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ベンチャー法務の部屋

法制審議会「会社法制部会」への企業側からの意見

昨年(平成22年)の会社法制部会の審議事項について、先月(2月)28日に、経済同友会から意見が出されていますので、紹介します。

法制審議会「会社法制部会」への意見

会社法制部会の内容については、こちらをご覧下さい。第4回から第6回あたりまでが、今回の経済同友会の意見の対象となっているトピックが議題となっています。

過去の関連記事は、「会社法改正の動向と株価算定事件についてのメモ」「昨今の会社法制に関する話題」等ですので、こちらも参考にしてください。

 企業経営者の立場で望むのは、経済関連の法制が結果として個々の企業が活性化、国際競争力を向上させ、ひいては日本経済全体の成長に貢献することである。過度な規制で、結果的に企業活動が萎縮するようなことがあってはならない。

 こうした観点からすると、現在、法制審議会「会社法制部会」(以下「部会」)で検討されている項目は、本当に今現在、法改正まですべき切迫した事情(いわゆる立法事実)があるのか、疑問に感じるものが多い。もし今回の会社法見直しの発端に、「会社法で規制緩和が行き過ぎ、企業の規律が失われ、不祥事や違法・脱法行為が増えた」といった認識があるのであれば、それは企業実務の実感とは明らかに異なるものである。金融商品取引法(以下「金商法」)や証券取引所規則はじめ、会社法以外で新たなルールが次々と設けられ、全体としては、企業に対する規律はむしろ増えているように感じる。ごく一部の違法・脱法行為者の事例を一般化して規制を強化しても、確信犯的に法の間隙を縫ってくる者を完全に防 ぐことは不可能であるし、また規制強化の結果、非常に煩雑な手続きを企業全体に課すことになれば、適正なガバナンスを構築し、法令を遵守している大多数の企業の負担増となり、むしろ、日本経済が全体として国際競争力を失う可能性が大である。

 また、部会では、諸外国にある制度を導入しようという志向も強いように見受けられる。しかしながら、一方で各国の会社法制は、その他の経済関連法制や税制、司法制度、更には雇用慣行、会社帰属意識その他の社会・文化的背景の下で設計され、機能しているものでもある。もちろん、経済のグローバル化が進む中、国際的ルールとの不整合により、日本企業が国際競争上不利となる事態は避けなければならないが、法律の一部分だけを単独で日本に移入しても、必ずしも意図通りに機能する保証はなく、それどころか弊害さえ招きかねない点もまた認識すべきである。

(公益社団法人経済同友会 平成22年2月28日「法制審議会「会社法制部会」への意見」1頁より)

経済同友会は、規制の対象となる会社の集団ですので、規制強化に反対という立場を採ることは容易に想像できますが、それを差し引いたとしても、真剣に耳を傾けるべき意見が少なくないように思います。特に、「特に株式市場で広く投資家から資金を集める上場企業では、社外取締役を少なくとも1名導入すべきであるし、さらには複数名導入することが望ましい。但し、社外取締役を、上場大企業から中小企業・個人企業までカバーする「会社法」で強制すべきかどうかは別次元の問題である。」(2頁)といった意見や、「何より、日本の産業構造転換と国際競争力強化、資本市場のダイナミズム向上の為には、特に大企業はスピンオフ(企業発ベンチャー)を推進し、国もこうした流れを支援すべきものである。だが、 日本では、従業員の会社への帰属意識の強さもあり、一挙に 100%全て外に出す訳にいかないことも多く、 まず 51%とか60%保有で上場し、投資家の信頼を得つつ、徐々に独立色を高めて、やがて完全分離することが現実的である。こうした流れのステップとして、親子上場は不可欠な選択肢である。」(6頁)といった意見は、現場の声として有用と考えます。

このような現場の意見を踏まえつつ、より議論が充実したものとなることを願っております。

2011年03月03日 06:30|カテゴリー:企業法務, 法務関連ニュース||コメントはまだありません

先月の裁判例(2011年1月の裁判例)

