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国際法務の部屋

中国最高人民法院判決の紹介(商標登録権者による権利行使が権利濫用とされたケース)

今回は、中国の裁判所で、商標登録権者による権利行使が権利濫用とされたケースを紹介します。

 

事案の概要は、次のようなものです。日本の某衣料品メーカーの中国現地法人Yは、よく知られているブランドを用い、中国国内で衣料品の販売をしていました。しかしながら、当該ブランドで用いられているロゴは、中国国内のX社によって、すでに商標登録されていました。

そこで、Yは、Xによる商標登録が無効であると主張して、審判手続を申し立て、その後、紆余曲折を経て(詳細な経緯については割愛します。)、最終審である最高人民法院の判断を仰ぐことになりました。

 

 

前提として、上記のケースでは、X社は、膨大な数の商標権を登録しており、その大多数を、自らのビジネスで利用しておらず、登録された商標を利用している企業に対し、交渉や訴訟等を通じて、その買取り等を要求していたことがありました。

 

 

最高人民法院は、2018年9月、この点に着目して、Y社がいわゆる商標トロール的な活動をしていたと認定し、その行動が信義誠実の原則に違反するものであって、法的保護の対象とされない旨の判断をしました(最高人民法院(2018)最高法民再396号民事判決)。

 

 

中国法務を扱う弁護士であれば、「中国での訴訟をしても、日本企業は不利なんですよね?」といったご質問を受けることが、多くあります。

たしかに、いくつかの条件を満たすケースでは、そのような傾向を否定できない場合もありますが、現在の中国の裁判所では、かなり、公平な審理が期待できるようになってきていると感じています。上記のケースも、関連法令を形式的に適用すれば、日系企業が敗訴してもおかしくないケースであったと思いますが、「信義誠実の原則」に言及して、日系企業の勝訴を導いています。

 

 

現に、商標法をはじめ、多くの知的財産関連法令が改正され、政府による知的財産保護に対する取り組みが国際的に(特にアメリカ向けでしょうか)アピールされていることからも、中国においても、国家として、(外国企業も含む)知的財産の保護が重視する傾向であることは間違いないでしょう。

 

 

また、上記のケースからは、パテントトロール、商標トロールの存在と活動ぶりが明らかにされていますので、ビジネスの展開に応じ、事前の予防策が重要であることも再認識させられるものです。

(文責:藤井宣行)

2019年10月17日 09:42|カテゴリー:

中国法務

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外為法による外国投資家の対内直接投資の規制強化について

第1     外為法の改正告示とベンチャー企業への投資

外国為替及び外国貿易法(外為法)においては、我が国の安全保障等の観点から、外国投資家が国内企業の株式等を取得する取引について、原則として事前届出や事後報告義務を課しています。

本年5月に外為法の改正告示が出され、外国投資家が国内企業の株式等を取得する取引にあたり事前届出が必要となる業種の追加等が講じられ、本年8月31日以降から行う取引に適用されています。

この改正は、サイバーセキュリティーの確保の重要性が高まっていることなどを踏まえ、安全保障上重要な技術の流出等を防止する観点から講じられたため、次の図のとおり、追加された業種にはIT技術関連のものを多く含みます。(※は、対象範囲の拡大)。

図:追加等する業種

 

今回追加された業種にはベンチャー企業が行っている業務が多く含まれ、外国投資家から国内ベンチャー企業への投資に事前届出が必要となることで迅速な資金調達が難しくなるのではという懸念が生じています。

そこで、今回は、外国投資家が国内ベンチャー企業(このブログにおいては非上場会社に限定します)の株式等を取得する場合に限定して、届出等の要否や手続きを中心に概要を説明します。

外国投資家が上場企業の株式等を取得する場合や正確な要件等については、次の日本銀行の「外為法Q&A(対内直接投資・特定取得編)」(以下、「Q&A」という。)に詳細な説明があります。

 

 

第2     外国投資家が国内ベンチャー企業の株式等を取得する場合の手続の要否

注1 :外国投資家が国内の非上場会社の株式等を取得する場合で、事後報告で足りる株式等の取得で出資比率が10%未満のとき以外にも、事前届出・事後報告が不要の場合があります。例えば、相続又は遺贈により取得したとき、会社の組織変更に伴って組織変更前に取得していた株式等に代えて組織変更後の株式等を取得したとき等です。

 

注2:  約160ヶ国(アメリカ、イギリス、イスラエル、韓国、中国、ロシア等を含む)が、対内直接投資等に関する命令別表1において掲載国として指定されており、「日本及び掲載国」以外はアフガニスタン、北朝鮮、リビア、ソマリア等の一部の国です。

 

1 「外国投資家」とは

「外国投資家」がベンチャー企業に対して投資をしてベンチャー企業の株式等を取得するときは、多くの場合、外為法上の事前届出又は事後報告が必要となります。「外国投資家」が行う非上場会社の株式等の取得は、その出資比率に関わらず、「対内直接投資」(原則として事前届出又は事後報告が必要)にあたるためです(外為法第26条、対内直接投資等に関する政令(以下「政令」という。)第2条第9項第1~3号)。

