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国際法務の部屋

中国の個人情報保護法制について

2019年2月13日付け日本経済新聞朝刊に、このような記事が掲載されました。

 

「中国河北省の省都、石家荘市の一角。結婚に向け新居を探す喬茂虎さん(33)がスマートフォン(スマホ)を熱心に操作し始めた。「老頼地図」というサービスを使い、半径500メートルに住む借金の未返済者の住所や氏名、借金額を表示。近くに100人以上いることがわかると、思わず顔をしかめた。「住環境が悪い」。別の場所に住もうと決めた。」

 

この記事の内容は、中国法務を取り扱っている者には周知の事実ではあったものの、そうではない一般の日本人には衝撃的な事実であったようで、私の周辺でも、反響がありました。

 

2019年2月現在、中国には、日本における個人情報保護法に相当するような、個人情報保護のための基本法は存在しません。刑法や消費者権益保護法等の法令の中に、個人情報の取扱いに関する個別の規律が存在しています。

また、2017年6月には、サイバーセキュリティ法が施行され、ネットワーク事業者の情報セキュリティ体制構築義務や、責任者設置義務等が規定されました。同法の詳細は別の機会に紹介したいと思いますが、中国国内で収集した個人情報の海外移転が原則として禁止されている点に特徴があり、これにより、企業のビジネスモデルや子会社管理に多大な影響を及ぼしているようです。

さらに、その後、健康や安全に関するビッグデータの管理に関する規則が制定されるなど、サイバーセキュリティ法の関連法令が、多数、施行されていますし、施行に向けて作業が行われている関係法令も多数存在します。

 

このように、中国における個人情報に関しては、多数の法令による規律が錯綜している状態ですから、中国国内において、または、中国に居住している個人に関連して、個人情報の管理等にまつわるビジネスモデルを実行する場合には、慎重な検討が必要となります。

 

(文責:藤井宣行)

2019年02月19日 08:52|カテゴリー:|コメントはまだありません

腐敗防止指数ランキングについて

先日、大阪商工会議所主催のセミナーにて「海外取引におけるコンプライアンス、海外贈賄防止に関する規律と実例」をテーマにお話をさせていただきました。

その中で、海外における贈賄防止の手法としてリスク・ベース・アプローチをご紹介しました。リスク・ベース・アプローチとは、企業活動を行う際のリスクを評価・検証したうえで、高リスクの事象から優先的にリスク管理のための経営資源を投入していくというアプローチ手法です。

そして、贈収賄防止におけるリスク・ベース・アプローチとしては、①贈賄が起こりやすい行為類型(入札、許認可の取得や、現地エージェントやコンサルタントの起用)について重点的に贈賄防止のためのリスク管理体制を構築する、②贈賄が起こりやすい国における取引や海外拠点について優先的に贈賄防止体制を構築するなどのアプローチが考えられます。

このうち、②のアプローチをとり、国別で贈賄リスクを評価・検証するにあたっては、トランスペアレンシー・インターナショナルが毎年発表している、「腐敗防止指数」が有益です。

2018年版の腐敗防止指数ランキングでは、デンマークが1位、シンガポールは3位、日本は18位、米国が23位、マレーシアは61位、中国は87位、インドネシアは89位、フィリピンとタイが同率で99位、ベトナムは117位、ミャンマーは132位、カンボジアは161位となっています。

このランキングからすると、シンガポールを除くASEAN各国や中国については、なお贈賄リスクが高い国として認識すべきであり、しっかりとした贈収賄防止の体制(内部通報体制や、外部通報窓口の設置等)を構築する必要があると考えます。

 

(文責:河野雄介)

2019年02月08日 20:53|カテゴリー:|コメントはまだありません

深圳(深セン)拠点開設のお知らせ

アクシス国際法律事務所は、ベンチャー企業法務・中小企業法務と、中華圏とASEANを主とした国際(渉外)業務に特化して業務を行っています。

また、中国の巨大都市である深圳は、今や中国のシリコンバレーといわれるまでに成長しており、数多くの中国系ベンチャー企業及びベンチャー・キャピタル等の投資家が存在しています。

