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国際法務の部屋

大阪とインバウンド投資

少し前のことになりますが、7月31日付けの日本経済新聞電子版に、「関西企業再興 頼みはアジア「鴻海流」眠れる技に光」という題の記事がありました(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47985730Q9A730C1LKA000/)。

同記事では、訪日外国人の増加のみならず、関西・大阪への企業による進出が増加していることが紹介されていました。増加の背景として、「京都の電子部品やゲーム、大阪の家電、神戸の医療などの産業が集まる関西には日本人だけでは生かし切れていない技術や経験、知的財産が眠」っていること、及び、これらと、「アジア企業と掛け合わせれば、新しい価値が生まれる」と考えられることが書かれていました。

 

 

アクシスでは、中国をはじめとして、ASEAN地域からのインバウンド業務を取り扱っています。インバウンドという言葉は、多様な意味で使われているようですが、海外からの日本へのインバウンド案件という場合には、主に、日本への投資案件を意味する場合が多いでしょう。投資案件の中には、中国企業による日本での会社設立や、日本企業への出資、及び、ライセンス契約等のさまざまな類型が含まれます。その中でも、中国企業が日本企業の株式を100%取得する、いわゆる買収について、「日本企業が中国企業に買われる」といった、否定的な捉え方をされることもあります。しかしながら、技術やノウハウ等を有しつつ資金を欲していた日本企業(直接的には株主)と、資金を有しているが技術やノウハウ等を欲している中国企業の双方にとって、ウィンウィンの関係を築くことができる良い取引と捉えるべきでしょう。当該企業が、将来、資金不足のために廃業を余儀なくされてしまえば失われる従業員の雇用も維持されますし、当該企業が社会に提供していた価値も維持されます。

 

 

大阪を初めとして関西は、物流網が整備されており、東京よりも賃料相場が低く、生活環境が良く人材確保においてメリットを有しており、かつ、ハードウエア分野における優秀な技術者が多いことなど、ベンチャー企業の拠点として優れている点が多くあります。このようなバックグラウンドを基盤として、インバウンド投資のさらなる活発化、及び、万博の開催等によって、関西経済がさらに活性化することに期待していますし、アクシスとしても、その一助を担っていきたいと思います。

 

(文責:藤井宣行)

2019年08月21日 11:23|カテゴリー:

中国法務

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個人情報保護法における「個人情報」の定義と、GDPRにおける「個人データ」の定義の相違点

 

1 はじめに

GDPRとは、欧州連合(EU)が定めた一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)のことです。このGDPRは2018年5月25日から施行されています。

本稿では、日本の個人情報の保護に関する法律(以下、「個人情報保護法」といいます)で規定されている「個人情報」の定義と、GDPRで規定されている「個人データ」の定義ぶりを比較検討してみます。

 

2 個人情報保護法における「個人情報」について

日本の個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)の第2条1項では、「個人情報」について下記のような定義がなされています。

 

この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。第十八条第二項において同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)

二 個人識別符号が含まれるもの

 

そして、同法第2条1項2号に定められている、「個人識別符号」については、同法第2条2項において下記のとおり定められています。

この法律において「個人識別符号」とは、次の各号のいずれかに該当する文字、番号、記号その他の符号のうち、政令で定めるものをいう。

一 特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号であって、当該特定の個人を識別することができるもの

二 個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ、又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され、若しくは電磁的方式により記録された文字、番号、記号その他の符号であって、その利用者若しくは購入者又は発行を受ける者ごとに異なるものとなるように割り当てられ、又は記載され、若しくは記録されることにより、特定の利用者若しくは購入者又は発行を受ける者を識別することができるもの

 

そして、上記で太字にした「政令」とは、「個人情報の保護に関する法律施行令」のことで、同政令第1条において、下記の通り、「文字、番号、記号その他の符号」について具体的な定めがなされています。

 

(個人識別符号)

第一条 個人情報の保護に関する法律(以下「法」という。)第二条第二項の政令で定める文字、番号、記号その他の符号は、次に掲げるものとする。

一 次に掲げる身体の特徴のいずれかを電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号であって、特定の個人を識別するに足りるものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に適合するもの