「外国投資家」は、次のとおり定義されています。(外為法26条1項)

(1) 非居住者である個人、

(2) 外国法令に基づいて設立された法人その他の団体又は外国に主たる事務所を有する法人その他の団体(これらの法人その他の団体の在日支店を含みます)

(3)  上記(1)又は(2)に掲げる者により直接または間接に保有される議決権の合計が50%以上を占める会社(「間接に保有される議決権」は、外国法人等が50%以上の議決権を有する国内会社が保有する議決権をいいます、政令第2条第1項)、

(4)  非居住者である個人が役員または代表権限を有する役員のいずれかが過半数を占める本邦の法人その他の団体

なお、これら(1)~(4)以外の者であっても、外国投資家のために当該外国投資家の名義によらないで、対内直接投資を行う場合は、外国投資家とみなされます(外為法第27条第13項、第55条の5第2項)

 

海外に何らかの形で関連するベンチャーキャピタル(VC)がベンチャー企業の株式等を取得する場合でも、当該VCが「外国投資家」の定義にあてはまらない限りは、外為法の対内直接投資にかかる規制は受けません。

 

2 事前届出が必要な場合(外為法55条の5、同27条1項)

上図にあるとおり次の(i)(ii)(iii)のいずれかに該当する場合は事前届出が必要であり、(ii)についてのみ説明します。

(i)    外国投資家の国籍・所在国(地域)が「日本及び掲載国」以外

(ii)   投資先の事業目的が事前届出業種であるもの

(iii)  非居住者である個人が非居住者となる以前から引き続き所有する上場会社等以外の会社の株式等のイラン関係者に対する譲渡

 

(1)   事前届出業種

上述のとおり、5月の改正告示により、事前届出業種が追加(一部業種は対象範囲が拡大)されました。8月31日以降に外国投資家がベンチャー企業の株式等を取得する場合には、そのベンチャー企業が、従来から事前届出業種を行っていた場合に加え、改正告示により追加(範囲が拡大)された事前届出業種の業務を行っているときについても、事前届出が必要です。

 

多くのベンチャー企業が関連する、日本標準産業分類における「大分類:情報通信業」のうち「小分類:ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業、インターネット付随サービス業」については、以下の細分類の事業が事前届出業種に含まれています。

ソフトウェア業:

3911受託開発ソフトウェア業、3912組込みソフトウェア業

3913パッケージソフトウェア業

情報処理・提供サービス業:

3921情報処理サービス業

インターネット付随サービス業:

011ポータルサイトサーバ運営業、

4012アプリケーション・サービス・コンテンツ・プロバイダ

(いずれも、電気通信事業法第九条の登録を受けるべき電気通信事業に限る)

4013インターネット利用サポート業

 

(2)  「投資先」、「事業目的」

「投資先」には、外国投資家が投資を行おうとしている会社のみならず、その本邦にある子会社または完全対等合弁会社の事業目的が事前届出業種であるものを含みます(外為法第27条第1項、政令第3条第2項第1号)。

「事業目的」については、定款上の事業目的だけではなく、実際に行っている事業活動により判断する必要があります。

 

 

3 事後報告が必要な場合(外為法第55条の5、政令第6条の3、対内直接投資等に関する命令(以下、「命令」という。)第6条の2)

対内直接投資は、1992年1月の改正外為法施行により、そのほとんどが事後報告となっていました。今回、事後報告業種の一部が事前届出業種と改正されたことで、事前届出が必要となる場合が増えました。

次の(1)(2)(3)のいずれにも該当する場合は、事後報告が必要です。

 (1)  外国投資家の国籍及び所在国(地域)が「日本または掲載国」であるもの(手続不要のものを除く)

(2)  投資先が行う事業の全てが、業種を定める告示(注3)で定められた別表第三に掲げる業種(事後報告業種)であるもの

(3)  イラン関係者により行われる、イランの届出に係る対内直投を定める告示第一号に掲げる(安保理の事前承認により許可することが可能になる株式取得等)以外のもの

注3:「業種を定める告示」

対内直接投資等に関する命令第3条第4項に基づき財務大臣及び事業所管大臣が定める業種を定める件(平成26年3月6日内閣府、総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省告示第1号)

 

多くの業種が事後報告業種として挙げられています。

なお、ベンチャー企業が多くかかわる事業のうち、日本標準産業分類における「大分類:情報通信業」の「小分類:ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業、インターネット付随サービス業」については、以下の事業が事後報告業種に含まれています。

ソフトウェア業:

3914ゲームソフトウェア業

情報処理・提供サービス業:

3922情報処理サービス業、3923市場調査・世論調査・社会調査業、

3929その他の情報処理・提供サービス業

インターネット付随サービス業:

4011ポータルサイト・サーバ運営業、4012アプリケーション・サー

ビス・コンテンツ・プロバイダ(いずれも、電気通信事業法第九条の

登録を受けるべき電気通信事業を除く)

 

第4 手続等

1  事前届出が必要な場合

(1)  届出内容

外国投資家は、「別紙様式第一」を用いて、対内直接投資を行おうとする日の前6か月以内に日本銀行に提出しなければなりません(外為法第27条第1項、政令第3条第3項、命令第3条第8項第1号。外国投資家が非居住者の場合は、「居住者である代理人」が届出を行う。政令第3条第4項)。

