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ベンチャー法務の部屋

営業黒字化と社長の心理

昨日、NHK教育の「仕事学のすすめ」という番組で、DeNAの南場智子社長が特集されていました。

番組の中で、南場社長が、マッキンゼーのコンサルタントとして非常に優秀であり、その後、インターネット・オークションサイトを立ち上げるも、上手くいかず、事業ドメインをいくつも変遷させ、現在のモバゲーに至るまでの過程が紹介されていました。

この中で、「営業黒字化を記念して、犬を飼うことにしたんです」という話がとても印象的でした。いまも、南場社長のブログによくでてくる「さくら」ちゃん(?)のことですね。

私自身、前の事務所から今の事務所にきて、ゼロから全てを立ち上げていく途中であり、その過程も感じていることですが、営業赤字の間の社長の心理状態は、新事業立ち上げのときの一つの大きなハードルなのではないかと思います。

粗利益でもなく、経常利益でもなく、「営業利益」がプラスにならないと、営業CF > 投資CFという状態にならないと、経営者は、とにかく心が落ち着かないと思います。なぜなら、営業赤字は、本業で利益が出せていない証だからです。自分の考えたビジネスモデルでお金が稼げていない状態とも言い換えられるかもしれません。一旦、営業黒字を安定的に実現した後は、仮に営業赤字になっても、なぜ営業赤字になったのかという分析ができます。環境等に原因があるかもしれません。しかし、立ち上げからずっと営業赤字の場合は、最初に考えたビジネスモデルが悪かったのではないか・・・、このまま永遠に黒字になることはないのではないか、という不安に付き纏われ続けます。

最初は投資が必要で、売上・利益は後から付いてくると頭で理解していても、減っていく銀行通帳の残高を目の前にして平常心を保てるか、起業したときの理念や計画を維持できるか、駄目だとわかった事業から撤退できるか、目先の利益を得るために大事なものを失っていないか等の冷静な判断をし続けられるかが起業家として必要な能力なのだと思います。また、自己資金だけだと、駄目でも自分が責任取ればいいやということになりますが、他人からお金を入れてもらっているとその黒字化へのプレッシャーは尚更大きいものでしょう。

南場社長のような勇気と優秀さを兼ね備えている思われる方であっても、営業赤字である間は、心が休まらず、自分のためにお金をつかうことができなかったのだな、と感じました。

株式会社アントレプレナーファクトリーの嶋内秀之社長と、営業創造株式会社の伊藤一彦社長が共著で書かれている 『ベンチャーキャピタルからの資金調達―MBAキャピタリストとベンチャー社長による
』 という本の中に、以下のようなコラムがあります。伊藤社長の創業時の話です。

コラム 創業時の苦労
創業から大手企業と取引するために、株式会社で始める必要がありました。当時は1千万円なければ株式会社を設立することはできませんでしたが、私の手元には数百万円しかありませんでした。
まず、最初の1千万円は家族と信頼できる友人から借りて起業しました。
(中略)
すると、わずか3ヶ月で1千万円はなくなりました。
そのままでは倒産しますので、あわてて国民生活金融公庫に行き、創業支援融資で父親を連帯保証人にして1千万円ほど借りました。
今度こそ、この1千万円で大丈夫だと思っていました・・・・・・。
しかし、さらに3ヶ月経ったとき、お金は底をついていました。
つぎは、大阪府と大阪市の信用保証協会に行き、500万円ずつの合計1千万円を借りることができました。
これで今度こそ、大丈夫と思っていましたが、さらに3ヶ月経つと会社の通帳残高は12万3,600円しかありませんでした・・・。
(中略)
さすがに、この時は精神的に随分とまいっていました。眠ると、必ず借金取りに追いかけられる夢で目が覚めます。
実際には、きちんとした金融機関で借りているのでありえないのですが・・・・・・。(笑)
2002年3月6日の創業から9カ月後の2002年12月末の出来事でした。この年は、年末年始もお金のことばかり考えていました。人生で最もつらいお正月だったかもしれません。
結局、2003年1月末の主張取引先からの入金額が支払額をようやく上回ってくれたおかげで、首の皮一枚のところで倒産の危機を乗り越えることができました。
(中略)
創業からの1年間は、本当にお金に苦しんだ日々でした。お金を借りるためにほとんどの時間を費やしていました。もう二度と同じことを経験したくはありません。

(以下、略)
(引用終わり。下線部は引用者。)