 

これまで、日系企業の観点からは、深圳は、労働集約型産業の拠点として、多数の工場が存在する地域として認識されていました。

しかしながら、地価及び人件費の高騰といったビジネス環境の変化、なにより、深圳が驚異的な速度で発展・変容をしていることから、数多くの日経企業が、労働集約型からの脱却を図り、深圳での新たなビジネス展開を模索・推進しています。

 

そのような状況において、当事務所は、日中間のベンチャー投資を始めとする中国とのクロスボーダー取引等に関するサポート体制をより一層充実させることを目的として、昨年10月、深圳に拠点【アクシスコンサルティング(中文名:亚科喜咨询(深圳)公司)】を開設しました。

同拠点では、日系企業の珠江デルタ地域を始めとする中国投資や、中国企業の日本投資等に関するサポート業務をメイン業務として既に業務を開始しています。

 

同拠点を含むアクシスグループとしては、中国×ベンチャー業務の担い手として、今後とも、クライアントの方々のビジネスの発展を加速させるとともに、日中間の架け橋となるべく尽力いたします。

 

(文責:藤井宣行)

2019年01月18日 14:39|カテゴリー:|コメントはまだありません

河野雄介弁護士が、ひょうご・神戸国際ビジネススクエア主催の、「ASEANにおける現地法人の外国公務員贈賄、不正調査などの実例と防止策」をテーマとするセミナーに登壇しました。

2018年11月20日に、神戸市で開催された、上記のセミナーに登壇しました。

このセミナーは、三部構成となっており、第一部では、私が、「海外子会社コンプライアンス、海外贈賄防止に関する規律と実例」をテーマに講演しました。具体的には、海外事業コンプライアンスの重要性、人権デューディリジェンス、サプライヤー契約におけるCSR条項及び海外贈賄防止(外国公務員贈賄罪)について解説させていただきました。特に、海外贈賄防止のテーマについては、日本の不正競争防止法違反が問われた判例の分析、ファシリテーション・ペイメント(通常の行政サービスを円滑に受けるための少額の支払い)の贈賄該当性、ASEAN諸国における不当な金銭要求の傾向とその対策、贈賄に該当するか否かのグレーゾーン事例の分析などを行いました。

第二部では、シンガポールに駐在し、ASEAN諸国における不正調査やPMI(Post Merger Integration)の実務経験が豊富な会計士の熊谷信吾先生が、「 ASEANでの不正事例とその確認/防止のポイント」につき、講演されました。ASEAN諸国での実務経験に基づいた、不正事例の見抜き方や、不正事例への対応方法などにつき、具体例を交えながら解説されたので非常に興味深かったです。

第三部では、アクシス国際法律事務所と業務提携を行っている、ケルビンチアパートナーシップのシンガポールオフィスからMarlon Wui弁護士に、バンコクオフィスからはLeopoldo Moselina Jr.弁護士にお越しいただき、ASEAN子会社の労務コンプライアンスの実務について講演をいただきました。ASEAN諸国における労働法コンプライアンスの重要性(従業員の士気や生産性への影響、企業の人材獲得力への影響、企業の収益への影響、企業のレピュテーションへの影響)についてご説明いただいた後、タイ、フィリピン及びインドネシアにおける労働法コンプライアンスについて、具体的に主要な労働法や最近の労働法の改正、従業員の解雇の実務をご紹介いただきました。Marlon弁護士とLeopoldo弁護士には英語で講演していただき、私が日本語に通訳するという構成をとりました。第一部でもスピーカーで話をさせていただいた後に通訳も行いましたので、少し疲れましたが、充実したセミナーとなったと思います。

なお、同様のテーマで、平成31年2月1日に、大阪商工会議所の主催で、ASEANにおけるコンプライアンスセミナーを行う予定です。神戸市でのセミナーにご参加いただけなかった方は、こちらのセミナーにご参加いただけますと幸いです。