※ 別紙様式1は日本銀行のウェブサイトに掲載されています。

 

(2)  禁止期間

日本銀行が届出書を受理した日から起算して30日を経過するまでは、届け出た取引又は行為を行うことはできません(最長で5ヶ月まで延長可能、外為法第27条第3~6、10項)。ただし、その禁止期間は、通常2週間に短縮され(外為法第27条第2項、命令第10条第2項)、一定の要件を満たせば4営業日を経過した日までに短縮されます(Q&A21頁~22頁参照)。

記事によると、「財務省外国為替室は「少子高齢化の中、日本が経済成長していくためには外国人投資家から国内への資金供給が重要であることは十分認識している。30日間の投資実行禁止期間について、法律上は原則30日間となっているが、審査の迅速化を進めている。実際、現対象業種の8~9割が5営業日内で審査は完了している」」とのことですので、スケジュールを確認する必要のある場合は、適宜、投資実行禁止期間の現状を当局に、確認された方がよいかもしれません。

 

(3)     事前届出後の実行報告

届出を行った外国投資家が、株式若しくは持分の取得をしたときは、「株式または持分の取得等に関する報告書(19)」を用いて30日以内に事後報告が必要です。報告書の様式は日本銀行のウェブサイトに掲載されています。

 

2  事後報告が必要な場合

外国投資家は、「株式・持分の取得等に関する報告書(11)」を用いて、取引又は行為を行った日の属する月の翌月15日までに、日本銀行を経由して報告しなければなりません(外為法55条の5第1項、政令第6条の3第1項、命令第6条の2。外国投資家が非居住者の場合は、「居住者である代理人」が届出を行う。政令第6条の3)。

※報告書の様式は日本銀行のウェブサイトに掲載されています。

 

第5  今回の改正による注意点

今回の改正により事前届出対象業種が拡大されたことから、外国投資家が行うベンチャー企業への投資が事前届出対象となる可能性が従来よりも高くなりました。

投資家側としては、自らが「外国投資家」に該当するかどうかを検討し、該当する場合には、早期にその旨をベンチャー企業に伝えて、ベンチャー企業が事前届出業種を行っているかの検討を行う必要があります。

ベンチャー企業側としては、投資を検討している投資家が上述の「外国投資家」に該当するか確認し、該当する場合には、自らの事業が「事前届出業種」に含まれていないか早期に確認することが必要です。

事前届出が必要な投資については、届出準備や禁止期間を念頭に入れた投資スケジュールを組むようにしてください。

 

以上

 

(文責:永田 順子)

2019年10月16日 13:13|カテゴリー:

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SDGsと企業活動②

1 前回のブログ(SDGsと企業活動①)で、SDGsとは、持続可能な世界を実現するための17の目標(Goals)であり、2030年に向けて、全世界が持続可能な発展を遂げるために達成すべき共通の国際目標であることを紹介しました。

そして、企業にとっては、利益のみを重視するのではなく、ESG、持続可能性を理解し経営に入れ込まなければ、それが企業経営にとって大きなリスクとなる、そういった時代の中で、SDGsは、企業経営にとって指針になりうる国際的な共通言語として重要な意味を持つことを紹介しました。

 

2 既に、現代社会においては、規模の大小を問わず、成長を目指す企業はSDGsを無視した経営を行うことはできなくなっているといっても過言ではありません。現代社会におけるSDGsのプレゼンスについてさらに紹介したいと思います。

 

①ESG投資の加速

企業経営において、ESG=環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)への配慮が求められるようになったことは前回のブログでも紹介しましたが、投資の世界においても、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資であるESG投資が加速しています。

この動きは日本でも同様であり、2017年には、日本の国民年金約160兆円を運用する世界最大の機関投資家GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、その運用資金の一部でESG投資を始めました。

世界持続的投資連合(GSIA)によると、世界のESG投資の2018年の投資額は3317兆円(約31兆ドル)に達し、2016年比で34%増加しています。また、日本のESG投資額について見ると、2018年の日本のESG投資額は2兆ドルと、2016年の4.6倍に膨らんでいます。このような動きに照らすと、日本のESG投資は今後さらに加速することが予測されます。

そして、前記GPIFは、投資家によるESG投資と投資先企業のSDGsへの取り組みは表裏の関係にあるという認識を明らかにしており、ESGとSDGsを関連付けて説明しています。

したがって、仮に企業がSDGsへの対応を誤れば、株主・従業員・顧客・地域社会等の各ステークホルダーからの信頼が損なわれ、社会的信頼を失い、企業価値は損なわれ、ESG投資を受ける機会も喪失することにもなり得るという大きなリスクを負うことになります。

②サプライチェーンにおけるSDGs

外務省のHPには、様々な企業のSDGsへの取組事例が紹介されています。(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/case/org1.html

各社の取り組みを見る中で、各企業が、SDGsを達成するためには、自社のみならず、上流、下流においても、SDGsを達成するための動きを取る必要があることを認識していることが分かります。

