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ベンチャー法務の部屋

「公正な価格」についての判断に回帰分析の手法を用いられた裁判例


株価算定事件について、昨年10月に参考となる裁判例がありましたので、ご紹介します。


インテリジェンス株式買取価格決定申立事件抗告審決定
平成22年10月19日東京高裁決定平成22年(ラ)第798号(金融・商事判例No.1354,14頁、 商事法務No.1921,57頁)

回帰分析の手法は、一般的に科学的根拠に基づく合理的手法であるというべきであるところ、本件におけるNERA意見書の回帰分析の手法を用いたジャスダック指数の変動率に基づく本件恒等式は抗告人株式価格の価格変動を予測するにつき高い信頼水準で統計的に有意であると認められるから、本件恒等式により補正された本件株式交換の効力発生日前の価格をもって算定することが、本件株式交換の計画公表前の一定期間の市場株式価格の平均値をもって算定することよりも、より高い合理性を備えるものというべきである。
そして、恒等式の変動係数を当てはめる市場インデックス、業界インデックス等(本件ではジャスダック指数の変動率)は、投機的思惑等一定の偶発的な要素の影響を受ける面もあるので、偶発的要素による影響を排除するためにも、株式交換の効力発生日前の一定期間の平均値をもって抗告人株式の有する基準時の客観的価値を判断するのが相当であるところ、審問の全趣旨によれば、本件における上記の期間としては、本件株式交換の効力発生日の前日からその前1か月間の平均値をもって算定した価格をもって、本件株式の「公正な価格」とするのが相当であると解される。
(引用終わり)


上場企業の株価算定の実務は、東京地方裁判所商事部を中心に、ある程度、定着しつつあるようにも感じます。とはいえ、本件は、第1審の東京地裁決定で「相手方が主張する回帰分析的手法を用いた算定を行うことは相当と認められず、相手方の上記主張は採用することができない。」と決定されていたものを、東京高裁により、第1審決定を変更して、回帰分析という手法に基づく変更(本件では、減額での変更)が認められたものです。

特別抗告・許可抗告中とのことですので、今後、最高裁決定により変更される可能性はあります。東京高裁が東京地裁商事部の決定等を変更した後、最高裁が東京地裁商事部の判断を支持するケースは、決して少なくありませんので、要注意です。

2011年01月31日 19:00|カテゴリー:法務関連ニュース||コメントはまだありません

「会社計算規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集の開始

法務省から、「会社計算規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集(パブリックコメント)が開始されています。

詳細は、e-Govの「「会社計算規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集」をご参照ください。

主な内容としては、会計に関するものであり、定義規定の増設・改訂や注記に関する規定の整備、監査報告等に関する規定の整備等となっています。

基本的には会計実務に影響する内容と考えます。

ところで、今回の改正案には、「遡及適用」「誤謬」「誤謬の訂正」「会計上の見積り」「会計上の見積りの変更」といった定義が追加されました。もちろんIFRS時代を見越してのものであると考えます。過年度の決算書類の修正という問題は、会社法上も難しい論点をはらんでいるところではありますが、そういった論点も、類型化される等して、どんどん整理されていくのかもしれません。

2011年01月25日 20:00|カテゴリー:法務関連ニュース||コメントはまだありません

今月の重要判例(追加)

昨日も重要判例がありましたので、追加です。

3 「ロクラクII」事件最高裁判決

平成21(受)788 著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件 平成23年01月20日 最高裁判所第一小法廷 判決

原文はこちら(PDFファイル)

放送番組等を録画する機械は会社側において、録画の指示を利用者がするというサービスについて、私的使用を目的とする適法な複製なのか、違法な複製なのかが争われた事案です。すなわち、複製の主体は、録画する機械を管理している会社か、録画の指示を出している利用者かという点が争点です。

この点、本判決では以下のように判示しています。

放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において, テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」とい う。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が 自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容, 程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービ ス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても, 放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。
以上によれば,本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等を認定することなく,親機ロクラクが被上告人の管理,支配する場所に設置されていたとして も本件番組等の複製をしているのは被上告人とはいえないとして上告人らの請求を 棄却した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」

また、次の金築誠志裁判官の補足意見も重要でしょう。

「親機の管理が持つ独自の社会的,経済的意義を軽視するのは相当ではない。本件システムを,単なる私的使用の集積とみることは,実態に沿わないものといわざるを得ない。」
「著作権法21条以下に規定された「複製」,「上演」,「展示」,「頒布」等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れ た解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって,このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。」

