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ベンチャー法務の部屋

仮想通貨と所得税

先日、「国税庁、仮想通貨所得の確定申告促す方法の簡略化など環境整備へ」という報道を目にしました。
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180716/mca1807160500001-n1.htm

仮想通貨の取引と所得税に関し、国税庁は、2017年12月1日付で、「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」を公表し、また、国税庁ウェブサイトのタックスアンサーでも、仮想通貨の取引に関して損益が生じた場合の取扱いを公表しています
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1524.htm

そこでは、仮想通貨の取引に関して損益が生じた場合には、原則として、雑所得(取引規模等によって、例外的に事業所得)に該当するとされています。

そもそも、所得税法では、課税対象となる所得の種類として、10種類を規定しています。そのうちの1つの種類として、譲渡所得という分類がありますが、これについては、所得税法33条1項が、「譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。」と規定しています。

ビットコイン等の仮想通貨の取引に関しては、ある人が、仮想通貨を相対で売却したり、または、経済的価値のある物と交換(交換対象が仮想通貨の場合もあれば、そうでない場合もあるでしょう)することがあります。仮想通貨を売却や交換等の方法で譲渡した人は、その対価としての経済的価値を取得するのですから、譲渡によって得られた所得は、仮想通貨という「資産」を「譲渡」したとして、譲渡所得に該当すると考えるのが素直な解釈とも思えます。

では、国税庁は、なぜ譲渡所得ではなく、原則として雑所得(例外的に事業所得)と判断しているのでしょうか。国税庁のウェブサイト等では、この点について明確に説明しているものは見当たりませんでしたが、おそらく、仮想通貨は、譲渡の対象となる「資産」ではなく、決済手段であると考えているからだと思います。すなわち、一般に、外貨の為替取引を行い、差損が生じた場合には譲渡所得ではなく雑所得として処理するものとされていますが、これは、通貨という決済手段に関する取引であり、所得税法が譲渡所得として予定している「資産」の「譲渡」には性質的に該当しないとの考え方が存在するものと考えられます。仮想通貨についても、資金決済に関する法律でその内容が定義されるといったことからも、有価証券等の資産としての性格より通貨等の決済手段としての色彩が強いという判断が背後にあるものと考えられます。

もちろん、国税庁の考え方が、法律(ここでは所得税法)の解釈のあり方として、常に正しいわけではありませんので、この点について、裁判所で争われた場合に、譲渡所得に該当すると判断される可能性を否定するものではありませんが、譲渡所得の根本的な考え方に関連する興味深い議論であると思います。

                                                  以上

(文責:藤井宣行)

2018年07月19日 09:25|カテゴリー:未分類コメントはまだありません

古物営業の許可について(3)

前回前々回と、古物営業法の趣旨や概要、リサイクルショップ、フリーマーケット、バザー、メルカリ等のフリマアプリと古物営業法の関係について紹介してきました。

今回は、平成30年4月25日に公布された古物営業法の概要について紹介します。

第1 はじめに

前回のブログでも紹介したように、古物営業の態様は変化し、内閣規制改革ホットラインには、都道府県単位での許可の見直し(古物営業法第3条第1項、第2項)、営業の制限についての緩和(古物営業法第14条第1項)について要望が寄せられました。

それを受け、警察庁は古物営業の在り方に関する有識者会議を開催し、平成29年12月21日に古物営業の在り方に関する報告書をまとめました。

こういった背景の下、平成30年3月6日に古物営業法の改正案が閣議決定され、同年4月25日には「古物営業法の一部を改正する法律」(以下「新法」といいます。改正前の古物営業法を「旧法」といいます。)が公布されました。

第2 新法の概要

1 都道府県ごとの許可制度について

(1) 旧法下における制度の概要

旧法下の制度では、古物営業を行うためには、都道府県単位での許可を受ける必要があるとされていました(旧法第3条第1項、同第2項)。

(2) 不都合性
前述のとおり、全国展開を図る古物商にとっては、都道府県ごとに許可が必要となることから、時間と費用がかかるという問題がありました。

(3) 新法
新法においては、主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会の許可を受ければ、その他の都道府県に営業所等を設ける場合には届け出で足りることとされました(新法第3項第1項)。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から2年を超えない範囲内とされました(新法附則第1条)。

