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憩いの部屋

揺さぶられっこ症候群を考える(1)

当事務所では、ベンチャー法務の部屋、国際法務の部屋という2つの部屋を設けていることからもお分かり頂けるとおり、ベンチャー法務と国際法務を業務の軸としています。

もっとも、業務はそれに限定されるものではありません。

今回は、私が弁護士になって以来、ライフワークの一つにしている「子どもに関する法律」の分野で、皆さまにも知って頂きたいテーマである、「揺さぶられっこ症候群」(Shaken Baby Syndromeの頭文字をとって、「SBS」と略されることもあります。)の問題について紹介します。

まず、揺さぶられっこ症候群とは、未だ首の座っていない乳幼児が強く揺さぶられることで脳が損傷することによって起こる諸症状(急性硬膜下血腫等)のことを言います。

近頃、家庭内で乳幼児に急性硬膜下血腫が生じたというケースにおいて、「保護者が子どもを揺さぶって虐待した疑い」とされて、傷害罪や殺人未遂罪などで逮捕・起訴され、有罪判決を言い渡されるという報道が散見されます。

 

 

今、この「揺さぶられっこ症候群」を巡ってどのような問題が発生しているのか。

「子どもは守られなければならない。」「児童虐待はあってはならない。」このことに疑いの余地はありません。

ところが、現在の日本では、『乳幼児に、硬膜下血腫、脳浮腫、網膜出血の三徴候が認められた場合、その症状は、故意の揺さぶり=虐待によって生じたものである。』という理論(以下「SBS理論」といいます。)に基づいた逮捕、起訴、児童福祉法に基づく親子分離といった運用がされてしまっている状況です。

 

 

果たして本当にそうなのか?上記の三徴候は、家庭内におけるソファーなどの低い場所から落下する日常の事故でも生じるのではないか?

現に、アメリカやイギリスといった海外諸国では、SBS理論の理論的根拠等を疑問視する見方が強まっており、スウェーデンでは、2014 年に最高裁判決で、2016 年に医療技術諮問委員会(SBU)が三徴候(硬膜下血腫、網膜出血、脳障害)から暴力的な揺さぶりがあったことを診断するという方法には科学的エビデンスがないと判断されました。

しかし、未だ日本ではSBS理論に基づいた逮捕、起訴、児童福祉法に基づく親子分離といった運用が続いています。

このような背景のもと、SBS理論を再検証すべきであるとして、法学研究者や弁護士を中心として検証プロジェクトチーム(SBS検証プロジェクト)が発足しました。私もその一員として研鑽を積んでいます。(https://shakenbaby-review.com/index.html

上記プロジェクトのホームページにも記載があるように、もちろん乳児虐待は決して許されないことです。しかし、無実の養育者が、不確実な理論で誤って虐待者とされ、刑事事件の被疑者、被告人とされること、また同理論に基づいて児童福祉法による親子分離がされることも絶対に許されません。そのような事態は、誤って疑われた養育者だけでなく、子どもたちにも大きな不幸を及ぼしかねません。このことは、すべての人の共通の思いであると考えています。

我々は、この共通の思いの下、同じ方向を向いて、子どもを守るためのよりよい制度を構築していかなければなりません。そのための第一歩として、この問題をできるだけ多くの人に知って頂きたいと考えています。

 

(文責:三村雅一)

2018年10月05日 10:36|カテゴリー:

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