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国際法務の部屋

海外M&Aにおいて法務担当役員に期待される役割 ~「9つの行動」別冊編のご紹介

海外M&Aにおいて法務担当役員に期待される役割

~「9つの行動」別冊編のご紹介

 

以前執筆したブログ「我が国企業による海外M&A研究会」報告書(平成30年3月 経済産業省 )について(その1)」で、経済産業省が、平成30年3月に発表した「我が国企業による海外M&A研究会報告書」について取り上げたことがありました。

日本企業がグローバル規模で成長を実現していく上で、海外M&Aが重要かつ有効なツールとして認識され、日本企業による海外M&Aは増加傾向にある一方で、海外M&Aの難易度の高さから、期待されていた成果を十分あげられないケースも少なくないという背景から、平成29年度に経済産業省は、「我が国企業による海外M&A 研究会」を開催し、日本企業が抱えるM&A に関する課題を有識者とともに検討し、海外M&A を有効に活用していく上での留意点や事例を、この報告書と「海外 M&A を経営に活用する9つの行動」としてとりまとめていました。

ちなみに、9つの行動は、下記のとおりです。

  • 目指すべき姿」と実現ストーリーの明確化
  • 「成長戦略・ストーリー」の共有・浸透
  • 入念な準備に「時間をかける」
  • 買収ありきでない成長のための判断軸
  • 統合に向け買収成立から直ちに行動に着手
  • 買収先の「見える化」の徹底(「任せて任さず」)
  • 自社の強み・哲学を伝える努力
  • 海外M&A による自己変革とグローバル経営力
  • 過去の経験の蓄積により「海外 M&A 巧者」へ

 

その後、経済産業省は、令和元年6月に、上記の「9つの行動」の内容を踏まえ、各企業が海外M&Aに取り組んでいく上でより具体的・実践的に役立て、海外M&Aを活用し企業の成長につなげていくためにCEOと共に重要な鍵を握るCFO、法務担当役員及び社外取締役という3つのポジションに焦点を当て、これらのポジションの職責や専門性に応じて期待される役割やアクションについて、より具体化・明確化した「9つの行動」別冊編をとりまとめました。

 

法務的な観点から興味深いのは、法務担当役員に期待される役割として挙げられている下記の点です。

(ア)         経営チームの一員として戦略策定等に関与しているか

(イ)         必要なリスクを取るための検討ができているか

(ウ)         事業サイドからいつでも頼りにされる信頼関係があるか

(エ)         法務部門の経験・ノウハウを活かしているか

(オ)         外部アドバイザーの主体的な活用を意識しているか

(カ)         戦略や買収目的との整合性についての調査は十分か

(キ)         成長のための明確な判断軸をもった検討を行っているか

(ク)         グローバル規模でのリスクマネジメント体制が整備できているか

(ケ)         買収後の状況を定期的にモニタリングできているか

この中でも、M&Aに外部アドバイザーとして携わってきた立場から興味深かったのは、上記の(オ)に関して、現場の声として記載されている、「日頃から弁護士事務所等と信頼関係を構築し、自社の社風や戦略への理解を得ておくことも重要。これにより実際のディールの際にも自社の事情とミスマッチなく依頼することが可能に。」という部分と、上記の(キ)に関して現場の声として記載されている、「外部の弁護士は事業の内容を必ずしも熟知していないことから、『可能性』での議論、すなわち(軽重問わず)あらゆるリスクを列挙する方に傾く場合がある。したがって、社内の法務が『蓋然性』の視点から(それがどのようなビジネス上のインパクトを有するのかも含めた)議論を行い、会社として取っていいリスクか否かについて精査・検討する必要。」という部分です。

 

この他にも、示唆に富んだ記載が多数ありますので、海外M&Aに関与される方はぜひ「9つの行動」別冊編をご一読されることをお勧めいたします。

 

文責:河野雄介

2020年01月23日 14:21|カテゴリー:

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セミナー案内

2020年2月17日午後1時30分から、ジェトロ大阪(大阪国際ビル29階)において、広東卓建律師事務所の中国律師(弁護士)尹秀鍾氏とともに、「外商投資法への対応と深圳の取り組み」とのタイトルで、セミナーに登壇します。

 

【日時】 2020年2月17日 午後1時30分から

【場所】 大阪国際ビルディング29階 ジェトロ大阪 セミナールーム

大阪市中央区安土町2-3-13

【申し込み方法】

以下のお申込フォームよりオンラインでお申し込みください。

https://www.jetro.go.jp/events/osa/00f8e7278f75842c.html

※申込み完了メールをプリントアウトしていただき、当日お持ちください。

 

本セミナーでは、本ブログにおいても、以前に紹介したことのある中国外商投資法の制定について、詳しく、お話する予定です。

 

2020年1月1日から、「外商投資法」及び「外商投資法実施条例」が一斉に施行されます。これにより従来適用されていた「外資三法」は廃止されます。外商投資法では、ネガティブリストの導入、外商投資の促進と保護、海外への利益送金の保証等が盛り込まれており、開放政策のさらなる拡大、及び、市場参入制限措置の緩和等を積極的に打ち出す中国政府の姿勢がうかがわれます。

