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ベンチャー法務の部屋

ベンチャー企業のファイナンス方法の選択


資金調達(ファイナンス)方法の選択は、会社の一生を左右する。

会社の投資資金や運転資金を、誰から、どのように調達するかは、経営者が決めるべき、重要な経営判断事項である。ファイナンスによって、会社は、生きもするし、死にもするといっても過言ではない。

会社が誰からも資金を調達することなく、利益を上げ、その利益で、次の投資をしたり、運転資金の拡大に対応できるのであれば、理想である。

しかし、そのような会社は、皆無といって、差し支えないであろう。少なくとも、設立時には、発起人から資金を得るし、その後も、誰からも資金を受け入れない会社は多くはない。逆に、ファイナンスをしないことが会社にとってチャンスを失う場合もあり、成長スピードが要求される業界ではファイナンスしないことが致命傷となるケースさえある。したがって、会社が誰かから資金を調達することは、普通の事業会社であれば、経験することである。

ファイナンスは、大きく分けると2種類ある。借入と増資である。この2つは、根本的に異なるので、その特質に応じて、上手く利用する必要がある。


1.借入

法的にいえば、金銭消費貸借契約ということになる。上場企業ともなれば、社債の発行という形をとることもあるが、調達サイドにとっての性格は大きくは変わらない。

主なプレーヤー(資金供給者)は、銀行である。

MBAのファイナンス講座的には、(1)期待収益率が低いとか、(2)タックスシールドがあるとか、ということになるだろうが、実務的に一番大きな特徴は、「返さなければならない」ということだ。さらに、附随した大きな特徴は、「社長の連帯保証を求められることがほとんど」ということである。よく、「利息だけ支払って、借り換えをしていけばよい」という話があるが、相手(銀行)が借り換えに応じてくれず、支払期日までに支払うことができなければ、その時点で、破産+社長の個人破産である。いわゆる貸し渋りが起きてしまえば、研究開発がどれだけ上手くいっていても、会社は終わりということである。

内閣府が作成した「日本の大学発ベンチャーが悲惨な失敗をしないためのポイント ハイテク・ベンチャー不毛の地での賢い立振舞について ~モジュール化時代の日本凋落の真因 その2~」 (PDFファイル)という優れた資料では、この点について、明快に指摘している。

・先が「読める」世界で有効。フォロワー型経済では的確に機能する。財務分析、他社比較ができる。
・リスクは禁忌。失敗を金利ではカバーできず、日本の場合は、担保や個人保証(生命保険を含む)でカバーし、実績重視のため口座開設さえ数年を要する。
・ベンチャーの失敗時には再起不能となる。財産没収、一家離散という経済的死のみならず、物理的死も。
・不確実な事象、例えば、開発の遅れ、交渉の遅れ、入金の遅れ、補助金の見込み違い、突然の解約、社内紛争、役員離脱、知財訴訟などが確率pで発生する創業ベンチャーは確定返済期限のある銀行融資に頼ってはいけない(確率pで、会社と人生が破綻する)。国際水準のハイテク・ベンチャーで、銀行融資で立ち上げたものは、日本を除き皆無。


政府作成の文書とは思えないような、やや過激な表現も散見されるが、決して大袈裟ではない。

「返さなければならない」という性質をもつ借入資金は、開発等の消えてなくなることには使えない。先の読むことが比較的容易なビジネスであれば、借入は優れたファイナンス手法ではある。例えば、これまで100店舗展開してきて、さらに1店舗出すという飲食チェーン店や量販店を想定してもらえば、よい。しかし、多くのベンチャー企業では、先を読むことができないケースが多い。その場合に、借入に手を出すことは、最終的に会社の首を絞めることがある。

時に、CB(新株予約権付社債)であれば、よいということをいう経営者もいるが、CBといえども、基本的には借入であるので、上記と同じリスクを抱えていることを認識しなければならない。(実務上、ベンチャー企業のCB発行の場面では、個人保証は免除されるケースはある。)CBの場合は、上手くいけば、最終的に返さなくてよくなるかもしれないという利点があるので、借入よりはベンチャー企業向きであるが、当面、すなわち株式に転換されるまでの期間において、会社が抱えるリスクとしては、借入と何も変わらない。