繰り返し述べる通り、SDGsとは、「全世界が持続可能な発展を遂げるため」に達成すべき共通目標である以上、サプライチェーンにおける1社がSDGs達成のための取り組みをしたことによって、下流にしわ寄せがいく、そういったことがあってはならないのです。自社と取引関係にある全ての企業にSDGsを要求する、そういった時代がやってくるでしょう。

 

③政府による「SDGs未来都市」の選定

政府により、自治体によるSDGsの達成に向けた優れた取組を提案する都市が「SDGs未来都市」として選定されました。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/teian/2019sdgs_pdf/sdgsfuturecitypress0701.pdf

このように、我々市民が生活を送る自治体においても、SDGsの達成に向けた「持続可能なまちづくり」が行われていることが分かります。

 

④東京五輪・パラリンピック、大阪万博とSDGs

東京オリンピック・パラリンピックの調達・運営のルールでもSDGsが基準として明確に打ち出されており、政府も東京オリンピックのことを、「SDGs五輪」とうたっています。

https://tokyo2020.org/jp/games/sustainability/

また、大阪招致が決まった2025年万博は、ホームページにおいて、「大阪・関西万博は、2015年9月に国連本部で開催された「国連持続可能な開発サミット」において、 持続可能な開発目標として17の目標を掲げたSDGsが達成された社会をめざす為に開催いたします。」と明言し、SDGsの実現を開催目的として明言しています。(https://www.expo2025.or.jp/attract/purpose/

 

このように、現代社会におけるSDGsのプレゼンスは非常に高まっており、規模の大小を問わず、成長を目指す企業はSDGsを無視した経営を行うことはできなくなっていることがお分かり頂けたのではないでしょうか。

次回は、企業等におけるSDGs関連リスク、ESG関連リスクへの対応の在り方について説明をしたいと思います。

以上

 

(文責:三村雅一)

 

2019年10月16日 10:54|カテゴリー:

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SDGsと企業活動①

1 SDGsとは

皆さんは、SDGsという言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

言葉を耳にしたことはなくても、カラフルなロゴやバッジを目にしたことはあるのではないでしょうか。

今回は、SDGsとは何か?を説明すると共に、企業とSDGsの関係についての概要を説明します。

まず、SDGs(エスディージーズ)とは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の頭文字を取った略称です。

SDGsは、持続可能な世界を実現するための17の目標(Goals)です。17個のゴールがあることから、Goals=Gsとされています。この17の目標については、2015年9月25日の第70回国連総会で採択された、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されています。

すなわち、SDGsとは、2030年に向けて、全世界が持続可能な発展を遂げるために達成すべき共通の国際目標といえます。

(日本語仮訳版:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf

また、SDGsには、上記17の目標のもと、169のターゲットを置いています。この169のターゲットは、SDGsの17の目標を達成するために具体的に実現すべき内容を示したものであり、SDGsの具体目標とも呼ばれています。

ここで、「持続可能な開発」とは、「将来の世代の欲求を満たしつつ,現在の世代の欲求も満足させるような開発」のことを言うとされています。経済的に発展すること、物やサービスを中心とした暮らしが豊かになることは必要だけれど、それは「持続可能」なものではなければならないということです。

 

2 SDGsと企業

「持続可能な開発」というテーマについては、SDGsにおいて初めて議論されたわけではなく、以前から繰り返し議論され、目標設定されてきたものでした。

それでは、SDGsとこれまでの目標との大きな違いは何でしょうか。

それは、これまでの目標は、国やNGOが主体になるものが多く、民間の一人ひとりが当事者意識を持ちにくいということがあったところ、SDGsは、民間企業による取り組みを求めた点が大きな違いであると言われています。

このように、SDGsは企業経営においても決して避けて通ることはできない目標となっています。

すなわち、時代の変化に伴い、2000年代初め頃から、企業は、社会に対して責任を負う存在であるとして、ESG=環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)への配慮を企業に対し求めるさまざまな関係者の動きが世界的に強まるようになりました。そして、この動きは、投資の判断においても広がり、投資判断にESGの要素を考慮するESG投資は、2006年に国連責任投資原則(PRI)が提唱し、グローバルでは年金基金などの大手機関投資家によって採用されるようになりました。

このように、企業にとっては、利益のみを重視するのではなく、ESG、持続可能性を理解し経営に入れ込まなければ、それが企業経営にとって大きなリスクとなる、そういった時代が訪れるようになりました。

SDGsは、こういった時代の中で、企業経営にとって指針になりうる国際的な共通言語として重要な意味を持つと言われています。

これからの企業経営においては、社会・環境への要請の更なる高まり、ICTの進化、企業のグローバル展開に伴って生じる、海外拠点やサプライチェーン、バリューチェーンにおける諸問題(労働、人権、環境、贈収賄など)への対応など、内外の激しい変化の中で革新的な対応が求められるようになっていきます。その対応指針として、SDGsは大きな意味を持つことから、企業に携わる方々、そして企業法務に携わる我々弁護士も、SDGsの内容をしっかりと理解しておかなければなりません。

次回は、SDGsが現在の日本でどのように位置づけられているのか、企業がSDGsにどのように取り組んでいるのか、その具体例について紹介します。

 

