 修一 様
ジンガジャパン株式会社 ジェネラル・マネージャー 山田 進太郎 様
株式会社美人時計 専務取締役 早 剛史 様
株式会社アトランティス 代表取締役社長 CEO 木村 新司 様

Session 4 目指せ!Good to Great~起業を支えるプロフェッショナルの立場から~

アントレプレナーファクトリー 代表取締役嶋内秀之
武田公認会計士事務所 公認会計士武田雄治
山本・森・松尾法律事務所 弁護士森理俊

【参加費】 一般席:3,000円(税込)  学生席:1,000円(税込)
※学生席には限りがございます。
【ウェブページ】http://startup-engine.com/
【懇親会】 夜6時から、開催予定(参加費5000円)

お申し込みは、こちらからお願いいたします。

なお、夜6時からの懇親会には、スピーカーの方の中からも参加していただける予定です。

起業について関心のある方、企業内部で新しいことに挑戦する方、ベンチャー企業への就職や転職を考えたことのある方、ベンチャー・キャピタル等の投資家の方、証券会社等の金融機関で上場やバイアウトを担当されている方、中小企業・ベンチャー企業のサポートをしているプロフェッショナルの方など、多くの方のご参加をお待ちしています。

不可抗力について(震災に伴う法律上の問題)

今回は、大地震や津波により、契約上の義務を果たせなかった場合、責任を負うのか、という問題について、検討します。

契約上、不可抗力条項がある場合は、その規定に従うことになります。不可抗力条項が規定されている大抵の場合は、免責事由となっているはずです。

問題は、特約で不可抗力条項が定められていなかった場合です。

典型的なケースとしては、工場が津波により被害を受けたので、納品できなくなったというケースです(特に、契約書の取り交わしはなく、発注書と請書のみのやりとりだったという場合です。)。

このような場合でも、不可抗力であるとして、遅滞や履行できないこと(履行不能)については責任を負わないのが原則です(理論上、不特定物の提供義務を負っている場合は、市場で同種同等の物を調達し得る限り、捜索して提供する義務が発生しますが、他の保有者が発見できない場合や調達価額が不相当に高額な場合は、免責されるか、事情変更の原則の適用が検討され得る事案といえる可能性があります。)。

但し、このような原則の例外として、金銭債務(お金を支払う義務)があります。金銭債務の履行については、不可抗力は抗弁となりません(民法第419条第3項)。

民法
(金銭債務の特則)
第419条
1  金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2  前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3  第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

不可抗力により履行不能となった場合に、反対給付(典型的には売買契約における金銭の支払義務)が残るかという問題は、次に検討すべき課題となります。この問題を、危険負担といいます。危険負担については、後日、検討する予定です。

2011年03月24日 06:30|カテゴリー:企業法務, 法務関連ニュース||コメントはまだありません

中国の知的財産権保護―理解しておくべき事実

日本弁理士会が発行している雑誌「パテント」の2011年2月号(Vol.64 No.2)109頁以下に、中国国家知識産権局局長である田力普さんによる、「中国の知的財産権保護―理解しておくべき事実」という寄稿があります。この中では、中国における知的財産権に対する認識の経緯について、忌憚のないご意見を述べられておられ、大変参考になりました。

まず、田さんが1970年代末に知的財産権分野の仕事に入られたときのお話があります。

当時の中国では、8億の人口のうち、ほんのわずか数十人を除いて、知的財産権に対する認識は、私と同じだったと思います。ゼロに等しく、知識と財産を一緒に結びつけるという概念は全くありませんでした。逆に、当時の人々は一般に、知識は自由に無償で広まり使われるものだと考えており、どんな知識も社会全体、さらには全世界で共有されるべきで、費用の徴収が認められるということは理解し難いことでした。
(中略)
そこで、1970年代に「知的財産権」という語が中国語に翻訳されましたが、2000年になって初めて、中国の数億を数える学生が一般に用いている「新華字典」に正式に収録されました。
(引用終わり)