先月(1月)26日に、東京地裁民事第8部において、株主総会決議不存在確認等請求事件で、決議不存在を認める判決がありました(商事法務No.1924 60頁)。

主な内容は、以下のとおりです。
(1)適法な議長不信任・議長交代の動議がないままに、議長を交代した後の取締役解任決議は、議長でない者によって採決が行われたことになり、不存在である。
(2)(1)の株主総会決議を追認する株主総会決議についても、適切ではない代表取締役によって招集手続きが行われた点には瑕疵があるものの、株主が1人であるところ、その1人株主が出席してなされたと考えられるため存在する。
(3)(2)の株主総会により追認決議が行われたとしても、(1)の株主総会が有効になるものではなく、その間の((1)で解任された取締役の)報酬請求権は、認める。
(4)(2)の株主総会の解任に正当な理由が無いとして、会社法339条2項に基づき損害賠償請求権を認める。

株主総会の決議不存在が認められるケースは、それほど多くありませんので、ご紹介します。

2011年02月28日 16:00|カテゴリー:企業法務, 法務関連ニュース||コメントはまだありません

著作権の未来

昨晩、某所で、ベンチャー企業の知的財産実務というお題でお話をさせていただく機会がありました。

その中で、現行の著作権について考え方が産業の発展、特にITベンチャーのビジネス戦略に大きな影響を及ぼしているのではないか、という話をさせていただきました。要するに、今の考え方では、(立法論であるか法解釈論であるかはともかく)グローバルで戦うには、不利な状況を招いているのではないか、という議論です。

この議論について、一つの示唆となる報告書があります。

先月公表された「文化審議会著作権分科会 報告書(案)」(PDF)です。

この中で、次のような記述があります。

4 グーグルが提起した著作権問題
第10期第1回の本小委員会ではまた、「グーグルが提起した著作権問題」と題し、 米国での事例等の紹介が行われた。ヒアリングでは、様々な事例が紹介されたが、その いくつかを簡単にまとめると以下のとおりである。
まず、YouTube の登場に伴い、Tolerated Use、すなわち米国著作権法上のフェアユース にも該当しない違法利用であるが、著作権者側がパブリシティ効果を狙ってビジネス上 の判断から侵害を黙認するケースがあること、そして、こうしたケースの背景には、デ ジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)第512条に規定するセーフハーバー条項、 すなわちプロバイダーは要請を受けた場合に違法コンテンツを機械的に削除すれば免 責されるという仕組みがあることについての指摘がなされた。
また、iPod や YouTube の成功は、技術イノベーションによるものではなく、ビジネス モデルとDMCAの制度イノベーションがもたらしたものであり、新しい時代の著作権 制度は、産業著作権と国益の視点でいかにして制度イノベーションを実現するかが問わ れるとした、角川歴彦氏の指摘を紹介しつつ、コンテンツ流通を促進していく必要性に ついて指摘がなされた。

個人的に、必ずしも全ての内容に賛成するわけではありませんが、これらの問題意識の成果として、「権利制限一般規定ワーキングチーム 報告書」(PDF)記載の報告があり、まだ賛否両論の状況とはいえ、そして少し遅い動きであったかもしれないとはいえ、徐々に改善の兆しがあることは望ましいことだと考えます。

著作権に関わった仕事をされている方やITベンチャーに関わりのある方は、これらの動向に注目しておいた方がよいかもしれません。

文化審議会著作権分科会については、こちらをご参照ください。

2011年02月18日 06:30|カテゴリー:企業法務||コメントはまだありません

新株予約権無償割当て

今日は、新株予約権無償割当てというテーマについて考えます。

新株予約権無償割当てとは、会社法第277条に規定されている資金調達方法で、「株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせない」新株予約権の割当てです。

要するに、現在の株主全員に各株主の保有株式数に応じて、無償で新株予約権をあげるスキームです。割当を受けた株主は、お金を払って新株式を引き受けるか、お金を払わないかを選択することができます。お金を払わないと、他の株主がお金を払って新株式を得ると、その分、持ち株比率が低下することになります。ご存知の方は、「株主割当増資」と近いのではないかと考えられると思いますが、その通りです。特に、旧商法では、全株主に新株引受権を付与するという発想が原則でしたので、これに近いといえるでしょう。