以上

(文責:三村 雅一)

2019年10月16日 10:53|カテゴリー:

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PCT国際出願数の割合にみる深圳における先端技術の発展

少し古い記事になりますが、2019年4月1日付の日本経済新聞の記事で、「世界知的所有権機関(WIPO)が3月にまとめた2018年の特許の国際出願件数をもとに日本経済新聞が集計したところ、中国の出願件数の半数以上の52%を深圳市が占めていたことが分かった。2位の北京市(13%)を大幅に上回った。深圳は国策により次世代高速通信「5G」や新素材など先端技術の開発の後押しを受けており、それを裏付ける調査結果となった。」との報道がなされました。

この記事でいう、「特許の国際出願」とは、いわゆるPCT(Patent Cooperation Treaty、特許協力条約)に基づく出願のことを指しています。PCT国際出願とは、出願願書を条約に従って一つの国で提出することによって、PCT加盟国である他のすべての国にも同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度を利用した出願のことです。

PCT国際出願では、国際的に統一された出願願書を自国(PCT加盟国である必要があります)の特許庁に対して特許庁が定めた言語(日本の特許庁の場合は日本語もしくは英語)で作成し、1通だけ提出すれば、その時点で有効なすべてのPCT加盟国に対して「国内出願」を出願することと同じ扱いを得ることができます。つまり、日本でPCT出願をする場合は、日本の特許庁に対して日本語もしくは英語で作成した国際出願願書を1通だけ提出すれば、当該出願願書に記載した出願日がPCT加盟国においての「国内出願」の出願日となります。

もっとも、PCT国際出願は、あくまで国際的な「出願」手続にすぎず、国際出願の発明が、特許を取得したいPCT加盟国のそれぞれで特許として認められるかどうかは、最終的には各国特許庁の実体的な審査に委ねられています。そこで、PCT国際出願を行った後、権利を取りたいPCT加盟国において、いわゆる国内移行手続を採る必要があります。国内移行手続きを行うにあたり、優先日から30ヶ月の期限が満了する前に、権利を取りたいPCT加盟国が認める言語に翻訳した翻訳文をその国の特許庁に提出し、その国が求める場合には手数料を支払う必要があります。

WIPOがまとめた、Patent Cooperation Treaty Yearly Review 2019によると、2018年のPCT国際出願の国別ランキングについては、首位は米国の5万6142件、2位が中国で5万3345件、3位は日本で4万9702件となっています。ちなみに、2003年から2016年までは日本がPCT国際出願件数で第2位の座を保持してきましたが、2017年に中国が日本を抜いて第2位に躍り出て(2017年の中国と日本の出願件数の差はわずか674件)、2018年にはさらに日本との出願件数に差をつけて第2位の座を保持しています(2018年の中国と日本の出願件数の差は3643件に拡大)。

中国のPCT国際出願数が首位の米国に僅差で迫っている中で、中国国内における出願数で深圳市が占める割合がその半数以上の52%ということは、世界の都市の中でも、深圳市(在住の企業又は個人)が群を抜いてPCT国際出願を行っていることを意味しています。

上記の日経新聞の記事でも分析されているところですが、深圳市には、通信機器の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)のほか、ネットサービスの騰訊控股(テンセント)、ドローン(小型無人機)世界最大手のDJIが本社を置いており、これらの深圳在住企業が国策により次世代高速通信「5G」や新素材など先端技術の開発の後押しを受けていることが、上記のようなPCT国際出願数に反映されているものと考えられます。

このような深圳における先端技術の急速な成長に伴い、深圳を中心とする地域へ進出する日本企業や、日本を投資対象とする深圳在住の投資家等、日本と深圳の間の様々なビジネス上の連携が増えるものと思われます。当事務所としても、よりサポート体制を充実させ、深圳での情報をいち早くお届けできる体制を構築すべく、海外拠点としてアクシスコンサルティング深圳(亚科喜咨询(深圳)有限公司)を2018年に設立しておりますので、深圳関連のご相談につきましてもお気兼ねなくご相談いただけますと幸いです。

参考サイト

PCT国際出願制度の概要(特許庁)

WIPO PCT年次報告 

文責:河野雄介

2019年09月10日 13:55|カテゴリー:

中国法務

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大阪とインバウンド投資

少し前のことになりますが、7月31日付けの日本経済新聞電子版に、「関西企業再興 頼みはアジア「鴻海流」眠れる技に光」という題の記事がありました(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47985730Q9A730C1LKA000/)。

同記事では、訪日外国人の増加のみならず、関西・大阪への企業による進出が増加していることが紹介されていました。増加の背景として、「京都の電子部品やゲーム、大阪の家電、神戸の医療などの産業が集まる関西には日本人だけでは生かし切れていない技術や経験、知的財産が眠」っていること、及び、これらと、「アジア企業と掛け合わせれば、新しい価値が生まれる」と考えられることが書かれていました。

 

 

