ここから本文です

ベンチャー法務の部屋

「米国ベンチャーキャピタルのパフォーマンスと構造変化:VCは機能しているか」


小野正人さんという方が「米国ベンチャーキャピタルのパフォーマンスと構造変化:VCは機能しているか」という題で、論文を発表されておられます。今のところ、下記のページから無償でダウンロードを許可されておられるようです。ファイルはAcrobat等で読み込んで下さい。

http://innovationresearch.web.fc2.com/index.html

米国のVCの歴史と現状を理解するのに、非常に優れた内容となっています。また、「単なる日米比較や漠然とした憧憬よりも、米国の先端的手法とインフラストラクチャーを具体的に探究する行動が必要である。」と、日本への導入については、安直な姿勢や総花論的な議論ではなく、十分な考察が必要である旨の指摘もされておられます。

私もなんとなく雰囲気は理解していたような気持ちになっていましたが、実際のシリコンバレーのベンチャーキャピタル業界は、決して順調な道のりで発展してきたわけではないことも理解できました。また、成功ファンドと失敗ファンドの差(パフォーマンス)がかなり大きい、偏りの激しい世界であること、今のベンチャーキャピタルは決してバラ色の場所ではないこと、スーパー・エンジェル等の新しい動きもあること等にも、それぞれ数字を基に議論されており、勉強になりました。

私個人としては、米国式を安易に導入することよりも、日本や日本の各都市でも、それぞれの地域や時代にあった方法で、勿論その業界にも合った方法で、ビジネスを育てていくことが大切であり、それに適合した資金供給手法を模索することが重要なのではないかという仮説もあり得るのではないかと、少し考えるようになりました。

このあたり、もう少し深く考えてみたいと思います。

2010年11月15日 08:30|カテゴリー:未分類||1件のコメント

株式公開が下半期に多い理由

日本経済新聞(11月11日)の夕刊に「株式公開が下半期に多い理由」というタイトルの記事がありました。

この記事では、「発行企業や引受証券会社は実際に、どんなタイミングで新規上場をしようとするのか」という問題について、「そもそも、過去から現在までの新規上場初日の価格動向を観察すると、新規上場初日の投資収益は高すぎる傾向にあるため、上半期に新規上場が集中しないのは、この時期に上場すると投資家があまりに多く報われると、企業側が考えているからかもしれない。」と結論づけていました。

この問いについての私の見解は、次のとおりです。

おそらく最大の理由は、決算期にあります。上場申請をする企業の決算期は、バラエティーに富んできたとはいえ、12月決算か3月決算が多いです。上場申請のときに、どの期の決算で申請するかは大きな問題であり、申請してから実際に上場するまでの間に次の決算期(の承認)を迎えるのは避けたいという心理が役員にも主幹事引受証券会社にもあります。決算が(定時株主総会で)承認されてしまうと、有価証券届出書に記載することとなる会計情報が翌期のものになってしまいます。なお、監査法人や引受証券会社等のIPO業界では、申請が延びて申請期の翌年度(定時株主総会前まで)に上場することを「期越え上場」等と言ったりし、昨今は、この「期越え上場」も少なくはありませんが、やはり原則は、期を越えない上場です。

12月決算や3月決算の会社が上場申請を行う事業年度に有価証券届出書を提出しようとすると、当然、スケジュール的に下半期の提出になってしまいます。

これが株式公開が下半期に多い最大の理由ではないかと思います。

上記の記事のように、「投資家があまりに多く報われると、企業側が考えている」とありますが、そのようなことを考えて、スケジュールを決める上場申請企業の取締役は、まずいないのではないかと思います。「初値が高すぎると期待値が高すぎる・・・」という発想はあり得るかもしれませんが、基本的には、高い株価がつくことは(今後の資金調達の観点等から)悪いことではありませんし、そもそも、上場を信じて投資をしていただいた投資家に報いたいというのが普通の社長の考え方ではないかと思います。また、投資家が上場後6ヶ月間売却できないケースも少なくなく、初値と投資家の売却価格は必ずしもリンクしません。新規上場企業の「初値/公募価格」について、上半期の方が高い傾向があるのは、上場が少ない時期は需要が多いという需給バランスから来ているのではないかと思われますし、(IPO市場から個人投資家が少なくなってしまった今となっては)この傾向が今後も続くといえるかは、わかりません。

