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国際法務の部屋

中国子会社(現地法人)の不正調査

先日、クライアントの中国子会社(現地法人)での不正調査案件で、中国に出張してきました。当該中国子会社は、上海からタクシーで2時間程度の某都市にあり、上海浦東空港から、車で向かいました。

 

高速道路で上海市を出て、当該某都市に入ってすぐの地点にある料金所で、警察官が、私達の乗っている車をとめ、タクシーの運転手に対し、「誰をのせているんだ」と聞きました。運転手が「外国人だ」と答えたところ、警察官は私を見て、「韓国人か?」と聞かれたので、説明するのも面倒なので頷いたら、「行ってよい」と言われました。

中国語の分からない同乗者に、やりとりを説明していたら、運転手が、「さっきの話しの内容、分かったのか?え、日本人なん?まったくパスポートも確認しないなら、いちいち聞くなよ」と言っていました。

スーツを着た3人が、車で別の市から入ってきたので確認するという警備の厳しさと、とりあえず声をかけたら確認まではしないという緩やかさを見て、私としては、中国に来たなという実感を持ちました。

 

 

現地調査では、当該現地法人では、ガバナンスの体制に甘い点が多くあったことから、まずは、制度設計を根本から構築しなおすことにしました。また、役員の報告義務、親会社または株主が保有する調査権限の活用についても社内ルール化することになりました。海外子会社の不正調査において、このようなガバナンスの制度面を構築及び活用することは非常に重要です。不正を行っていた者の処分についても、別途、手続を進めています。

 

また、日々の業務において、そのような制度を、どのように運用するかについても、同じように重要です。日本の大企業でも、ガバナンスの制度について最先端と評価されていたにもかかわらず、不祥事を防止できなかった事例がありました。運用面に問題があれば、立派なガバナンスの制度も効果を発揮しないということは、国内でも海外子会社でも同様ですね。

 

ガバナンスの制度の運用面に関連して、海外子会社の場合は、日本人が総経理等の高級管理職を占めるべきか、それとも、現地スタッフに任せるべきか、という議論をよく耳にします。日本人の方が、本社の立場からすれば、安心感があるという面は否定できないでしょう。しかし、現地法人の日本人総経理が不正を行っていたというケースも、何度も経験したことがあります。また、現地スタッフのモチベーションという意味では、総経理等になれるという目標を示した方が、良い点もあるでしょう。

個人的には、どちらが良いという「正解」はなく、会社の規模、ヒューマンリソース、及び、現地法人の成長ステージ等の観点から、状況に応じて判断せざるを得ないと考えています。重要なことは、管理職が日本人であれ外国人であれ、日本本社が、適切な距離感で常に「見ている」という感覚を現地法人に持たせることだと考えています。監督権限を適切に行使し、不正行為をすれば露見しそうだという緊張感を持たせ、同時に、事情も分からずに遠くから指示だけするといった存在ではなく、現地子会社の状況や苦労を正確に理解してくれているという共感を持たせることを実現することにより、海外子会社の不正を未然に防止できる確率は飛躍的に高まるものと信じています。

以上

(文責:藤井宣行)

2018年10月19日 11:43|カテゴリー:|コメントはまだありません

ASEANにおける現地法人の外国公務員贈賄、不正調査などの実例と防止策セミナーについて

 

ASEANに現地法人や提携工場を有する日系企業が、外国公務員贈賄規制、不正調査、サプライチェーンにおけるフェアトレード(公平貿易)、現地法人の内部統制など実務上直面する様々な問題は、発覚してから対応するケースが多いのが実情です。

そこで、日本本社側から相談を受ける機会の多い弁護士、ASEANにおける不正調査やPMIの実務経験が豊富な会計士、現地に拠点を有する法律事務所の弁護士がそれぞれの立場から最新動向や実例を交えながら事前対策のポイントについて解説する、「ASEANにおける現地法人の外国公務員贈賄、不正調査などの実例と防止策セミナー」を下記の内容にて開催させていただくことになりました。

