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国際法務の部屋

書類の公証・認証

今回は、中国国内で訴訟当事者となった場合における裁判所への書類提出に関し、公証・認証手続について、紹介します。

 

 

外国企業が中国の裁判所(人民法院)において訴訟提起、または、応訴する場合は、中国の弁護士に委任しなければなりません(中国民事訴訟法263条)。中国人弁護士に委任するには、外国企業から中国人弁護士への委任状が必要となりますが、原則として(例外については、ここでは割愛します。)、当該委任状について、当該外国企業の所在国の公証機関の証明を得て、かつ、当該国に駐在する中国大使館または領事館の認証を得る必要があります(同法264条)。

 

日本企業は、上記の外国企業に該当しますので、中国人弁護士に対する委任状について、公証機関の証明を得て、かつ、当該国に駐在する中国大使館または領事館の認証を得る必要があります。

 

 

「公証機関の証明」については、委任状は私文書(公的機関との対比の意味での私人である企業の意思を表現した文書)ですから、日本国においては、公証役場での認証を行うことになります。なお、日本の公証人法1条において、公証人の権限として、公正証書の作成、私文書の認証、及び、定款の認証等が規定されています。一般に、「文書の公証・認証」といった表現が用いられることがありますが、厳密には、公証人が行う行為(≒公証)の中に、認証という行為が含まれていると整理することができます。

 

この手続により、公証人に、私人が作成した文書(ここでは委任状)の署名押印等が、本人のものに間違いないことを証明してもらいます。法的な表現では、文書の真正の証明といい、文書の記載内容ではなく、「本人が作成した(=偽造ではない)」ことを証明してもらうわけです。

英語でも、一般に、公証人による認証については、Notarizationという表現を用いることになりますが、Legalizationという表現を用いられていることもあり、このあたりは、厳密に表現が使い分けられているわけではないようですので、実際に必要とされている行為の内容を確認する必要があるでしょう。

 

 

次に、公証人は、(地方)法務局に所属していますので(公証人法10条1項)、公証役場で認証を受けた書類(私署証書)に対し、公証人の所属する(地方)法務局長が、認証の付与が在職中の公証人によりその権限に基づいてされたものであり、かつ、その押印が真実のものである旨の証明を付与します。これを公証人押印証明といいます。

これにより、日本の公的機関が、文書(ここでは委任状)の成立の真正を証明したことになります。

 

 

その後、日本に駐在する中国大使館または領事館の認証を得る前提として、外務省による公印確認を行います。これは、外務省が、文書(ここでは委任状)に押印されている公印について証明を行うものです。委任状の例でいえば、日本の外務省が、中国に対し、委任状に押印されている法務局(長)の印影が真正であることを証明してくれるものです。

なお、ここまでの手続については、要請をすることにより、東京や大阪等の公証役場では、公証役場のみで完結することができます(ワンストップサービス)。

 

 

これを受けて、中国大使館または領事館において認証を行います。これにより、当該文書が日本国内において正式な手続を経て真正が証明されたものであることを、中国大使館または領事館が証明してくれるので、中国において、当該文書について、真正なものであるとして扱ってもらえることになります。

なお、文書の提出先の国が、「外国公文書の認証を不要とする条約(1961年10月5日のハーグ条約)」に加盟している場合には、日本が同条約に加盟していることから、この手続を省略できる場合があります(アポスティーユ)。

(文責:藤井宣行)

2019年11月25日 08:47|カテゴリー:

中国法務

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公証、認証

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インドネシア法務

1 はじめに

SDGsシリーズを継続する予定でしたが、一旦お休みをさせて頂き、今回はインドネシアについて紹介します。

当事務所は、昨年の5月28日に、Kelvin Chia Partnershipと業務提携を行いました。(https://axis-international.jp/common/img/overseas_network/partnership.pdf

(Kelvin Chia Partnership:https://www.kcpartnership.com/

その後、昨年の秋には、Kelvin Chia Partnershipの弁護士と共に日本で、ASEANにおける現地法人のコンプライアンスに関するセミナーを共同で開催しました。

そういった関係もあり、この度、Kelvin Chia Partnershipと特別な協力関係にあるインドネシアの首都ジャカルタにあるMartia & Anggraini Partnershipにおいて研修をさせて頂きました。