2010年11月12日 17:30|カテゴリー:未分類||コメントはまだありません

ベンチャー企業と独占禁止法

昨日(11月10日)の日本経済新聞夕刊に、欧州委員会が、EU競争法(独占禁止法)違反で、日本航空を含む航空貨物12社が価格カルテルを結んでいたとして、ドイツのルフトハンザ航空を除く11社に約900億円!(日本航空は約40億円)の制裁金を課された旨の記事が掲載されていました。制裁の対象は、1キログラムあたりの燃油特別付加運賃を一律に設定するカルテルとのことです。

独占禁止法違反のペナルティーの大きさに改めて驚かされる記事です。また、日本でも導入されているリニエンシー(課徴金減免制度)によりルフトハンザ社1社が制裁金を免除されている点(日本では3~5社となる可能性がある。)も興味をひくところです。

ところで、独占禁止法は、カルテルや談合、市場占有率が高くなる合併等を取り扱っているため、大企業にしか関係なさそうな法律に思えます。しかし、中小企業やベンチャー企業であっても、独占禁止法が関連するケースがあります。

もちろん、市場でそれなりのシェアを占めている会社同士の企業結合であれば、中小企業であっても独占禁止法の対象となりますし、ほかのカルテルや談合も適用される可能性はあります。

ただ、ここでお伝えしたいのは、現実に中小企業やベンチャー企業が気にすべき場合が多いと予想される「不公正な取引方法」です。

不公正な取引方法とは、独占禁止法第19条で禁止されている行為です。

独占禁止法

第19条
事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

第20条第1項
前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の差止め、契約条項の削除その他当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。


不公正な取引方法については、公正取引委員会が告示によってその内容を指定していますが、この指定には、すべての業種に適用される「一般指定」と、特定の事業者・業界を対象とする「特殊指定」があります。一般指定で挙げられた不公正な取引方法には、取引拒絶、排他条件付取引、拘束条件付取引、再販売価格維持行為、優越的地位の濫用、欺瞞的顧客誘引、不当廉売などがあります。

たとえば、「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」では、「役務の委託取引においても、委託者と受託者がどのような条件で取引するかは、基本的にはそれぞれの自主的な判断にゆだねられるものであるが、委託者が受託者に対し取引上優越した地位にある場合において、その地位を利用して、受託者に対し、代金の支払遅延、代金の減額要請、著しく低い対価での取引の要請、やり直しの要請、協賛金等の負担の要請、商品等の購入要請又は役務の成果物に係る権利等の一方的な取扱いを行う場合には、優越的地位の濫用として問題を生じやすい。」としており、ソフトウェア開発のベンチャー企業が受託者側の場合は、不合理な契約内容を締結させられている場合に独占禁止法を交渉等で利用できる可能性がありますし、逆に、委託者側でこういった内容の契約を締結していれば、不公正な取引方法として、排除措置命令等の対象になる可能性があります。

また、「メーカーが流通業者に対して、自社商品のみの取扱いを義務付けること」「メーカーが流通業者に対して、競争者の商品の取扱いを制限すること」といったことも制約を受けます(「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」)。

バイオベンチャー企業等の研究開発系のベンチャー企業や大学発ベンチャーでよく見られる共同研究開発に関する契約等についても、「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」というものがありますので、自社の交渉力が低いと思われるケースや理不尽な内容の契約内容と思われる場合は、独占禁止法が利用できないか検討してみる余地はあるかもしれません。

具体的な事例については、こちらの公正取引委員会のページをご参照ください。

中小企業・ベンチャー企業であっても、取引拒絶,排他条件付取引,拘束条件付取引,再販売価格維持行為,優越的地位の濫用といったあたりは、する側の立場もされる側の立場も、どちらもあり得ますので、契約の条文の中に該当するものがあるかもしれない場合や、被害にあっているかもしれないといった場合には、一度、弁護士に相談してみてください。

製造業の行く末

先日、ライフネット生命の出口社長とお話しさせていただいたときに、製造業は、究極的には、「最高の機械で、最安の労働力をつかって世界中に売るモデル」しかないという話をされていたので、気になって考えていました(趣旨を正確に理解できていないかもしれませんので、異なっていた場合はご容赦ください。)。