最後の補足意見は、結局このサービスは、海外留学中の息子が母親に「今度の○○っていうテレビ番組とっておいて。」「そのテレビ番組をDVDにして送ってよ。」というのとは、社会的、経済的に意味が違うでしょうということを言っているのだと思います。それは、わざわざ利用者のために、複製を容易にするための環境等を整備した上、番組情報の入力等の複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしているという実態があるからということになります。

この判決についても、昨日の「2」の「まねきTV」事件最高裁判決とともに、著作権が関連するサービスに大きな影響を与えるでしょう。判決に対する賛否も両方あり、これから喧々諤々の議論がなされると予想されます。

今月の重要判例

1月も、もう中旬から下旬に差し掛かろうとしています。

昨晩は、体調が少し優れませんでしたので、今朝の更新ができませんでした。今日は、今月出された2つの最高裁判例を紹介します。いずれも、実務に与える影響は大きいと考えます。

1 破産管財人は、労働債権について、支払いの際に源泉徴収義務を負わないとする最高裁判決

平成20(行ツ)236 源泉徴収納付義務不存在確認請求事件 平成23年01月14日 最高裁判所第二小法廷 判決

原文はこちら(PDF)

「破産管財人は,破産手続を適正かつ公平に遂行するために,破産者から独立した地位を与えられて,法令上定められた職務の遂行に当たる者であり,破産者が雇用していた労働者との間において,破産宣告前の雇用関係に関し直接の債権債務関係に立つものではなく,破産債権である上記雇用関係に基づく退職手当等の債権に対して配当をする場合も,これを破産手続上の職務の遂行として行うのであるから,このような破産管財人と上記労働者との間に,使用者と労働者との関係に準ずるような特に密接な関係があるということはできない。また,破産管財人は,破産財団の管理処分権を破産者から承継するが(旧破産法7条),破産宣告前の雇用関係に基づく退職手当等の支払に関し,その支払の際に所得税の源泉徴収をすべき者としての地位を破産者から当然に承継すると解すべき法令上の根拠は存しない。そうすると,破産管財人は,上記退職手当等につき,所得税法199条にいう「支払をする者」に含まれず,破産債権である上記退職手当等の債権に対する配当の際にその退職手当等について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負うものではないと解するのが相当である。

このほか、管財人は、管財人報酬については、源泉徴収義務がある旨、破産管財人の報酬に係る源泉所得税の債権は財団債権に当たる旨を判示しています。

「破産管財人の報酬は,旧破産法47条3号にいう「破産財団ノ管理,換価及配当ニ関スル費用」に含まれ(最高裁昭和40年(オ)第1467号同45年10月30日第二小法廷判決・民集24巻11号1667頁参照),破産財団を責任財産として,破産管財人が,自ら行った管財業務の対価として,自らその支払をしてこれを受けるのであるから,弁護士である破産管財人は,その報酬につき,所得税法204条1項にいう「支払をする者」に当たり,同項2号の規定に基づき,自らの報酬の支払の際にその報酬について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負うと解するのが相当である。

そして,破産管財人の報酬は,破産手続の遂行のために必要な費用であり,それ自体が破産財団の管理の上で当然支出を要する経費に属するものであるから,その支払の際に破産管財人が控除した源泉所得税の納付義務は,破産債権者において共益的な支出として共同負担するのが相当である。したがって,弁護士である破産管財人の報酬に係る源泉所得税の債権は,旧破産法47条2号ただし書にいう「破産財団ニ関シテ生シタルモノ」として,財団債権に当たるというべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第6号同43年10月8日第三小法廷判決・民集22巻10号2093頁,最高裁昭和59年(行ツ)第333号同62年4月21日第三小法廷判決・民集41巻3号329頁参照)。また,不納付加算税の債権も,本税である源泉所得税の債権に附帯して生ずるものであるから,旧破産法の下において,財団債権に当たると解される(前掲最高裁昭和62年4月21日第三小法廷判決参照)。」

この判決は、管財実務に大きな影響を与えるでしょう。管財人にとっては、基本的に、従来の実務の取扱いが認められたことになり、良かったのではないでしょうか。なお、この判決は、一般の企業法務には、全く関係ないといって、差し支えないと考えます。