 

【セミナー概要】

開催日時

2019年2月1日(金)

開催時間

14:00~16:30

場所

大阪商工会議所 401会議室

大阪府大阪市中央区本町橋2-8

主催

大阪商工会議所

共催

JETRO大阪本部(予定)

協力

アクシス国際法律事務所

esnetworks Asia Global(エスネットワークスグループ)

参加費

無 料 (定員になり次第締め切ります。事前のお申込みが必要です。)

プログラム(予定)

第一部 14:00~14:20(20分)

「コンプライアンスとは?今、企業に求められているもの」

アクシス国際法律事務所 弁護士 三村 雅一

 

第二部 14:20~15:20(60分)

「海外取引におけるコンプライアンス、海外贈賄防止に関する規律と実例」

アクシス国際法律事務所 弁護士 河野 雄介

海外子会社コンプライアンス、人権デューディリジェンス、海外贈賄防止、サプライチェーンにおけるフェアトレードなどについて、法律やガイドラインなどにつき実例を踏まえて解説するとともに、コンプライアンス違反をしてしまったときの対応策やンプライアンス違反とならないための対応策をご紹介します。

 

<休憩>(10分)

 

第三部 15:30~16:20 (50分)

「ASEANでの不正およびコンプライアンス事例とその防止ポイント」

es Networks Asia Global (Singapore) Director 公認会計士 熊谷 伸吾 氏

ASEAN諸国におけるPMI(Post Merger Integration)や不正調査の実務経験が豊富な会計士が、海外子会社や進出時に陥りがちな論点について、管理部門視点から傾向と対策例を解説します。

 

質疑応答 16:20~16:30(10分)

 

お申込み方法

下記サイトよりご確認ください

http://www.osaka.cci.or.jp/event/seminar/201812/D11190201016.html

 

文責 河野雄介

2019年01月07日 17:32|カテゴリー:|コメントはまだありません

森理俊弁護士が、深圳市律師協会で開催された友好協定記念共催セミナーに登壇しました。

2018年11月30日に、深圳市律師協会で開催された、大阪弁護士会及び深圳市律師協会友好協定記念共催セミナー(日本弁理士会近畿支部共催)に登壇しました。

大阪弁護士会は、深圳市律師協会との間で、友好協定を締結しています。当職は、国際委員会の副委員長として、この記念セミナーの開催の企画を立案・企画をし、パネルディスカッションにも参加させていただきました。

全体のテーマは、「日中間の貿易及び投資に関する法的問題について」(关于中日之间贸易和投资的法律问题/Legal Matters about Trade and Investment between China and Japan)であり、その中でパネルディスカッション「日中間の貿易及び投資における近時の話題」(中日贸易与投资热点问题/”Hot Topics about Trade and Investment between China and Japan”)にて、パネリストとして、登壇しました。

私からは、「日本企業は、いま深圳をどのように見ているのか?」「日本企業が必要とする中国での法律事務」「中国企業から日本に対する投資への最近の動き」という点を中心に、いま、深圳の投資家や企業家とビジネスをする上でのホットトピックを取り上げました。

 

ご存じの方も多いと思いますが、深圳市は、中国、いや世界のなかでも、急速に成長を遂げている都市であり、GDPでは、いまや広州市を抜いて、中国第3の都市に躍り出ています。また、製造業系のベンチャーの世界では、「シリコンバレーで1ヶ月かかることが、深圳では1週間でできる」と言われるほどに、スピード感のあるスタートアップが沢山生まれ、取引をしています。

深圳市内には、古くからの商業地区で香港と地理的に隣接する羅湖区、深圳の秋葉原(しかし、いまや規模は秋葉原の30倍とも言われています。)とも呼ばれる華強北のある福田区、BAT(Baidu, Alibaba, Tencent)等のIT系ビジネス企業が集まる南山区があり、さらに、その南山区の西部にある前海地区では、香港と一体化した一大国際金融都市を目指して都市開発が進められています。郊外には、ファーウェイやBYDの拠点もあり、香港との関係を含めて、中国や世界の経済に大きな影響力を有しつつある場所であることは間違いありません。