創業時のお金にとにかく苦労した話、そしてようやく単月でキャッシュ・フローがプラスになったので何とか落ち着けた点が、印象的です。この他人のお金を預ったのに稼げないという状況は、この状況にならないとなかなか実感できないのかもしれません。このエピソードについて、「借入じゃなくて、最初からVCとかエンジェルから出資を得られればよかったのではないか」とか「固定費が高かったのではないか」と批判するのは、簡単です。もちろん最初から素晴らしいネットワークと知識があれば、ここまで苦労されなかったのかもしれません。しかし、起業や経営では、全てが完全に揃うこと等ありませんし、想定外のことが日常的に起きます。計画通りにいかないことが当たり前の世界です。その時に、一番苦しいことの一つがお金の問題だと思います。お金が目の前から消えていくと、なかなか冷静に思考することができなくなってきますし、目先のお金を追いかけがちになります。撤退すべき事業でも撤退のタイミングを失わず固執してしまうかもしれません。伊藤社長は、このような激しい苦労を経ながらも、事業を軌道にのせ、現在、事業を成長させておられます。それもこの間の大変な時期を乗り切り、その経験を後に活かした伊藤社長の才覚があってこそではないでしょうか。

ちなみに、この本は、ベンチャー・キャピタル出身で今も起業家支援をされている嶋内社長と、まさにベンチャー・キャピタルから投資を受けて会社を成長させて来られた伊藤社長の共著ということで、ベンチャー・サポート側と、ベンチャー企業側の方の両方の視点が得られる本となっています。お二人とも直接存じ上げていますが、とても能力が高く、素敵なお二人です。

起業を目指される方は、当初のお金が底をつきかけた場合に、自分がどういう心理状況になるか、それでも今の志がつらぬけるか、冷静な判断ができるかということを、思考実験していただくのも、良いかもしれないですね。

2010年10月08日 11:30|カテゴリー:未分類||2件のコメント

ベンチャー企業のモチベーション2.0 ストック・オプションの話(2)


前回
の続きです。(今回から字を大きくしてみました。)


■ストック・オプションとバイアウト■

前回の最後には、ストック・オプションを保有していたところ、会社が買収の対象になったら、どうなるかという話をしました。

この件で、『ガズーバ!―奈落と絶頂のシリコンバレー創業記 (Impress business books)』というベンチャー企業の悲喜交々が記された面白い本の中に、良いエピソードがありましたので、ご紹介したいと思います。

背景としては、著者がシリコン・バレーで設立したベンチャー企業が、ある会社から買収の提案があったという場面です。

買収はうれしい!?(p.93)

「企業買収」というと買収された側はたまったものではないといった感じがするが、スタートアップ企業にとって買収されるターゲットになることは多くの場合とてもうれしいことなのだ。(中略)買収されるまでは持っている自社の株の売り先はないし、もし主要ファウンダーが抜けたり、株を大量に売っていたりしたら、その会社の将来性が疑われてしまうが、買収によって自分が辞めることができるよいきっかけになるのである。買収する側は残ってもらいたい人には大量のオプションを新規に発行することにより残ってもらい、それ以外の人たちはべスティングを一気に四年分進めて「はいサヨウナラ」という具合である。

シャンティはクビでうれしい!?(p.100)

そのタームシートで面白かったのは、シャンティはクビ、(中略)という条件だった。この場合、うれしいのは誰かというとシャンティである。クビということはチェンジ・オブ・コントロール、すなわち経営権保持者の変更において新会社がオプションの継続をしないということ、これは普通では四年かかるべスティングがなんと彼の場合は二か月も働かないうちに完了し、五千万円ほどのゲンナマを手にすることができる。

(引用終わり)


業界用語が多くて、理解しづらい部分もありますが、解説を試みます。

まず、用語の解説です。

スタートアップ企業: 日本で言うベンチャー企業に近い。英語では、立ち上がったばかりの会社は、start-up(s)という表現が一般的。ベンチャー企業とは言わない。
ファウンダー: 会社の創立者
オプション: ストック・オプション
べスティング: べスティング条項。以下の解説を参照。

次に、背景事情の解説です。

米国では、上場は、ストック・オプションの行使条件ではないことがほとんどであると思われます。上場以外に、バイアウト(M&A)でExitする場合も少なくありませんので、上場を行使条件とすると、ストック・オプションをもらう側が納得しないということが背景にあると思います。