本セミナーでは、外商投資法及び同実施条例の概要、実務上の留意点について、お話する予定です。

 

また、深圳の法律事務所に在席する尹秀鍾弁護士からは、深圳における最近の実務の状況及び政策動向についても、紹介してもらう予定です。尹秀鍾弁護士は、深圳において、日系企業向けの業務を行っていることから、書籍やネット記事等では知ることのできない、コアな情報を話してもらおうと思っています。

 

ご興味がおあり方は、是非とも、お申込みください。

https://www.jetro.go.jp/events/osa/00f8e7278f75842c.html

 

(文責:藤井宣行)

2020年01月17日 18:16|カテゴリー:

中国法務

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香港の政治不安

2019年12月17日付け日本経済新聞電子版で、「中国習主席、早期の秩序回復指示、香港行政長官と会談」との記事がありました(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53419380W9A211C1FF1000/)。

習近平氏としては、先日、香港区議会選において民主派が圧勝したことを受け、表面的には厳格な姿勢を強調しないものの、引き続き、政府側が暴徒化していると表現している団体に対する取り締まりの強化を図っていくものと思われます。

 

この騒動は、もとはといえば、2019年4月、香港において、「逃亡犯条例」の改正案が提出されたことに端を発するものです。この改正案は、香港から、中国大陸等に刑事事件の被疑者等を引き渡すことが容易になること等を内容とするものでした。香港人としては、同改正によって、香港における自由が制約されると感じ、強く反発したものと言われています。

 

 

この一連の騒動に関し、さまざまな意見を直接または間接に見聞きしましたが、私なりのまとめとしては、①そもそも、香港人としては、英国から中国への返還の後、それまで享受していた自由が次第に制限されるといった政治面での不満が存在した。

また、②大陸からとめどなく流入する人及び資金によって、不動産価格に代表される物価の急激な上昇に対する経済面での不満が、相当程度蓄積していたところ、「逃亡犯条例」をきっかけに爆発したと感じています(例えば、私の香港の友人に、「香港で家を買うのは(経済的に)難しいみたいだね」と言ったところ、「難しくない。不可能だ。」と返されたこともあります。)。

 

 

このような背景が存在することもあり、「逃亡犯条例改正案」の撤回だけでは民衆が満足するはずはなく、普通選挙(香港政府トップの行政長官の直接選挙を意味します。現在は、限られた選挙委員会によって選ばれており、中国の意向が反映されるものになっていると言われています。)の実現等も要求されるに至っています。

 

この点、中国憲法第3条では、「全国人民代表大会及び地方各級人民代表大会は、すべて民主的選挙によって選出され、人民に対して責任を負い、その監督を受ける。」と規定されているものの、実質的には、(他の先進国が観念する)民主主義は採用されていません。

また、中国大陸における民主化活動の厳しい歴史が存在することからも、北京の中国政府における民主化に対する姿勢がどのようなものか、想像に難くありません。したがって、中国が普通選挙の実現を認めることは、現在の中国の政治制度の否定に等しいことから、絶対にないでしょう。

 

(一部の)デモ側の行動が暴徒化していたり、警察による実弾の使用が増えていたりと、香港では、厳しい状況が収束していません。私も、つい先日、香港での会議が予定されていたのですが、深センでの会議に変更となってしまいました。

ビジネスでもプライベートでも、香港で、良い思い出がたくさんある1人の日本人として、少しでも犠牲が少ない方法で、1日でも早く、この問題が解決することを望んでやみません。

(文責:藤井宣行)

2019年12月18日 12:41|カテゴリー:

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SDGsと企業活動③

去る11月26日に、大阪商工会議所において、我が国のSDGsの第一人者である株式会社日本総合研究所創発戦略センターシニアマネジャーの村上芽氏、当事務所の河野弁護士と私の3名で、「自社の強みを強化するSDGsの上手な活用法セミナー」を行いました。

SDGsの内容については、先日のブログ(SDGsと企業活動①SDGsと企業活動②)で紹介してきました。

今回のセミナーでは、SDGsは、一般的には、企業にとっての新たな負担と捉えられがちですが、上手に取り組むことによって、新たなビジネスチャンスを獲得できる可能性が広がるものであるということをお話しました。また、法務面からはどのようにSDGsに対応すればよいのか、すなわち海外拠点やサプライチェーン、バリューチェーンにおける諸問題(労働、人権、環境、贈収賄など)への取り組みについてお話をしました。

当日は、約100名の方にご出席頂き、企業においてSDGsへの関心が高まっているということを実感しました。

さて、今回のブログでは、SDGs実現のために参考となる日本の企業の取り組み事例を紹介します。外務省のHPを見て頂くと、多くの企業が素晴らしい取り組みをされていることが分かります。今回は、不二製油グループ本社株式会社の「グリーバンスメカニズム」の構築・運用についてご紹介します。

不二製油グループにとっては、パーム油が基幹原料の1つとなっています。しかし、パームに関する社会的課題として、農園開発に起因する環境問題、児童労働・強制労働などの人権問題という2つの課題が認められました。