2.増資

増資とは直接的には会計上の資本金の増加であるが、実質的には株式の発行による資金調達を意味する。新株発行ともいう。

非上場のベンチャー企業における主なプレーヤー(資金供給者)は、ベンチャー・キャピタル(VC)とエンジェル(個人投資家)である。

会社法的には、「第三者割当」という方法を採ることがほとんどである。

増資による資金調達の最大のメリットは、「返さなくてよい」ということに尽きる。ベンチャー企業にとって、このメリットは計り知れないくらい大きい。したがって、原則として、ベンチャー企業は、増資(新株発行)により資金調達するのが基本である。

先程の内閣府の「日本の大学発ベンチャーが悲惨な失敗をしないためのポイント ハイテク・ベンチャー不毛の地での賢い立振舞について ~モジュール化時代の日本凋落の真因 その2~」 (PDFファイル)では、

・読めない世界に適応する。技術トレンドを熟知している、先端技術・新市場・チームの潜在価値を読めるなど「技術の目利き」が必須。自らの経験とネットワークを駆使した「ハンズオン」によるリスク低減・価値創造の能力も重要。
・リスクは積極的に取る(変化を先読みして、現在価値と自分が投資しサポートした場合の将来価値の差をキャピタルゲインとして獲得する)。ポートフォリオ投資を活用し、打率3割で一流(=数本の大きなキャピタルゲインによって7割の失敗を許容する)。
・起業家側のリスクは少なく、失敗しても再起可能。家族扶養権は、連邦破産法第522条や州法が保証してくれる。起業家が失うものは少ない。(日本には、国際水準のキャピタリストは少数である。証券・金融系列の日本のVC会社では、個人保証をとり、買取条項を入れるところも多く、本来のequity financeから大きく逸脱していることに留意が必要。)


とある。

日本では、家族扶養権について、破産法が保証してくれるなんてことはないが、基本は同じである。「個人保証」「買取条項」については、誤解していただきたくないのは、日本であっても、単にお金が返せないというだけでは、まずこれらの条項は発動しないということである。通常、買取条項の発動は、投資契約違反、表明保証違反等の場合に限定されている。VCファンドの満期到来が買取条項に入っているケースがあり、この点については議論があるが、投資家(VC)サイドとしては満期前に現金化しなければならないため、やむを得ない部分もある。社長個人も買取義務を負わさせられるのは、会社に買取義務を負わせたところで、会社法上の自己株式取得規制の壁(財源規制等)に阻まれ実効性がないためである。契約違反や表明保証違反等であれば、社長が買取義務を負うのは不当ではないという価値判断が背景にある。

ベンチャー企業は、増資(新株発行)により資金調達するのが基本といっても、調達を試みる会社は、なぜ「返さなくてよい」お金を出してくれるのかについては、理解しておかなければならない。株式の引き受け手は、なぜこのような高いリスクをとるのか。それは、リターンが大きいからに他ならない。期待収益率が高い資金と言い換えることも可能であろう。貸付によって得られる利益は最大限利息制限法の最高限度額(年15%)である。帰ってこないお金を提供するのに、このようなリターンしか得られないのでは割に合わない。株式を引き受けることにより、将来、その株を売って大きく利益を得られると考えるので、ベンチャー・キャピタルやエンジェルは、資金を提供するのである。したがって、増資(新株発行)によって資金調達をしたベンチャー企業は、最終的に上場かM&Aによって、株主が株式を売却できるようにしなければならない。上場すれば、株価が数倍になることも珍しくはない。

逆にいえば、最終的に上場かM&Aによって、株主が利益を得られるようなプランを事前に描けなければ、ベンチャー企業は、ベンチャー・キャピタルやエンジェルから資金を得ることができない。

以上がベンチャー企業のファイナンス方法の選択の基本である。

ファイナンス方法は詳細な論点はいろいろとあるが、ここに書いた基本は変わらないので、常に念頭におかれて検討していただくのが良いと思う。

2010年09月10日 08:00|カテゴリー:ベンチャー・ファイナンス||コメントはまだありません

中之島・北浜界隈ランチ事情

私の事務所は、中之島から栴檀木橋(せんだんのきばし)という橋を渡ったところにあります。

この界隈は、証券会社が多く、オフィス街なのですが、まだまだ良いランチ場所を探し切れていません。

その少ない経験の中で、私のお薦めのランチをお伝えしたいと思います。

■ レストラン中之島倶楽部

中之島にある中央公会堂の地下にあるレストランです。

天井が高く、レトロな雰囲気がお薦めです。

高そうに見えますが、ランチ限定の当店名物オムライス(スープ付)は、680円!