べスティング条項とは、年が経過するごとに、行使可能割合が増える条項のことです。ストック・オプションを100個もらったとしても、最初から100個全部行使できるわけではないのが通常です。会社に長居してもらうため、取得して6カ月経過で12.5%、1年経過でさらに12.5%・・・と徐々に行使可能割合が増えるように設計されることが(米国では)多いです。6か月で12.5%だと、4年で100%となり、全て行使できることになります。日本でも時々規定されますが、後述する税制適格との関係もあり、あまりみかけません。

さらに、ややこしいのは、ガズーバの件を含む海外の会社のストックオプションでは、このべスティング条項に但書がついており、チェンジ・オブ・コントロール(支配権の変更)以降は、ストック・オプションの保有者はストック・オプションを全部行使することができるとなっていることが多い点です。チェンジ・オブ・コントロール(支配権の変更)の際に行使できず、残存又は消滅すると、受け取る側が納得しないうえ、残存されてしまうと、100%買収にならないので、買収側も嫌がることになります。

これから日本のベンチャー企業でも、このようなべスティング条項を入れるタイプのものが増えてくるかもしれません。


■ストック・オプションと税制適格■

ストック・オプションを設計する際は、基本的に税制適格を満たすように設計した方がよいです。

税制適格とは、租税特別措置法第29条の2第1項各号等の所定の要件を満たすことを言います。これらの要件を満たしたストック・オプションは、行使時に所得税がかからないという特典を受けることができます。代わりに、行使によって取得した株式を売却するときに、税金がかかります。

1.行使価額5万円の新株予約権をもらう
2.上場して株価が100万円になった
3-1.新株予約権を行使して、会社に5万円を払い込んで株をもらう。
3-2.株を市場で100万円で売った
4.新株予約権の行使で、95万円の利益がでた

前回のストーリでは、本来、3-1の部分で、所得税がかかるところ、税制適格の場合は、かからないということになります。代わりに、4のところで、譲渡益課税の対象になります。3-1の部分では、まだ現金が手元にありませんので、税金が発生してしまうと大変です。さらに、所得税は譲渡益課税より税率が高いことが多いですので、この点も税制適格がないと不利です。

税制適格の要件には、行使は2年目から10年目までの間に行うことや、権利行使価額の年間の合計額が1200万円を超えない等があります。したがって、税制適格を受けるためには、当初から2年は行使できないという割当契約書を結ぶことになります。なので、最初に割当契約書を結ぶときには、べスティング条項を定めても、最初の2年は実感ありません。おそらく、べスティング条項やチェンジ・オブ・コントロールを導入する場合は、(予め割当契約書に仕組んでいたとしても税制適格を満たす形で割当契約書を作成し)買収の提案があってから割当契約書を変更するのが相当かと思います。

なお、発行済株式数の3分の1超を保有する大口株主も税制適格を受けることができません。この場合に対応策は、別途考える必要がありますので、専門家にご相談ください。


■ストック・オプションと金融商品取引法■

ストック・オプションの発行は、手続的に、新株予約権という有価証券の取得の申込みの勧誘を経ることになりますので、「有価証券の募集」か「有価証券の私募」のいずれかに該当することになりますので、「有価証券の募集」に該当しないようにするか、「有価証券の募集」に該当したとしても有価証券届出書が免除されるようにしなければ、有価証券届出書を提出する義務を負ってしまいます。

この点も留意して頂く必要があります。特に、50人(通算規定に注意)以上に発行する場合は、ご留意ください。


■その他■

ストック・オプションを発行することは、既存の株主にとっては保有する株式の価値が希薄化してしまう可能性があることを意味します(特に、無償発行の場合)。とはいえ、役員や従業員等のモチベーションがアップすることも、株主の望むところではありますので、そのあたりを上手に調整をつける必要があります。経営陣は、株主に対して、ストック・オプションの有用性や適切性を説明することが重要です。


■まとめ■

以上のように、ストック・オプションの発行には、法的に留意すべき点が少なくないです。しかし、上手に活用すれば、役員や従業員、起業家自身にとっても、大きなモチベーションとなることになることは間違いないと思います。たとえ、それがモチベーション2.0であったとしても、現金の支出を伴わずに、金銭的モチベーションを産み出せる方法として、貴重です。条件等のアレンジの幅も大きいですので、専門家と相談しながら、上手に活用していただければ、と考えています。