 

また、大気汚染の原因となる工場も郊外に移動する政策が採られており、公共のバスやタクシーは電気自動車がほとんどで、花が綺麗に植えられた場所も多く、空気も街並みも大変綺麗です。

 

当事務所では、今年、深圳市南山区にコンサルティング会社を設立し、深圳と貿易や投資、共同開発で取引のある日中の事業者にコンサルティング・サービス(法律事務は行っておりません。)を提供できる体制を構築しました。これは、当職の把握している限り、日本の法律事務所で、最初だと思います。

この深圳と日本の関係において、日本の大企業からスタートアップまで、様々な規模の事業体が、これまでにない形の業務提携をしようとする動きがあります。また、深圳の事業者や投資家から、日本のスタートアップへの支援や投資といった動きもあり、目が離せません。私達が有している知見から、紐解いて見える深圳と日本の間の投資や貿易に関する現状を、法務的な観点から議論をさせていただきました。幸いにも、いろいろな質問をいただき、有意義な議論ができたと確信しております。

ところで、今回のセミナー後には、深圳福田駅から香港の九龍西駅への新幹線にも乗車しました。乗車予定時刻に十分間に合うように駅で待っていたにもかかわらず、乗車予定の新幹線が発車予定時刻より5分くらい早く扉がしまり、プラットフォームに取り残されるといったアクシデントがありました。ただ、駅員さんに柔軟に対応してもらって、次の電車に乗車させてもらえましたし、車内は快適で、無事に香港に到着することができました。

 

香港、深圳、広州、マカオのある「珠江デルタ」は、経済的にも、政治的にも、これからより重要性の増す地域であることは間違いありません。そして、巨龍たる中国が躍動する中心となって、日本にも大いに影響を与えることも間違いないでしょう。

 

アクシス国際法律事務所では、これからも深圳を中心とした、中国✕ベンチャーの動きに、注目し続けたいと考えています。

 

(文責:森 理俊)

 

2018年12月26日 11:25|カテゴリー:|コメントはまだありません

中国会社法改正

中国会社法の改正案が、2018年10月26日に公布及び施行されました。今回のブログでは、同改正のうち、主要な内容をご紹介します。

 

前提として、改正前の中国会社法143条では、原則として、会社による自己株式の取得が禁止されており、例外的に許容される場合として、下記4つのケースを規定していました。

  • 会社の登録資本を減少する場合
  • 自社株式を保有するその他の会社と合併する場合
  • 株式を褒賞として自社の従業員に給付する場合
  • 株主が株主総会で行った会社合併又は分割の決議に異議を提出し、買取請求権を行使した場合

 

今回の改正では、上記を修正及び補充しました。改正後に、自己株式が許容されるケースは下記の6つとなります。

  • 会社の登録資本を減少する場合
  • 自社株式を保有するその他の会社と合併する場合
  • 従業員持株制度又はストック・インセンティブのために株式を使用する場合
  • 株主総会の会社合併、分割の決議に異議を提出した株主が会社に対して買取請求権を行使した場合
  • 上場会社が発行した株式転換社債を転換するために株式を使用する場合
  • 上場会社が会社の価値又は株主の権利、利益を保護するために必要な場合

 

上記のうち、特に(6)については、これに該当する具体的な内容が一義的には読み取れませんから、どこまでが適用対象となるのかについては今後の裁判例や司法解釈等に委ねられる面も否定できないでしょう。また、併せて、一定の場合に株主総会の決議を不要とするなど、自己株式の取得手続も簡略化されています。

 

(文責:藤井宣行)