イ 細胞から採取されたデオキシリボ核酸(別名DNA)を構成する塩基の配列

ロ 顔の骨格及び皮膚の色並びに目、鼻、口その他の顔の部位の位置及び形状によって定まる容貌

ハ 虹彩の表面の起伏により形成される線状の模様

ニ 発声の際の声帯の振動、声門の開閉並びに声道の形状及びその変化

ホ 歩行の際の姿勢及び両腕の動作、歩幅その他の歩行の態様

ヘ 手のひら又は手の甲若しくは指の皮下の静脈の分岐及び端点によって定まるその静脈の形状

ト 指紋又は掌紋

二 旅券法(昭和二十六年法律第二百六十七号)第六条第一項第一号の旅券の番号

三 国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第十四条に規定する基礎年金番号

四 道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第九十三条第一項第一号の免許証の番号

五 住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第七条第十三号に規定する住民票コード

六 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第五項に規定する個人番号

七 次に掲げる証明書にその発行を受ける者ごとに異なるものとなるように記載された個人情報保護委員会規則で定める文字、番号、記号その他の符号

イ 国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第九条第二項の被保険者証

ロ 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第五十四条第三項の被保険者証

ハ 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第十二条第三項の被保険者証

八 その他前各号に準ずるものとして個人情報保護委員会規則で定める文字、番号、記号その他の符号

 

2 GDPRにおける「個人データ」について

他方で、GDPRの第4条(1)には、「個人データ」の定義として、下記のような定めがなされています。

 

「個人データ」とは、識別された自然人又は識別可能な自然人(「データ主体」)に関する情報を意味する。

識別可能な自然人とは、特に、氏名、識別番号、位置データ、オンライン識別子のような識別子を参照することによって、又は、当該自然人の身体的、生理的、遺伝的、精神的、経済的、文化的又は社会的な同一性を示す一つ又は複数の要素を参照することによって、直接的又は間接的に、識別されうる者をいう。

 

3 重要な相違点~オンライン識別子を参照することによって識別される者に関する情報

注意すべきなのは、GDPRの「個人データ」には、「オンライン識別子のような識別子」を参照することによって識別される者に関する情報が含まれることです。このオンライン識別子とは、具体的には、インターネットプロトコルアドレス、クッキー識別子のことです。

日本の個人情報保護法上における、「個人情報」の定義に照らすと、オンライン識別子を参照することによって識別されるものに関する情報は、①当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものには該当せず、②個人識別符号にも該当しないことから、「個人情報」には該当するとは言えない場合が多いと考えられます。

このように、GDPRの「個人データ」には、「オンライン識別子のような識別子」を参照することによって識別される者に関する情報が含まれるということは、GDPRが適用される可能性があるウェブサイトを作成・運営する場合で、クッキー識別子を埋め込むような場合は、GDPRに定める個人データを取り扱っていることとなり、取扱いの適法性を担保するための要件(データ主体の同意、契約の履行のため、管理者が服する法的義務の遵守のため等、GDPR第6条)を充足する必要があります。

また、GDPR対応のプライバシーポリシーを英文で作成し、その中でクッキーに関するポリシーを明記しておくことも実務上重要となります。

当事務所では、GDPRに対応した英文プライバシーポリシー、英文利用規約、個人データの処理を外部業者に委託する際の処理契約書の作成等を取り扱っておりますのでお気兼ねなくお問い合わせください。

以上

文責:河野雄介

2019年08月16日 16:03|カテゴリー:

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中国不正競争防止法の改正

中国の不正競争防止法(中文:反不正当競争法)は、2018年1月1日に改正法が施行されていましたが、2019年4月23日、さらなる改正法が施行されました。

 

 

今般の改正の背景としては、営業秘密に関する紛争が増加していること、営業秘密に関する紛争における立証の困難性が実務上の課題となっていること等が存在すると言われています。

 

 

改正の概要を、下記に紹介します。

1.営業秘密の定義は、これまで、「公衆に知られておらず、商業的価値を有し、かつ権利者が関連の秘密保守措置を取った技術情報及び経営情報」とされていましたが、「技術情報及び経営情報」の部分を「技術情報及び経営情報等の商業情報」に変更し(9条5項)、営業秘密の範囲を拡大しています。

2.営業秘密を侵害する主体について、従来は「事業者」と規定されていましたが、改正法では、「事業者」のほか「その他自然人、法人、又は法人でない組織」が追記されました。(9条2項)。また、営業秘密を侵害する行為の態様について、改正法では「教唆、誘導、幇助」が追記されたほか、営業秘密の不正取得手段については、「電子侵入」が追記されました(9条1項)。