今回の研修は約2週間という短い期間でしたが、同事務所のインドネシア人弁護士と、日本とインドネシアの法制度の違いについてディスカッションをしたり、クライアントとのミーティングに参加させて頂いたり、一緒に現地の日本企業やJETRO、インドネシア商工会議所(KADIN)などを訪問し、現地の日本企業のリーガル面でのニーズ調査を行うなど、非常に密度の濃い研修を行うことができました。

そこで、SDGsシリーズと並行して、インドネシアの法務シリーズもスタートさせたいと考えています。

今回は、インドネシアの概要及びインドネシア経済と日本企業について紹介します。

 

2 インドネシアの基本情報について

日本人にとっては「インドネシア」と聞くと、「バリ島」が真っ先に思い浮かぶのではないかと思います。インドネシアは、約1万4000の島からなる国であり、その面積は191万3580㎢と日本の約5倍の大きさを有しています。私が滞在したジャカルタは、ジャワ島に位置します。

また、人口は約2億6000万人と、中国、インド、アメリカに次ぐ世界で第4番目の数であり、その平均年齢は29歳と若い世代の人口比率が非常に高い国です。

インドネシアの首都ジャカルタにはASEAN本部が設置されており、ASEANの中核として世界に存在感を示している国であると言われています。

 

3 経済について(JETROの情報に基づく)

GDPの成長率は、2014年以降、約5%の成長をキープしています。

2018年の海外からの直接投資受入額は2万9307億ドルで、主な国として、シンガポールから9193億ドル、日本から4953億ドル、中国から2376億ドル、香港から2011億ドル、マレーシアから1775億ドルとなっています。

日本からの投資は、自動車やバイクから、電気、ガス、水道といったインフラ設備や不動産開発にシフトしています。

2024年には、名目GDP額において、インドネシアは5.4兆ドルになると予測されており、これは中国、アメリカ、インド、日本について世界で5番目であるとされています。

また、人口は2030年には3億人に達すると言われています。

ちょうど私がジャカルタに滞在している間に、ジョコウィ大統領の就任式があったのですが、ジョコウィ氏は、建国100周年にあたる2045年には、GDPが7兆ドルに達し、経済で世界5位に入る、貧困率も0%とする、という目標を掲げていました。

 

4 日本との関係

インドネシアに対して投資をしている国として日本が世界で2番目の国となっているように、日本とインドネシアは密接な関係にあると言えます。

まず、インドネシアは親日国として知られています。インドネシア国内で販売される自動車の98%,バイクの99%が日本製と圧倒的なシェアを誇っており、また今年の4月から営業を開始したインドネシア初の地下鉄を含む都市高速鉄道システム(MRT)も日本の全面支援によって完成しました。日本を訪れるインドネシア観光客も急増しており、日本語の学習者数も、現在約75.5万人と世界第2位(2015年、国際交流基金)となっています。ジャカルタのショッピングモールには、我々日本人にも馴染みのある、吉野家、牛角、一風堂、丸亀製麺などなどの日本のレストランも多数あり、日本の食事もインドネシアの方々には好評のようでした。

また、2019年現在、JETROが把握しているインドネシアに進出している日本企業は1574社と言われています。もっとも、実際は2000社以上が進出していると言われており、非常に多くの日本企業がインドネシアに進出しています。

 

5 インドネシアのベンチャー企業

このように、インドネシアという国は、若い力に支えられ、経済的にも成長中の新興経済大国であることが分かります。私は初めてジャカルタを訪れ、高層ビルが立ち並ぶ風景に、人々のパワーに圧倒されました。

また、インドネシアの特徴として、GO-JEK(ゴジェック)をはじめとするベンチャー企業も非常に活発であるという点が挙げられます。

アジアでスタートアップエコシステムが最も活況な国はインドネシアだという記事も見受けられるほどで、Google等の予測では、2025年までに同国のデジタル経済は2018年の約3倍に当たる1000億ドル(約10兆9000億円)規模に達するとされており、インドネシアが将来的に東南アジア最大のデジタル経済市場になるとともに、より多くのインドネシア新興企業が世界のIT業界に参入すると言われています。

私がジャカルタを訪れた際に銀行の方や弁護士、若い起業家等から話を聞いていると、インドネシアで最も成長している分野はフィンテック、特にP2Pレンディングの分野の成長が著しいという話をよく耳にしました。この点については次回以降も紹介したいと思います。

 