実は、今の会社法では、株主割当てと新株予約権無償割当ての両方の仕組みがあります。ただ、要件が少し違いますので、ケースに応じて、使い分けることになります。特に、新株予約権無償割当てには、(1)取締役会設置会社では取締役会のみで発行できる、(2)新株予約権なので、新株予約権の行使条件にアレンジを加えることができる、という2つの大きな特徴があります。

(1)の特徴は、取締役会設置会社の株主割当増資については、取締役会のみで発行しようとすると定款の定め(会社202条3項2号)が必要であるのに対し(但し、整備法76条3項に注意)、新株予約権無償割当ては、原則として取締役会という点であり、時に役立つ可能性があります。

(2)の特徴は、ブルドックソース事件で如何なく利用されましたので、覚えておられる方もいるのではないでしょうか。同事件では、全株主に1株につき3個の新株予約権が無償で割り当てられましたが、その新株予約権とは、行使条件において、スティール・パートナーズ関係者は行使できないというものであり、代わりに対価を払う内容のものでした。その適法性は、最高裁まで争われ、最高裁判所平成19年8月7日決定にて、「株主平等の原則の趣旨に反するものということはできない」「当該新株予約権無償割当てを著しく不公正な方法によるものということはできない」という結論がだされるに到りました。

余談ですが、この件では、双方とも無傷ではなく、特に、ブルドックソース側は、平成20年3月期の決算で、営業利益6 億7000万円に対し、当期純損失19億1200万円(イカリソースののれん代(5 億9 千4 百万円)を含む。)を計上しています。新株予約権の取得に伴う支払額は21億1400万円、公開買付の対応に伴う支払額は6億6900万円とのことであり、20億以上もの大金が費消されたことになります。

ところで、先月19日に、金融庁から「「金融庁・開示制度ワーキング・グループ報告」~ 新株予約権無償割当てによる増資(いわゆる「ライツ・オファリング」)に係る制度整備について ~」と題する報道発表がありました。


新株予約権無償割当てによる増資(いわゆる「ライツ・オファリング」)とは、「公募増資」、「第三者割当増資」と並んで、企業の増資手法の一つであり、株主全員に新株予約権を無償で割り当てることによる増資手法である。株主は割り当てられた新株予約権を行使して金銭を払い込み、株式を取得することができるが、新株予約権を行使せずに市場で売却することも可能である。したがって、持分比率の低下を嫌う株主は新株予約権の行使によりそれを回避でき、追加出資を嫌う株主は新株予約権の売却により追加負担を回避できるという特徴を有する。(引用終わり)


この政策の趣旨は、上場企業において、新株予約権無償割当てによる資金調達を容易にすることです。

これをきっかけに、上場企業では、株主割当増資ではなく、新株予約権無償割当てによる増資が増えるかもしれませんので、上場企業の財務担当者やPO担当者は、要チェックだと思います。

今月の重要判例(追加)

昨日も重要判例がありましたので、追加です。

3 「ロクラクII」事件最高裁判決

平成21(受)788 著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件 平成23年01月20日 最高裁判所第一小法廷 判決

原文はこちら(PDFファイル)

放送番組等を録画する機械は会社側において、録画の指示を利用者がするというサービスについて、私的使用を目的とする適法な複製なのか、違法な複製なのかが争われた事案です。すなわち、複製の主体は、録画する機械を管理している会社か、録画の指示を出している利用者かという点が争点です。

この点、本判決では以下のように判示しています。

放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において, テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」とい う。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が 自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容, 程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービ ス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても, 放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。
以上によれば,本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等を認定することなく,親機ロクラクが被上告人の管理,支配する場所に設置されていたとして も本件番組等の複製をしているのは被上告人とはいえないとして上告人らの請求を 棄却した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」

また、次の金築誠志裁判官の補足意見も重要でしょう。

「親機の管理が持つ独自の社会的,経済的意義を軽視するのは相当ではない。本件システムを,単なる私的使用の集積とみることは,実態に沿わないものといわざるを得ない。」
「著作権法21条以下に規定された「複製」,「上演」,「展示」,「頒布」等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れ た解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって,このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。」

最後の補足意見は、結局このサービスは、海外留学中の息子が母親に「今度の○○っていうテレビ番組とっておいて。」「そのテレビ番組をDVDにして送ってよ。」というのとは、社会的、経済的に意味が違うでしょうということを言っているのだと思います。それは、わざわざ利用者のために、複製を容易にするための環境等を整備した上、番組情報の入力等の複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしているという実態があるからということになります。

