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国際法務の部屋

森理俊弁護士が、深圳市律師協会で開催された友好協定記念共催セミナーに登壇しました。

2018年11月30日に、深圳市律師協会で開催された、大阪弁護士会及び深圳市律師協会友好協定記念共催セミナー(日本弁理士会近畿支部共催)に登壇しました。

大阪弁護士会は、深圳市律師協会との間で、友好協定を締結しています。当職は、国際委員会の副委員長として、この記念セミナーの開催の企画を立案・企画をし、パネルディスカッションにも参加させていただきました。

全体のテーマは、「日中間の貿易及び投資に関する法的問題について」(关于中日之间贸易和投资的法律问题/Legal Matters about Trade and Investment between China and Japan)であり、その中でパネルディスカッション「日中間の貿易及び投資における近時の話題」(中日贸易与投资热点问题/”Hot Topics about Trade and Investment between China and Japan”)にて、パネリストとして、登壇しました。

私からは、「日本企業は、いま深圳をどのように見ているのか?」「日本企業が必要とする中国での法律事務」「中国企業から日本に対する投資への最近の動き」という点を中心に、いま、深圳の投資家や企業家とビジネスをする上でのホットトピックを取り上げました。

 

ご存じの方も多いと思いますが、深圳市は、中国、いや世界のなかでも、急速に成長を遂げている都市であり、GDPでは、いまや広州市を抜いて、中国第3の都市に躍り出ています。また、製造業系のベンチャーの世界では、「シリコンバレーで1ヶ月かかることが、深圳では1週間でできる」と言われるほどに、スピード感のあるスタートアップが沢山生まれ、取引をしています。

深圳市内には、古くからの商業地区で香港と地理的に隣接する羅湖区、深圳の秋葉原(しかし、いまや規模は秋葉原の30倍とも言われています。)とも呼ばれる華強北のある福田区、BAT(Baidu, Alibaba, Tencent)等のIT系ビジネス企業が集まる南山区があり、さらに、その南山区の西部にある前海地区では、香港と一体化した一大国際金融都市を目指して都市開発が進められています。郊外には、ファーウェイやBYDの拠点もあり、香港との関係を含めて、中国や世界の経済に大きな影響力を有しつつある場所であることは間違いありません。

 

また、大気汚染の原因となる工場も郊外に移動する政策が採られており、公共のバスやタクシーは電気自動車がほとんどで、花が綺麗に植えられた場所も多く、空気も街並みも大変綺麗です。

 

当事務所では、今年、深圳市南山区にコンサルティング会社を設立し、深圳と貿易や投資、共同開発で取引のある日中の事業者にコンサルティング・サービス(法律事務は行っておりません。)を提供できる体制を構築しました。これは、当職の把握している限り、日本の法律事務所で、最初だと思います。

この深圳と日本の関係において、日本の大企業からスタートアップまで、様々な規模の事業体が、これまでにない形の業務提携をしようとする動きがあります。また、深圳の事業者や投資家から、日本のスタートアップへの支援や投資といった動きもあり、目が離せません。私達が有している知見から、紐解いて見える深圳と日本の間の投資や貿易に関する現状を、法務的な観点から議論をさせていただきました。幸いにも、いろいろな質問をいただき、有意義な議論ができたと確信しております。

ところで、今回のセミナー後には、深圳福田駅から香港の九龍西駅への新幹線にも乗車しました。乗車予定時刻に十分間に合うように駅で待っていたにもかかわらず、乗車予定の新幹線が発車予定時刻より5分くらい早く扉がしまり、プラットフォームに取り残されるといったアクシデントがありました。ただ、駅員さんに柔軟に対応してもらって、次の電車に乗車させてもらえましたし、車内は快適で、無事に香港に到着することができました。

 

香港、深圳、広州、マカオのある「珠江デルタ」は、経済的にも、政治的にも、これからより重要性の増す地域であることは間違いありません。そして、巨龍たる中国が躍動する中心となって、日本にも大いに影響を与えることも間違いないでしょう。

 

アクシス国際法律事務所では、これからも深圳を中心とした、中国✕ベンチャーの動きに、注目し続けたいと考えています。

 

(文責:森 理俊)

 

2018年12月26日 11:25|カテゴリー:

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中国会社法改正

中国会社法の改正案が、2018年10月26日に公布及び施行されました。今回のブログでは、同改正のうち、主要な内容をご紹介します。

 