このリンクよりお申込みいただけますので、ご参加いただけますと幸いです。

 

開催日時:平成30年11月20日(火)14:00~17:00

場  所:神戸商工貿易センタービル14階会議室(神戸貿易協会内)

神戸市中央区浜辺通5-1-14

定  員:50名

主  催:

ひょうご・神戸国際ビジネススクエア 【神戸市海外ビジネスセンター、ひょうご海外ビジネスセンター、ジェトロ神戸】

アクシス国際法律事務所esnetworks Asia Global(エスネットワークスグループ)

ケルビンチアパートナーシップ

共  催:神戸商工会議所、神戸市機械金属工業会、兵庫工業会

 

プログラム:

第一部 (14:00-14:50)

「海外子会社コンプライアンス、海外贈賄防止に関する規律と実例」

講師:アクシス国際法律事務所弁護士河野雄介

第二部 (14:50-15:40)

「ASEANでの不正事例とその確認/防止のポイント」

講師:es Networks Asia Global (Singapore) Director 公認会計士熊谷伸吾

第三部 (15:50-16:40)

「ASEANの子会社コンプライアンスについての実務」

講師:ケルビンチアパートナーシップ弁護士MARLON WUI

【セミナーのご案内PDFはこちらです】

ASEANにおける現地法人の外国公務員贈賄、不正調査などの実例と防止策セミナー

2018年10月19日 11:26|カテゴリー:|コメントはまだありません

中国における特許、商標侵害訴訟におけるライセンシーの原告適格について

本稿では、中国企業に特許の実施または商標の使用を許諾する場合、第三者が特許権または商標権を侵害する行為が発生した際、ライセンシーである中国企業は、原告として第三者を相手に民事訴訟を提起することができるか否かを検討します。

 

一 ライセンスの類型

1 特許ライセンス

最高人民法院が公布した「技術契約紛争事件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」 25 条によれば、中国における特許ライセンスの種類は、以下の三つあります。

(1)独占的実施許諾

独占的実施許諾は、ライセンサーが、契約に定めた実施許諾範囲内において、一つのライセンシーのみに実施権を許諾し、ライセンサー自身も当該特許を実施できないライセンスです。

(2)排他的実施許諾

排他的実施許諾は、ライセンサーが、契約に定めた特許実施許諾範囲内において、単独のライセンシーのみに実施権を許諾するが、そのライセンシー以外にライセンサー自身も当該特許を実施することができるライセンスです。

(3)通常実施許諾

通常実施許諾は、ライセンサーが、契約に定めた特許実施許諾範囲内において、ライセンシーに実施権を許諾するが、更に他の者に実施権を許諾することもでき、自ら特許を実施することもできるライセンスです。

 

2 商標ライセンス

上述した特許ライセンスの類型は、商標ライセンスにおいても、ほぼ同様な類型が規定されています。最高人民法院が公布した「商標民事紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」3条によれば、中国における商標ライセンスの種類は、以下の三つあります。

(1)独占的使用許諾

独占的使用許諾は、商標登録者が約定した期間・地域・方法で、ライセンシーにのみ登録商標の使用を許諾し、商標登録者は当該登録商標を使用することができないライセンスです。

(2)排他的使用許諾

排他的使用許諾は、商標登録者が約定した期間・地域・方法で、ライセンシーにのみ登録商標の使用を許諾し、商標登録者自身が当該登録商標を使用することができるが、別途、他の者に当該登録商標の使用を許諾することはできないライセンスです。

(3)通常使用許諾

通常使用許諾は、商標登録者が約定した期間・地域・方法で、ライセンシーに登録商標の使用を許諾し、自分自身も使用することができ、また他の者に使用を許諾することもできるライセンスです。

 

二 原告適格について

第三者による侵害行為が発生した場合、ライセンスの類型により、ライセンシーが第三者を相手に民事訴訟を提起することができるか否か、いわゆる原告の適格に関して、特許と商標の状況は異なります。