2010年10月07日 08:30|カテゴリー:未分類||コメントはまだありません

ベンチャー企業のモチベーション2.0 ストック・オプションの話(1)

企業にとって、「人」をどう集めるかは、規模の大小にかかわらず、常に頭を悩ませる問題です。

そして、素晴らしい人が、我が社に入ったとしても、居続けてもらうことは、さらに難しい問題です。

このことは、起業家、ベンチャー企業にとっても、全く変わることがありません。
大企業ではないが故、リスクが大きいと思われているが故、1人1人が会社の成長にとって大きな影響を与えるが故に、普通の会社以上に、重要な問題といえます。

今日は、ベンチャー企業が「人」にモチベーションを与える(与えようとする)ために用いられるストック・オプションの概要について、記してみたいと思います。


■ストック・オプションとは■

一般に、ストック・オプションは、会社法の「新株予約権」を意味します。

新株予約権とは、権利者が、あらかじめ定められた期間内に、あらかじめ定められた価額を、株式会社に払い込めば、その会社から一定数の株式を交付してもらえる権利です。

とはいえ、何のことか分かりにくいですので、少し解説します。

「あらかじめ定められた価額」を「行使価額」といいます。

1.行使価額5万円の新株予約権をもらう =あなたは5万円を払えば、わが社の株1株を買う権利をもらう
2.上場して株価が100万円になった
3.新株予約権を行使して、会社に5万円を払い込んで株をもらい、それをすぐに市場で100万円で売った
4.新株予約権の行使で、95万円の利益がでた

というシンプルなストーリーを想定していただければわかりやすいかと思います。このように、新株予約権をもらうことのメリットは、とりあえず、「時価」-「行使価額」と思っていただければ結構です。

このストーリが理解できていると、新株予約権をもらった人は、「上場」や「株価を上げる」ことについて、モチベーションが上がりそうですね。


■ストック・オプション自体の価値■

ストック・オプション自体の価値を算出するためには、ブラック・ショールズ・モデル等でオプションの価格を算出するしかありません。(昔、個人的に、エクセルで算出したことがありますが、前提もあまり現実的ではない上、ボラティリティーがはっきりしないため、実務的にはほとんど意味がありませんでした。)

ここで言いたいのは、ストック・オプション自体は、価値があるということです。無償で新株予約権を取得できれば、リスク・ゼロで、利益が出るかもしれませんので、新株予約権には価値がありそうということは直感的にも理解してもらえると思います。

なお、ベンチャー企業によるストック・オプションは、通常、無償で発行されます。


■ストック・オプションと上場の関係■

基本的に、ストック・オプションは、会社が上場しないとほとんど意味がありません(=儲かりません)。上記のストーリーの2では、「株価が100万円になった」とあり、ストーリーの3で、「市場で100万円で売った」とあることからもわかるとおり、上場して株式に値がついて、いつでも買ってくれる人がいることが前提です。

ずっと、非公開を想定している会社では、あまり意味がないのです。

では、M&AでExitするケースでは、どうでしょうか。

日本では、上場することが、新株予約権の行使の条件になっているケースが多いかもしれません。上場が新株予約権の行使の条件になっている場合は、会社が上場企業等に買収されても、何も美味しいことはありません(このあたりは実はややこしい論点がありますので、新株予約権の設計にあたっては弁護士等の専門家にご相談ください。)。ただ、現実的には、買収した企業が、上場企業の新株予約権やその他の代替措置を講じるケースもないわけではありません。

このあたり、そもそも行使条件をどうするか、どの手続で定めておくべきか、どのように定めるか等のテクニカルな部分は、昨日ご紹介した本『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』の220頁「バイアウト発生時の処理」以下に触れられていますし、最終的には、弁護士等の専門家にご相談いただいた方がよいと考えます。

((2)に続きます。)

(余談)

■表題の「モチベーション2.0」について■

ダニエル・ピンク氏の『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか 』では、モチベーションについて、モチベーション1.0や2.0という旧バージョンと、モチベーション3.0という新バージョンがあるというジャンル分けをされているようです。

原理 具体例
モチベーション1.0 生存本能 サーベルタイガーの牙を逃れたいから、速く走れるようになろう
モチベーション2.0 信賞必罰 プロ野球選手の成果報酬 交通違反の罰金
モチベーション3.0 自律性、マスタリー(熟達)、目的 勤務時間の20%を主要業務とは異なるテーマに充てるルールの導入