アクシスでは、中国をはじめとして、ASEAN地域からのインバウンド業務を取り扱っています。インバウンドという言葉は、多様な意味で使われているようですが、海外からの日本へのインバウンド案件という場合には、主に、日本への投資案件を意味する場合が多いでしょう。投資案件の中には、中国企業による日本での会社設立や、日本企業への出資、及び、ライセンス契約等のさまざまな類型が含まれます。その中でも、中国企業が日本企業の株式を100%取得する、いわゆる買収について、「日本企業が中国企業に買われる」といった、否定的な捉え方をされることもあります。しかしながら、技術やノウハウ等を有しつつ資金を欲していた日本企業(直接的には株主)と、資金を有しているが技術やノウハウ等を欲している中国企業の双方にとって、ウィンウィンの関係を築くことができる良い取引と捉えるべきでしょう。当該企業が、将来、資金不足のために廃業を余儀なくされてしまえば失われる従業員の雇用も維持されますし、当該企業が社会に提供していた価値も維持されます。

 

 

大阪を初めとして関西は、物流網が整備されており、東京よりも賃料相場が低く、生活環境が良く人材確保においてメリットを有しており、かつ、ハードウエア分野における優秀な技術者が多いことなど、ベンチャー企業の拠点として優れている点が多くあります。このようなバックグラウンドを基盤として、インバウンド投資のさらなる活発化、及び、万博の開催等によって、関西経済がさらに活性化することに期待していますし、アクシスとしても、その一助を担っていきたいと思います。

 

(文責:藤井宣行)

2019年08月21日 11:23|カテゴリー:

中国法務

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個人情報保護法における「個人情報」の定義と、GDPRにおける「個人データ」の定義の相違点

 

1 はじめに

GDPRとは、欧州連合(EU)が定めた一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)のことです。このGDPRは2018年5月25日から施行されています。

本稿では、日本の個人情報の保護に関する法律(以下、「個人情報保護法」といいます)で規定されている「個人情報」の定義と、GDPRで規定されている「個人データ」の定義ぶりを比較検討してみます。

 

2 個人情報保護法における「個人情報」について

日本の個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)の第2条1項では、「個人情報」について下記のような定義がなされています。

 

この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。第十八条第二項において同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)

二 個人識別符号が含まれるもの

 

そして、同法第2条1項2号に定められている、「個人識別符号」については、同法第2条2項において下記のとおり定められています。

この法律において「個人識別符号」とは、次の各号のいずれかに該当する文字、番号、記号その他の符号のうち、政令で定めるものをいう。

一 特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号であって、当該特定の個人を識別することができるもの

二 個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ、又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され、若しくは電磁的方式により記録された文字、番号、記号その他の符号であって、その利用者若しくは購入者又は発行を受ける者ごとに異なるものとなるように割り当てられ、又は記載され、若しくは記録されることにより、特定の利用者若しくは購入者又は発行を受ける者を識別することができるもの

 

そして、上記で太字にした「政令」とは、「個人情報の保護に関する法律施行令」のことで、同政令第1条において、下記の通り、「文字、番号、記号その他の符号」について具体的な定めがなされています。

 

(個人識別符号)

第一条 個人情報の保護に関する法律(以下「法」という。)第二条第二項の政令で定める文字、番号、記号その他の符号は、次に掲げるものとする。

一 次に掲げる身体の特徴のいずれかを電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号であって、特定の個人を識別するに足りるものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に適合するもの

イ 細胞から採取されたデオキシリボ核酸(別名DNA)を構成する塩基の配列

ロ 顔の骨格及び皮膚の色並びに目、鼻、口その他の顔の部位の位置及び形状によって定まる容貌

ハ 虹彩の表面の起伏により形成される線状の模様

ニ 発声の際の声帯の振動、声門の開閉並びに声道の形状及びその変化

ホ 歩行の際の姿勢及び両腕の動作、歩幅その他の歩行の態様

ヘ 手のひら又は手の甲若しくは指の皮下の静脈の分岐及び端点によって定まるその静脈の形状

ト 指紋又は掌紋

二 旅券法(昭和二十六年法律第二百六十七号)第六条第一項第一号の旅券の番号

三 国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第十四条に規定する基礎年金番号

四 道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第九十三条第一項第一号の免許証の番号

五 住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第七条第十三号に規定する住民票コード

六 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第五項に規定する個人番号

七 次に掲げる証明書にその発行を受ける者ごとに異なるものとなるように記載された個人情報保護委員会規則で定める文字、番号、記号その他の符号

イ 国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第九条第二項の被保険者証

ロ 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第五十四条第三項の被保険者証

ハ 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第十二条第三項の被保険者証

八 その他前各号に準ずるものとして個人情報保護委員会規則で定める文字、番号、記号その他の符号

 

2 GDPRにおける「個人データ」について

他方で、GDPRの第4条(1)には、「個人データ」の定義として、下記のような定めがなされています。

 

「個人データ」とは、識別された自然人又は識別可能な自然人(「データ主体」)に関する情報を意味する。

識別可能な自然人とは、特に、氏名、識別番号、位置データ、オンライン識別子のような識別子を参照することによって、又は、当該自然人の身体的、生理的、遺伝的、精神的、経済的、文化的又は社会的な同一性を示す一つ又は複数の要素を参照することによって、直接的又は間接的に、識別されうる者をいう。

 