大盛りにしても、780円です。

■ 但馬屋 蔓萬 北浜店

ランチに、肉を食べたくなったらココ。

個室もあるので、落ち着いた雰囲気で、ゆっくり話ながら食べるのもOK。

良く食べるのが、ステーキ丼(1000円也)。ヒレ肉のステーキ丼も確か1400円で、good!

■ 和厨房 佐海屋

北浜界隈では、和の定食系の店は、決して少ないわけではないのです。しかも、ここがとびきり上手いというわけでもない。

なぜ、この店を選んだかといいますと、CP+メニューの豊富さです。

700円~800円前後で、それなりに満足にいく定食が食べられるという安定感が良いです。

ただ、この安定感に魅かれて、御昼時には、かなり並びますので、要注意。早めに行くとよいでしょう。回転も速いので、多少の列であれば、並んでしまいましょう(笑)。
他にも、きっと良いランチがあると思うのですが、探し当てられてないので、もしご存知であれば、教えて下さい!

2010年09月09日 12:00|カテゴリー:その他||コメントはまだありません

13歳で起業、15歳で大学入学、20歳で100万ドル以上を調達した’神童’女性ファウンダ


アメリカの話です。

先週、9月2日のTech Crunchの記事は、Jessica Mah(20歳)という女性が、彼女の金融サービスサイトInDineroのためのシード資金の調達を1週間後に完了することを報じている。

この記事によると、

Mahは、最初のスタートアップを立ち上げたのが13歳のときである。そして15歳で、カ大バークレイ校のコンピュータ科学科に入学、在学中にinternshipIN.comを立ち上げた。20歳で100万ドル以上を調達した彼女には、これからまだまだやりたいことが、たくさんあるようだ。

このラウンドに参加したと確認されている投資家は、500 StartUpsのDave McClure、MicrosoftのFritz Lanman、YouTubeのJawed Karimである(SV AngelのようなシリコンバレーのVIPたちのための席があと3つある)。(引用終わり)

記事の原文は、こちら。

20 Year Old Founder Jessica Mah Gets $1 Million Put Into Banking Startup InDinero

20歳の’神童’女性ファウンダJessica Mahが小企業財務サイトInDineroに$1Mを調達

彼女のインタビューの動画も見れます。聡明で、強いリーガーシップを持っていそうな雰囲気の女性です。

日本でも、どんどんと若年起業家が現れるといいですね。

企業が従業員に提出してもらうべき誓約書の内容(その3)

企業が従業員に提出してもらうべき誓約書について、前々回(その1)、前回(その2)の続きです。

3 競業禁止

従業員との間の競業禁止規定には、大きな法律上の制約があります。

それは、「職業選択の自由」です。

憲法第22条第1項の「職業選択の自由」です。小学校か中学校でも社会か公民の時間に勉強するあの「職業選択の自由」です。企業法務で、憲法が出てくることは極めて少ないですが、ここでは例外です。

従業員には職業選択の自由があるために、競業禁止規定が無効になるかもしれないのです。

ただ、職業選択の自由があるといっても、従業員は、自ら誓約しているのですから、私的自治の観点では、それを積極的に放棄したとも解する余地があります。

したがって、「職業選択の自由」と「私的自治(=契約で自ら義務を負うことを選択した)」という2つの法律上の要請が、競業禁止規定をめぐってせめぎ合うことになります。

その結果、職業選択の自由を不当(必要以上)に誓約するような競業禁止規定は、無効になる可能性が高いといえます。

では、実務的には、どうすればよいのでしょうか。

結論からいえば、「常識的な範囲で、且つビジネスに支障が生じることを防ぐために最低限と思われる内容で、競業禁止規定を定めておく」ということになります。

具体的には、年数、地域、事業内容で、範囲を絞って、競業禁止を規定すると、無効にはなりにくいでしょう。

規定案としては、

私は、貴社を退職後●年間は、●地方において、●、●又はこれらに類する事業を行う事業を開始したり、役員や従業員やアドバイザーになる等、携わったりしません。

等という内容が考えられます。

年数について、よく質問されますが、これという回答は難しいです。事業内容や事業の展開の速さ等にもよります。ただ、「3年」とされているケースが割と多いような気がします。

地域も、元の会社の事業範囲との比較で決めることになります。広ければ広いほど、無効になる可能性は高くなりますが、地域の制約が意味のない業界(IT等)では、地域を制限しないことも考えられます。