おそらく「最安の労働力」の意味するところは、コストパフォーマンスの最も高いという意味であろうと思います。私は、この出口社長の意見は、製造業の1つの側面を適確に言い表しておられると考えます。

現実にサムスンやユニクロは、このモデルでしょう。日本の多くの製造業が苦しいと「言われている」背景には、このようなモデルが一つの成功モデルであることにも起因すると思います。

とはいえ、一方で、製造業には別の生き残り方もあるのではないかとも思います。例えば、エルメス社です。(エルメス製品について私が解説するのは無謀もよいところですが、)全ての商品が、非常に厳しいチェックを経て、多くの商品が今もmade in Franceです。みなさん、高くても買います。値下げしたら、喜ぶ人より、がっかりする人の方が多そうです。このエルメス社には、先程のモデルは当てはまらないことは自明です。最高の機械で、コストパフォーマンスの高い労働力をつかっても、エルメス製品ではないと消費者は判断するでしょう。これは、高級ブランド戦略とでも呼べるモデルでしょう。

日本の電化機器でも、例えば、炊飯器はある程度、高級ブランド戦略での生き残りに成功しているのではないかと思います。ただ炊くだけの炊飯器と全く値段が違いますが、それでもかなり売れているようで、中国の富裕層も日本への旅行の土産に購入すると言う話はよく聞きます。掃除機や扇風機ですら、この方向性で成功している商品があります。

法律家の私がこのようなマーケティングやブランディングについて話をするのは、専門外と言われてしまえばその通りです。ただ、日本の製造業の行く末をふと考えたときに、まだまだこのような戦略での生き残り策はありそうですし、ダイソン等の例は、製造業でのベンチャー企業が高級ブランド戦略で勝負しても、可能性があることを伝えているように思います。

ところで、私の本業の法務に関連してこの戦略を考えてみます。ベンチャー企業や中小企業がこのような高級ブランド戦略をとる場合に重要なのは、知的財産権の戦略、特に商標権や意匠権も含めた抜かりない出願が必須です。しかも、この知的財産権の戦略は、サムスンやユニクロのモデルをとる場合でも、決して軽視してはならないものです。

時々、中小企業の担当者の方と話をしていると、「これまで~しなくても、問題は起きなかった」という話を聞きます。「~しなくても」には、「契約書に気を払わなくても」「知的財産権のことを考えなくても」等が入ります。しかし、それは、(1)日本国内の特定の狭い世界だから通用した、(2)問題は起きなかったが、より利益をあげるチャンスを失っていた、(3)運が良かったのいずれか又は全部の可能性があります。

知的財産権や法務に資金を投じる習慣がなかった会社にとっては、これらに投資することに当初は抵抗感があることも多いでしょうけれども、将来、足元をすくわれないためにも、より利益を上げるためにも、一度、コストとリターン(リスク低減)を比較して、戦略を再検討されることをお薦めします。

2010年11月10日 08:30|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス, 企業法務||1件のコメント

中小企業・ベンチャー企業とウィーン売買条約

昨日、大阪弁護士会で、ウィーン売買条約についての研修がありました。

ウィーン売買条約は、昨年8月に日本でも発効し、日本法を準拠法とする国際物品売買にも適用されることになりました。厳密な適用範囲については、同条約第1章をご参照ください。また、加盟国と加盟時期については、UNCITALのページを確認してください。

現在、単に日本法を準拠法と記載した国際物品売買契約については、日本の民法に優先してウィーン売買条約が適用されることになります。例えば、中国の会社が売主で、日本の会社が買主の場合、物品の売買契約書において準拠法を日本と規定した場合であっても、契約書を作成しなかった場合であっても、ウィーン売買条約が適用されます。非加盟国の会社が売主の場合は、法の適用に関する通則法第8条第2項により、非加盟国の現地法が適用される可能性が高いとのことでした(この場合は、契約書で準拠法を変更するか、ウィーン売買条約が適用される旨を明記した方がコスト的に有利な可能性があります。)。

昨日の研修では、日本の大手法律事務所では、このウィーン売買条約の適用を排除しておくことが現時点での「ベストプラクティス」(諸リスクを勘案した場合のベターな選択?)という興味深い議論がありました。