2 営業の制限について

(1) 旧法下における制度の概要
旧法下における制度では、古物商は、営業所又は取引の相手方の住所等以外の場所で、買受け等のために古物商以外の者から古物を受け取ることができないとされていました(旧法第14条第1項)。
これは、営業所又は取引の相手方の住所等以外の場所において古物の取引をする場合、法に定める各種義務(帳簿記載義務や本人確認義務)の確実な履行が期待できないために設けられた規定です。

(2) 不都合性
百貨店や集合住宅のエントラス等でのスペースを活用したイベント会場での受け取りができないため、古物商にとってはビジネスチャンスが狭まっており、また消費者にとっても古物を売却できる場所の選択肢が狭まっているという問題がありました。

(3) 新法
事前に公安委員会に日時・場所の届出をすれば、仮設店舗においても古物を受け取ることができることとされました(新法第14条第1項但書)。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から6ヶ月を超えない範囲内とされました(新法附則第1条但書)。

3 簡易取消し制度について

(1) 旧法下における制度の概要
旧法下における制度では、所在不明である古物商の許可を取り消すためには、3ヶ月以上所在不明であることを都道府県公安委員会が立証した上で、聴聞を実施する必要がありました。

(2) 不都合性
現在、約77万件の許可件数がある中で所在不明である古物商や、既に廃業しているにもかかわらず返納されていない許可がある一方で、許可を取り消す手続に時間がかかりすぎるという問題がありました。

(3) 新法
古物商等の所在を確知できないなどの場合に、公安委員会が公告を行い、30日を経過しても申し出がない場合には、許可を取り消すことができることとされました(新法第5条第2項、同条第3項)。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から2年を超えない範囲内とされました(新法附則第1条)。

4 暴力団排除について

(1) 旧法下における制度の概要
旧法下における制度では、禁固以上の刑や一部の財産犯の罰金刑に係る前科を有すること等を欠格事由として規定し、該当する者は許可を取得できないとされていましたが、暴力団員は欠格事由として明記されていませんでした。

(2) 不都合性
盗品売買の防止という法目的からは、暴力団排除は当然であるにもかかわらず、暴力団排除が法に明記されていなかったという問題がありました。

(3) 新法
暴力団員やその関係者、窃盗罪で罰金刑を受けた者を排除するため、許可の欠格事由として、「集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」(新法第4条第3号)、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第12条若しくは第12条の6の規定による命令又は同法第12条の4第2項の規定による指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から起算して3年を経過しないもの」(新法第4条第4号)が定められました。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から6ヶ月年を超えない範囲内とされました(新法附則第1条但書)。

(文責:三村雅一)

2018年07月13日 13:46|カテゴリー:その他コメントはまだありません

会社が株式公開を目指さない理由

最近、「企業価値5600億円 米スラックが株式公開しない理由」という記事がありました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32237140W8A620C1TJC000/

Slackは、昨今のベンチャー企業では、使っていない方が珍しいくらいに、浸透しているビジネス用のチャットツールです。

私も、所内外を問わず、いろいろな場面で活用させていただいています。

そのSlackのCEOが、当面、株式を公開しないとのことです。

通常、ベンチャー企業が、VCや投資家から、新株発行により資金を調達する際には、当該株式について、将来、上場によって公開されることを目指すと宣言します。IPOによって、株式が公開されない限り、VCや投資家にとっては、投下した資本を回収する手段がないからです。

しかしながら、いまや世界中のビジネスシーンで利用されるようになった、Slackは、ユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の有力未上場企業)であり、上場しなくても、その株式を保有したいという投資家・資産家は、列をなしているのでしょうから、労力のかかる(=めんどくさい)IPOは、しなくても問題ないでしょう、ということかもしれません。

私が過去に書いたブログで、会社の株式の未来は、大きく分けて4つの未来しかないと書いたことがあります。

「会社の未来は4つしかない」

会社の未来は4つしかない

(未来1) 株式公開(IPO)
(未来2) M&A(買収される)
(未来3) 保有され続けて、相続の対象となる。
(未来4) 会社の清算により、残余財産分配請求権に転化する。

Slackのように、有力な投資家が保有し続けて、未上場のまま、維持されていくケースもあるかもしれません。この場合、個人株主については、(未来3)ですね。

Slackのように、未上場のまま有力な投資家が保有し続ける場合、投資家は、未上場のまま、会社に配当を求めるのかもしれません。

栄枯盛衰は世の常ですので、上場できるうちに、上場した方がよいという意見もあるとは思いますが、如何でしょうか。
SlackとSlackの投資家の未来は、どうなるでしょうか。

2018年07月03日 12:37|カテゴリー:ベンチャー・ファイナンスコメントはまだありません
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