3 重要な相違点~オンライン識別子を参照することによって識別される者に関する情報

注意すべきなのは、GDPRの「個人データ」には、「オンライン識別子のような識別子」を参照することによって識別される者に関する情報が含まれることです。このオンライン識別子とは、具体的には、インターネットプロトコルアドレス、クッキー識別子のことです。

日本の個人情報保護法上における、「個人情報」の定義に照らすと、オンライン識別子を参照することによって識別されるものに関する情報は、①当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものには該当せず、②個人識別符号にも該当しないことから、「個人情報」には該当するとは言えない場合が多いと考えられます。

このように、GDPRの「個人データ」には、「オンライン識別子のような識別子」を参照することによって識別される者に関する情報が含まれるということは、GDPRが適用される可能性があるウェブサイトを作成・運営する場合で、クッキー識別子を埋め込むような場合は、GDPRに定める個人データを取り扱っていることとなり、取扱いの適法性を担保するための要件(データ主体の同意、契約の履行のため、管理者が服する法的義務の遵守のため等、GDPR第6条)を充足する必要があります。

また、GDPR対応のプライバシーポリシーを英文で作成し、その中でクッキーに関するポリシーを明記しておくことも実務上重要となります。

当事務所では、GDPRに対応した英文プライバシーポリシー、英文利用規約、個人データの処理を外部業者に委託する際の処理契約書の作成等を取り扱っておりますのでお気兼ねなくお問い合わせください。

以上

文責:河野雄介

2019年08月16日 16:03|カテゴリー:

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中国不正競争防止法の改正

中国の不正競争防止法(中文:反不正当競争法)は、2018年1月1日に改正法が施行されていましたが、2019年4月23日、さらなる改正法が施行されました。

 

 

今般の改正の背景としては、営業秘密に関する紛争が増加していること、営業秘密に関する紛争における立証の困難性が実務上の課題となっていること等が存在すると言われています。

 

 

改正の概要を、下記に紹介します。

1.営業秘密の定義は、これまで、「公衆に知られておらず、商業的価値を有し、かつ権利者が関連の秘密保守措置を取った技術情報及び経営情報」とされていましたが、「技術情報及び経営情報」の部分を「技術情報及び経営情報等の商業情報」に変更し(9条5項)、営業秘密の範囲を拡大しています。

2.営業秘密を侵害する主体について、従来は「事業者」と規定されていましたが、改正法では、「事業者」のほか「その他自然人、法人、又は法人でない組織」が追記されました。(9条2項)。また、営業秘密を侵害する行為の態様について、改正法では「教唆、誘導、幇助」が追記されたほか、営業秘密の不正取得手段については、「電子侵入」が追記されました(9条1項)。

3.営業秘密の侵害行為に対する行政処罰に関し、改正法は、過料の金額の上限を 50万人民元から100万人民元に(情状が重大である場合については100万人民元から500万人民元に)引き上げました。また、民事関係における損害賠償責任の上限に関し、300万人民元から500万人民元に引き上げました(17条4項、21 条)。さらに、悪意による営業秘密の侵害行為に対し、懲罰的損害賠償制度を導入し、情状が重大である場合、権利者に生じた損害又は侵害者が侵害行為により得た利益から算定された賠償金額の1倍以上5倍以下の賠償を命じることができるとの条項を追加しました(17条3項)。

4.営業秘密を侵害されたことを主張する場合、実務上、権利者は、営業秘密該当性(①公衆に知られていないこと、②商業価値を有すること、③秘密保持の措置を講じていることを証明する責任を負っていました。この点は、中国においても日本と同様、立証の負担が大きく、権利者にとって大きなハードルとなっていました。

これを受け、改正法では、証明責任の転換に関する条文(32条)が新設されました。すなわち、権利者(以下、権利者を原告、相手方を被告として説明します。)が上記③及び侵害行為について一応の証明をした場合、営業秘密該当性を満たさないことについて、被告が証明する必要があるとされます。

また、原告が侵害行為について一応の証明をした場合で、被告が営業秘密を獲得するルート又は機会があり、かつ、その使用する情報が営業秘密と実質的に 同一であることを証明できた場合には、被告において、侵害行為が存在しないことを証明する必要があるとされます。

 

 

上記の改正は、実務上、小さくない影響を及ぼすものと思われますので、各企業においては、改正の内容をふまえ、自己が営業秘密侵害を主張して原告となる場合のみならず、被告とされる場合にも備えて、情報管理の適正化を図ることが一層重要となると考えます。

(文責:藤井宣行)

2019年07月24日 10:42|カテゴリー:

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中国:外商投資法の制定

前回のブログでは、技術輸出入管理条例の改正について、ご紹介しましたが、今回は、外商投資法の制定について、ご紹介します。

 

外商投資法の正式名称は、「中華人民共和国外商投資法」といい、2019年3月15日に公布されました。施行日は2020年1月1日です。

外商投資法は、「総則」、「投資促進」、「投資保護」、「投資管理」、「法的責任」及び「附則」の6つの章から構成されています。

同法1条では、同法制定の趣旨について、「さらなる対外開放の拡大、積極的な外商投資の促進、外商投資の合法的な権益の保護、外商投資管理の規範化、全面的開放の新たな枠組み形成の促進、社会主義市場経済の健全な発展を促すため」と規定しています。