そこで、不二製油グループは、パーム油の持続可能な調達を目指すことは社会的責任であると考え、2016年3月に「責任あるパーム油調達方針」を策定しました。同方針では、人々と地球環境を尊重するサプライヤーから責任ある方法で生産されたパーム油を調達することを約束し、パーム油サプライチェーンにおいて、①No Deforestation(保護価値の高い森林、炭素貯蔵量の多い森林及び泥炭湿地林における森林破壊ゼロ)、②No Peat land development(泥炭地における新規開発ゼロ)、③No Exploitation(先住民、地域住民、労働者の搾取ゼロ)を目指すことを約束しています。

持続可能な調達を実現するためには、自社だけではなく、「サプライチェーン」でとらえる必要があるという点が非常に重要です。

上記約束を実現するために設けられた1つのシステムが、今回紹介する「グリーバンスメカニズム」です。

「グリーバンス(grievance)」とは、「(不当と考えられることに対する正式な)抗議、苦情」を意味します。

それでは、グリーバンスメカニズムとは何かについて説明します。

2011年に国際連合人権理事会にて承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」は、「ビジネスに関連した人権侵害から保護する義務として、国家は、その領域及び/または管轄内において侵害が生じた場合に、司法、行政、立法またはその他のしかるべき手段を通じて、影響を受ける人々が実効的な救済にアクセスできるように、適切な措置を取らなければならない。」と定めています。そして、このような救済を利用するための手続が、「グリーバンスメカニズム(Grievance Mechanism)」と呼ばれます。これには国家による手続、国家以外による手続、また司法的な手続、司法的でない手続も含まれるとされています。

不二製油においては、「責任あるパーム油調達方針」を実現する目的で、2018年5月にグリーバンスメカニズムが構築・公表されました。このメカニズムは、ステークホルダーから不二製油グループに提起されたサプライチェーン上の環境・人権問題について、「責任あるパーム油調達方針」に基づいて直接サプライヤーとのエンゲージメントを行い問題の改善を促す仕組みとなっています。

不二製油では、透明性をもってグリーバンスに対応することを目的として、ウェブサイトに「不二製油グループグリーバンスメカニズムウェブページ」を設置し、少なくとも四半期に1回進捗状況を更新し、ステークホルダーに対する情報開示に努めています。

同ページでは、メール、電話、FAX、手紙でのグリーバンスを受け付けており、グリーバンスには、氏名、機関名、住所、コンタクト方法、グリーバンスの詳細、グリーバンスを裏付ける証拠を含むよう記載されています。

また、グリーバンスリスト(進捗状況一覧表)が公開されており、実際に寄せられたグリーバンスの内容、同グリーバンスへの不二製油の対応状況が記載された一覧表が閲覧できるようになっています。

中には、「A社における森林破壊、人権問題への対応要請」というグリーバンスに対し、間接的なサプライチェーン上のつながりがあることを確認し、同社に改善が見られなかったことから、サプライヤーに対し同社との取引停止を要請し、2018年9月以降の取引停止に至ったという事例もあったとのことです。

「人々と地球環境を尊重するサプライヤーから責任ある方法で生産されたパーム油を調達する」という約束を実現するために、自社だけでチェックを行うのではなく、言わば全世界からの監視を要求し、グリーバンスを受け付け、寄せられたグリーバンスに適切に対応する、さらに寄せられたグリーバンスの内容や対応を全て公開する。自社にとって都合の悪い事実は隠蔽されることが多いというイメージがある中で、このような取り組みは非常に革新的であり、これからの時代の企業経営に求められているものなのではないでしょうか。

 

(文責:三村 雅一)

2019年12月16日 14:47|カテゴリー:

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深セン出張雑感

12月1日から4日まで出張で深センに行ってきました。

これまでは、香港経由で深セン入りしていたのですが、今回は関西空港から直接深セン空港への直行便に乗ってみました。どうやら、深セン空港の国際線の離発着便は以前に比べてかなり増えているようです。いつの日か、香港から国際ハブ空港の座を奪う日が来るかもしれません。

米中貿易摩擦のマイナス影響を受けている製造業は多いものの、深センの携帯電話会社やハイテク企業に対して部品等を納入している日系企業は取引を伸ばしているケースもあるようです。

また、大湾区9 都市(広州市、深圳市、珠海市、仏山市、恵州市、東莞市、中山市、江門市、肇慶市)におけるハイエンド人材や不足人材に対して(大湾区9 都市に納付した個人所得税額-課税所得額×15%)の金額を補助する広東・香港・マカオグレーターベイエリア個人所得税優遇政策に関する通達が現地でのホットトピックとなっているようです。

深センを訪れるたびに良い出会いがあり、ネットワークが拡がっていきます。来年また深センを訪れるのが楽しみになりました。

文責 河野雄介

2019年12月13日 17:21|カテゴリー:

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書類の公証・認証

今回は、中国国内で訴訟当事者となった場合における裁判所への書類提出に関し、公証・認証手続について、紹介します。

 

 