そして、改革開放時代における、現在の知的財産権制度の実施とその立法過程や討論の激しさが述べられています。

立法が決定して1990年に著作権法が公布されるまで、主要な知的財産権の法律が制定されるのに10年以上かかりました。これが、長い歴史を持つ知的財産権国際規則の、それに疎い中国における初めての運用となったのです。
(引用終わり)

そして、現在の中国の知的財産権制度の実施が中国人の創造力を引き出していることについて述べた上で、一方で、Apple社のiPodやDVDの例を挙げて、知的財産権制度の中国における実施が、欧米諸国や多国籍企業に実際の利益をもたらしている点を指摘しています。

また、中国の現状についても、率直に問題があり、不十分な制度、民衆の意識が比較的低い点、いくつかの場所・分野・製品で突出して知的財産権の侵害があることを認めておられます。

ただ、逆に、海外メディアにおいて、いくつかの問題は故意に、あるいは故意でなく誇張され、歪曲されていることも指摘されています。

最近、私は、多くの外国メディアの、知的財産権の関係した中国に関する報道に、大量のマイナス情報が氾濫しているのを目にします。そこで私の受ける印象は、『欧米諸国で注目を集めたいなら、中国を非難する。中国を非難する際に注目されたいなら、中国の知的財産権保護を非難する』ということです。

しばしば、米国メディアと政治家が引用するデータが誇張されており、事実と符合していないことは明らかなのです。(引用終わり)

中国の立場は、これまで欧米諸国が長年により培った知的財産権制度について、わずか30年ほど実施しているにすぎず、これからも長期的に努力をするということです。実際に、中国における、この10数年で立法された知的財産権関連法の数は、大変なもので、現在では、ほぼ一通りの法律は揃っていますし、改定作業も迅速です。

中国を生産拠点としてではなく、マーケットとしてみる動きはこれからも留まることはないでしょう。日本企業が中国の市場に進出する際には、是非、予め、特許権や商標権の登録等の準備を怠らなければ、仮に模倣品被害にあっても採り得る手段は少なくありません。また、仮に商標権がこちらになかったとしても、中国の商標法や、日本の不正競争防止法に該当する反不正当競争法が活用できる可能性が残っていますので、諦めずに専門家に相談していただきたいです。具体的には、日本の弁護士や弁理士と連携しつつ、現地の法律家に依頼するのが一般的でしょう。

一応、現時点の中国商標法や反不正当競争法の関連条文を挙げておきます。なお、この翻訳は、特許庁及びJETROのものに依拠しておりますので、その正確性等について保証するものではありません。

中国商標法
第 31条 商標登録の出願は,他の者の先の権利を害してはならず,他の者の既に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で先に登録することもしてはならない。
第 41条 登録された商標が第10条,第11条,第12条の規定に違反しているか,又は詐欺的な手段若しくはその他の不正な手段で登録を取得したときは,商標局は当該登録商標を取り消す。その他如何なる組織又は個人も,商標評審委員会にそのような登録商標を取り消す裁定を請求することができる。
登録された商標が第13条,第15条,第16条,第31条の規定に違反しているときは,当該商標の登録日から5年以内に,他の商標所有者又は関係当事者は,商標評審委員会にその登録商標を取り消す裁定を請求することができる。悪意による著名商標の登録の場合,その真の所有者に対しては5年間の制限はない。
前 2段落に定めた状況のほか,既に登録された商標について係争があるときは,当事者は当該商標の登録許可日から5年以内に,商標評審委員会に裁定を請求することができる。 商標評審委員会は裁定請求を受理した後,関係当事者に通知し,かつ,指定の期間内に答弁させなければならない。
引用元(PDF)はこちら