事業内容は、必ず明記しなければなりません。ある程度、曖昧な表現になってもやむを得ないとは思いますが、それなりに特定できる表現、例えば、「○○を販売する事業」等としておくことが考えられます。

【関連法令】

日本国憲法

第22条第1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

2010年09月08日 09:00|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス,企業法務||コメントはまだありません

企業が従業員に提出してもらうべき誓約書の内容(その2)

前回、「企業が従業員に提出してもらうべき誓約書の内容」の続きです。

2 知的財産権(特に、特許)の帰属

知的財産権は、主に以下の2つが大きなポイントでしょう。

・ 知的財産権の会社への譲渡

・ 出願しないことの誓約

ここでは、特許権が要注意です。

特許法第35条第3項第4項では、「職務発明」については、契約その他で承継させることを決めた場合、合理的な相当な対価を支払うことが定められています。また、同じ特許法第35条第2項では、「職務発明」以外の発明について、会社に帰属させるような内容の契約は、無効としています。

したがって、職務発明の範囲を法律に照らし合わせて明確にしたうえで、特許等を受ける権利を譲渡することを規定しておく必要があります。この時、会社の特許等の出願について協力する義務も一緒に記載しておけば、より良いでしょう。相当な対価については、別途、知的財産管理規程等で対応するのが通常かと思います。

(続く)

【関連法令】

特許法

(職務発明)
第三十五条  使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」という。)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つた行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権について通常実施権を有する。
2  従業者等がした発明については、その発明が職務発明である場合を除き、あらかじめ使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ又は使用者等のため仮専用実施権若しくは専用実施権を設定することを定めた契約、勤務規則その他の定めの条項は、無効とする。
3  従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、若しくは使用者等のため専用実施権を設定したとき、又は契約、勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等のため仮専用実施権を設定した場合において、第三十四条の二第二項の規定により専用実施権が設定されたものとみなされたときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する。
4  契約、勤務規則その他の定めにおいて前項の対価について定める場合には、対価を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより対価を支払うことが不合理と認められるものであつてはならない。
5  前項の対価についての定めがない場合又はその定めたところにより対価を支払うことが同項の規定により不合理と認められる場合には、第三項の対価の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければならない。

2010年09月07日 09:00|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス,企業法務||コメントはまだありません

第三者委員会に必要な弁護士の力

本日(9月6日)の日本経済新聞 朝刊では、「日弁連がガイドライン作り 国広正・弁護士に聞く」という記事があった。

要約すると、

“世の中には、いいかげんな第三者委員会が沢山ある”

“すべての利害関係者のため(でなければ、第三者委員会を名乗るな!)”

“必要な弁護士の力とは、「事実探求力」と「経営陣を説き伏せる力」だ”

ということだった。

また、使えるテクニックとして、第三者委員会を就任する際の委任契約に、日弁連のガイドラインに準拠して調査する旨を規定しておくことが提案されていた。

この記事自体に、反論はない。ただ、その通りと思う反面、ガイドラインによって、第三者委員会や委員たる弁護士の性質や責任の難しさが浮き上がってきたように思う。

第三者委員会というのは、その名のとおり、第三者性が最も重視される。

一方で、依頼主は、会社であり、その委員に対価を支払うことを決めた人は経営陣である。

そのため、監査法人と同じようなジレンマ、すなわち、どこまで依頼主及び経営陣に厳しくできるか、ということが鋭く問われることになる。

監査法人の場合は、そのジレンマはある程度(経営陣には)認識されている上、手抜き監査についての監査法人側の責任(法的責任や手を抜いた場合の行政処分等)も大きいため、経営陣が監査法人からの調査を受け入れる素地が多少なりともあるのではないかと、推察する。

一方、会社の経営陣が弁護士に第三者委員会の委員を依頼する場合、経営陣は、「今回の事件について、出来る限り丸く収めたい」という希望を持っているということは割と多いのではないか。

第三者委員会の調査によって、会社にさらに(少なくとも短期的に)大きなダメージが発生する可能性もあり、依頼者の利益の実現に努めなければならない、依頼者の意思の尊重という弁護士倫理との間で、難しい問題が発生する。