外国企業が中国の裁判所(人民法院)において訴訟提起、または、応訴する場合は、中国の弁護士に委任しなければなりません(中国民事訴訟法263条)。中国人弁護士に委任するには、外国企業から中国人弁護士への委任状が必要となりますが、原則として(例外については、ここでは割愛します。)、当該委任状について、当該外国企業の所在国の公証機関の証明を得て、かつ、当該国に駐在する中国大使館または領事館の認証を得る必要があります(同法264条)。

 

日本企業は、上記の外国企業に該当しますので、中国人弁護士に対する委任状について、公証機関の証明を得て、かつ、当該国に駐在する中国大使館または領事館の認証を得る必要があります。

 

 

「公証機関の証明」については、委任状は私文書(公的機関との対比の意味での私人である企業の意思を表現した文書)ですから、日本国においては、公証役場での認証を行うことになります。なお、日本の公証人法1条において、公証人の権限として、公正証書の作成、私文書の認証、及び、定款の認証等が規定されています。一般に、「文書の公証・認証」といった表現が用いられることがありますが、厳密には、公証人が行う行為(≒公証)の中に、認証という行為が含まれていると整理することができます。

 

この手続により、公証人に、私人が作成した文書(ここでは委任状)の署名押印等が、本人のものに間違いないことを証明してもらいます。法的な表現では、文書の真正の証明といい、文書の記載内容ではなく、「本人が作成した(=偽造ではない)」ことを証明してもらうわけです。

英語でも、一般に、公証人による認証については、Notarizationという表現を用いることになりますが、Legalizationという表現を用いられていることもあり、このあたりは、厳密に表現が使い分けられているわけではないようですので、実際に必要とされている行為の内容を確認する必要があるでしょう。

 

 

次に、公証人は、(地方)法務局に所属していますので(公証人法10条1項)、公証役場で認証を受けた書類(私署証書)に対し、公証人の所属する(地方)法務局長が、認証の付与が在職中の公証人によりその権限に基づいてされたものであり、かつ、その押印が真実のものである旨の証明を付与します。これを公証人押印証明といいます。

これにより、日本の公的機関が、文書(ここでは委任状)の成立の真正を証明したことになります。

 

 

その後、日本に駐在する中国大使館または領事館の認証を得る前提として、外務省による公印確認を行います。これは、外務省が、文書(ここでは委任状)に押印されている公印について証明を行うものです。委任状の例でいえば、日本の外務省が、中国に対し、委任状に押印されている法務局(長)の印影が真正であることを証明してくれるものです。

なお、ここまでの手続については、要請をすることにより、東京や大阪等の公証役場では、公証役場のみで完結することができます(ワンストップサービス)。

 

 

これを受けて、中国大使館または領事館において認証を行います。これにより、当該文書が日本国内において正式な手続を経て真正が証明されたものであることを、中国大使館または領事館が証明してくれるので、中国において、当該文書について、真正なものであるとして扱ってもらえることになります。

なお、文書の提出先の国が、「外国公文書の認証を不要とする条約(1961年10月5日のハーグ条約)」に加盟している場合には、日本が同条約に加盟していることから、この手続を省略できる場合があります(アポスティーユ)。

(文責:藤井宣行)

2019年11月25日 08:47|カテゴリー:

中国法務

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公証、認証

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インドネシア法務

1 はじめに

SDGsシリーズを継続する予定でしたが、一旦お休みをさせて頂き、今回はインドネシアについて紹介します。

当事務所は、昨年の5月28日に、Kelvin Chia Partnershipと業務提携を行いました。(https://axis-international.jp/common/img/overseas_network/partnership.pdf

(Kelvin Chia Partnership:https://www.kcpartnership.com/

その後、昨年の秋には、Kelvin Chia Partnershipの弁護士と共に日本で、ASEANにおける現地法人のコンプライアンスに関するセミナーを共同で開催しました。

そういった関係もあり、この度、Kelvin Chia Partnershipと特別な協力関係にあるインドネシアの首都ジャカルタにあるMartia & Anggraini Partnershipにおいて研修をさせて頂きました。

今回の研修は約2週間という短い期間でしたが、同事務所のインドネシア人弁護士と、日本とインドネシアの法制度の違いについてディスカッションをしたり、クライアントとのミーティングに参加させて頂いたり、一緒に現地の日本企業やJETRO、インドネシア商工会議所(KADIN)などを訪問し、現地の日本企業のリーガル面でのニーズ調査を行うなど、非常に密度の濃い研修を行うことができました。

そこで、SDGsシリーズと並行して、インドネシアの法務シリーズもスタートさせたいと考えています。

今回は、インドネシアの概要及びインドネシア経済と日本企業について紹介します。

 

2 インドネシアの基本情報について

日本人にとっては「インドネシア」と聞くと、「バリ島」が真っ先に思い浮かぶのではないかと思います。インドネシアは、約1万4000の島からなる国であり、その面積は191万3580㎢と日本の約5倍の大きさを有しています。私が滞在したジャカルタは、ジャワ島に位置します。

また、人口は約2億6000万人と、中国、インド、アメリカに次ぐ世界で第4番目の数であり、その平均年齢は29歳と若い世代の人口比率が非常に高い国です。

インドネシアの首都ジャカルタにはASEAN本部が設置されており、ASEANの中核として世界に存在感を示している国であると言われています。

 

3 経済について(JETROの情報に基づく)