この判決についても、昨日の「2」の「まねきTV」事件最高裁判決とともに、著作権が関連するサービスに大きな影響を与えるでしょう。判決に対する賛否も両方あり、これから喧々諤々の議論がなされると予想されます。

今月の重要判例

1月も、もう中旬から下旬に差し掛かろうとしています。

昨晩は、体調が少し優れませんでしたので、今朝の更新ができませんでした。今日は、今月出された2つの最高裁判例を紹介します。いずれも、実務に与える影響は大きいと考えます。

1 破産管財人は、労働債権について、支払いの際に源泉徴収義務を負わないとする最高裁判決

平成20(行ツ)236 源泉徴収納付義務不存在確認請求事件 平成23年01月14日 最高裁判所第二小法廷 判決

原文はこちら(PDF)

「破産管財人は,破産手続を適正かつ公平に遂行するために,破産者から独立した地位を与えられて,法令上定められた職務の遂行に当たる者であり,破産者が雇用していた労働者との間において,破産宣告前の雇用関係に関し直接の債権債務関係に立つものではなく,破産債権である上記雇用関係に基づく退職手当等の債権に対して配当をする場合も,これを破産手続上の職務の遂行として行うのであるから,このような破産管財人と上記労働者との間に,使用者と労働者との関係に準ずるような特に密接な関係があるということはできない。また,破産管財人は,破産財団の管理処分権を破産者から承継するが(旧破産法7条),破産宣告前の雇用関係に基づく退職手当等の支払に関し,その支払の際に所得税の源泉徴収をすべき者としての地位を破産者から当然に承継すると解すべき法令上の根拠は存しない。そうすると,破産管財人は,上記退職手当等につき,所得税法199条にいう「支払をする者」に含まれず,破産債権である上記退職手当等の債権に対する配当の際にその退職手当等について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負うものではないと解するのが相当である。

このほか、管財人は、管財人報酬については、源泉徴収義務がある旨、破産管財人の報酬に係る源泉所得税の債権は財団債権に当たる旨を判示しています。

「破産管財人の報酬は,旧破産法47条3号にいう「破産財団ノ管理,換価及配当ニ関スル費用」に含まれ(最高裁昭和40年(オ)第1467号同45年10月30日第二小法廷判決・民集24巻11号1667頁参照),破産財団を責任財産として,破産管財人が,自ら行った管財業務の対価として,自らその支払をしてこれを受けるのであるから,弁護士である破産管財人は,その報酬につき,所得税法204条1項にいう「支払をする者」に当たり,同項2号の規定に基づき,自らの報酬の支払の際にその報酬について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負うと解するのが相当である。

そして,破産管財人の報酬は,破産手続の遂行のために必要な費用であり,それ自体が破産財団の管理の上で当然支出を要する経費に属するものであるから,その支払の際に破産管財人が控除した源泉所得税の納付義務は,破産債権者において共益的な支出として共同負担するのが相当である。したがって,弁護士である破産管財人の報酬に係る源泉所得税の債権は,旧破産法47条2号ただし書にいう「破産財団ニ関シテ生シタルモノ」として,財団債権に当たるというべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第6号同43年10月8日第三小法廷判決・民集22巻10号2093頁,最高裁昭和59年(行ツ)第333号同62年4月21日第三小法廷判決・民集41巻3号329頁参照)。また,不納付加算税の債権も,本税である源泉所得税の債権に附帯して生ずるものであるから,旧破産法の下において,財団債権に当たると解される(前掲最高裁昭和62年4月21日第三小法廷判決参照)。」

この判決は、管財実務に大きな影響を与えるでしょう。管財人にとっては、基本的に、従来の実務の取扱いが認められたことになり、良かったのではないでしょうか。なお、この判決は、一般の企業法務には、全く関係ないといって、差し支えないと考えます。

2 「まねきTV」事件最高裁判決

平成21(受)653 著作権侵害差止等請求事件 平成23年01月18日 最高裁判所第三小法廷 判決

原文はこちら

送信可能化権については、以下のように判示しています。

「送信可能化とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力するなど,著作権法2条1項9号の5イ又はロ所定の方法により自動公衆送信し得るようにする行為をいい,自動公衆送信装置とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され,又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう(著作権法2条1項9号の5)。