 

同法では、上記のとおり、投資の促進、保護及び管理等について、様々な規定がされています。

その中には、規定の内容が抽象的であったり、または、具体的な手続規定が設けられていないといった理由から、司法解釈等に基づく実務の運用を観察したうえでなければ具体的な対応が困難である内容も多く含まれています。

本ブログでは、投資の管理に関し、実務にも大きな影響を及ぼし得る点について、ご紹介します。

 

これまで、外国資本が、中国に会社を設立する場合には、その資本構成によって、「中外合弁企業法」、「外資独資企業法」及び「中外合作経営企業法」等によって、当該会社の機関設計や、意思決定プロセス等が定められていました。それが、本法42条で、これら3つの法律を廃止するとしています。

したがって、本法が施行された後は、外資企業についても、従来とは異なり、会社の機関設計や意思決定プロセスに関する会社法が適用されることになります。例えば、中外合弁企業法では出資者そのものではない董事によって構成される董事会が会社の重要事項の意思決定機関とされていましたが、会社法では、出資者たる株主が構成する株主会がこれらについては株主会が意思決定機関とされています(なお、組織形態については、42条により、5年間の猶予期間が設けられています。)。

 

具体的な内容については、現在、未だ公開されておらず、国務院が決定する実施規則によるものとされていますので、外資企業としては、その内容を確認したうえで、具体的な対応を検討することになるでしょう。現時点においては、猶予期間中に、合弁パートナー等との間で協議を行い、今後の組織構成等について、適宜のタイミングで変更の申請等を行うことが想定されます。

(文責:藤井宣行)

2019年06月24日 18:53|カテゴリー:

中国法務

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海外企業との契約締結の際の印紙税について

海外企業と契約を締結する際に印紙税が課税されるかについてご質問を受けることがよくあります。

たとえば、中国企業と売買契約を締結する際には、契約交渉段階については面談交渉、電話での交渉、メールでの交渉など様々な方法でのやりとりが想定されますが、契約締結のための署名押印にあたっては、

①中国企業の契約締結権限を持った担当者が来日して、日本国内で契約締結が行われる場合

②日本企業の契約締結権限を持った担当者が訪中して、中国国内で契約締結が行われる場合

③日本企業が署名押印した契約書2通を中国企業に郵送して、中国企業が中国国内で当該契約書に署名押印して、1通を日本企業に返送してくる場合

④中国企業が署名押印した契約書2通を日本企業に郵送して、日本企業が日本国内で当該契約書に署名押印して、1通を中国企業に返送する場合

の4パターンが考えられます。

では、上記の4パターンのうち、日本の印紙税が課税されるのはどのパターンでしょうか。

まず、印紙税法第3条1項では、「別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第5条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。」と規定しています。このように、課税文書を作成した時に納税義務が成立し、その作成者が納税義務を負うことになります。

そして、実務上の取り扱いの参考として、「課税文書」の「作成」につき、印紙税法基本通達により次のような具体化がなされています。
まず、「文書の作成場所が法施行地外である場合の当該文書については、たとえ当該文書に基づく権利の行使又は当該文書の保存が法施行地内で行われるものであっても、法は適用されない。ただし、その文書に法施行地外の作成場所が記載されていても、現実に法施行地内で作成されたものについては、法が適用されるのであるから留意する。」と定めた、印紙税法基本通達の第49条を参考にすることになります。

つまり、印紙税法は日本の国内法であることから、その適用地域は日本国内に限られることになり、課税文書の作成が国外で行われる場合には、印紙税は課税されません。

では、上記通達49条にいうところの、「文書の作成」がなされるのは、どのような時なのでしょうか。

これについては、印紙税法基本通達の第44条1項に、「法に規定する課税文書の『作成』とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。」と規定されています。そして、同条2項においては、課税文書の「作成の時」については、契約書のような、「契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書」については、「当該証明の時」とされています。

以上をまとめると、海外企業と締結する契約書における印紙税の要否の判断ポイントは、契約の両当事者の署名押印が日本国内で完成したのか、日本国外で完成したのかという点に集約されます。

この通達のルールを、上記の4つのパターンにあてはめてみます。

パターン①については、日本国内で双方当事者が署名押印したときに、契約当事者の意思の合致が証明されたことになり、この時点が課税文書たる契約書の作成時となります。したがって、日本国内で課税文書が作成されたことになり、印紙税が課税されることになります。

パターン②については、中国国内で双方当事者が署名押印したときが、課税文書たる契約書の作成時となり、日本国外で課税文書が作成されたことになりますので、印紙税は課税されません。

パターン③については、日本企業が契約書に署名押印した段階では、契約当事者の意思の合致が証明されたとは言えず、中国企業が中国国内で署名押印を行った時に課税文書が作成されたことになり、印紙税は課税されません。

パターン④については、日本企業が日本国内で署名押印を行った時に課税文書が作成されたことになり、印紙税は課税されることになります。

以上

文責 河野雄介

2019年06月17日 16:49|カテゴリー:

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