GDPの成長率は、2014年以降、約5%の成長をキープしています。

2018年の海外からの直接投資受入額は2万9307億ドルで、主な国として、シンガポールから9193億ドル、日本から4953億ドル、中国から2376億ドル、香港から2011億ドル、マレーシアから1775億ドルとなっています。

日本からの投資は、自動車やバイクから、電気、ガス、水道といったインフラ設備や不動産開発にシフトしています。

2024年には、名目GDP額において、インドネシアは5.4兆ドルになると予測されており、これは中国、アメリカ、インド、日本について世界で5番目であるとされています。

また、人口は2030年には3億人に達すると言われています。

ちょうど私がジャカルタに滞在している間に、ジョコウィ大統領の就任式があったのですが、ジョコウィ氏は、建国100周年にあたる2045年には、GDPが7兆ドルに達し、経済で世界5位に入る、貧困率も0%とする、という目標を掲げていました。

 

4 日本との関係

インドネシアに対して投資をしている国として日本が世界で2番目の国となっているように、日本とインドネシアは密接な関係にあると言えます。

まず、インドネシアは親日国として知られています。インドネシア国内で販売される自動車の98%,バイクの99%が日本製と圧倒的なシェアを誇っており、また今年の4月から営業を開始したインドネシア初の地下鉄を含む都市高速鉄道システム(MRT)も日本の全面支援によって完成しました。日本を訪れるインドネシア観光客も急増しており、日本語の学習者数も、現在約75.5万人と世界第2位(2015年、国際交流基金)となっています。ジャカルタのショッピングモールには、我々日本人にも馴染みのある、吉野家、牛角、一風堂、丸亀製麺などなどの日本のレストランも多数あり、日本の食事もインドネシアの方々には好評のようでした。

また、2019年現在、JETROが把握しているインドネシアに進出している日本企業は1574社と言われています。もっとも、実際は2000社以上が進出していると言われており、非常に多くの日本企業がインドネシアに進出しています。

 

5 インドネシアのベンチャー企業

このように、インドネシアという国は、若い力に支えられ、経済的にも成長中の新興経済大国であることが分かります。私は初めてジャカルタを訪れ、高層ビルが立ち並ぶ風景に、人々のパワーに圧倒されました。

また、インドネシアの特徴として、GO-JEK(ゴジェック)をはじめとするベンチャー企業も非常に活発であるという点が挙げられます。

アジアでスタートアップエコシステムが最も活況な国はインドネシアだという記事も見受けられるほどで、Google等の予測では、2025年までに同国のデジタル経済は2018年の約3倍に当たる1000億ドル(約10兆9000億円)規模に達するとされており、インドネシアが将来的に東南アジア最大のデジタル経済市場になるとともに、より多くのインドネシア新興企業が世界のIT業界に参入すると言われています。

私がジャカルタを訪れた際に銀行の方や弁護士、若い起業家等から話を聞いていると、インドネシアで最も成長している分野はフィンテック、特にP2Pレンディングの分野の成長が著しいという話をよく耳にしました。この点については次回以降も紹介したいと思います。

 

今回、僅か2週間でしたが、ジャカルタで研修を行ったことで大きな刺激を受けると共に、この国の可能性を強く感じました。提携先であるKelvin Chia PartnershipやMartia & Anggraini Partnershipの現地弁護士とも協力し、日本からインドネシアに進出を考える企業、既にインドネシアで事業を行っている日本企業、さらにインドネシアから日本に対して進出を考える企業をリーガル面でサポートする体制(インドネシアでの現地法人の設立、英文契約書、インドネシア語契約書のレビュー、労務問題、現地子会社のコンプライアンス体制の強化、各種規制への対応等)を強化したいと考えています。特に、ベンチャー法務をドメインとする当事務所は、インドネシアへの進出を考えるベンチャー企業のインドネシア進出を積極的にサポート致します。インドネシアにビジネスチャンスがあるのか、実際に現地の起業家から情報を得たい、という要望にも対応させて頂きます。

なお、私は、昨日よりインドネシア語のレッスンを受け始めました。来年ジャカルタを訪問する際には、少なくとも自己紹介ぐらいはインドネシア語でできるようになる予定です。

 

(文責:三村 雅一)

2019年11月20日 11:27|カテゴリー:

ASEAN法務

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深センにおける中国の特色ある社会主義先行モデル区の建設支持に関する意見について

中国政府は、2015年5月に、中国製造2025として、製造業発展のためのロードマップを発表しています。このロードマップでは、2049年までにやるべきことを3段階で策定しています。第1段階としては、2025年までに世界の製造強国入りを果たすとされています。次に、第2段階としては、2035年までに中国の製造業レベルを、世界の製造強国の中位に位置させるとされています。そして第3段階として、2049年には世界の製造強国のトップになるとされています。そして、このロードマップ実現に向けた具体的プロジェクトの一つとして、イノベーションセンターを2025年までに40拠点設立するというものが挙げられています。

このような流れの中で、中国共産党と国務院は、2019年8月18日に「深センにおける中国の特色ある社会主義先行モデル区の建設支持に関する意見」(以下、「本意見」といいます)を発表しました。