2018年12月25日 10:42|カテゴリー:|コメントはまだありません

海外公務員贈賄と司法取引について

海外の公務員に、日本企業の担当者が贈賄を行った場合、当該国における贈賄罪等により処罰されるのはもとより、日本の不正競争防止法によっても処罰の対象となります。

日本の不正競争防止法18条1項は、「何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。」と規定しており、法18条1項に違反した者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処せられ、又はこれが併科されます(法21条2項7号)。また、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、法18条1項に違反した場合は、法人に対しても3億円以下の罰金刑が科されます(法22条1項3号)。

このように、日本企業の担当者等が、海外の公務員等に対して贈賄を行った場合は、当該担当者に加えて、法人も処罰の対象となります(個人及び法人の両方が処罰されることから、「両罰規定」と表現されることもあります)。

この両罰規定が初めて適用されたのは、ベトナム公務員に対する不正利益供与事案(東京地裁平成21年1月29日判例時報2046号159頁)でした。この事案では、東京都内に本店を置く日本法人の従業員等であった4名が、ベトナムホーチミン市における幹線道路建設事業に関するコンサルタント業務を受注した謝礼等の趣旨で、同事業担当幹部に対して2度にわたり、それぞれ約60万米ドル、約20万米ドルの利益を供与した行為が不正競争防止法違反にあたるとして、従業員等4名に、それぞれ懲役2年6月、懲役2年、懲役1年6月、懲役1年8月(それぞれ執行猶予3年)、日本法人に罰金 7、000万円が科されました。

このように、法人に対しても両罰規定による罰金刑が科せられることから、担当者が海外公務員等に贈賄を行った情報が内部通報等でもたらされた場合の法人の対応としては、弁護士等の第三者に依頼して調査を行い、担当者による海外公務員の贈賄の事実が確認された場合は、検察庁に情報を提供して日本版司法取引の適用を検討することが考えられます。但し、法人が、この制度を実際に活用するかどうかについては、他のより良い方法がないか、将来におけるデメリットの影響、十分に証拠が収集されているか等を、慎重に総合的に考慮した方がよいでしょう。

ここで、日本版司法取引制度とは、正式には「証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度」といわれ、2018年6月1日より施行されている、検察官と被疑者・被告人およびその弁護人が協議し、被疑者・被告人が「他人」の刑事事件の捜査・公判に協力するのと引換えに、自分の事件を不起訴または軽い求刑にしてもらうことなどを合意するという制度です。

実際に、この日本版司法取引制度が用いられた初めての事案は、タイの発電所事業を巡る現地公務員への贈賄事件であり、タイの現地公務員への贈賄を了承した元幹部3人を不正競争防止法違反(海外公務員への贈賄)の罪で在宅起訴し、法人は不起訴とされたと報道されています。

ただ、不正贈賄事例で重要なことは、法人の処罰を免れることではなく、当該法人として、再発防止のための対策(組織体制の整備、社内における教育活動の実施、監査体制の強化、贈賄防止のための基本方針や社内規定の策定や公表など)を迅速かつ確実に講じるということであると考えます。

以上

(文責:河野 雄介)

2018年12月11日 21:07|カテゴリー:|コメントはまだありません

セミナー「ASEAN諸国における子会社の贈賄・不正の実例と対策」について

海外子会社の贈賄・不正の実例と防止のポイント、ASEAN各国のコンプライアンスの特徴等をテーマとして、下記のとおりセミナーをさせていただくことになりましたのでお知らせいたします。

主  催  株式会社 京都銀行

共  催  日本貿易振興機構(ジェトロ)京都貿易情報センター

テーマ ASEAN諸国における子会社の贈賄・不正の実例と対策 ~現地任せの落とし穴~

日 時 2018年11月19日(月)15:00~17:00

会 場 京都銀行 金融大学校 桂川キャンパス(京都市南区久世高田町376番地7)

【講演】海外子会社の贈賄・不正の実例と防止のコツ!

