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国際法務の部屋

中国企業とのライセンス契約と源泉徴収

日本企業が、中国企業に対し、特許やノウハウ等をライセンスして、ロイヤリティを受領する契約を締結する場合があります。今回は、こういった契約に関する注意点をご紹介します。

まず、日本企業が中国企業からロイヤリティを受領する契約を締結する場合、当該日本企業が中国国内に拠点等を設定していない場合等は、当該日本企業は非居住企業になります(中国企業所得税法2条3項(日本の法人税法に相当するものです。以下「法」といいます。)。

非居住企業の場合、中国において納税義務が生じる対象は、中国での国内源泉所得であり(法3条3項)、この事例において日本企業が受領するロイヤリティは中国での国内源泉所得に該当します(中国企業所得税法実施条例7条)。

そして、非居住企業が中国での国内源泉所得を取得した場合には、支払者に源泉徴収義務を課しています(法36条)。

したがって、上記のケースでは、日本企業が受領するロイヤリティは、中国での源泉徴収の対象となります。

この場合、ライセンス契約書等に、「ロイヤリティの金額は1000万円とする」といった規定がなされていた場合、後日、紛争が生じることがあります。すなわち、源泉徴収が20%だと仮定すると、日本企業に着金すべき金額が800万円なのか、1000万円なのかについて、当事者間で意見の相違が生じることがあります。
契約書の「1000万円」との記載について、一方は、源泉徴収前の金額であると主張し、他方は、源泉徴収後の金額であると主張することがあります。こういった紛争を避けるために、契約書作成段階において、後日、当事者間において見解の相違が生じないように、「関連法令が要求する源泉控除後の金額1000万円を支払う」といった適切な文言を選択する必要があります。
(文責:藤井宣行)
以上

2018年05月25日 16:43|カテゴリー:|コメントはまだありません

アクシス国際法律事務所参画のご挨拶(李航 中国弁護士)

このたび、オブ・カウンセルとしてアクシス国際法律事務所に参画いたしましたので、ご挨拶を申し上げます。

アクシス国際法律事務所は、中国をはじめ、ASEAN諸国、欧米などに海外展開を行われるクライアント向けのリーガルサービスに力を入れております。私は中国弁護士として、2009年4月から主に北京・天津現地の日系企業向けの中国法サービスを提供して参りまして、今年4月から弁護士10年目に入りました。現地法人(独資・合弁)の設立をはじめ、契約審査や労働問題を含めた企業の日常運営・管理、組織再編・M&A、清算・撤退、紛争解決など、中国法務の全般にわたる法的サポートの経験を有しています。

「中国法務」といえば、特に中国進出をすでに経験された日系企業にとっては馴染みのない概念ではないかもしれませんが、「中国法務」の内実は、常に時代と共に進化しています。中国には13億人を超える巨大市場に加え、近年、生活水準の向上に伴い「中産階層」と呼ばれる人々の数が急増し、「世界の工場」から「世界の市場」へ変化を遂げています。また、電子取引の急速な進化に伴い、IT技術を活用した新しいビジネスモデルが続々と生み出されています。多くの日系企業が、新しいビジネスチャンスを敏感に捉え、積極的に取り組んでいることは、日頃の弁護士としての業務を通じて実感しているところです。これからも、中国ビジネスはより多様化、複雑化していくことが予想されますので、新しい事業を行う際の法的問題の検討には、時代に即した専門知識と経験が必要となります。

海と山に恵まれる神戸で4年間留学生活を暮らした私は、神戸の皆様をはじめ、多くの日本の方にお世話になりました。また、渉外弁護士を目指し、留学期間中、ほぼ毎月、大阪で行われた中国法務交流会に参加した際に、関西地域で活躍される日中両国の弁護士や企業法務担当者の方々と交流した場面は、今でも鮮明に記憶にあります。それから10年が経った今、大阪の川縁を歩くと、その頃とあまり変わらない景色が目に入り、「逝者如斯夫。不舎晝夜。(逝く者は斯くの如きか。昼夜を舎(お)かず。)」という論語の言葉を思い出します。世間の景気がどのような場面であろうとも、渉外弁護士になった頃の初心を忘れず、常にクライアントの信頼を得られるように探求する姿勢を忘れずにいきたいと考えております。