ベンチャー企業や中小企業の場合は、特に「やりがい」や「ダイナミズム」、「扱える範囲が多い」、「経営者に近い」等、モチベーション3.0を上手く活用する必要がありますが、だからといって、モチベーション2.0の役割が無いわけではありません。上記のダニエル・ピンク氏も、モチベーション2.0に頼りすぎることに警告を発しているのであって、モチベーション2.0の役割を否定されているものではないと、理解しています。

ストック・オプションは、まさにモチベーション2.0の話と思いましたので、このような表題とさせていただきました。

2010年10月06日 13:30|カテゴリー:未分類||2件のコメント

『起業のファイナンス』が届きました

昨日、私のところにも磯崎先生の『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』が届きましたので、早速読み始めました。

まだ読み終わっていないのですが、最初から、「賛成!」「流石!!」とうなづくところばかりです。

とりあえず最初の章で印象に残ったところは、ピックアップしますと・・・

・「資金調達がいらない起業」が増えている
・不況時は起業のチャンス
・「イケてる」起業を増やし、投資を増やし、ベンチャー企業を取り巻く生態系全体を大きくしていくことが必要
・(日本でも(米国等と同様に))将来成功が見込めそうなベンチャー企業には資金を出したい人が群れをなして待っている
等々

この中で、「資金調達がいらない起業」が増えているという点は、以前のエントリー「2つに分かれた起業のパターン」でお伝えした点と共通の話です。ビジネスモデルによっては、以前と比べて起業に必要な資金が劇的に少なくて済むという環境が整ってきたということです。デスクトップよりiPhoneを、オフィスより貸会議室を、電話よりskypeを、自社サーバーよりクラウドを、出張よりビデオ会議を、、、知恵と道具で、かなり安く済みます。

いま、起業するための環境は本当に整ってきています。就業規則等に反しない限りは、ある程度、安定したキャッシュフローが得られるまで、正社員で、その後は、独立するというタイプの起業も増えてくるかもしれません。システム・エンジニアの方には、多いような気がします。

こういう企業で、重要なリソースは、「人」であること、もっというならば、「誰がやるか」「誰とやるか」という点の比重が非常に高くなっていると思います。

勿論、「人」以外にも、起業に重要な要素は数多くあります。(一介の弁護士の考えていることが全てとも思えませんが・・・)このブログでも、これから、今までの経験に基づいて、出来る限り、起業に重要な要素を皆さんにお伝えしていきたいと思います。

2010年10月05日 14:00|カテゴリー:未分類||コメントはまだありません

お知らせ 講演「IPOを目指す会社の法務上の留意点 ~反社会的勢力排除を中心に~」の御案内


今日は、お知らせのみです。

池銀キャピタル様の御好意で、2010年10月26日(火)午後5時から、池銀キャピタル様にて、「IPOを目指す会社の法務上の留意点 ~反社会的勢力排除を中心に~」という内容で、講演させていただきます。講演後は、交流会もございます。

第65回池銀キャピタル勉強会
日時:2010年10月26日(火) 17:00~19:00
場所:大阪市北区茶屋町18番14号大阪梅田池銀ビル12階ホール


タイトルは、上記のようになっていますが、IPOを目指す会社だけでなく、IPOやM&AでのExitを目指している会社、ベンチャー・キャピタルからの資金調達を考えている会社、既に資金調達に成功しハイ・スピードの成長を目指している会社に加え、こういった会社に投資しておられる投資家の皆様に、お役に立つ内容にする所存です。

前半では、総論及びビジネス上の法務の留意点、後半では、投資家目線と事業会社目線のそれぞれから反社会的勢力排除を考えるという内容にする予定です。

IPOでは、有価証券届出書やIの部の作成が必須ですし、M&Aでもデュー・ディリジェンスを受けなければなりません。また、安定的に成長するためには、予め法務トラブルが起きないように予防することが非常に重要です。これらの観点から、特に法務的に留意しておくべき点を重点的に扱いますので、ご興味のある方は、是非、お越しください。

お申込みにつきましては、池銀キャピタル様の担当者から案内をいただいている方はいつも通りで結構です。参加されたことのない方につきましては、私までご連絡いただければ幸いです。