中国反不正当競争法
第5条 事業者は以下に記載する不正手段を用い市場取り引きをし、競争相手に損害を与えてはならない。
(1)他人の登録商標を盗用すること。
(2)勝手に著名商品の特有な名称、包装、デザインを使用し、または著名商品と類似の名称、包装、デザインを使用して他人の著名商品と混同させ、購入者に当該著名商品であるかの誤認をさせること。
(3)勝手に他人の企業名称または姓名を使用して公衆に当該他人の商品であるかのを誤認させること。
(4)商品の上に品質認定標識、優秀著名標識など品質標識を偽造し盗用し、または原産地を偽造して公衆に誤解させる商品品質の虚偽表示をすること。
第9条 事業者は広告またはその他の方法を用いて商品の品質、成分、性能、用途、生産者、有効期間、産地などに対し公衆に誤解を与える虚偽宣伝を行ってはならない。
広告事業者は明確なまたは知りうるべき情況のもとで虚偽の広告を代理、設計、制作、公布してはならない。
引用元(PDF)はこちら

2011年03月11日 06:30|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス, 企業法務||コメントはまだありません

会社法制の見直しを巡る議論と展望(2011年3月段階での議論)

先日(3月4日)、神田秀樹教授による「会社法制の見直しを巡る議論と展望」という講演を聴いてきました。

非常に面白い示唆がいろいろとありましたが、今回は、ベンチャー企業に関連する内容について、触れてみたいと思います。

兼ねてから、当ブログでも、取り上げておりました監査役会設置会社における社外取締役の選任の義務付けという点です。

現在、主に上場企業を対象として、監査役会設置会社に社外取締役の選任を義務付けようという議論があります。直近では、今年1月の法制審議会会社法制部会第9回会議会社法制部会資料9(PDF)を参考にして下さい。

ここでは、「1 監査役会設置会社における社外取締役の選任の義務付け」と「2 監査・監督委員会設置会社制度(仮称)の創設」が挙げられています。

私は、上場(IPO)実務という観点から、上場会社に、社外取締役の選任を義務付けるとなると、これまで社外監査役を選ぶことさえ大変だったのに、さらに社外取締役を探してこなければならず、上場のハードルがこれまで以上に上がるのではないかという危惧をもっていました。(なお、現在は、会社法上、監査役会設置会社については社外監査役2名以上(335条3項)が求められており、これに加えて、取引所ルールによって独立役員1名が必要です。)また、そもそも根本的な点として、会社法で規定しなければならないことなのかという疑問や、新興市場に上場している会社にも本当に必要だろうかという疑問もありました。

この点、神田教授は、おそらくこの案(社外取締役選任義務付け案)を通すのは簡単ではないであろうという趣旨のことを述べておられました。理由の一つには経済界の反対が強いということです。なお、教授によると、過去に調査したところ、業界1位の会社は、いずれも社外取締役がおらず、2位以下の会社にはだいたい社外取締役がいるということでした。勿論、全ての業界ではないでしょうし、例外もあるとは思いますが、なかなか興味深い話でした。その趣旨としては、社外取締役がいないから1位ということではなく、2位以下だから社外取締役を置いているということなんだろうと思います。

さらに、この案が有力ではない推論の一つとしては、「会社法制部会資料9」の中で、「1 監査役会設置会社における社外取締役の選任の義務付け」と「2 監査・監督委員会設置会社制度(仮称)の創設」の分量が全然違うということもあるようです。ご覧いただけるとわかりますが、明らかに後者の分量が多いです。これは、法務省のやる気度合いに比例している可能性があるということです。

上場(IPO)実務という観点からでは、後者の案は、期間設計についてのオプションが増えるだけですので、さほど影響はないように思われます。(今後の実務動向や証券取引所のルールにもよりますので、留保付きです。)今後の動向に、慎重に注目した方がよいと思います。

参考
会社法
(大会社における監査役会等の設置義務)
第328条第1項  大会社(公開会社でないもの及び委員会設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。

(監査役の資格等)
第335条第3項 監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない。

2011年03月09日 06:30|カテゴリー:企業法務||コメントはまだありません