2 「まねきTV」事件最高裁判決

平成21(受)653 著作権侵害差止等請求事件 平成23年01月18日 最高裁判所第三小法廷 判決

原文はこちら

送信可能化権については、以下のように判示しています。

「送信可能化とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力するなど,著作権法2条1項9号の5イ又はロ所定の方法により自動公衆送信し得るようにする行為をいい,自動公衆送信装置とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され,又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう(著作権法2条1項9号の5)。

自動公衆送信は,公衆送信の一態様であり(同項9号の4),公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。

そして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。

これを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能化に当たるというべきである。」

そして、公衆送信権侵害については、以下のように判示しています。

「本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記(1)ウのとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。」

この判決がインターネットビジネスについて、どこまでがこの判決の射程となるのかは分析もしておりませんし、不明ですので、今回は紹介のみにとどめさせていただきます。ただ、書籍配信ビジネスや動画配信ビジネスについても影響する可能性は否定できません。この判決については、これから評釈が多く出てくると思いますので、それらにも注目した方がよいでしょう。

ビジネスモデルの落とし穴 弁護士法72条

ベンチャー企業に限らず、企業のビジネスモデルは、違法なものであってはならないことはいうまでもありません。ただ、違法かどうかの判断は、直感だけでは難しいのも事実です。今回は、ベンチャー企業でもしばしば問題となる弁護士法72条を取り上げます。

弁護士法72条というのは、次のような条文です。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条  弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

少しわかりにくい条文かもしれません。弁護士資格なく、報酬を得る目的で、法律事件に関して、法律事務を取り扱ったり、これらの紹介をしたりすることを禁止するということです。

昨年、賃貸物件の立ち退き交渉について、弁護士以外の者が行った場合に、この条文に抵触するか否かが問題となった事案(刑事事件)について、最高裁の決定がありました(最高裁平成22年7月20日第1小法廷決定(判例時報2093号161頁))。

この事件は、土地家屋の売買業等を営む被告人A社の代表取締役である被告人Bが、同社の義務に関し、C社から、C社が所有権を取得したビルについて、74名の賃借人らとの間で、賃貸借契約の合意解除に向けた契約締結交渉を行って合意解除契約を締結した上で各室を明け渡させるなどの業務を行うことの委託を受けて、これを受任したという事件です。

この事件について、最高裁は、次のように判示しています。

被告人らは、多数の賃借人が存在する本件ビルを解体するため全賃借人の立ち退きの実現を図るという業務を、報酬と立ち退き料等の経費を割合を明示することなく一括して受領し受託したものであるところ、このような業務は、賃貸借契約期間中で、現にそれぞれの業務を行っており、立ち退く意向を有していなかった賃借人らに対し、専ら賃貸人側の都合で、同契約の合意解除と明渡しの実現を図るべく交渉するというものであって、立ち退き合意の成否、立ち退きの時期、立ち退き料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るものであったことは明らかであり、弁護士法七二条にいう「その他一般の法律事件」に関するものであったというべきである。そして、被告人らは、報酬を得る目的で、業として、上記のような事件に関し、賃借人らとの間に生ずる法的紛議を解決するための法律事務の委託を受けて、前記のように賃借人らに不安や不快感を与えるような振る舞いもしながら、これを取り扱ったのであり、被告人らの行為につき弁護士法七二条違反の罪の成立を認めた原判断は相当である。(最高裁平成22年7月20日第1小法廷決定(判例時報2093号161頁)より引用。下線は筆者)

この判決には、事件性の要否について、重要な判示があります。「その他一般の法律事件」といえるためには、従来、争いや疑義が具体化又は顕在化していることが必要とする事件性必要説と、そこまで事件化していることを要するものではないという事件性不要説がありました。本件では、具体的事情を詳細に検討した上で、「交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの」は、「その他一般の法律事件」に含まれると判断されています。

この判断が従来の事件性必要説に属するのかはよくわかりませんが、過去の下級審では「争訟ないし紛議のおそれのあるもの」も「その他一般の法律事件」に含むと解するものがあったところ、今回の判断では、少し限定した表現として、「交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの」という基準を用いているように考えられます。今後は、この判決が参照されることを多いであろうと考えます。

ビジネスモデルが違法又は違法である可能性が高い場合(いわゆるグレーの場合)、上場(IPO)は勿論、バイアウトも難しいです。また、本件のように、刑事事件となると、逮捕・起訴された上で、有罪判決を受ける可能性さえあります。確かに、新規事業は、従来なかった事業であるため、開示しした時点では、違法であるかが不明なケースは決して少なくありません。しかし、予め弁護士に相談の上、少なくとも、どの法律に反する可能性があるのか、どの程度、違法となる可能性があるのか、違法と判断された場合のペナルティー等は把握していて絶対に損はありませんので、早め早めの相談をお勧めします。