3.営業秘密の侵害行為に対する行政処罰に関し、改正法は、過料の金額の上限を 50万人民元から100万人民元に(情状が重大である場合については100万人民元から500万人民元に)引き上げました。また、民事関係における損害賠償責任の上限に関し、300万人民元から500万人民元に引き上げました(17条4項、21 条)。さらに、悪意による営業秘密の侵害行為に対し、懲罰的損害賠償制度を導入し、情状が重大である場合、権利者に生じた損害又は侵害者が侵害行為により得た利益から算定された賠償金額の1倍以上5倍以下の賠償を命じることができるとの条項を追加しました(17条3項)。

4.営業秘密を侵害されたことを主張する場合、実務上、権利者は、営業秘密該当性(①公衆に知られていないこと、②商業価値を有すること、③秘密保持の措置を講じていることを証明する責任を負っていました。この点は、中国においても日本と同様、立証の負担が大きく、権利者にとって大きなハードルとなっていました。

これを受け、改正法では、証明責任の転換に関する条文(32条)が新設されました。すなわち、権利者(以下、権利者を原告、相手方を被告として説明します。)が上記③及び侵害行為について一応の証明をした場合、営業秘密該当性を満たさないことについて、被告が証明する必要があるとされます。

また、原告が侵害行為について一応の証明をした場合で、被告が営業秘密を獲得するルート又は機会があり、かつ、その使用する情報が営業秘密と実質的に 同一であることを証明できた場合には、被告において、侵害行為が存在しないことを証明する必要があるとされます。

 

 

上記の改正は、実務上、小さくない影響を及ぼすものと思われますので、各企業においては、改正の内容をふまえ、自己が営業秘密侵害を主張して原告となる場合のみならず、被告とされる場合にも備えて、情報管理の適正化を図ることが一層重要となると考えます。

(文責:藤井宣行)

2019年07月24日 10:42|カテゴリー:

中国法務

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中国:外商投資法の制定

前回のブログでは、技術輸出入管理条例の改正について、ご紹介しましたが、今回は、外商投資法の制定について、ご紹介します。

 

外商投資法の正式名称は、「中華人民共和国外商投資法」といい、2019年3月15日に公布されました。施行日は2020年1月1日です。

外商投資法は、「総則」、「投資促進」、「投資保護」、「投資管理」、「法的責任」及び「附則」の6つの章から構成されています。

同法1条では、同法制定の趣旨について、「さらなる対外開放の拡大、積極的な外商投資の促進、外商投資の合法的な権益の保護、外商投資管理の規範化、全面的開放の新たな枠組み形成の促進、社会主義市場経済の健全な発展を促すため」と規定しています。

 

同法では、上記のとおり、投資の促進、保護及び管理等について、様々な規定がされています。

その中には、規定の内容が抽象的であったり、または、具体的な手続規定が設けられていないといった理由から、司法解釈等に基づく実務の運用を観察したうえでなければ具体的な対応が困難である内容も多く含まれています。

本ブログでは、投資の管理に関し、実務にも大きな影響を及ぼし得る点について、ご紹介します。

 

これまで、外国資本が、中国に会社を設立する場合には、その資本構成によって、「中外合弁企業法」、「外資独資企業法」及び「中外合作経営企業法」等によって、当該会社の機関設計や、意思決定プロセス等が定められていました。それが、本法42条で、これら3つの法律を廃止するとしています。

したがって、本法が施行された後は、外資企業についても、従来とは異なり、会社の機関設計や意思決定プロセスに関する会社法が適用されることになります。例えば、中外合弁企業法では出資者そのものではない董事によって構成される董事会が会社の重要事項の意思決定機関とされていましたが、会社法では、出資者たる株主が構成する株主会がこれらについては株主会が意思決定機関とされています(なお、組織形態については、42条により、5年間の猶予期間が設けられています。)。

 

具体的な内容については、現在、未だ公開されておらず、国務院が決定する実施規則によるものとされていますので、外資企業としては、その内容を確認したうえで、具体的な対応を検討することになるでしょう。現時点においては、猶予期間中に、合弁パートナー等との間で協議を行い、今後の組織構成等について、適宜のタイミングで変更の申請等を行うことが想定されます。

(文責:藤井宣行)

2019年06月24日 18:53|カテゴリー:

中国法務

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海外企業との契約締結の際の印紙税について

海外企業と契約を締結する際に印紙税が課税されるかについてご質問を受けることがよくあります。

たとえば、中国企業と売買契約を締結する際には、契約交渉段階については面談交渉、電話での交渉、メールでの交渉など様々な方法でのやりとりが想定されますが、契約締結のための署名押印にあたっては、

①中国企業の契約締結権限を持った担当者が来日して、日本国内で契約締結が行われる場合

②日本企業の契約締結権限を持った担当者が訪中して、中国国内で契約締結が行われる場合

③日本企業が署名押印した契約書2通を中国企業に郵送して、中国企業が中国国内で当該契約書に署名押印して、1通を日本企業に返送してくる場合

④中国企業が署名押印した契約書2通を日本企業に郵送して、日本企業が日本国内で当該契約書に署名押印して、1通を中国企業に返送する場合

の4パターンが考えられます。

では、上記の4パターンのうち、日本の印紙税が課税されるのはどのパターンでしょうか。

まず、印紙税法第3条1項では、「別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第5条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。」と規定しています。このように、課税文書を作成した時に納税義務が成立し、その作成者が納税義務を負うことになります。

そして、実務上の取り扱いの参考として、「課税文書」の「作成」につき、印紙税法基本通達により次のような具体化がなされています。
まず、「文書の作成場所が法施行地外である場合の当該文書については、たとえ当該文書に基づく権利の行使又は当該文書の保存が法施行地内で行われるものであっても、法は適用されない。ただし、その文書に法施行地外の作成場所が記載されていても、現実に法施行地内で作成されたものについては、法が適用されるのであるから留意する。」と定めた、印紙税法基本通達の第49条を参考にすることになります。

つまり、印紙税法は日本の国内法であることから、その適用地域は日本国内に限られることになり、課税文書の作成が国外で行われる場合には、印紙税は課税されません。

では、上記通達49条にいうところの、「文書の作成」がなされるのは、どのような時なのでしょうか。

これについては、印紙税法基本通達の第44条1項に、「法に規定する課税文書の『作成』とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。」と規定されています。そして、同条2項においては、課税文書の「作成の時」については、契約書のような、「契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書」については、「当該証明の時」とされています。

以上をまとめると、海外企業と締結する契約書における印紙税の要否の判断ポイントは、契約の両当事者の署名押印が日本国内で完成したのか、日本国外で完成したのかという点に集約されます。

この通達のルールを、上記の4つのパターンにあてはめてみます。

パターン①については、日本国内で双方当事者が署名押印したときに、契約当事者の意思の合致が証明されたことになり、この時点が課税文書たる契約書の作成時となります。したがって、日本国内で課税文書が作成されたことになり、印紙税が課税されることになります。

パターン②については、中国国内で双方当事者が署名押印したときが、課税文書たる契約書の作成時となり、日本国外で課税文書が作成されたことになりますので、印紙税は課税されません。

パターン③については、日本企業が契約書に署名押印した段階では、契約当事者の意思の合致が証明されたとは言えず、中国企業が中国国内で署名押印を行った時に課税文書が作成されたことになり、印紙税は課税されません。

パターン④については、日本企業が日本国内で署名押印を行った時に課税文書が作成されたことになり、印紙税は課税されることになります。

以上

文責 河野雄介

2019年06月17日 16:49|カテゴリー:

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技術輸出入管理条例の改正

中国では、近時、重要な法令の改正が相次いでいることから、本ブログでは、数回に分けて、これら改正について、ご紹介します。

今回は、技術輸出入管理条例(以下「本条例」といいます。)の改正についてです。本条例では、中国国外から中国国内に、又は、中国国内から中国国外に、技術を移転する行為について、様々な規制がされています。ここでいう「技術の移転」には、特許権の移転、特許出願権の移転、特許実施許諾、ノウハウの移転、技術サービス及びその他の方式の技術移転を含むとされています(同法2条)。

本条例では、輸入対象の技術の完全性及び技術目標の達成等の保証、並びに、第三者権利を侵害しないことの保証等が義務付けられているなど、外国企業にとって、負担感が大きいものでした。

国務院は、2019年3月18日、「国務院が一部の行政法規を改正することに関する決定(国務院令第709条)」を公布し、本条例の一部を改正しました。同改正の主な内容は、下記の3か条の削除です。