メールアドレスは、contact @マーク ymmlaw.jp です。@マークの部分を通常の@にして下さい。

数多くの皆様のご参加をお待ちしています。

【追記:10/1】

※ 10月26日(火)の講演は、事前のエントリーが必須となります。エントリーをされていない方は、事前に、当職から池銀キャピタル様に連絡する必要がありますので、必ず御連絡いただきますようお願い申し上げます。当日、エントリー無しにお越しになった場合、入室できない可能性もありますので、御留意下さい。

2010年09月29日 18:00|カテゴリー:未分類||コメントはまだありません

2つに分かれた起業のパターン

TechCrunchに、 「二つに分かれたベンチャーキャピタル業界: Webとクリーンテクを比較すると…」 という記事がありました。

この記事では、資本があまり必要なくなったweb関連企業への投資と、やはり多くの資本を必要とするクリーンテク企業への投資は、様相がたいぶ違ってきた旨を指摘しています。同記事では、2010年1月から8月までのデータを集計して、対比しており、その内容は以下の表のとおりです。(元となったデータには、不十分な点があることは同記事も認めています。あくまでも参考程度ということです。)

Cleantech Web
資本 多く必要 それほど必要としない
VCの役割 資金の提供 コネやアドバイス、取引をまとめる手腕
投資金額 $1.87B $1.35B
投資件数 61件 262件
投資金額前年同期比 77%増 8%減
1件当たり平均投資金額 $30.7M(26億950万円) $5.2M(4億4200万円)
シードラウンドの投資金額の平均 $1,064,600(9049万円) $534,132(4540万円)
買収でのExit 4件 61件
買収の平均サイズ $181,575,000(154億3387万円) $63,152,269(53億6794万円)
(注1) 投資金額以下のデータは、2010年1月から8月までの米国のものです。
(注2) この表は、記事内容をまとめたもので、独自に集計したものではありません。
(注3) 円換算については、1ドル85円で計算したものを表記しています。


クリーンテク系の企業への投資は、専門的な知識(特にサイエンスの中身及び業界の製品化に至るまでの進行度合い等)が必要とされることが多く、投資家も、その業界にある程度精通していなければならないケースも少なくないです。日本でも理系出身のキャピタリストが増えてきたように思います。したがって、これまでも通常のベンチャー投資とは分けて考えられることも少なくありませんでした。ファンド自体、別建てになっていることもあります。このタイプの企業では、特許を始めとする知的財産権のコントロールが重要であり、開発のための基盤、ライセンス及び人材が必要とされ、初期に膨大な研究開発費を計上することが多いと思われます。

一方で、web系の会社は、初期に必要とされるのは、資本=お金ではなく、メンバーであり、ネットワークであり、優れたアイディアでしょう。クラウド化やサーバー代が限りなく安くなってきていること等が背景にあると思います。知的財産権は著作権や商標権にからんで登場することはあっても、それ以上、重要ではなく、優れたアイディアと他の追随を許さないスピードが必要とされるように思います(特に、フリーミアム系のビジネスモデルでは、スピードが重要であると思います。)。そのため、初期からマーケティングコストが必要となり、かつ少ないコストの中でアイディアを駆使した展開が求められるように思います。

これから起業される会社におかれましては、自らがどちらのタイプの会社であるかをご判断いただいた方がよいかもしれません。例えば、バイオ系で初期に要する資本が多い場合には、上の表のクリーンテク系だなという具合です。そして、その上で、資本政策策定やベンチャー・キャピタルに期待する内容についての参考にされてみては如何でしょうか。

2010年09月24日 14:31|カテゴリー:未分類||2件のコメント

会社の未来は4つしかない

みなさんが何かの事業を行うために、会社を設立するとき、会社の未来にどの程度、想いを馳せるでしょうか。

理念や志、経営戦略、ビジネスモデル、事業ドメイン、マーケティング、資金調達、、、etc.起業家や経営者が考えることはたくさんあります。

それらは極めて重要なことばかりであり、実際に起業家や経営者は考えていることでしょう。しかし、会社が順調に成長した場合、どのような未来になるかまで考えられているケースは、多くないように感じます。

事業会社の未来は、基本的に以下の4つしかありません。

① 上場(IPO)
② 買収される(M&A)
③ 事業承継(相続)
④ 破産・清算(事実上の破綻も含む)

そして、この4つの未来のどれを志向するかは、予め決めておいた方がよいでしょう。もちろん、状況に応じて、途中で変わることは十分ありうることですので、実際には、「現時点では」「ざっくりとしたイメージとして」という形になることが多いでしょう。また、ビジネスモデル等の経営戦略によってどれを志向すべきかということが自ずと決まる場合もあり得ます。