商標の場合、「商標民事紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」4条によれば、

  • 独占的使用許諾契約の場合、ライセンシーは自ら訴訟を提起することができる。
  • 排他的使用許諾契約の場合、ライセンシーと商標登録者と共同して訴訟を提起することができ、また商標登録者が訴訟を提起しない場合、ライセンシーが自ら訴訟を提起することができる。
  • 通常使用許諾契約の場合、ライセンシーは商標登録者から明確な授権を得て、訴訟を提起することができる。

このように、それぞれ条件が異なりますが、商標ライセンスの三つ類型において、ライセンシーのいずれも、その原告適格が認められます。

 

上述したように、特許ライセンスの類型は商標ライセンスの類型とほぼ同様であるため、特許ライセンスのライセンシーの原告適格、条件も、商標ライセンスの場合と同様ではないか、と思われがちですが、実際にはそうではありません。

中国現行法上、特許ライセンスのライセンシーが第三者(侵害者)を相手に民事訴訟を提起する資格を直接規定する法的根拠はありません。

といっても、裁判上、特許権侵害案件において、人民法院はライセンシーが原告適格を有するか否かを論じる際、最高人民法院が公布した「訴訟前に特許権侵害行為の停止における法律適用問題に関する若干規定」をよく引用します。同規定1条によれば、

  • 特許権者または利害関係者は、特許権侵害者に侵害行為を停止させる命令を、訴訟前に人民法院に申請することができる。
  • 「利害関係者」には、特許ライセンスのライセンシーが含まれる。
  • 独占的実施許諾契約の場合、ライセンシーが単独で人民法院に停止命令を申請できる。
  • 排他的実施許諾契約の場合、特許権者が停止命令を申請しなければ、ライセンシーが人民法院に申請できる。

同規定12条によれば、人民法院が侵害行為の停止を命じてから15日以内に、特許権者または利害関係者が訴訟を提起しなければ、裁判所は停止命令を解除することとなります。以上の規定から、独占的実施許諾および排他的実施許諾のライセンシーが原告適格を有するという解釈も可能です。また、排他的実施許諾契約の場合、裁判上、ライセンシーと特許権者と共同して訴訟を提起することも認められます。

 

また、特許ライセンスの場合、通常実施権のライセンシーは原告適格を付与されていないことに留意すべきです。この点は商標ライセンスの場合と異なります。商標の通常使用許諾のライセンシーの場合は、商標登録者から明確な授権を得て、訴訟を提起することができるとされています。

 

3 まとめ

特許と商標ライセンスにおいて、それぞれの類型、第三者侵害案件におけるライセンシーの原告適格について、下表に整理しました。

ライセンスの類型 ライセンシーの原告適格
特許 独占的実施許諾 ライセンシーが自ら訴訟を提起できる。
排他的実施許諾 ライセンシーと特許権者と共同して訴訟を提起することができる。

特許権者が訴訟を提起しない場合、ライセンシーが自ら訴訟を提起することができる。

通常実施許諾 訴訟提起の資格はない。
商標 独占的使用許諾 ライセンシーが自ら訴訟を提起することができる
排他的使用許諾 商標登録者と共同して訴訟を提起することができる。

商標登録者が訴訟を提起しない場合、ライセンシーが自ら訴訟を提起することができる。

通常使用許諾 商標登録者から明確な授権を得て、ライセンシーが訴訟を提起することができる。

 

(文責:李航 中国弁護士)

2018年10月10日 23:27|カテゴリー:|コメントはまだありません

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会における、「持続可能性に配慮した調達コード」について

1 はじめに

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「大会」といいいます)の運営のための、原材料調達等について、大会の組織委員会は、