24条3項
技術輸入契約の譲受人が契約に従って譲渡人が提供した技術を使用した結果、他人の合法的権益を侵害する場合、その責任は譲渡人が負う。

27条
技術輸入契約の有効期間内に、改良した技術は改良した側に帰属する。

29条
技術輸入契約には以下に掲げる制限的条項を含めてはならない。
① 譲受人に技術輸入に必須ではない付帯条件を求めること。必須ではない技術、原材料、製品、設備又はサービスの購入を含む。
② 譲受人に特許権の有効期間が満了し又は特許権が無効宣告された技術について許諾使用料の支払い又は関連義務の履行を求めること。
③ 譲受人が譲渡人に提供された技術を改良し、又は改良した技術の使用を制限すること。
④ 譲受人にその他の供給先から譲渡人が提供した技術に類似又は競合する技術の取得を制限すること。
⑤ 譲受人に原材料、部品、製品又は設備の購入ルート又は供給先を不合理に制限すること。
⑥ 譲受人に製品の生産高、品種又は販売価格を不合理に制限すること。
⑦ 譲受人に輸入した技術を駆使し、生産した製品の輸出ルートを不合理に制限すること。

上記の削除されたいずれの条項も、日中間のライセンス契約検討時に、担当者等の頭を悩ませる原因となってきたものですから、基本的には、本改正は、日系企業に歓迎されるものといえます。
もっとも、技術の完全性の保証を要求する条項等は削除対象となっていないことや、削除された条項についても、実際の運用において、どのような取扱いになるのかが必ずしも明確ではないこと等の理由から、慎重に、推移を見極める必要があると考えています。

(文責:藤井宣行)

2019年05月23日 10:28|カテゴリー:

中国法務

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海外拠点の設立・海外拠点設立後のリスクマネジメントについて

ジェトロが作成した2018 年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査報告書によると、アンケートに回答した3385社(そのうち中小企業が2770社)のうち、海外に拠点を有する企業は45.1%の1528社であったとのことです。さらに、海外拠点の所在別でいくと、中国が58.3%と圧倒的に多く、続いてタイ(38.1%)、米国(32.1%)、ベトナム(27.2%)、台湾(22.1%)、シンガポール(19.7%)、インドネシア(19.0%)、香港(18.5%)と続きます。また、同報告書によると、海外拠点の機能としては、販売拠点が66.6%最も多く、次いで生産拠点が50.6%とのことです。

グローバルな販売拠点や製造拠点の確保のために、アジアや米国を中心に、今後も、海外拠点設立の動きは加速していくのではないかと考えられます。
海外拠点を設立するにあたっては、出資比率の制限の有無(100%独資が許されるか)、資本金の最低額の規制の有無、当該国で行う予定の事業についてビジネスライセンス取得の可否、代表者の常駐義務の有無、海外拠点の定款や社内規定(就業規則等)の整備、海外拠点が賃借するオフィスの賃貸借契約書のリスク確認、採用する従業員の労働契約書の作成、など様々な事項の検討や準備が必要となります。

また、パートナー企業との合弁により海外拠点を設立する場合は、合弁契約書の内容(重要決議事項の定め方、出資者間で経営方針に齟齬が生じた場合のデッドロック条項等、代表者や取締役の選任・解任に関する条項等)が重要となります。

海外拠点設立後のリスクとしては、知的財産権に関するリスク(合弁企業から技術情報の流出、模造品の横行、製造委託先による商標の冒認出願など)、労務リスク(ストライキ、労働契約や就業規則の不備、現地従業員による横領などの不正行為)、契約関係のトラブルリスク、製造物責任を追及されるリスク、独占禁止法違反に問われるリスク、贈収賄リスクなどの様々なリスクが想定されます。これらのリスクについては、契約書の整備や、社内規定・社内体制の整備、海外拠点の従業員に対するコンプライアンス教育等により大部分を予防することができます。

当事務所には、中国法務の実務経験が豊富な弁護士や、中国人律師が在籍しておりますし、中国の深圳に海外拠点としてコンサルティング会社も設立しております。また、ASEAN諸国、香港、米国についても、提携事務所や協力事務所と緊密に連携することで、ハイクオリティなサポートをさせていただくことが可能です。

このように、当事務所では、上記のジェトロアンケートの海外拠点所在別ランキングで上位にくるすべての国について、現地弁護士や専門家と緊密に連携しながら、海外拠点を設立するサポートや、海外拠点設立後のリスク予防のためのサポートをさせていただくことが可能ですのでお気軽にご相談ください。