講 師:アクシス国際法律事務所  弁護士 河野 雄介

【パネルディスカッション】ASEAN各国におけるコンプライアンスの特徴

パネリスト:Kelvin Chia Partnership

パートナー弁護士MARLON WUI

同シニアアソシエイト弁護士LEOPOLDO MOSELINA

アクシス国際法律事務所  弁護士 河野 雄介

プレスリリースはこちらです

2018年11月12日 17:56|カテゴリー:|コメントはまだありません

海外贈賄防止デュー・ディリジェンスについて

1 はじめに

日本企業がM&Aにより海外企業を買収するケースが増えています。その際、当該買収対象会社が贈賄を行っていないかの確認は重要です。なぜなら、M&Aにより買収した海外子会社であったとしても、日本企業が海外事業において贈賄に関与したとなれば、日本の刑事罰(不正競争防止法違反)はもとより、米国の連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)等の違反として罰金等の対象となったり、社会的信用の失墜、取引先からの取引停止処分を受けたりなど企業価値の毀損に直結する重大なリスクにつながるからです。

そこで、本稿では、日本弁護士連合会が作成した海外贈賄防止ガイダンスの手引の記載を参考に、海外企業を買収する際の、海外贈賄防止デュー・ディリジェンス(以下、「海外贈賄防止DD」といいます)の手順をご紹介します。

2 買収契約締結前に実施する海外贈賄防止DDについて

買収契約締結前においては以下の事項に留意して海外贈賄防止DDを実施する必要があります。

  • 買収計画段階において、対象事業の活動国、業界、事業形態に応じた贈賄リスクの評価を実施する。
  • 海外贈賄防止DDを、買収のための法務監査及び財務監査と並行して早期に計画し、リスクの程度に応じた人的・物的資源の配分を行う。
  • 海外贈賄防止DDにおける確認内容としては、(i)買収対象企業において海外贈賄防止体制が構築されているか、(ii)経営トップ、主要役職員のコンプライアンス意識の高さ、(iii)事業活動のエージェント等の第三者への依存度、(iv)第三者の活動国以外の国に存在する銀行口座への支払の有無、(v)接待・贈答・招聘・寄付等に関する費用支出、頻度、態様、(vi)現金口座の管理状況及びファシリテーション・ペイメントの支払の有無、(vii)許認可の取得、通関に関する費用の支出状況、(viii)政府関係者の親族の雇用の有無、(ix)内部通報体制の構築状況、(x)買収先企業又は経営陣の前科・前歴・行政処分歴、(xi)贈賄を防止するのに十分な会計制度の存在等が考えられます。
  • 海外贈賄防止DDの手段としては、提供された資料の精査、ヒアリング、贈賄を防止するのに十分な内部統制が存在するかの実地調査を必要に応じて、法律事務所、会計事務所、調査会社等を起用して実施します。

3 海外贈賄防止DD実施後の対応について

海外贈賄防止DDを実施した後、買収契約を締結するにおいて以下の事項に留意する必要があります。

  • 海外贈賄防止DDの結果、贈賄問題を発見した場合においてその問題が買収の目的を達成できる程度である場合は、買収契約の誓約条項において、必要に応じて、買収対象企業をして、関与役職員の処分、発見事項に関連した追加調査及び報告、経営トップの贈賄防止への強い姿勢を示す誓約書の提出、又は実行可能な再発防止策の検討と導入などを実施させる内容の売主の誓約条項を合意する。また、リスクや処理費用を考慮した買収金額の調整を行う。
  • 海外贈賄防止DDの結果、買収の目的を達成できない程度に贈賄リスクが高い問題を発見した場合には、買収の取りやめ又は贈賄リスクが高い部分の事業を含まない買収への計画変更を行う。
  • 買収契約において、当該買収対象事業につき贈賄問題が存在しないことを内容とする売主の表明保証条項を合意する。支払いを