金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン(中間案)の公表

 
 
金融庁から12月7日付けで「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン(中間案)の公表及び同プラン(中間案)に係る御意見の募集について」と題して公表及び意見募集が開始されています。
 

金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン(中間案)

http://www.fsa.go.jp/news/22/sonota/20101207-2.html

 
IPOを目指す会社やIPO関係者は必見と思われます。

詳細に読んでいませんので、ざっくりとみたところの感想を申し上げますと、「民法上の任意組合に関する金商法の適用関係の明確化」や「投資運用業の規制緩和」等、金商法による規制は、負担軽減の方向性が打ち出されているようですし、「例えば、売上げに占める割合がごくわずかである項目の予実乖離等、企業全体か ら見て軽微と考えられる事項については審査を簡略化する」等、引受審査による負担は軽減化の方向で検討されているようで、(具体的に変な方向に進まないのであれば)評価し得るように思われます。ただ、ところどころ「ん?」というものもあります。「ん?」の代表的なところは、「銀行・保険会社の投資専門子会社によるベンチャー企業等への劣後ローン等の解禁」や「金融機関において、企業の業況、財務内容等だけではなく将来の成長可能性も重視した融資等に取り組むことを促進する」という部分です。

前者は、(私が勉強不足だからかもしれませんが)銀行・保険会社の投資専門子会社がベンチャー企業に劣後ローンで融資するケースがあまり想定できません。劣後ローンのCB(新株予約券付社債)をつなぎ融資的に利用するというのであれば、わからないでもないですが(次のラウンドで○円以上出資を受けたらorマイルストーンを達成したら、DESしてあげますよというイメージです。)、少なくともベンチャー企業側は、「劣後」だから嬉しい(資金を利用しやすい)というケースは稀だと思います。

後者は、一昨日のエントリーでも書いたように、借入(デット・ファイナンス)では、融資先がつぶれないことが重要であり、将来の成長可能性なぞ、それが2Xのストーリーであっても100Xのストーリーであっても(利息制限法の範囲内でしかリターンを得られない融資では、)お金の出し手にはほとんど意味がありません。銀行にとっては、融資先への「将来、成長するの?」という質問はあまり意味がなく(リターンにつながらず)、「将来、つぶれないよね?!」という点が関心事です(リターンに影響する)。

結局のところ、ベンチャー・キャピタル的な業務を公的な形で直接サポートしていくのは、かなり難しく、よほど上手くやらないと、良い効果が得られないように思います。それは、ベンチャー・キャピタルが、リーダーの情熱やチームワーク、それにビジネスモデルをもとに出資するかどうかを判断する極めて属人性の高い、直感力を要する仕事だからです。今日、シリコンバレーで活躍するエンジェルとベンチャー・キャピタリストのお話を聞かせていただきましたが、この点は間違いないと思います。公的資金を出資の形でベンチャー企業に入れるとなると、キャピタリストの腕を信じて、全面的に任せるような形でないと、なかなか上手く行かないのではないでしょうか。全面的に任せるのが難しいのであれば、投資自体は市場に委ね、投資しやすい環境整備に注力していただいた方がよいでしょう。

逆に、(私も含めた)民間側は、自由であるが故に、それぞれの方法で、スタートアップ企業、ベンチャー企業が成長するための生態系を活性化させて、一つでも多くの素敵なビジネスが世に出て、社会がより良くなることを望んでいます。公の仕組みやお金との間で、よりよい連携ができると良いですね。

2010年12月10日 06:30|カテゴリー:法務関連ニュース||コメントはまだありません

表明保証違反を理由とする株式譲渡契約の解除につき解除原因がないとした裁判例

 
判例時報平成22年11月21日号No.2089に、表題の内容の裁判例(東京地裁平成22年3月8日判決)がありました。

会計評価と、表明保証違反の関係が問題となった事例です。

株価算定の前提となる将来業績予測や会計評価において、相手方(提出側。本件では被告、売主。)が自分に有利な数字を使ったとしても、それは株価の評価の妥当性の問題であり、株価算定書が虚偽であるとはいえない(→被告の表明保証の対象とはならない)と判示されています。