その意味で、第三者委員会の中立性や独立性の維持というのは、言うは易く、行うは難しである。

また、事案探究力というのも、一筋縄ではいかない問題である。何しろ、第三者委員会に強制捜査権はない。書類の隠ぺい工作や虚偽の供述をなされてしまうと、事案の探求は困難を極める。経験値から、“あるはずの書類”の在り処を問うて、虚偽の供述を見抜く力が必要であり、しかも、自白の強要等も避けなければならないという高度な(場合によっては、弁護士には不慣れな)能力が求められる。実際に、第三者委員会の委員に虚偽の供述を述べた経営陣もいる。

第三者委員会の委員に就任される先生は、どのような委任契約を締結されているのかわからないが、このあたりを踏まえて、会社は弁護士の要求する文書は必ず出すとか、調査への協力義務や誠実回答義務、調査の結果によって会社が被る損害についての免責等の規定がないと、受けることはできないであろう。このあたり、コンプライアンスにお詳しい先生方にお聞きしたいところだ。

【参考】

「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」 2010年7月15日 日本弁護士連合会

PDFファイル: 「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」

2010年09月06日 12:00|カテゴリー:企業法務,法務関連ニュース||コメントはまだありません

企業が従業員に提出してもらうべき誓約書の内容(その1)

会社が従業員を採用する場合、従業員から誓約書に署名して、提出してもらうことがあります。これは、従業員に由来する様々なリスクをヘッジするためのものです。辞める時に会社の重要な情報を持ち出さないように・・・、在職中に従業員が発明した特許の取扱い等、従業員との間で予め取り決めておけば防げたはずのトラブルは、少なくありません。今回は、この従業員に提出してもらうべき誓約書の内容について検討します。

第1 タイミングは重要! ~早い方が良い。ベストは入社時~

まず、タイミングです。最も良いのは、入社時です。退職直前では、書いてもらえないリスクが高くなります。ただ、提出してもらわないより、提出してもらった方がよいですから、気付いたらなるべく早く、提出してもらうというのが良いでしょう。就業期間中に、「コンプライアンスを充実させるために、誓約書の作成をお願いすることにしました。」ということでも問題はないと考えます。

第2 3つの内容

肝心の内容は、以下の3つ+αです。

1 秘密保持

2 知的財産権(特に、特許)の帰属

3 競業禁止

(4 反社会的勢力との接触の不存在)

さらに、就業規則との連携も必要です。就業規則より労働者に不利な労働契約は、無効とされてしまう可能性があります(労働契約法第12条)。したがって、従業員から誓約書をもらう際に、併せて就業規則の見直しも検討して下さい。ただ、誓約書の内容が全て無効になるというわけでもありませんので、とりあえず誓約書を先行させてしまうことは実務上は問題ないでしょう。

では、個別に検討します。

1 秘密保持条項

秘密保持条項は、以下の点がポイントになります。

・ 秘密情報を定義する(就業規則や営業秘密管理指針がある場合は、それらの定義を援用することも可)

・ 秘密情報を記載又は包含した書面その他の媒体物の持出禁止・返還義務

・ 退職後の義務

・ 制裁措置(サンクション)の設定(損害賠償・協力義務等)

です。

具体的な文言は、私に別途相談いただきたいのですが、注意して頂きたいのは、制裁措置です。秘密保持違反は、損害の範囲も立証も難しいケースが少なくないですので、損害賠償規定を明確にして、請求できる損害の範囲を広くしておくことがポイントです。また、会社が損害を回復するための行動を採った場合に、それに協力する義務を規定しておくことも有効でしょう。

(続く)

【関連法令】

労働契約法

(就業規則違反の労働契約)
第十二条  就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

2010年09月06日 09:00|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス,企業法務||コメントはまだありません

VCからの役員派遣とコンプライアンス

少し昔の「金融法務事情」No.1901 (2010年7月10日号)に、「取引先への役員派遣とコンプライアンス」と題する記事が掲載されていた。この記事では、主に銀行が役員や行員を派遣することが前提であるが、これは、VC(ベンチャー・キャピタル)からVB(ベンチャー・ビジネス)に役員派遣する場合にも応用できると思った。

記事には、

派遣役員は、取引先の取締役として善管注意義務を負う(会社法330条、民法644条)。そのため、取引先に関して入手した情報を銀行のためにみだりに使うことは許されない。・・・(中略)・・・取引先が派遣役員に対して情報を開示する場合は、取引先のために使ってくれることを期待しているのであって、銀行の利益のために使うことについては必ずしも承諾があるとはいえない。そこで、問題の発生を未然に防ぐため、前述のように役員の派遣における確認書などを作成しておくべきものと考えるのである。(引用終わり)