本意見では、深センの戦略的な位置づけとしてとして、次の点を挙げています。

質の高い発展:イノベーション主導の開発戦略を実施し、近代的な経済システムを構築し、質の高い開発のための制度的メカニズムを構築するための最前線とする

法治都市のモデル:法の支配のレベルを包括的に改善し、法の支配で政府と市場の境界を標準化し、安定した、公正で、透明性があり、予測可能な国際的にみても一流の法的ビジネス環境を作り出す

文明都市の都市文明のモデル:社会主義の中核的価値を実践し、高レベルの公共文化サービスシステムと現代文化産業システムを構築し、新しい人々を教育し、文化を発展させる

人々の幸福な生活の指標となる:高品質でバランスのとれた公共サービスシステムを構築し、包括的で持続可能な社会保障システムを構築して、教育体制、医療、介護、住居等の体制を充実させる

持続可能な発展の先駆者となる:安全で効率的な生産空間、快適で住みやすい生活空間を作り出し、持続可能な発展のための国連2030アジェンダの実施のために中国としての経験を提供する

そして、本意見では、深センの今後の発展目標として、次のようなロードマップが掲げられています。

  • 2025年までに、深センの経済力と開発品質を世界トップランクにし、研究開発投資と産業革新能力についても世界クラスとし、公共サービスレベルと生態環境の品質を国際先進レベルとし、近代的な国際的イノベーション都市の建設を達成する
  • 2035年までに、深センの質の高い発展が国家モデルとなり、深センの包括的な経済競争力が世界をリードするようになり、世界的な影響力を持つ創造的で創造的なイノベーション都市となる
  • 今世紀半ばまでに、深センは競争力、革新性、影響力を持つ世界をリードするようなモデル都市となる

このように、中国政府は、中国の都市の中でも、深センをイノベーション都市の先駆けとなるべく明確なロードマップを掲げています。このような流れの中で、深センを中心とする地域へ進出する日本企業や、日本を投資対象とする深圳在住の投資家等、日本と深圳の間の様々なビジネス上の連携が増えるものと思われます。当事務所としても、よりサポート体制を充実させ、深圳での情報をいち早くお届けできる体制を構築すべく、海外拠点としてアクシスコンサルティング深圳(亚科喜咨询(深圳)有限公司)を2018年に設立しておりますので、深圳関連のご相談につきましてもお気兼ねなくご相談いただけますと幸いです。

 

(文責:河野雄介)

2019年11月11日 18:53|カテゴリー:

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中国最高人民法院判決の紹介(商標登録権者による権利行使が権利濫用とされたケース)

今回は、中国の裁判所で、商標登録権者による権利行使が権利濫用とされたケースを紹介します。

 

事案の概要は、次のようなものです。日本の某衣料品メーカーの中国現地法人Yは、よく知られているブランドを用い、中国国内で衣料品の販売をしていました。しかしながら、当該ブランドで用いられているロゴは、中国国内のX社によって、すでに商標登録されていました。

そこで、Yは、Xによる商標登録が無効であると主張して、審判手続を申し立て、その後、紆余曲折を経て(詳細な経緯については割愛します。)、最終審である最高人民法院の判断を仰ぐことになりました。

 

 

前提として、上記のケースでは、X社は、膨大な数の商標権を登録しており、その大多数を、自らのビジネスで利用しておらず、登録された商標を利用している企業に対し、交渉や訴訟等を通じて、その買取り等を要求していたことがありました。

 

 

最高人民法院は、2018年9月、この点に着目して、Y社がいわゆる商標トロール的な活動をしていたと認定し、その行動が信義誠実の原則に違反するものであって、法的保護の対象とされない旨の判断をしました(最高人民法院(2018)最高法民再396号民事判決)。

 

 

中国法務を扱う弁護士であれば、「中国での訴訟をしても、日本企業は不利なんですよね?」といったご質問を受けることが、多くあります。

たしかに、いくつかの条件を満たすケースでは、そのような傾向を否定できない場合もありますが、現在の中国の裁判所では、かなり、公平な審理が期待できるようになってきていると感じています。上記のケースも、関連法令を形式的に適用すれば、日系企業が敗訴してもおかしくないケースであったと思いますが、「信義誠実の原則」に言及して、日系企業の勝訴を導いています。

 

 

現に、商標法をはじめ、多くの知的財産関連法令が改正され、政府による知的財産保護に対する取り組みが国際的に(特にアメリカ向けでしょうか)アピールされていることからも、中国においても、国家として、(外国企業も含む)知的財産の保護が重視する傾向であることは間違いないでしょう。

 

 

また、上記のケースからは、パテントトロール、商標トロールの存在と活動ぶりが明らかにされていますので、ビジネスの展開に応じ、事前の予防策が重要であることも再認識させられるものです。

(文責:藤井宣行)

2019年10月17日 09:42|カテゴリー:

中国法務

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外為法による外国投資家の対内直接投資の規制強化について

第1     外為法の改正告示とベンチャー企業への投資

外国為替及び外国貿易法(外為法)においては、我が国の安全保障等の観点から、外国投資家が国内企業の株式等を取得する取引について、原則として事前届出や事後報告義務を課しています。