また、当事務所では、クライアントの皆様に対して、中国企業と契約を締結するに際し、「誰に何を依頼していいか分からない」「中国との契約に特有のリスクがあると思うが、その内容や対応が分からない」といった状況に対応するため、2019年3月から、中国語(中文)契約書サービスを開始いたしました。こちらのご利用もぜひご検討ください。

(文責:河野 雄介)

2019年05月20日 11:24|カテゴリー:

海外拠点

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中国語人材の採用

2019年4月16日付け日本経済新聞の夕刊で、「中国人の日系企業社員 上位大学卒も「二流」意識」との記事がありました。

記事の中には、「中国の大学生に人気のある就職先は、まず国営の大手企業が1番で、その次に欧米系の有名企業となる。日系企業は人気も給与もその次にランクされるため、やはり一流ではないという意識が生まれるという。」との記載がありました。

たしかに、私も、中国人の友人から、同様の話を聞いたことがあります。

 

とはいえ、私が知り合った中国人で、日系企業で働いている方は、ほとんどの方が非常に優秀です。言語能力についても、2か国語を話せる方が大半ですし、3か国を話せる方も珍しくありません。

 

中国に関連するビジネスを展開している日系企業にとって、(日本語能力、ビジネススキルといった、日本人従業員が有すべきとされる能力も一定程度有していることが前提になるかと思いますが)中国語をネイティブレベルで話せるスタッフというのは、貴重な戦力であることは間違いないでしょう。

 

なお、外国籍の人を採用する場合には、ビザなどの在留資格の確認等の法令上必要とされる諸手続が必要であるほか、契約内容に誤解を生じさせないために、予め書面などで、契約の詳細まで明確にするなどの配慮があった方が、よりトラブルを未然に防ぎやすくなります。

 

冒頭の記事に記載されているような状況はあるものの、その中で、どのように、中国語人材の採用を行い、組織を構成していくかという点も、ビジネス戦略を構成する重要な1要素になっていると感じます。

 

弊所においても、本年4月1日から、台湾出身のスタッフを採用しました。彼女は、中国語はいうまでもなく、日本語、さらには、イギリス留学経験もあることから英語も堪能です。まだ3週間程度の在籍ですが、すでに、その多岐にわたる能力を発揮し、大いに活躍してくれています。

アクシス国際法律事務所では、弁護士・スタッフにかかわらず、より一層、国際業務において提供させていただくサービスの質を向上すべく、日々、尽力したいと思います。

(文責:藤井宣行)

2019年04月19日 09:19|カテゴリー:

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中国企業との契約における違約金条項について

本稿では、中国企業との契約において、違約金条項を定めることの可否と違約金条項に関する規律について検討します。

たとえば、日本企業A社(買主)が、中国企業B社(売主)との間で、中国法を準拠法とした売買契約を締結することになったとします。そして、A社として、B社が契約に反して、引き渡し期限になっても目的物を引き渡さないなど、B社に契約違反があった場合に備えて、売買契約書の中に違約金条項を定めることを検討することになったとします。

では、中国法上、違約金条項を定めた場合、有効となるのでしょうか。また、有効に違約金条項を定めることができるとして、どのようなルールがあるのでしょうか。

この点、中国契約法第114条1項は、「当事者は、一方が違約したときは違約の情況に基づき相手方に一定額の違約金を支払わなければならない旨を契約で定めることができ、違約によって生じた損失の賠償額の計算方法を契約で定めることができる」と規定しています。

したがって、上記の事例では、「売主が約定どおりに売買の目的物を引き渡さない場合、買主は売主に対して違約金として●●人民元を支払うものとする」など、一定額の違約金を支払う形での違約金条項を規定することもできますし、「売主が約定どおりに売買の目的物を引渡さない場合、売主は、遅延1日につき売買目的物の代金の●●%を違約金として買主に支払うものとする」など、賠償額の計算方法を定める形での違約金条項を規定することもできます。

では、違約金条項で、違約金の金額や計算方法を定めておけば、定めた通りの違約金を必ず請求できるのでしょうか。また、違約金条項の定めを超えて損害が生じたような場合に、契約で定めた違約金を増額するように請求はできないのでしょうか。