①の上場(IPO)とは、基本的には「公の会社になる」ということです。いつでもだれても会社の株式を買ってもよいという状態になりますので、株式市場に対して常に誠実な態度と取らなければなりません。上場には、優れた人材が集まりやすい、市場から資金を調達することができる、上場前からの株主やストック・オプション保有者が上場とともに個人資産を形成できる、会社の事業継続が大株主の相続問題に巻き込まれにくい(全く巻き込まれないわけではない)等といったメリットがあります。一方、重要な会計情報等を開示しつづけなければならないという義務が課されます。したがって、ある程度の規模であることや将来の企業成長が予想されることあることが求められますし、継続開示に耐えうるような社内体制の整備も求められます。社長の地位は、多くの株主に信任が得られそうな人物のなかから現社長や取締役会が選ぶことになります。

②の買収(M&A)とは、基本的には「どこかの会社のものになる」ということです。上場会社の子会社になる場合は、その上場会社の傘下に入るということを意味し、事実上の上場に近い効果もあります。100%子会社になる場合や全部の事業の譲渡の場合では、既存の株主は、これまでの株式に代わって現金や株式を手にすることになります。社長のイスは、親会社の意向で決まります。

③の事業承継(相続)とは、「非公開会社で居続ける」場合です。多くの日本の中小企業がこれに当てはまります。この場合、「次の社長はだれか」という事業経営の後継者の問題と、「大株主の保有する株式をだれが相続するか」という相続問題の両方を解決しなければなりません。

④の破産・清算は、最初から志向する人はいません。夜逃げでからっぽに幽霊会社になるケースもこれに含まれます。破産の場合は、社長も併せて個人破産するケースがほとんどです。利益を生み出す事業が残っている場合は、民事再生や会社更生という手段がとられることもあります。

①から③までのどれを志向するか、明確になっていると、ファイナンスの戦略だけでなく、社内体制の準備もできます。チャンスがあれば、上場することや買収されることを考えている場合、いつ提案があっても、提出を求められた資料を提出できるように資料を整理しておくでしょう。M&Aの場面では、事業の継続性についてのリスク高い場合、売却価格が下がってしまいます。普段からの社内体制の整備しだいで、相当の金額の差になるかもしれません。将来、①のIPOや②のM&Aを考えている場合は、早い段階から弁護士に相談して、ビジネスモデルや契約書、各種議事録をチェックしてもらうことが、外から見た会社のリスク評価を下げることに繋がるのです。

①でも②でもない場合は、会社の主要株主の株式が相続されることに想いを馳せておかなければ、主要株主が亡くなった後に、会社が相続問題に巻き込まれるリスクが高くなります。株式は、法定相続されると、相続人間で共有されてしまいます。100株を保有する株主について相続が生じ、相続人が、妻1人、子2人の場合、その100株は、妻50株、子25株ずつとなるのではなく、その100株総てが共有となってしまうのです。こうなると遺産分割協議か株式の権利の行使者を誰にするかの合意がまとまるまで、原則として権利行使できなくなります。遺言でその株式を誰に相続するかを予め決めておくことが会社を継続することに繋がります。

会社の将来についての戦略をExit戦略等ということもあります。ただ、Exitとはいえ、会社が終わるわけではなく、継続して成長していくために、言わば、どのように脱皮してゆくのか、という観点から今するべきことを決めると考えていただく方がよいかもしれません。

これから起業される方、起業して間もない方におかれても、上記の①から③までのどれを志向するのか、頭の片隅にでも置いていただけると、よいのではないでしょうか。

2010年09月02日 08:30|カテゴリー:未分類||コメントはまだありません

はじめに

はじめまして。

私は、今年の1月から大阪で、弁護士をしている森 理俊と申します。去年まで6年あまり、東京のベンチャー・ビジネスに特化した法律事務所で、勤務していました。

これから、ベンチャー関連を中心に、ベンチャーキャピタル、IPO、企業法務等の話や個人的な雑感について、このブログ「ベンチャー法務の部屋」に備忘録的に記録しておこうと思っています。ちなみに、どこかで聞いたことのあるような名前かもしれませんが、本家本元の山口先生には、一応了承を得ております。

どうぞ、これから、宜しくお願いいたします。

2010年09月01日 09:50|カテゴリー:未分類||コメントはまだありません