本年5月に外為法の改正告示が出され、外国投資家が国内企業の株式等を取得する取引にあたり事前届出が必要となる業種の追加等が講じられ、本年8月31日以降から行う取引に適用されています。

この改正は、サイバーセキュリティーの確保の重要性が高まっていることなどを踏まえ、安全保障上重要な技術の流出等を防止する観点から講じられたため、次の図のとおり、追加された業種にはIT技術関連のものを多く含みます。(※は、対象範囲の拡大)。

図:追加等する業種

 

今回追加された業種にはベンチャー企業が行っている業務が多く含まれ、外国投資家から国内ベンチャー企業への投資に事前届出が必要となることで迅速な資金調達が難しくなるのではという懸念が生じています。

そこで、今回は、外国投資家が国内ベンチャー企業(このブログにおいては非上場会社に限定します)の株式等を取得する場合に限定して、届出等の要否や手続きを中心に概要を説明します。

外国投資家が上場企業の株式等を取得する場合や正確な要件等については、次の日本銀行の「外為法Q&A(対内直接投資・特定取得編)」(以下、「Q&A」という。)に詳細な説明があります。

 

 

第2     外国投資家が国内ベンチャー企業の株式等を取得する場合の手続の要否

注1 :外国投資家が国内の非上場会社の株式等を取得する場合で、事後報告で足りる株式等の取得で出資比率が10%未満のとき以外にも、事前届出・事後報告が不要の場合があります。例えば、相続又は遺贈により取得したとき、会社の組織変更に伴って組織変更前に取得していた株式等に代えて組織変更後の株式等を取得したとき等です。

 

注2:  約160ヶ国(アメリカ、イギリス、イスラエル、韓国、中国、ロシア等を含む)が、対内直接投資等に関する命令別表1において掲載国として指定されており、「日本及び掲載国」以外はアフガニスタン、北朝鮮、リビア、ソマリア等の一部の国です。

 

1 「外国投資家」とは

「外国投資家」がベンチャー企業に対して投資をしてベンチャー企業の株式等を取得するときは、多くの場合、外為法上の事前届出又は事後報告が必要となります。「外国投資家」が行う非上場会社の株式等の取得は、その出資比率に関わらず、「対内直接投資」(原則として事前届出又は事後報告が必要)にあたるためです(外為法第26条、対内直接投資等に関する政令(以下「政令」という。)第2条第9項第1~3号)。

「外国投資家」は、次のとおり定義されています。(外為法26条1項)

(1) 非居住者である個人、

(2) 外国法令に基づいて設立された法人その他の団体又は外国に主たる事務所を有する法人その他の団体(これらの法人その他の団体の在日支店を含みます)

(3)  上記(1)又は(2)に掲げる者により直接または間接に保有される議決権の合計が50%以上を占める会社(「間接に保有される議決権」は、外国法人等が50%以上の議決権を有する国内会社が保有する議決権をいいます、政令第2条第1項)、

(4)  非居住者である個人が役員または代表権限を有する役員のいずれかが過半数を占める本邦の法人その他の団体

なお、これら(1)~(4)以外の者であっても、外国投資家のために当該外国投資家の名義によらないで、対内直接投資を行う場合は、外国投資家とみなされます(外為法第27条第13項、第55条の5第2項)

 

海外に何らかの形で関連するベンチャーキャピタル(VC)がベンチャー企業の株式等を取得する場合でも、当該VCが「外国投資家」の定義にあてはまらない限りは、外為法の対内直接投資にかかる規制は受けません。

 

2 事前届出が必要な場合(外為法55条の5、同27条1項)

上図にあるとおり次の(i)(ii)(iii)のいずれかに該当する場合は事前届出が必要であり、(ii)についてのみ説明します。

(i)    外国投資家の国籍・所在国(地域)が「日本及び掲載国」以外

(ii)   投資先の事業目的が事前届出業種であるもの

(iii)  非居住者である個人が非居住者となる以前から引き続き所有する上場会社等以外の会社の株式等のイラン関係者に対する譲渡

 

(1)   事前届出業種

上述のとおり、5月の改正告示により、事前届出業種が追加(一部業種は対象範囲が拡大)されました。8月31日以降に外国投資家がベンチャー企業の株式等を取得する場合には、そのベンチャー企業が、従来から事前届出業種を行っていた場合に加え、改正告示により追加(範囲が拡大)された事前届出業種の業務を行っているときについても、事前届出が必要です。

 

多くのベンチャー企業が関連する、日本標準産業分類における「大分類:情報通信業」のうち「小分類:ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業、インターネット付随サービス業」については、以下の細分類の事業が事前届出業種に含まれています。

ソフトウェア業:

3911受託開発ソフトウェア業、3912組込みソフトウェア業

3913パッケージソフトウェア業

情報処理・提供サービス業:

3921情報処理サービス業

インターネット付随サービス業:

011ポータルサイトサーバ運営業、

4012アプリケーション・サービス・コンテンツ・プロバイダ

(いずれも、電気通信事業法第九条の登録を受けるべき電気通信事業に限る)

4013インターネット利用サポート業

 