自動公衆送信は,公衆送信の一態様であり(同項9号の4),公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。

そして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。

これを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能化に当たるというべきである。」

そして、公衆送信権侵害については、以下のように判示しています。

「本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記(1)ウのとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。」

この判決がインターネットビジネスについて、どこまでがこの判決の射程となるのかは分析もしておりませんし、不明ですので、今回は紹介のみにとどめさせていただきます。ただ、書籍配信ビジネスや動画配信ビジネスについても影響する可能性は否定できません。この判決については、これから評釈が多く出てくると思いますので、それらにも注目した方がよいでしょう。

何もしないリスク

多くのベンチャー企業の経営者の話を聞かせていただくと、「何もしない」ことによるリスクは大きいことをよく耳にします。

変化の激しい昨今のビジネス環境においては、「挑戦するリスク」より「何もしないリスク」の方がずっと大きいという話です。

例えば、一橋大学イノベーション研究センターのセンター長米倉誠一郎教授と板倉雄一郎さんの共著である『敗者復活の経営学
』という本には、「チャレンジを続ける人だけが成功する」(表紙)とか、「変化が激しいいま、「挑戦するリスク」より「何もしないリスク」の方がずっと大きい!!」(帯)という文言が並んでいます。

このような視点でネットで検索していると、農業の世界でも、同じ文言で議論されている方がいました。

涌井代表のブログ『農業維新』 : 「『何もしないリスク』と『挑戦するリスク』」
(中略)
 一昨年のリーマンショック後の経済不況を受け、協会の主力業務である白米営業をやめて米の加工食品の営業に特化した決断が今の協会の原点だ。

 この一年間、協会がそれまでの営業を続けていたらどうなっていたのだろうか。今とは全く違う協会の姿があるに違いない。

 人生にも会社にも、常に分岐点がある。そして、常にルビコン川を渡る決断をする時がある。その決断をするか否かによって、それぞれの人生や会社の方向性が全く異なる。人間も会社も、「何もしないリスク」と「挑戦するリスク」のどちらかを選択する時には、「挑戦するリスク」を選択したいものだ。

 国の新しい農業政策も、農家に対して選択を求めている。国の政策に参加することもしないことも自由ですよ、という選択である。

 農家は、まさに、新しい農業政策に「参加しないリスク」と「参加するリスク」を選択する時が来たのではないか。
(中略)
(引用終わり)

正直なところ、「何もしないリスク」というのは、激しく移り変わる業界(IT業界等)だけに、主に適用されるものであり、普通は、何もしない方が安全だろうと思っていたのですが、必ずしもそうではないようです。農業の世界でも、その他の世界でも、「何もしないリスク」は、想像以上に大きいのかもしれません。

勿論、ここでいう「挑戦する」とは、無謀な挑戦ではなく、よく考え、可能な限りリスクを下げる努力をした中でのチャレンジを意味し、無謀な経営や法的倫理的な挑戦をする経営を意味するわけではありません。

ところで、このビジネスの世界では、ある種、当たり前の「何もしないリスク」が「挑戦するリスク」より大きいという考え方は、法律家の取締役の責任についての判断枠組みに馴染みにくいのかもしれません。

一般に、取締役に対して作為義務(何かをすべき義務)が認められること可能性はそれほど高くなく、それよりは、無謀な買収等により会社に損害を与えた場合に、取締役が責任追及されることの方が多いのが現実です。昨年7月15日のアパマンショップHD事件最高裁判決(PDFファイル)は、まさにその事例であろうと思います。(勿論、従業員や第三者等の身体・生命・財産等の権利に対する侵害が生じることが予想可能であったり、現に発生している場合等には、相応の安全配慮義務が発生する等、取締役が「何もしない」ことによって、責任が生じる可能性は十分あります。)

昨年のエントリー「経営判断原則に関する最高裁判決について」では、この点について、少し検討しました。会社法のスタンスとしては、経営者の誠実な挑戦については、できる限り自由にできるようにして、「挑戦する」ことに萎縮効果が及ばないように、そして、挑戦することに取締役個人的に課され得る法的なリスクが大きいのであれば、「何もしない」方がいいという結論になってしまわないように、十分配慮する必要があるように思います。