本エントリーでは、本判決が妥当であるか否かの判断はさておき、本判決から得られる企業関係者への教訓を考えてみます。(ここで判断を差し控えるのは、評価が合理的な範囲を超える程度に不相当でおよそ妥当とはいえないレベルであれば、虚偽といえるレベルに達することはあり得ると考えますが、本件の会計評価と実態とを比較することができないことが主な理由の1つです。)

本件から言える一般的な教訓としては、「買収等のM&A案件では、契約締結前に、専門家を使ったデュー・ディリジェンスを怠らないこと」が導けると考えます。本件は、10億円規模のディールのようですが、契約締結前に弁護士や会計士等の専門家を使ったデュー・ディリジェンスが行われていなかったようです。買収案件では、その規模の大小にかかわらず、デュー・ディリジェンスを行い、(i)買収すべきか否か、(ii)株価の妥当性を判断した上で、(iii)デュー・ディリジェンスの結果を踏まえた契約条項の練り上げが必須となります。記憶の曖昧な話で恐縮ですが、いつかの新聞記事に、投資案件や取引案件では、そのディールの3%程度を目安として、リーガル費用やデュー・ディリジェンス費用に使うこととしている大手商社の記事を読んだことがありますが、一つの考え方であろうと思います。

また、私の個人的な関心は、株式譲渡契約書の書き方次第で結論が変わり得たか、原告は他に争い方はなかったのか、といったところにもありますが、やはり本件では、デュー・ディリジェンスをしなかったことが致命的であったように思います。一般的に、契約書の文言や争い方でリカバリーできる範囲は、事前に予防できる範囲より小さいものです。本件は、予防法務の重要性を改めて伝えてくれる裁判例です。

ベンチャー企業におけるベンチャー・キャピタルから派遣される社外取締役の役割


ベンチャー企業の社外取締役として、ベンチャー・キャピタルから派遣される取締役がいます。今回は、このベンチャー・キャピタルから派遣される取締役の役割について、考えたいと思います。

そもそも、なぜベンチャー・キャピタルは、投資契約書に取締役派遣条項を入れようとするるのでしょうか。それは、主に以下の2つの役割が考えられます。

1 適切な経営が行われているか、チェックする
2 株主として、企業価値が上がることに貢献できる可能性を見逃さない

1の「適切な経営が行われているか、チェックする」というのは、決して現実に経営全般を監視することを意味するわけではありません。理想としては、経営全般の監視ができれば良いでしょうけれども、1人の社外取締役が為し得る現実としては、(i)月次決算や事件・事故の報告を受けて、売上や費用の変動及びその原因を知ること(過去業績情報の収集及び分析)、(ii)各プロジェクトの進捗状況、製品やサービスの内容やリリースの見込みを知ること(将来業績予測に関わる社内情報の収集及び分析)、(iii)既存及び新規の取引先との取引・交渉の状況、新規事業・製品・サービスの内容や見込、顧客・潜在顧客動向、ライバル社・競合製品・新規参入の動き等の分析・検討(将来業績予測に関わる社外情報の収集及び分析)にかかわることにより、会社が健全に発展する様に指導し、代表取締役の決断を支援するということになるでしょう。通常は、変なお金の動きがないか、投資した資金が有効に使用されているか(投資した資金の想定外の使用も問題であるが、資金を使用しないことも問題。使用しない問題については、こちらを参照「ベンチャー企業のお金の使い方」)といった点に焦点をあててチェックすることが多いと思います。勿論、ベンチャー・キャピタルから派遣された社外取締役とはいえ、オフィス内に机があり、週に2~3日以上のペースで業務に携わっている方もおられますので、一概に言えるものではなく、より広範囲に監視等されているケースもあるかと思います。

社外取締役がチェックすることの動機・背景事情には、ベンチャー・キャピタル・ファンドへの出資者(投資家=LP:有限責任組合員)への説明義務があります(株主として会社が健全に成長することへ期待しているのは勿論です。)。ベンチャー・キャピタルとしては、投資先企業から話を聞いて、ファンドの出資者に報告できるようにする必要があります。(なお、実務上、VCのLPへの説明責任と、取締役としての善管注意義務・守秘義務の抵触といった問題が生じることがあり、悩ましい局面が生じることがあります。投資契約書等で予め解決しておくのがよいでしょう。)従って、ベンチャー・キャピタル側としては、ファンドの出資者にきちんと説明を尽くせる程度に、投資資金の使い道や投資先の状況を把握しておく必要があるのです。