おそらく、「将来、問題が生じた場合に、日本の法律家が日本法によって対応するのであれば適切な解が得られる可能性が高く、また紛争の相手方との間で共通の認識を持てるであろうが、ウィーン売買条約について適切なアドバイスを受けられる可能性は低く、その解釈でまず揉める可能性があるのではないか」というリスクが最初にあるのだろうと思います。

ただ、そのほかにも、現実的なリスクもあるように思われます。齋藤教授の論文等(※1)を拝見すると、売主に不利になる可能性があるものとして、同条約の第35条(物品の適合性)やクレーム提起期間が「物品の引渡しから2年間」とされている点(同条約第39条第2項)があり、買主に不利になる可能性があるものとして、検査通知義務にかかる第38条・第39条等があるようです。危険の移転時期も日本法は売主サイドの規定になっていますが、ウィーン売買条約は日本法よりは多少買主サイドになっているように思われます(それでも比較法的には売主寄りと評価されそうです。)。

一方、同条約の使い勝手のよさそうな規定としては、不安の抗弁権を明記した同条約第71条、第72条が挙げられそうです。

これらのデメリットとメリットを勘案した上で、且つ同条約の判例の集積や文献が少ないことから、現実的には、(弁護士等が契約書を作成するのであれば)同条約を明示で排除する流れが続きそうです。

とはいえ、いくつかのケース、例えば、契約書が無い場合、単に準拠法が日本法とされている場合(但し発効以前のものからの継続的売買契約に対する適用については議論があります。)、契約締結時に準拠法での中立を目指した等の結果ウィーン売買条約が第一義的に適用されることとなった場合等では、今後、交渉の前提及び日本の裁判所等で、ウィーン売買条約が表に出てくることがあり得ます。

昨今は、中小企業のみならず、ベンチャー企業でも、国際取引は決して珍しいものではありません。物品の売買をするケースも少なくありません。国際的な貿易をする会社の役員及び実務担当者や法律家は、ウィーン売買条約の適用の可能性を常に頭の片隅においておくべきでしょう。

※1 参考文献:齋藤彰著「ウィーン売買条約と日本 ―日本の法律家が国際統一私法と正しく向き合うために」(『国際商取引学会年報2010 vol.12』  212頁~)

2010年11月09日 11:30|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス, 企業法務||1件のコメント

『証券分析』より


とある本に、このような記載がありました。

投資銀行のモラルの崩壊
もうひとつの問題は、投資銀行の立場と投資銀行に対する一般投資家の態度である。つい最近まで大手投資銀行は、顧客の利益を守りながら自分も利益を上げるというやや矛盾する難しい役割をなんとかこなしてきた。投資銀行の名声と存続は販売する商品の安全性にかかっているため、投資家は顧客としてもまたその倫理にも守られてきた。投資銀行は顧客といわば信託・受託の関係を結んでいると考えられてきたし、自らもそう信じていた。しかしX年にいたって、名声のある投資銀行が営々と築いてきたこうした安全性の実績は全面的に崩壊したのである。発行される証券の多くは劣悪なものであり、しかも一般投資家に対する情報の開示方法にはさまざまな問題があった。こうした投資銀行のモラルの崩壊で一般投資家にはリスクの大きいいかがわしい証券が大量に販売された結果、それらの投資家が被った損失は巨額なものとなった。(「X年」の部分のみ、原文から変更。)(引用終わり)


これは、まるでサブプライムローン問題で、複雑な金融商品を設計して、投資家に販売した結果、リーマン・ショックに陥ったわずか数年前の指摘のように読めます。しかし、これが記載された本、『証券分析 【1934年版第1版】 』が執筆されたのは、1934年であり、「X年」の部分に入るのは、「1928~29年」です。人間社会が如何に同じような過ちを繰り返しているのかが、この指摘からわかります。

この本は、ベンジャミン・グレアムという「現代の証券分析の父」と言われる人が書いたもので、証券分析の永遠の古典、投資界では比類のない古典、不朽の名作等と評価されてきたものです。以下のような目次となっており、今となっては時代遅れの部分や不足していると思われる部分がないわけではないと思いますが、多くの部分が、現代日本の経営者や投資家、証券会社や銀行のファイナンス担当者、会計士・弁護士等のプロフェッショナルが読んでも、遜色のない内容です。

第1部 証券分析とそのアプローチ
第2部 確定利付き証券
第3部 投機的な性質を持つ上位証券
第4部 普通株の投資理論
第5部 損益計算書の分析と普通株の評価
第6部 バランスシートの分析―資産価値の意味合い
第7部 証券分析の捕捉的要素―価格と価値の矛盾