前提として、改正前の中国会社法143条では、原則として、会社による自己株式の取得が禁止されており、例外的に許容される場合として、下記4つのケースを規定していました。

  • 会社の登録資本を減少する場合
  • 自社株式を保有するその他の会社と合併する場合
  • 株式を褒賞として自社の従業員に給付する場合
  • 株主が株主総会で行った会社合併又は分割の決議に異議を提出し、買取請求権を行使した場合

 

今回の改正では、上記を修正及び補充しました。改正後に、自己株式が許容されるケースは下記の6つとなります。

  • 会社の登録資本を減少する場合
  • 自社株式を保有するその他の会社と合併する場合
  • 従業員持株制度又はストック・インセンティブのために株式を使用する場合
  • 株主総会の会社合併、分割の決議に異議を提出した株主が会社に対して買取請求権を行使した場合
  • 上場会社が発行した株式転換社債を転換するために株式を使用する場合
  • 上場会社が会社の価値又は株主の権利、利益を保護するために必要な場合

 

上記のうち、特に(6)については、これに該当する具体的な内容が一義的には読み取れませんから、どこまでが適用対象となるのかについては今後の裁判例や司法解釈等に委ねられる面も否定できないでしょう。また、併せて、一定の場合に株主総会の決議を不要とするなど、自己株式の取得手続も簡略化されています。

 

(文責:藤井宣行)

2018年12月25日 10:42|カテゴリー:

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海外公務員贈賄と司法取引について

海外の公務員に、日本企業の担当者が贈賄を行った場合、当該国における贈賄罪等により処罰されるのはもとより、日本の不正競争防止法によっても処罰の対象となります。

日本の不正競争防止法18条1項は、「何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。」と規定しており、法18条1項に違反した者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処せられ、又はこれが併科されます(法21条2項7号)。また、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、法18条1項に違反した場合は、法人に対しても3億円以下の罰金刑が科されます(法22条1項3号)。

このように、日本企業の担当者等が、海外の公務員等に対して贈賄を行った場合は、当該担当者に加えて、法人も処罰の対象となります(個人及び法人の両方が処罰されることから、「両罰規定」と表現されることもあります)。

この両罰規定が初めて適用されたのは、ベトナム公務員に対する不正利益供与事案(東京地裁平成21年1月29日判例時報2046号159頁)でした。この事案では、東京都内に本店を置く日本法人の従業員等であった4名が、ベトナムホーチミン市における幹線道路建設事業に関するコンサルタント業務を受注した謝礼等の趣旨で、同事業担当幹部に対して2度にわたり、それぞれ約60万米ドル、約20万米ドルの利益を供与した行為が不正競争防止法違反にあたるとして、従業員等4名に、それぞれ懲役2年6月、懲役2年、懲役1年6月、懲役1年8月(それぞれ執行猶予3年)、日本法人に罰金 7、000万円が科されました。

このように、法人に対しても両罰規定による罰金刑が科せられることから、担当者が海外公務員等に贈賄を行った情報が内部通報等でもたらされた場合の法人の対応としては、弁護士等の第三者に依頼して調査を行い、担当者による海外公務員の贈賄の事実が確認された場合は、検察庁に情報を提供して日本版司法取引の適用を検討することが考えられます。但し、法人が、この制度を実際に活用するかどうかについては、他のより良い方法がないか、将来におけるデメリットの影響、十分に証拠が収集されているか等を、慎重に総合的に考慮した方がよいでしょう。

ここで、日本版司法取引制度とは、正式には「証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度」といわれ、2018年6月1日より施行されている、検察官と被疑者・被告人およびその弁護人が協議し、被疑者・被告人が「他人」の刑事事件の捜査・公判に協力するのと引換えに、自分の事件を不起訴または軽い求刑にしてもらうことなどを合意するという制度です。

実際に、この日本版司法取引制度が用いられた初めての事案は、タイの発電所事業を巡る現地公務員への贈賄事件であり、タイの現地公務員への贈賄を了承した元幹部3人を不正競争防止法違反(海外公務員への贈賄)の罪で在宅起訴し、法人は不起訴とされたと報道されています。

ただ、不正贈賄事例で重要なことは、法人の処罰を免れることではなく、当該法人として、再発防止のための対策(組織体制の整備、社内における教育活動の実施、監査体制の強化、贈賄防止のための基本方針や社内規定の策定や公表など)を迅速かつ確実に講じるということであると考えます。

以上

(文責:河野 雄介)

2018年12月11日 21:07|カテゴリー:

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