投資先企業の業界については、ベンチャー・キャピタルの担当者もある程度詳しいことが多いですが、普通は投資先企業の社長の方が詳しいものです。ですから、ベンチャー・キャピタルから派遣された社外取締役は、新規のプロジェクトやリリース、製品概要について、余計な口出しをして、イノベーションを抑制するようにならないように心がけていることも多いでしょう。

2の「株主として、企業価値が上がることに貢献できる可能性を見逃さない」とは、何でしょうか。それは株主や当該社外取締役がもっているネットワークや情報、知識、アイディア等によって、事業の効率を高めたり、新規の取引につなげたりすることです。

独立系のベンチャー・キャピタルでは、投資先に取締役を派遣することは少なくなく、多くの派遣取締役がMBAホルダーや事業経営の経験が豊かな方です。この方々は、1のチェック機能が果たせるのは勿論のこと、取締役個人の力量で、マーケティング戦略を立案したり、コストを削減をしたりすることが可能ですので、投資先の企業価値の向上に貢献することが可能です。

また、ベンチャー企業が、商社系のベンチャー・キャピタルからの投資に対し、その親会社となっている商社のネットワークを利用したいという期待を抱くことも少なくありません。実際、商社系のベンチャー・キャピタルが、そのネットワークから投資先のビジネスに有用と思われる人を投資先に紹介することは稀ではありません。

ところで、法制審議会会社法制部会第4回会議(平成22年8月25日開催) の参照資料・部会資料2・「企業統治の在り方に関する検討事項(1)」 【PDF】 には、次のようなくだりがあります。

社外取締役の役割等については,「平時における経営者の説明責任の確保,有事における社外の視点を入れた判断の担保や経営者の暴走等の防止・安全弁といった役割」や,「取締役の業務執行に対する監督に加え,当該社外又は独立取締役の持つ識見等に基づき,外部的視点から,いかに企業価値を高めていくかといった助言機能」等が挙げられている。これらも踏まえると,社外取締役に期待される主な機能については,以下のような整理をすることができるのではないかと考えられる。
① 経営効率の向上のための助言を行う機能(助言機能)
② 経営者の評価・選解任その他の取締役会における重要事項の決定に関して議決権を行使することなどにより,経営全般を監督する機能(経営全般の監督機能)
③ 会社と経営者との取引の承認など会社と経営者等との間の利益相反を監督する機能(利益相反の監督機能)
(引用終わり)


これにあてはめると、私の分析の1「適切な経営が行われているか、チェックする」は強いて言えば②と③に、2「株主として、企業価値が上がることに貢献できる可能性を見逃さない」は①に該当します。とはいえ、②の「重要事項の決定に関して議決権を行使することなどにより」という部分は、ベンチャー企業の社外取締役について言うのであれば、「月次決算や事件・事故等の会社の過去業績に関わる報告を受け、さらに社内及び社外における会社の将来業績に影響を与える情報を収集及び分析する等すること、その他取締役会の様々な意思決定に関与することなどにより」となるのではないかと考えられます。

なぜなら、実務的には、報告事項や事業展開の決定事項に接することへのウェイトが、会社法的な重要事項の決定に対するものと比べると、同じかそれ以上に大きいと思われるからです。例えば、ベンチャー企業では取締役会と株主総会が対立することがないわけではありませんが、代表取締役は、株主の意向で決まることがほとんどで、取締役会の選任・解任が実質的な意味を持つケースはそれほど多くありません。その意味では、代表取締役の選任・解任議案といった重要事項の決定への議決に関わるためというよりか、月次の業績報告を聞くことの方が重要性があります(「企業統治の在り方に関する検討事項(1)」の「平時における経営者の説明責任の確保,有事における社外の視点を入れた判断の担保や経営者の暴走等の防止・安全弁といった役割」というのは意思決定への議決権行使以外の重要性を述べているものだと理解しますが、同資料の分類では少しわかりにくくなってしまっています。)。

この議論がそのまま上場企業、一部上場の巨大企業に当てはまるとは申しませんし、全てのベンチャー企業に当てはまるわけではないと思いますが、近時盛んな社外取締役(強制)導入論についての議論の参考になれば幸いです。特に、この議論を踏まえると、一般論として、社外取締役の条件としては、(1)会計資料等から業績や状況を分析できること、(2)会社のビジネスや業界に詳しいこと、(3) 企業価値の向上が期待できる知識や知恵、ネットワークを持っていること、を挙げることができると考えますが、現実に上場企業がそのような人材を調達するのは現実的か(若しくは、このような条件のいくつかは満たさなくてもよいか)という観点から検討することも必要なのではないかと考えています。