ちなみに、第6部第44章には、「無関心で従順な株主たち」という表題で、「アメリカの株主たちは、極めて従順かつ無関心な、捕らえられた動物だとよく形容される。彼らは取締役会の言いなりで、ビジネスの所有者として、また雇われ幹部の雇い主としての個人的権利を行使しようなどということには、思いも及ばない。その結果、多くの、おそらくは大半のアメリカの大企業において、事実上の支配者は、株の過半数を保有している株主たちではなく、「経営陣」と呼ばれる小人数のグループなのである。」(原文ママ)という記載があります。アメリカの投資家や一部のアクティビストと呼ばれる投資家が、少し前に、日本の株式市場に対して、述べていたようなことと同じことが言われてます。

金融の世界も法律の世界も、時代が変わっても「変わる部分」と「変わらない部分」があることを実感します。そして、その「変わらない部分」は、人間の業ともいうべき性質と切っても切り離せないものかもしれません。

2010年11月08日 08:30|カテゴリー:その他||1件のコメント

サイト構築業務における見積書と請負代金の確定についての裁判例


金融・商事判例の2010年11月1日号No.1352の13頁に、サイト構築業者にとって有用と思われる裁判例がありましたので、ご紹介します。札幌地裁平成22年9月15日判決(請求認容・確定)(単独)です。

判示内容の概略は、注文者(被告)のサイトの構築業務を請け負った請負人(原告)がサイトの個別内容が確定するごとに注文者に見積書を提出していた場合において、注文者が当該見積書の金額に不満を述べていても、具体的な金額の交渉を求めることはしなかった、またはサイト構築業務の中止を求めることがなかったという要素がある場合は、見積書の請負代金での請負契約が成立するとしたもののようです。

判決の原本にあたっていないため、ある程度の推測を前提に検討することになってしまいますが、おそらく金額入りの契約書は、特に交わされなかったか、当初交わされたとしても、その後に生じた仕様変更毎には交わされた書面はなかったということだと思います。この内容だけ読むと、黙示の同意があったと評価されてもやむを得ないと思われますので、妥当な結論と思われます。

今後の実務に生かすとすれば、注文者は、納得のできない見積書が来た時点で、書面(最低でもメール)に残る形で、「金額を下げてほしい。下げることができないのであれば、追加の作業は止めてくれ。」と明確にしなければならないという点になるでしょう。放置しておくと、そのまま見積書の内容で契約が成立したと判断されてもやむを得ないということになります。

請負人側もこの例では構築費の請求が認容されましたが、具体的なやりとりによっては、請求できなくなるリスクもあります。サイト構築に限らず、システム開発等の業務委託契約は、法理論的に、完全に整備されているわけではなく、実務上も、後から追加や変更といったことが度々起きるため、トラブルになりやすいです。契約書で明確にしておくことは勿論のこと、一つ一つの意思の伝達を証拠化しておく(何月何日に誰が誰に何を伝えたのかも含めて明確にしておく)ことが身を守るために重要です。

本判例では、請負契約であることが当然の前提とされていて、この点が争われたのかどうかわかりません。そもそも論点になり得なかったのかもしれません。ただ、一般的には、システム開発等の業務委託契約は、請負契約か準委任契約か、区別が難しいことがあります。おそらく、この裁判例にいたるまでの交渉で、解除をするとどうなるのか、途中で仕様を変更するとどうなるのかといった検討があったものと思われますが、その部分に影響する論点でもありますので、やはり、これらの効果についても予め契約書で明確にしておくのが望ましいと言えると思います。

2010年11月05日 11:50|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス, 法務関連ニュース||1件のコメント

お知らせ「いま、社外取締役に求められる独立性とは?(関西企業に社外取締役は必要か?)」


本日、2つ目のお知らせです。以前、お知らせ「いま日本企業に求められる独立社外取締役とは?」(仮)の開催というエントリーにで、ご紹介させていただいた件の詳細が決まりましたので、お知らせします。

日時: 12月8日(水) 午後2時から午後5時まで
場所: 大阪弁護士会館2階ホール
内容: 基調講演「いま、なぜ社外取締役か?」 中央大学法科大学院教授 経済産業省企業統治研究会委員 大杉謙一先生
討論会「関西企業に社外取締役は必要か?」