(2)  「投資先」、「事業目的」

「投資先」には、外国投資家が投資を行おうとしている会社のみならず、その本邦にある子会社または完全対等合弁会社の事業目的が事前届出業種であるものを含みます(外為法第27条第1項、政令第3条第2項第1号)。

「事業目的」については、定款上の事業目的だけではなく、実際に行っている事業活動により判断する必要があります。

 

 

3 事後報告が必要な場合(外為法第55条の5、政令第6条の3、対内直接投資等に関する命令(以下、「命令」という。)第6条の2)

対内直接投資は、1992年1月の改正外為法施行により、そのほとんどが事後報告となっていました。今回、事後報告業種の一部が事前届出業種と改正されたことで、事前届出が必要となる場合が増えました。

次の(1)(2)(3)のいずれにも該当する場合は、事後報告が必要です。

 (1)  外国投資家の国籍及び所在国(地域)が「日本または掲載国」であるもの(手続不要のものを除く)

(2)  投資先が行う事業の全てが、業種を定める告示(注3)で定められた別表第三に掲げる業種(事後報告業種)であるもの

(3)  イラン関係者により行われる、イランの届出に係る対内直投を定める告示第一号に掲げる(安保理の事前承認により許可することが可能になる株式取得等)以外のもの

注3:「業種を定める告示」

対内直接投資等に関する命令第3条第4項に基づき財務大臣及び事業所管大臣が定める業種を定める件(平成26年3月6日内閣府、総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省告示第1号)

 

多くの業種が事後報告業種として挙げられています。

なお、ベンチャー企業が多くかかわる事業のうち、日本標準産業分類における「大分類:情報通信業」の「小分類:ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業、インターネット付随サービス業」については、以下の事業が事後報告業種に含まれています。

ソフトウェア業:

3914ゲームソフトウェア業

情報処理・提供サービス業:

3922情報処理サービス業、3923市場調査・世論調査・社会調査業、

3929その他の情報処理・提供サービス業

インターネット付随サービス業:

4011ポータルサイト・サーバ運営業、4012アプリケーション・サー

ビス・コンテンツ・プロバイダ(いずれも、電気通信事業法第九条の

登録を受けるべき電気通信事業を除く)

 

第4 手続等

1  事前届出が必要な場合

(1)  届出内容

外国投資家は、「別紙様式第一」を用いて、対内直接投資を行おうとする日の前6か月以内に日本銀行に提出しなければなりません(外為法第27条第1項、政令第3条第3項、命令第3条第8項第1号。外国投資家が非居住者の場合は、「居住者である代理人」が届出を行う。政令第3条第4項)。

※ 別紙様式1は日本銀行のウェブサイトに掲載されています。

 

(2)  禁止期間

日本銀行が届出書を受理した日から起算して30日を経過するまでは、届け出た取引又は行為を行うことはできません(最長で5ヶ月まで延長可能、外為法第27条第3~6、10項)。ただし、その禁止期間は、通常2週間に短縮され(外為法第27条第2項、命令第10条第2項)、一定の要件を満たせば4営業日を経過した日までに短縮されます(Q&A21頁~22頁参照)。

記事によると、「財務省外国為替室は「少子高齢化の中、日本が経済成長していくためには外国人投資家から国内への資金供給が重要であることは十分認識している。30日間の投資実行禁止期間について、法律上は原則30日間となっているが、審査の迅速化を進めている。実際、現対象業種の8~9割が5営業日内で審査は完了している」」とのことですので、スケジュールを確認する必要のある場合は、適宜、投資実行禁止期間の現状を当局に、確認された方がよいかもしれません。

 

(3)     事前届出後の実行報告

届出を行った外国投資家が、株式若しくは持分の取得をしたときは、「株式または持分の取得等に関する報告書(19)」を用いて30日以内に事後報告が必要です。報告書の様式は日本銀行のウェブサイトに掲載されています。

 

2  事後報告が必要な場合

外国投資家は、「株式・持分の取得等に関する報告書(11)」を用いて、取引又は行為を行った日の属する月の翌月15日までに、日本銀行を経由して報告しなければなりません(外為法55条の5第1項、政令第6条の3第1項、命令第6条の2。外国投資家が非居住者の場合は、「居住者である代理人」が届出を行う。政令第6条の3)。

※報告書の様式は日本銀行のウェブサイトに掲載されています。

 

第5  今回の改正による注意点

今回の改正により事前届出対象業種が拡大されたことから、外国投資家が行うベンチャー企業への投資が事前届出対象となる可能性が従来よりも高くなりました。

投資家側としては、自らが「外国投資家」に該当するかどうかを検討し、該当する場合には、早期にその旨をベンチャー企業に伝えて、ベンチャー企業が事前届出業種を行っているかの検討を行う必要があります。

ベンチャー企業側としては、投資を検討している投資家が上述の「外国投資家」に該当するか確認し、該当する場合には、自らの事業が「事前届出業種」に含まれていないか早期に確認することが必要です。

事前届出が必要な投資については、届出準備や禁止期間を念頭に入れた投資スケジュールを組むようにしてください。

 

以上

 

(文責:永田 順子)

2019年10月16日 13:13|カテゴリー:

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