経営判断原則に関する最高裁判決について

最新の旬刊商事法務と金融・商事判例で、経営判断原則に関連するある判例(平成22年7月15日最高裁判決―アパマンショップHD株主代表訴訟上告審判決―)が取り上げられていました。この判例は、ブログ『ビジネス法務の部屋』でも取り上げられていますので、私も便乗して、取り上げようと思います。旬刊商事法務は、1913号4頁「アパマンショップ株主代表訴訟最高裁判決の意義」(中央大学法科大学院教授 落合誠一)、金融・商事判例は、1353号26頁です。

いずれの記事でも、この判決は、従来からの経営判断に関する取締役の善管注意義務違反の有無についての判断枠組みと同じ流れに沿うものであるとしています。その内容は、次のものです。まず、概ね、「判断の過程・内容が取締役として著しく不合理なものであったか否か」という判断基準を採用します。そして、その判断をする前提として裁判所が審査する対象をまとめると、およそ以下のものとなります。

(1) 判断の前提となった事実の調査、情報収集、分析・検討に特に不注意・不合理な点があるか
(2) (当該業界の通常の経営者の経営上の判断として)事実認識に基づく意思決定の推論過程および内容の著しい不合理さがあるか

(2)の括弧の部分は、落合先生の論文に見られる特徴かもしれませんので、括弧書きとさせていただきました。さらに、商事法務の落合先生の論文では、審査対象を上記の(1)及び(2)並びに上記の判断基準とすることの前提として、

(0) 裁判所が経営者の経営判断に積極的に吟味・介入することを肯定すべき例外的事情がある場合は別段、そうでない限り、

という限定が付されているように思います。

経営者にとっては、ややリスキーと思われる判断をする場合は、まず、判断の前提として、十分な情報収集を行い、客観的に分析・検討を加えたうえで、次に、経営会議や弁護士等の専門家への意見聴取といった手続き的な適正さを図ることが重要でしょう。

なお、この論点についての今のところの私見は、次のようなものです。

概ね、上記の判断枠組みは裁判所のあるべき姿であり、その当てはめも原則として、謙抑的であるべきです。その意味で、今回の最高裁判決は妥当であるように思われます。そして、(0)のような前提条件を設けることも必要であり、(i)会社法その他の法令に違反する場合、(ii)違法な行為に関与したり黙認しているような場合、(iii)会社法第423条第2項や第3項の推定規定が適用されるような競業行為や利益相反取引、(iv)第三者の身体・生命・財産等の権利に対する侵害が生じることが予想可能であったり、現に発生している場合は、この枠組みではなく、裁判所がより積極的に結果回避義務違反を認定してもよいものと考えます(他にもあるかもしれません。)。

ただ、落合先生の論文にある「当該業界の通常の経営者の経営上の判断として」という部分(上記(2)の括弧の部分。商事法務No.1913 7頁2段目)は、(医療過誤訴訟における医師の過失で採用されそうな規範ではありますが)経営判断原則には少し馴染まないではないかと感じております。というのも、ビジネスの世界では、同じ業界であっても、ポジションによって、なすべきことが異なるものだからです。一般論として、同じ業界には、シェアに応じて、リーダー(業界1位)、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワー、と分類することが可能であり、リーダーであれば、他の企業と同じことをすることは戦略としてあり得ますが、チャレンジャーやニッチャーは、リーダー企業がしないこと、できないこと、参入しないであろう領域に参入することが求められますので、当該業界の通常の経営者が「しない」であろう経営上の判断が時に求められます。

すると、「当該業界の通常の経営者の経営上の判断として」という判断枠組みは、少し経営判断原則の場合は、使いずらいのではないかというのが私見です。

また、山口先生の本判決に関するエントリーのタイトルは、少々過激に「最高裁は「社外取締役制度」をどう考えているのか?(その2)」とされておられますが、本文では、「アパマンショップHD最高裁判決へのご見解と、この社外取締役導入論が論理的につながるものではないことは承知しております」とあるとおりで、流石に、この判決と社外取締役制度は、直接には結びつかないと考えます。重要なのは、経営判断の過程で、判断の前提となる情報や手続きにおいて、客観性を確保できているかという点であり、その客観性確保の方法論は、社外取締役の導入「だけ」ではないからです。