(1)どのように供給されているのかを重視する

(2)どこから採り、何を使って作られているのかを重視する

(3)サプライチェーンへの働きかけを重視する

(4)資源の有効活用を重視する

という4つの基本原則(「基本4原則」)を掲げています。

具体的には、(1)については、大会の組織委員会は、人権の尊重(製造過程における差別やハラスメントの排除、不法な強制立ち退き等の権利侵害のない物品・サービスの提供)、適正な労務管理と労働環境への配慮(強制労働や児童労働がなされていないこと、安全衛生が確保されていること、労働者の諸権利が法令に照らして確保されていること)、公正な取引(贈賄等の腐敗行為の禁止、ダンピングや買いたたきなどの不公正取引がないこと)、適正な環境保全への配慮(低炭素エネルギーや、省エネルギーの推進、環境負荷の低減など)を重視するとされています。

(2)については、大会の組織委員会は、①地球環境の保全のために、森林・海洋などの資源の保全や生物多様性に配慮した適切な採取・栽培、低炭素エネルギーの活用、省エネルギーの推進、大気・水質・土壌等の環境に配慮した原材料の使用に努めること、②人権や地域住民の生活、社会の安定に対して悪影響を及ぼす原材料(強制労働により採掘された原材料、紛争鉱物、違法伐採木材等)の使用の回避を求めること、③リユース品及び再生資源を含む原材料の使用並びに容器包装等の最小化に努めることを、サプライヤーやライセンシーに対して求めるとされています。

(3)については、組織委員会は、サプライヤー及びライセンシーに対し、組織委員会が調達する物品・サービス等について、サプライチェーンにおいても本調達コード並びにトレーサビリティー及び透明性の確保に努めるよう求めるとされています。

(4)については、組織委員会は、①調達にあたって調達総量をできるだけ抑制したうえで、新品だけでなく、再使用品やリース・レンタル品の活用も検討すること、②サプライヤー及びライセンシーに対し、日本の「もったいない精神」を活かして、可能な限り再使用・再生利用が容易な資材・物品を提供することや使用時の省エネルギー等に配慮した物品・サービスを提供することを求めること、③調達した物品の再使用及び再生利用を推進することとされています。

 

2 持続可能性に関する確認について

そして、上記の基本4原則を受けて、持続可能性に関する確認について、大会の組織委員会では、2018年3月以降に調達手続きを開始する案件については、事業者の選定にあたり、持続可能性の確保に向けた取組状況に関するチェックリストや誓約書の提出を求めることとなっているようです。

このチェックリストの様式や記載例、誓約書の雛形もウェブページからダウンロードすることができます。

3 まとめ

上記の基本4原則や、持続可能性の確保に向けた取り組み状況のチェックリストは、大会への物品やサービスの納入を考えていない場合であっても、会社における環境問題、人権問題、労働問題(国際的労働基準の遵守・尊重、結社の自由や団体交渉権の尊重、強制労働の禁止、児童労働の禁止、雇用及び職業における差別の禁止、賃金の適正な支払、長時間労働の禁止、労働環境の整備)、公務員に対する贈賄等の腐敗防止、公正な取引慣行の推進(独占禁止法や下請法の遵守)、知的財産権の保護、紛争や犯罪に関与する原材料の使用防止、マーケティングにおける不当表示等の防止、情報の適切な管理(個人情報保護)などの取り組み状況について確認されるうえで、有用な視点、ツールとなります。

また、ご紹介したようなトレンドは、すでに契約実務にも取り込まれており、特に、欧米の規模の大きな企業が提示してくる製造委託契約書や売買契約書には、上記のような取り組み状況について、詳細な規定がCode of Business Conduct and Ethics(業務遂行及び倫理に関するコード)等の表題で別紙として設けられ、契約書本文内で、当該コード記載の内容につき遵守する義務を負い、当該コードの記載内容の違反は契約違反となるとの条項が設けられることが多くなってきました。

このように、普段から基本4原則やチェックリストを確認し、各項目について不十分な部分や遵守できていない部分があれば、随時改善を行っておかれると、大会に物品やサービスを提供することになった場合も含めて、いざというときに有用であると考えます。

参考Webサイト(持続可能性に配慮した調達コード

文責:河野雄介

2018年10月10日 23:21|カテゴリー:|コメントはまだありません
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