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国際法務の部屋

白眼視事件と民主主義

中国の北京で全国人民代表大会が開催され、3月11日、2期10年までと定められている国家主席の任期上限を撤廃する憲法改正案が賛成多数で可決されました。このことは、日本でも報道されているところです。

 

このことに関し、白眼視事件と呼ばれている事件が起こりました。簡単に内容を説明すると、全人代の記者会見で、中国政府の意向を汲んだと思われる記者が、政府の決定に賛同するような内容の質問(というより意見の表明?)を、冗長に行ったところ、その隣に座っていた記者が、睨んでいるとも見られる表情をしたり、天を仰ぐようなリアクションをとった、というものです(詳しくは、古畑康雄氏による3/19(月)7:00配信の現代ビジネス「習近平の晴れ舞台に冷や水をかけた全人代「白眼視」事件をご存じか」(https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180319-00054907-gendaibiz-int)をご覧ください。)。

 

私が所属している中国の友人たちとのグループチャットでも、その場面の写真や動画がアップされたり、中国では話題になっているようです。

では、なぜ、この事件が、それほど話題になるのでしょうか。国民性等も理由になるかもしれませんし、当事者の2名の記者が美人(と一般に言われる風貌)の女性であるということも理由になるかもしれません。

しかし、上記の記事でも指摘されていますが、本質は、実質的には民主主義ではない中国において、共産党や政府に対し、異論や反論があったとしても、公にそれを明らかにできない(またはしにくい)ことや、自らの意見を国政に反映させる実効的な手段がないことが、この事件で真相であるとも考えられます。

 

その意味では、日本では、ある記者が、別の記者の発言に対して、あからさまに不満を表現するリアクションをしても、それほど話題にはならないと思われますし、そのことは、民主主義が実現されていることの裏返しだと言えるようにも思います。

 

森友学園に端を発する問題について、連日、報道がなされていますが、上記の事件と併せて考えてみると、民主主義を享受しているということが、感謝すべき有難いことであり、大切にしなければいけないと、改めて感じました。

2018年03月27日 11:53|カテゴリー:|コメントはまだありません

アリババ上場にみるVIEストラクチャーの分析

1 はじめに

本稿では、2014年9月19日に、中国の電子商取引最大手のアリババ集団(Alibaba Group Holding Limited)が、米国ニューヨーク証券取引所に上場した際に、Alibaba Group Holding Limitedが、上場前に1933年アメリカ証券法(THE SECURITIES ACT OF 1933)に基づいて提出したF1フォーム(登録届出書、REGISTRATION STATEMENT、参考ウェブサイト①)に記載されている、VIEストラクチャー(契約支配型ストラクチャー)についてご紹介します。

ニューヨーク証券取引所に上場したAlibaba Group Holding Limitedは、中国で設立された会社ではなく、ケイマン諸島で設立された会社であり、中国国内外に複数の子会社を持っています。

中国国内では、インターネットコンテントプロバイダー等の付加価値情報通信サービス事業等は、規制により100%外資会社では行うことはできません。

そこで、インターネットコンテントプロバイダー等の許認可を有しており、創業者であるJack Ma氏等を株主(VIE株主:Variable Interest Entity Equity Holders)とする中国内資会社(VIE:Variable Interest Entity)が規制事業を行います。そして、Alibaba Group Holding Limitedが中国国内に設立した100%子会社(WFOE:Wholly-foreign Owned Enterprise)は、当該VIEやVIE株主と種々の契約を締結することにより、VIEへの支配権を確保し、VIEの利益をWFOEに帰属させるスキームを採っています。

 

2 VIEストラクチャーにみる各種契約

次に、上記のVIEスキームを実現するために、Alibaba Group Holding Limitedが締結している種々の契約の概要を、同社のF1フォームより抜粋します。

① WFOEとVIE株主の間の融資契約(Loan Agreement)

WFOEからVIE株主への無利息融資により、VIE株主はVIEへの出資を行う。資金使途はVIEへの出資に限られる。WFOEはいつでも早期返済を要求することができ、その場合、融資額面でVIE株主からVIE株式を買い取る。VIE株主は,VIE株式を第三者に譲渡してはならない。VIEは重要資産,知的財産権を含むいかなる事業も第三者に譲渡してはならない。

 

② WFOEとVIE株主の間のコールオプション契約(Exclusive Call Option Agreement)

WFOEはVIE株主からVIE株式を払込資本額面もしくは中国法で認められる最低価格のどちらか高い方の金額で買い取る権利を有し、またVIEから保有資産を簿価もしくは中国法で認められる最低価格のどちらか高い方の金額で買い取る権利を有する。WFOEが指名する第三者に購入させることも可能。また、WFOEは、VIEが行う配当その他の分配及びVIE株主がVIE株式の譲渡により得た対価のうち払込資本を上回る額を受け取る権利を有する。

 

③ WFOEとVIE株主の間の委任契約(Proxy Agreement)

VIE株主はWFOEが指名する者に対してVIEに係る権利行使を委任する。

 

④ WFOEとVIE株主の間の株式担保契約(Equity Pledge Agreement)

VIE株主はWFOEからの借入にかかる担保としてVIE株式を供する。WFOEにVIE株式の処分権限があり,競売若しくは売却代金からの優先回収の権利がある。株式担保契約は,中国の工商行政管理部門で登記済みである。

 

⑤ WFOEとVIEとの間の包括技術支援契約(Exclusive Technical Services Agreement)

WFOEによる技術支援の対価として、VIEは税引き前利益のほぼ全額をWFOEに支払う。

 

3 VIEストラクチャーの適法性に関する中国法律事務所の見解

F-1フォームでは、上記のVIEストラクチャーの適法性・有効性に関する、中国の法律事務所の見解として,①VIEストラクチャー及びWFOE、VIE、VIE株主間の各種契約は、現時点においては中国の法規制に準拠しており有効である,②ただし、中国の法解釈には重要な不確実性があり、将来において中国当局が違法との見解を示す可能性があり、その場合、事業停止等に追い込まれるリスクがある,という趣旨の見解が添えられています。

4 最後に

アリババによる上記のニューヨーク証券取引所上場後も、現在に至るまで、中国におけるVIEスキームを用いて、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場する例が複数ありますので(参考ウェブサイト②)、VIEスキームに関する今後の中国当局の対応が注目されるところです。

 

【参考ウェブサイト】

①Alibaba Group Holding LimitedのForm F-1 REGISTRATION STATEMENT

http://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1577552/000119312514184994/d709111df1.htm

②Council of Institutional Investors (CII)が2017年12月に公表した、中国企業とVIEストラクチャーに関する意見書 “Buyer Beware: Chinese Companies and the VIE Structure”

https://www.cii.org/files/publications/misc/12_07_17%20Chinese%20Companies%20and%20the%20VIE%20Structure.pdf

 

2018年03月20日 14:35|カテゴリー:|コメントはまだありません
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