この点、弁護士は、多くの場合、挑戦した場合のリスクをお伝えすることが、どうしても多くなりがちであり、その意味では経営者に疎まれがちなところがあります。ただ、多くの企業法務の弁護士は、それはそれとして、よりリーガルリスクが低い形で、挑戦し続けてほしいと思っていることも確かであり、そのあたりの対話は、これからも、まだまだ弁護士サイドも経営者サイドも工夫する余地があるのかもしれません。

2011年01月19日 06:30|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス, 企業法務||コメントはまだありません

昨今の会社法制に関する話題

旬刊商事法務2011年1/5-1/15合併号No.1920は、昨今の会社法制にまつわる話題が盛りだくさんでした。

特に、コーポレート・ガバナンスを中心とした以下のトピックについては、繰り返し、様々な立場の方から議論されていました。

・多重代表訴訟(その他、親子会社に関する規律の問題)
・監査役の監査機能
・社外取締役義務づけ論や要件(その他、取締役会の監査機能)
・資金調達にかかる企業統治

おそらく、これらは、会社法制の見直し論議が、学者や法曹関係者のみならず、経済界、企業からも関心の対象となっていることの証左であろうと思います。

この中で、いくつか気になった点としては、〜〜の制度を導入することにより、ガバナンスが向上し、企業価値を高めるという視点があり得るという(主に学者の先生方からの)意見です(p17)。これに対し、経済界は、日本企業の業績不振は、日本経済そのものの低迷によるものしかなく、日本企業のガバナンス体制や会社法制の不備に原因があるわけではなく(p93)、萎縮効果や国際競争力の低下を招く可能性さえある(p14)と反論しています。

この意見の対立は、立法事実の有無や立法の効果といった事項をさらに深く検討すべきという話もあるでしょうけれども、そもそも、もっと根本的な発想が異なっているようにも思えます。前者の制度導入によってガバナンスが向上し、それにより企業価値が高くなるという発想は、どちらかといえばパターナリスティックな発想、すなわち国家が後見的に制度を改善していくことにより、法律を遵守させて、「正しい」企業統治のあり方を実現させていくという考え方であるように思います。

一方、後者の立場は、民間企業は、国家にガバナンス体制について、干渉されるのを好まないという発想が根本にあるように思います。有り体に言えば、「ガバナンスだけでは、お金を稼げない」「最適解はこちらで考えるので、口出ししないで欲しい」ということもあるでしょうし、必要なルールは「遵守するか、遵守しない理由を開示するか(Comply or Explain)」であり、あとはステークホルダーの自己責任とすれば良いという発想があるように思います。こちらの考え方に立つと、開示すべきであったのに開示しなかったことや、虚偽の開示については、公権力が介入して、罰則を与えたり、市場から追放したりするべきであるが、情報を開示している限り、その情報を前提に採った行動については、自己責任という考え方であろうかと思います。そして、優れたガバナンス制度が企業価値の向上をもたらすのであれば、市場原理によって、自然とその制度が生き残るであろうという発想も伴っていると考えます。

このように会社法制の変更、特に、多重代表訴訟や社外取締役義務づけ論といった制度の導入については、上記の根本的な発想の対立があることを認識しないと、いつまでも、「〜〜制度は、(ガバナンスが向上するから)企業価値が向上する。」「いや、(萎縮効果等があるので)企業活動が停滞する。」といったある種の水掛け論が続くように思います。会社法を改正して実現すべきことであるのか、上場企業が求められる指針レベルとして導入するのかに関わる部分でもあります。まず、どのような思想に基づくのかを議論しないと、つぎはぎだらけの会社法になってしまうのではないでしょうか。

2011年01月18日 06:30|カテゴリー:企業法務||コメントはまだありません

売掛の管理と社長の仕事

今回は、ほとんどの人にとって、「何をいまさら」と思うであろう話をしたいと思います。

それは、中小企業やベンチャー企業においては、売上の管理は、社長の仕事ということです。

これは、多くの社長にとって、当たり前の話でしょう。なぜなら、かなりの数の中小企業やベンチャー企業では、社長が最大の営業マンであり、社長自身が、請求書や回収状況をチェックし、売掛先の状態の把握、顧客の性質や割合、割引の有無や内容、取引が生じることとなったきっかけ、売掛金回収期間、回収できなかった売掛の割合やその理由等を把握しているからです。