これから、アクシス国際法律事務所の一員として、ご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

文責:李航(中国弁護士)

2018年05月14日 13:05|カテゴリー:|コメントはまだありません

国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書について

平成30年4月、経済産業省より、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」(以下、「研究会報告書」といいます)が発表されました。

研究会報告書では、第1章で日本企業の経営環境の変化と法務機能に対する時代の要請について、第2章で日米企業の法務部門の実態について、第3章でこれからの日本企業に求められる法務機能について、第4章で課題と克服について、第5章で関係機関による課題対応の在り方について報告されています。

渉外法務を含めた企業法務に携わる弁護士としてとくに興味深かったのは、第1章と第3章の部分ですので、本稿で取り上げさせていただきます。

まず、第1章では、日本は、少子・高齢化の進展やエネルギー・環境問題といった大きな社会問題に直面しており、2050年過ぎには人口が1億人を割るなど、長期的な人口減少が予測されており、国内の需要減少が続く中で、日本企業にとって、グローバルなビジネス展開の加速は、喫緊の課題となっていると問題提起をしたうえで、日本経済を取り巻く環境変化として、①ビジネスのグローバル化のさらなる進展に伴い、多様なリーガルイシューに対応する必要性が高まったこと、②第4次産業革命(IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミー等)のイノベーションの加速に伴い法制度が整備されていない市場の創出・拡大が進んでおり、各企業にとっては、これまで経験したことのない新たなリーガルイシューに対応する必要性が増していること、③2017年秋から、製造業のデータ改ざん等の問題が明らかになったが、企業の社会的責任に対する期待や要求の高まりから、企業のレピュテーションリスクは増大しており、SNSの普及によりレピュテーションリスクは従前よりも広く拡散する傾向にあり、コンプライアンスの強化の重要性が高まっていることを挙げています。

次に、第3章では、上記の日本経済を取り巻く環境変化に対応するための法務の機能として、守り(ガーディアン機能)と攻め(パートナー機能)の2つの観点から整理しています。

まず、守り(ガーディアン)の機能としては、①「最後の砦」として企業の良心となること(「合法かどうか」の判断だけでなく、ビジネス環境・経済・社会・政治・テクノロジー等に関する知識を踏まえた上で、「正しいかどうか」を判断する必要がある)、②コンプライアンス・ルールの策定と業務プロセスの構築及び徹底(グローバルレベルで変わりゆくレギュレーションを自社ビジネスに落とし込み、自社のルール、契約、オペレーションを最適なものとし、企業が法令に則って活動するように業務プロセスを構築しモニタリングする)、③契約による自社のリスクのコントロール、④自社の損害を最小限に抑えるための行動(民事訴訟で訴えられた場合の応訴、消費者クレームや不祥事への対応)が挙げられています。

他方で、攻め(パートナー)の機能としては、①ビジネスの視点に基づいたアドバイスと提案、②ファシリテーターとしての行動(集まってくる情報をもとに、必要な作業とスケジュールを把握した上で、社内外のリソースを迅速に確保・差配し、案件を進行させる)、③ビジョン(社会に提示できる新しい価値)とロジック(現行法における一定の解釈で成立し得るか)を携えた行動、④法令・契約に基づいた正当な主張(取引上のトラブルによる損害の賠償請求など)が挙げられています。

さらに、第3章では、企業が、外部弁護士を活用すべき場面として、①高い専門性が必要となるとき(社内でノウハウが蓄積しない分野)、②セカンドオピニオンを取りたいとき(リスク、インパクトの大きな事案についてステークホルダーへの説明責任を果たすため)、③訴訟、行政処分等へ対応するとき、④中立性・客観性が求められるとき(ex.第三者委員会の委員への委嘱)、⑤リソースが足りないときが挙げられています。

上記の第1章及び第3章を読んで、当事務所としても、日本経済を取り巻く環境変化に対応できるように最新のビジネス及び法律上の知見の習得を怠らず、守りと攻めの2つの法務機能を意識しつつ、外部弁護士に求められる上記の役割をあまねく充足できるように日々研鑽を積む必要があると感じました。

以下、経済産業省のリンクを挙げておきます。

http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180418002/20180418002.html

 

文責:河野雄介

 

2018年05月14日 10:15|カテゴリー:|コメントはまだありません
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