となっております。

モデレーターは、「ビジネス法務の部屋」でおなじみの山口利昭先生です。詳しい内容は、山口先生のエントリーをご参考下さい。

お申し込みについては、以下の山口先生のエントリーからの引用のとおりです。

各種お申し込みの方法がございますが、同友会、大証参加企業以外の方で、「あの有名なおおすぎ先生の講演が聴きたい」、「いま議論されている社外取締役制度を知りたい」、もしくは「コワイもの見たさ」で(笑)、聴講をご希望の方は、NPO法人全国社外取締役ネットワークのHPからお申し込みいただけますと幸いです。(参加は無料ですが、事前のお申し込みが必要となりますので宜しくお願いいたします)一応700名まで収容できる大ホールなので大丈夫かとは思いますが、もし参加希望者が多い場合にはごめんなさいです。<m(__)m>(引用終わり)


生憎、私は、諸事情により参加できませんが、山口先生より事前準備の苦労話をお聞かせいただき、大変、盛り上がりそうな雰囲気が今から伝わっております。ご興味のある方は、是非ご参加ください。

本日、1件目のお知らせである『利益を守る、大きな損失を未然に防ぐ、ITベンチャーのための契約知識』(12月1日開催)の方も、宜しくお願いいたします。

2010年11月04日 16:00|カテゴリー:法務関連ニュース||コメントはまだありません

お知らせ『利益を守る、大きな損失を未然に防ぐ、ITベンチャーのための契約知識』

 
EBA(enfac business academia)さんにて、『利益を守る、大きな損失を未然に防ぐ、ITベンチャーのための契約知識』というタイトルで、契約書についてお話をさせていただくことになりました。

ライセンス契約やシステム開発契約、代理店契約を中心に、IT企業はもちろんのこと、そのほかの開発系の会社さんにもお役にたてる内容とさせていただく予定です。今まで契約書を正式に結んでこなかった、自社の雛型が現場にあっていない様に思う、システム開発と知的財産権の関係を理解したい等の御要望にお応えできるようにする所存ですので、経営者や役員の方のみならず、契約の前段階で折衝にあたられる営業担当の方やエンジニアの方にも有用です。

日時と場所は、以下のとおりです。

日時: 12月1日(水) 午後7時開始
場所: 大阪 梅田駅周辺(予定)

お申し込みは、こちらからどうぞ。多数の御参加をお待ちしています。

電子書籍の紹介

突然ですが、私は、iPhoneを利用しています。非常に優れたツールであり、使い続けていると、いろいろな能力が退化するかもしれないと思いつつ、日常的に頼っています。地図やスケジュールは勿論のこと、ふと法律を見たくなった場合や文献を記録する場合、簡単な調べ物をしたい場合、近くのレストランを探したい場合等、活用する場面は多いです。

そのiPhoneの活用方法の1つとして、電子書籍は有名です。狭い電車では、文庫本ならともかく、ハードカバーや新聞紙は、読みづらいことも少なくありません。その点、iPhoneであれば、片手ですいすいと読めます。私は、いくつかの電子書籍を購入して、読んでいますが、非常に楽に読み進めています。自炊(所有している本を裁断して、電子データ化して保存すること)している法律雑誌等を読んでいる弁護士もいるかもしれません。私は、残念ながらそこまでできていませんが、自炊に使われるスキャナーとして有名なFUJITSU ScanSnap は、名刺管理や電子ファイル化に大活躍しています。

電子書籍を1つご紹介します。以前のエントリー「ベンチャー企業の栄光と挫折を知ること」で、DeNA社の南場智子社長が出演するNHK教育の「仕事学のすすめ」という番組のくだりを紹介しました(南場社長が出演する回は、今週4日(木)の再放送が最後です。)。リクルーティングの際に、口説き相手のエンジニアの方に対して、”ベンチャーの世界っていうのはこんな世界なんだよ”ということを伝えるため、板倉雄一郎さんの『社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由』という本を渡したという話です。

その社長失格が電子書籍化されたとのことですので、電子書籍版社長失格もお伝えします。iPhoneやiPadをお持ちの方は、どうぞ。

2010年11月02日 11:40|カテゴリー:未分類||コメントはまだありません