しかし、時折、社長が、営業や売掛の管理に関する業務について全くの人まかせという会社に出会います。社長が大企業の研究・開発部門出身である場合や、創業者の二代目である場合に、比較的多いように思います(勿論、そうでない方も多いです。)。以下の売掛にかかる業務について、どこまで把握しているでしょうか。

1 請求書の内容を把握しているか。
2 顧客リストをいつでも確認できる状態にあるか。
3 主な売上は、どの顧客、どの商品、サービスから生じたものであるか、その他の売掛に関する情報を把握できているか。
4 請求書の内容、契約の内容、会計上の処理が一致しているか。
5 不履行となったままの売掛は、どのように処理するか、対処方法が明確になっているか。
6 回収作業が放置されたままの未回収債権はないか。
7 不履行となった債権がある場合、その原因を分析し、契約締結時の業務にフィードバックできているか。

上の3つは、当たり前の業務です。創業から、かなり長い間、全ての請求書に社長が目を通している会社も少なくないでしょう。決して、社長が人任せにしてはならない業務の1つだと思います。

4は、特に、代理店契約等が絡んでいる場合に、生じがちです。代理店に仲介業務を依頼しているのか、卸をしているのかが異なると、法的な意味も、会計上の処理も全く異なります。しかし、意外と区別されていないことが少なくありません。代理店に仲介業務を依頼している場合は、最終顧客(代理店に紹介してもらい、契約することとなった顧客)との間に直接契約が成立しているはずです。法的責任(物を引き渡す責任や瑕疵担保責任等)も当該最終顧客に対し直接することになります。代理店には、仲介手数料のみが支払われるのが通常であり、お金の流れが代理店経由であっても、売上は、最終顧客との間で発生した売上が全額計上されるはずです。一方、代理店に物を卸している場合は、その代理店との間の契約しか成立せず、最終顧客との間で契約は成立しません(別途、保守契約や保証契約がある場合は、別です。)。この場合、卸価格が売上となるはずです。

5についても、決まっていないことが少なくないように感じます。特に、未回収の兆しがあれば、早め早めの行動が肝要です。早目に電話やファックス、メール等で、督促するのが基本であり、それでも支払われないようであれば、関連する資料を全て持参の上、弁護士等の専門家に依頼します。そして、回収の可能性を踏まえて、その金額、相手方の性質、会社の方針(コストに見合わない回収はしない、費用倒れになっても会社の評価の問題があるので徹底的に回収する等)等に応じて、最終的な処分方法を決めます。具体的には、内容証明郵便による請求、支払督促、訴訟提起、担保の実行等が考えられます。

6については、放置していることによる様々な問題を知る必要があります。税務上、未回収債権について費用化できず、税務上の負担が大きくなる点や、利益率を押し下げる点をよく理解しておく必要があるでしょう。利益率5%の会社での100万円の未回収は、さらに2000万円の売上に匹敵します。2000万円の売上確保の努力が100万円の未回収によって、不意になるのです。

7も重要です。未回収に陥ることを防ぐために、どうすればよいか、フィードバックする必要があります。もちろんビジネスモデル、特に入金のタイミングや方法によっても、大きく異なりますので、一概には言えません。常に、現金で回収できるコンビニエンスストアであれば、契約が成立したものの未回収となることはほとんどあり得ませんが、万引きを防ぐ手だてを講じることは重要でしょう。一方、webサイト構築業務等であれば、先に半額もらうことや、契約書又は契約書に準じるような書面やメールの取得等、証拠化の方法を考えるべきでしょう。契約書や発注書の見直し、担保取得の可能性、与信管理に応じた対応基準の策定、前金や作業途中での入金等の方法も検討するべきでしょう。

これらの内容は、冒頭で申し上げたように、ほとんどの人にとって、「何をいまさら」ではあると思いますが、会社経営にとっては非常に基本的であり、重要な内容です。また、既に、売掛の管理を励行されている社長や役員の皆様も、是非、見直すきっかけを作っていくと良いかと思います。