今回、僅か2週間でしたが、ジャカルタで研修を行ったことで大きな刺激を受けると共に、この国の可能性を強く感じました。提携先であるKelvin Chia PartnershipやMartia & Anggraini Partnershipの現地弁護士とも協力し、日本からインドネシアに進出を考える企業、既にインドネシアで事業を行っている日本企業、さらにインドネシアから日本に対して進出を考える企業をリーガル面でサポートする体制(インドネシアでの現地法人の設立、英文契約書、インドネシア語契約書のレビュー、労務問題、現地子会社のコンプライアンス体制の強化、各種規制への対応等)を強化したいと考えています。特に、ベンチャー法務をドメインとする当事務所は、インドネシアへの進出を考えるベンチャー企業のインドネシア進出を積極的にサポート致します。インドネシアにビジネスチャンスがあるのか、実際に現地の起業家から情報を得たい、という要望にも対応させて頂きます。

なお、私は、昨日よりインドネシア語のレッスンを受け始めました。来年ジャカルタを訪問する際には、少なくとも自己紹介ぐらいはインドネシア語でできるようになる予定です。

 

(文責:三村 雅一)

2019年11月20日 11:27|カテゴリー:

ASEAN法務

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深センにおける中国の特色ある社会主義先行モデル区の建設支持に関する意見について

中国政府は、2015年5月に、中国製造2025として、製造業発展のためのロードマップを発表しています。このロードマップでは、2049年までにやるべきことを3段階で策定しています。第1段階としては、2025年までに世界の製造強国入りを果たすとされています。次に、第2段階としては、2035年までに中国の製造業レベルを、世界の製造強国の中位に位置させるとされています。そして第3段階として、2049年には世界の製造強国のトップになるとされています。そして、このロードマップ実現に向けた具体的プロジェクトの一つとして、イノベーションセンターを2025年までに40拠点設立するというものが挙げられています。

このような流れの中で、中国共産党と国務院は、2019年8月18日に「深センにおける中国の特色ある社会主義先行モデル区の建設支持に関する意見」(以下、「本意見」といいます)を発表しました。

本意見では、深センの戦略的な位置づけとしてとして、次の点を挙げています。

質の高い発展:イノベーション主導の開発戦略を実施し、近代的な経済システムを構築し、質の高い開発のための制度的メカニズムを構築するための最前線とする

法治都市のモデル:法の支配のレベルを包括的に改善し、法の支配で政府と市場の境界を標準化し、安定した、公正で、透明性があり、予測可能な国際的にみても一流の法的ビジネス環境を作り出す

文明都市の都市文明のモデル:社会主義の中核的価値を実践し、高レベルの公共文化サービスシステムと現代文化産業システムを構築し、新しい人々を教育し、文化を発展させる

人々の幸福な生活の指標となる:高品質でバランスのとれた公共サービスシステムを構築し、包括的で持続可能な社会保障システムを構築して、教育体制、医療、介護、住居等の体制を充実させる

持続可能な発展の先駆者となる:安全で効率的な生産空間、快適で住みやすい生活空間を作り出し、持続可能な発展のための国連2030アジェンダの実施のために中国としての経験を提供する

そして、本意見では、深センの今後の発展目標として、次のようなロードマップが掲げられています。

  • 2025年までに、深センの経済力と開発品質を世界トップランクにし、研究開発投資と産業革新能力についても世界クラスとし、公共サービスレベルと生態環境の品質を国際先進レベルとし、近代的な国際的イノベーション都市の建設を達成する
  • 2035年までに、深センの質の高い発展が国家モデルとなり、深センの包括的な経済競争力が世界をリードするようになり、世界的な影響力を持つ創造的で創造的なイノベーション都市となる
  • 今世紀半ばまでに、深センは競争力、革新性、影響力を持つ世界をリードするようなモデル都市となる

このように、中国政府は、中国の都市の中でも、深センをイノベーション都市の先駆けとなるべく明確なロードマップを掲げています。このような流れの中で、深センを中心とする地域へ進出する日本企業や、日本を投資対象とする深圳在住の投資家等、日本と深圳の間の様々なビジネス上の連携が増えるものと思われます。当事務所としても、よりサポート体制を充実させ、深圳での情報をいち早くお届けできる体制を構築すべく、海外拠点としてアクシスコンサルティング深圳(亚科喜咨询(深圳)有限公司)を2018年に設立しておりますので、深圳関連のご相談につきましてもお気兼ねなくご相談いただけますと幸いです。

 

(文責:河野雄介)

2019年11月11日 18:53|カテゴリー:

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