この点については、中国契約法第114条2項では、「契約で定めた違約金が、生じた損失を下回る場合は、当事者は人民法院又は仲裁機関にこれを増額するよう請求することができる。契約で定めた違約金が、生じた損失を著しく上回る場合は、当事者は、人民法院又は仲裁機関にこれを適当に減額するよう請求するよう請求することができる」と定めています。

さらに、司法解釈である、契約法適用の若干問題に関する解釈(二)の第29条においては、「約定した違約金が著しく高いと当事者が主張し、適当な減額を求めた場合、人民法院は実際の損害を基礎として、契約の履行状況、当事者の過失の程度及び期待利益などの総合的要素を考慮して、公平の原則及び信義誠実の原則に基づき考量し、かつ裁決をしなければならない。当事者の約定した違約金が生じた損害の30%を超える場合、通常、契約法第114条2項に規定する『生じた損失を著しく上回る』と認定することができる。」と規定しています。

このように、中国法上、契約書に違約金条項を定めたとしても、契約当事者は人民法院又は仲裁機関にその増減額を請求することができることから、必ずしも違約金条項を定めておけばその通りの違約金を請求できるというわけではなく、他方で、違約金条項で定めた金額が上限となるわけでもないという点に留意が必要です。

 

当事務所では、クライアントの皆様に対して、中国企業と契約を締結するに際し、「誰に何を依頼していいか分からない」「中国との契約に特有のリスクがあると思うが、その内容や対応が分からない」といった状況に対応するため、2019年3月から、中国語(中文)契約書サービスを開始いたしました。こちらのご利用もぜひご検討ください。

以上

(文責:河野 雄介)

2019年04月05日 21:27|カテゴリー:

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中国企業との契約書の言語(中国語選択の是非)について

当事務所では、クライアントの皆様に対して、中国企業と契約を締結するに際し、「誰に何を依頼していいか分からない」「中国との契約に特有のリスクがあると思うが、その内容や対応が分からない」といった状況に対応するため、今月(2019年3月)6日から、 中国語(中文)契約書サービスの提供いたしました。

 

 

そこで、本ブログでは、中国企業との契約書における典型的な条項について、複数回に分けて、ご紹介します。

 

 

まず、契約書の言語(何語で契約書を作成するか)ですが、契約書の中には、契約書を何語で作成し、また、何語を基準として解釈等を行うのか、という条項を規定することが多いです。こういった条項のことを言語条項といいます。

 

 

実務上は、言語条項を規定せずに、日本語と中国語を併記している契約書を目にすることもあります。日本語のみで作成された契約書であっても、その文言の意味について、本来的には望ましくないことですが、複数の意味に解釈されてしまうことがあります。言語が複数になれば、そのような状況が発生する可能性が、増大することになります。このような事態を避けるために、言語条項を規定することになります。

 

 

日本企業が中国企業との間で契約書を締結する際に、使用する言語の選択肢としては、日本語、中国語または英語になるでしょう。なお、多くはありませんが、法令によって契約言語が指定されていることがあります。例えば、合弁契約書は中国語での作成が要求されています(中外合資経営企業法実施条例7条2項)。

 

 

契約言語を選択する際の考慮要素としては、実務上の運用の容易さ(担当者等が当該言語を十分に理解できるか。)、所管部門等への届出等の必要の有無(ライセンス契約であれば、所管部門に中国語の契約書を提出する必要がありますし、中国から日本に送金する場合には金額によっては中国語の契約書が必要になります。)、及び、紛争が発生した場合に使用できるか(日本の裁判所であれば、外国語の文書については、日本語に翻訳したものを提出する必要があり、中国の裁判所であれば、資料が外国語である場合は中国語翻訳文を提出する必要があります。)といった点等が考えられます。

基本的には、中国でビジネスを行うのであれば、中国語で契約書を作成することになるケースが多いように思います。そのうえで、正確な日本語訳を作成しておいたり、日本語版と中国語版の両方を作成して、中国語版を基準とするといった対応が考えられます。

 

 

日系企業としては、中国語を理解できるスタッフが充実しているなど、よほど現地化が進んでいない場合には、まずは、日本語で内容を検討して契約書を完成させ、それを正確に、ニュアンスが異ならないように中国語版に翻訳するといった作業過程を経ることになるかと思います。

弊所では、当該作業のすべての過程のサポートが可能ですので、サポートがご入用の場合には、是非ともご利用ください。

(文責:藤井宣行)

2019年03月26日 08:53|カテゴリー:

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