なお、実際に、売掛の未回収が生じた場合や、回収できない債権の額を減らしたい、契約書や契約締結の過程を見直したいという方は、当事務所か、企業法務に詳しい弁護士まで、ご相談ください。

2011年01月17日 06:30|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス, 企業法務||コメントはまだありません

ビジネスモデルの落とし穴 弁護士法72条

ベンチャー企業に限らず、企業のビジネスモデルは、違法なものであってはならないことはいうまでもありません。ただ、違法かどうかの判断は、直感だけでは難しいのも事実です。今回は、ベンチャー企業でもしばしば問題となる弁護士法72条を取り上げます。

弁護士法72条というのは、次のような条文です。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条  弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

少しわかりにくい条文かもしれません。弁護士資格なく、報酬を得る目的で、法律事件に関して、法律事務を取り扱ったり、これらの紹介をしたりすることを禁止するということです。

昨年、賃貸物件の立ち退き交渉について、弁護士以外の者が行った場合に、この条文に抵触するか否かが問題となった事案(刑事事件)について、最高裁の決定がありました(最高裁平成22年7月20日第1小法廷決定(判例時報2093号161頁))。

この事件は、土地家屋の売買業等を営む被告人A社の代表取締役である被告人Bが、同社の義務に関し、C社から、C社が所有権を取得したビルについて、74名の賃借人らとの間で、賃貸借契約の合意解除に向けた契約締結交渉を行って合意解除契約を締結した上で各室を明け渡させるなどの業務を行うことの委託を受けて、これを受任したという事件です。

この事件について、最高裁は、次のように判示しています。

被告人らは、多数の賃借人が存在する本件ビルを解体するため全賃借人の立ち退きの実現を図るという業務を、報酬と立ち退き料等の経費を割合を明示することなく一括して受領し受託したものであるところ、このような業務は、賃貸借契約期間中で、現にそれぞれの業務を行っており、立ち退く意向を有していなかった賃借人らに対し、専ら賃貸人側の都合で、同契約の合意解除と明渡しの実現を図るべく交渉するというものであって、立ち退き合意の成否、立ち退きの時期、立ち退き料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るものであったことは明らかであり、弁護士法七二条にいう「その他一般の法律事件」に関するものであったというべきである。そして、被告人らは、報酬を得る目的で、業として、上記のような事件に関し、賃借人らとの間に生ずる法的紛議を解決するための法律事務の委託を受けて、前記のように賃借人らに不安や不快感を与えるような振る舞いもしながら、これを取り扱ったのであり、被告人らの行為につき弁護士法七二条違反の罪の成立を認めた原判断は相当である。(最高裁平成22年7月20日第1小法廷決定(判例時報2093号161頁)より引用。下線は筆者)

この判決には、事件性の要否について、重要な判示があります。「その他一般の法律事件」といえるためには、従来、争いや疑義が具体化又は顕在化していることが必要とする事件性必要説と、そこまで事件化していることを要するものではないという事件性不要説がありました。本件では、具体的事情を詳細に検討した上で、「交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの」は、「その他一般の法律事件」に含まれると判断されています。

この判断が従来の事件性必要説に属するのかはよくわかりませんが、過去の下級審では「争訟ないし紛議のおそれのあるもの」も「その他一般の法律事件」に含むと解するものがあったところ、今回の判断では、少し限定した表現として、「交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの」という基準を用いているように考えられます。今後は、この判決が参照されることを多いであろうと考えます。

ビジネスモデルが違法又は違法である可能性が高い場合(いわゆるグレーの場合)、上場(IPO)は勿論、バイアウトも難しいです。また、本件のように、刑事事件となると、逮捕・起訴された上で、有罪判決を受ける可能性さえあります。確かに、新規事業は、従来なかった事業であるため、開示しした時点では、違法であるかが不明なケースは決して少なくありません。しかし、予め弁護士に相談の上、少なくとも、どの法律に反する可能性があるのか、どの程度、違法となる可能性があるのか、違法と判断された場合のペナルティー等は把握していて絶対に損はありませんので、早め早めの相談をお勧めします。