企業法務弁護士としては、ある経営判断が善管注意義務違反であるか否かの意見を述べるのは、非常に難しい側面があります。ただ、本件でもそうであったように、一定の前提のもと、経営者の判断が経営の裁量の範囲から大きく逸脱していないかという点であれば、意見を述べることはあり得ますので、重要な経営判断、特に株主価値を大きく毀損する可能性のある判断をする場合は、弁護士から意見書を取得しておいた方がよいと考えます。

ベンチャー企業と独占禁止法

昨日(11月10日)の日本経済新聞夕刊に、欧州委員会が、EU競争法(独占禁止法)違反で、日本航空を含む航空貨物12社が価格カルテルを結んでいたとして、ドイツのルフトハンザ航空を除く11社に約900億円!(日本航空は約40億円)の制裁金を課された旨の記事が掲載されていました。制裁の対象は、1キログラムあたりの燃油特別付加運賃を一律に設定するカルテルとのことです。

独占禁止法違反のペナルティーの大きさに改めて驚かされる記事です。また、日本でも導入されているリニエンシー(課徴金減免制度)によりルフトハンザ社1社が制裁金を免除されている点(日本では3~5社となる可能性がある。)も興味をひくところです。

ところで、独占禁止法は、カルテルや談合、市場占有率が高くなる合併等を取り扱っているため、大企業にしか関係なさそうな法律に思えます。しかし、中小企業やベンチャー企業であっても、独占禁止法が関連するケースがあります。

もちろん、市場でそれなりのシェアを占めている会社同士の企業結合であれば、中小企業であっても独占禁止法の対象となりますし、ほかのカルテルや談合も適用される可能性はあります。

ただ、ここでお伝えしたいのは、現実に中小企業やベンチャー企業が気にすべき場合が多いと予想される「不公正な取引方法」です。

不公正な取引方法とは、独占禁止法第19条で禁止されている行為です。

独占禁止法

第19条
事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

第20条第1項
前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の差止め、契約条項の削除その他当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。


不公正な取引方法については、公正取引委員会が告示によってその内容を指定していますが、この指定には、すべての業種に適用される「一般指定」と、特定の事業者・業界を対象とする「特殊指定」があります。一般指定で挙げられた不公正な取引方法には、取引拒絶、排他条件付取引、拘束条件付取引、再販売価格維持行為、優越的地位の濫用、欺瞞的顧客誘引、不当廉売などがあります。

たとえば、「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」では、「役務の委託取引においても、委託者と受託者がどのような条件で取引するかは、基本的にはそれぞれの自主的な判断にゆだねられるものであるが、委託者が受託者に対し取引上優越した地位にある場合において、その地位を利用して、受託者に対し、代金の支払遅延、代金の減額要請、著しく低い対価での取引の要請、やり直しの要請、協賛金等の負担の要請、商品等の購入要請又は役務の成果物に係る権利等の一方的な取扱いを行う場合には、優越的地位の濫用として問題を生じやすい。」としており、ソフトウェア開発のベンチャー企業が受託者側の場合は、不合理な契約内容を締結させられている場合に独占禁止法を交渉等で利用できる可能性がありますし、逆に、委託者側でこういった内容の契約を締結していれば、不公正な取引方法として、排除措置命令等の対象になる可能性があります。

また、「メーカーが流通業者に対して、自社商品のみの取扱いを義務付けること」「メーカーが流通業者に対して、競争者の商品の取扱いを制限すること」といったことも制約を受けます(「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」)。

バイオベンチャー企業等の研究開発系のベンチャー企業や大学発ベンチャーでよく見られる共同研究開発に関する契約等についても、「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」というものがありますので、自社の交渉力が低いと思われるケースや理不尽な内容の契約内容と思われる場合は、独占禁止法が利用できないか検討してみる余地はあるかもしれません。

具体的な事例については、こちらの公正取引委員会のページをご参照ください。

中小企業・ベンチャー企業であっても、取引拒絶,排他条件付取引,拘束条件付取引,再販売価格維持行為,優越的地位の濫用といったあたりは、する側の立場もされる側の立場も、どちらもあり得ますので、契約の条文の中に該当するものがあるかもしれない場合や、被害にあっているかもしれないといった場合には、一度、弁護士に相談してみてください。