4 買収完了後の対応について

買収完了後には、以下の事項に留意します。

  • 買収完了前の海外贈賄防止DDにおいてインサイダー規制又は売主の非協力により十分な情報を入手できない場合には、買収完了後直ちに一定の期間を設けて贈賄リスクが高い分野を中心に十分な海外贈賄防止DDを実施する。
  • 買収完了後に発見した贈賄問題については、当局への通報の検討、関与役職員の処分、又は再発防止策の導入のほか、買収契約における表明保証条項を行使するなどして買収に関連する贈賄リスクを最小限にするように努める。
  • 買収完了後、自社の基本方針及び社内規程を含む海外贈賄防止の内部統制を買収対象事業に対して速やかに適用し、買収対象事業のモニタリングを実施する。
  • 買収対価の支払いを二段階としておき、買収後、一定期間調査を行った後に残代金を支払うような契約としておく。

参考文献:海外贈賄防止ガイダンスの手引(日本弁護士連合会)

 

2018年11月12日 17:39|カテゴリー:|コメントはまだありません

中国子会社(現地法人)の不正調査

先日、クライアントの中国子会社(現地法人)での不正調査案件で、中国に出張してきました。当該中国子会社は、上海からタクシーで2時間程度の某都市にあり、上海浦東空港から、車で向かいました。

 

高速道路で上海市を出て、当該某都市に入ってすぐの地点にある料金所で、警察官が、私達の乗っている車をとめ、タクシーの運転手に対し、「誰をのせているんだ」と聞きました。運転手が「外国人だ」と答えたところ、警察官は私を見て、「韓国人か?」と聞かれたので、説明するのも面倒なので頷いたら、「行ってよい」と言われました。

中国語の分からない同乗者に、やりとりを説明していたら、運転手が、「さっきの話しの内容、分かったのか?え、日本人なん?まったくパスポートも確認しないなら、いちいち聞くなよ」と言っていました。

スーツを着た3人が、車で別の市から入ってきたので確認するという警備の厳しさと、とりあえず声をかけたら確認まではしないという緩やかさを見て、私としては、中国に来たなという実感を持ちました。

 

 

現地調査では、当該現地法人では、ガバナンスの体制に甘い点が多くあったことから、まずは、制度設計を根本から構築しなおすことにしました。また、役員の報告義務、親会社または株主が保有する調査権限の活用についても社内ルール化することになりました。海外子会社の不正調査において、このようなガバナンスの制度面を構築及び活用することは非常に重要です。不正を行っていた者の処分についても、別途、手続を進めています。

 

また、日々の業務において、そのような制度を、どのように運用するかについても、同じように重要です。日本の大企業でも、ガバナンスの制度について最先端と評価されていたにもかかわらず、不祥事を防止できなかった事例がありました。運用面に問題があれば、立派なガバナンスの制度も効果を発揮しないということは、国内でも海外子会社でも同様ですね。

 

ガバナンスの制度の運用面に関連して、海外子会社の場合は、日本人が総経理等の高級管理職を占めるべきか、それとも、現地スタッフに任せるべきか、という議論をよく耳にします。日本人の方が、本社の立場からすれば、安心感があるという面は否定できないでしょう。しかし、現地法人の日本人総経理が不正を行っていたというケースも、何度も経験したことがあります。また、現地スタッフのモチベーションという意味では、総経理等になれるという目標を示した方が、良い点もあるでしょう。

個人的には、どちらが良いという「正解」はなく、会社の規模、ヒューマンリソース、及び、現地法人の成長ステージ等の観点から、状況に応じて判断せざるを得ないと考えています。重要なことは、管理職が日本人であれ外国人であれ、日本本社が、適切な距離感で常に「見ている」という感覚を現地法人に持たせることだと考えています。監督権限を適切に行使し、不正行為をすれば露見しそうだという緊張感を持たせ、同時に、事情も分からずに遠くから指示だけするといった存在ではなく、現地子会社の状況や苦労を正確に理解してくれているという共感を持たせることを実現することにより、海外子会社の不正を未然に防止できる確率は飛躍的に高まるものと信じています。

以上

(文責:藤井宣行)

2018年10月19日 11:43|カテゴリー:|コメントはまだありません