とある。

この部分は、「取引先」を「投資先」、「銀行」を「ファンド」又は「ベンチャー・キャピタル」と読み替えると、VCからの役員派遣にそのまま当てはまる。

ただ、VCの投資実務における役員派遣で、ここまで厳密に確認書が作成されているケースは、レアであるように思う。著名なキャピタリストであれば、複数の役員をかけもちしているケースも少なくないが、それらの場合、善管注意義務を厳密に考えられているだろうか。

VC側の簡単な対策としては、投資契約上、役員派遣の権利とは別に、オブザーバー派遣の権利を取得して、基本はオブザーバーで対応することが考えられる。ただ、VBサイドからの要請もあって、VC側の人間が取締役に就任するケースもある。その場合は、VCにとっても、VBにとっても、上記のような確認書で、善管注意義務や守秘義務の範囲を明確にしておいた方が安全であろう。

なお、この記事では、

派遣役員から取引先の業況が危機的であるという報告を受けて融資金を回収する行為は、公正かつ適法に行われる限り許される(中村裕明監修『必携 金融機関のコンプライアンス【業務編II】』283頁(金融財政事情研究会、2006年))。この場合には、派遣役員といえども、出身母体である銀行の損害を未然に防止する必要性が強く、そのために自己の入手した情報を銀行に開示することについては、取引先の黙示の承諾があると考えられる。(引用終わり)

とある。

この点についても、VCとVBの関係に適用できる可能性は高いと考えられる。ただ、銀行に比べ、VCは、(株式によって資金提供するため)損害防止のために採り得る手段が限定されている。したがって、仮に情報活用の点において黙示の承諾が認められたとしても、現実にその情報を活して回収しようとする場合については、投資契約書において、きっちりと手当しておかないと、回収は極めて困難になる。

2010年夏のベンチャー業界の気になる動き(その2)

前回の続きです。

この夏の気になった動きのもう1つは、海外上場です。

8月22日の日経新聞によると、日本のベンチャー企業が、アジアの証券取引所に相次いで上場するとのこと。

クリック証券のKOSDAQ上場を筆頭に、海外上場の動きは活発化しているようです。

ベンチャー・キャピタルにとっては、大きな問題ではない、というか、高い株価で売却できれば、問題有りませんが、証券会社や印刷会社、信託銀行にとっては、悩ましい問題です。

日経新聞で取り上げられていた以下の5社です。

1.ディー・エル・イー
・アニメ・映像制作会社
・台湾証取に上場申請(2011年6月までに)

2.ゼロ
・インターネット決済代行
・シンガポール新興市場「カタリスト」に上場申請(年末までに)

3.フードディスカバリー
・野菜ソムリエ講座や青果販売
・韓国新興市場「KOSDAQ」に上場申請(10月に申請予定)

4.オフィス24
・OA機器販売やオフィスコンビニ
・韓国新興市場「KOSDAQ」に上場申請(11月を目処に申請予定)

5.サルバドーレ・クオモ・ジャパン
・ピザチェーン
・韓国新興市場「KOSDAQ」に上場を検討

2010年09月02日 09:00|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス||コメントはまだありません

会社の未来は4つしかない

みなさんが何かの事業を行うために、会社を設立するとき、会社の未来にどの程度、想いを馳せるでしょうか。

理念や志、経営戦略、ビジネスモデル、事業ドメイン、マーケティング、資金調達、、、etc.起業家や経営者が考えることはたくさんあります。

それらは極めて重要なことばかりであり、実際に起業家や経営者は考えていることでしょう。しかし、会社が順調に成長した場合、どのような未来になるかまで考えられているケースは、多くないように感じます。

事業会社の未来は、基本的に以下の4つしかありません。

① 上場(IPO)
② 買収される(M&A)
③ 事業承継(相続)
④ 破産・清算(事実上の破綻も含む)

そして、この4つの未来のどれを志向するかは、予め決めておいた方がよいでしょう。もちろん、状況に応じて、途中で変わることは十分ありうることですので、実際には、「現時点では」「ざっくりとしたイメージとして」という形になることが多いでしょう。また、ビジネスモデル等の経営戦略によってどれを志向すべきかということが自ずと決まる場合もあり得ます。

①の上場(IPO)とは、基本的には「公の会社になる」ということです。いつでもだれても会社の株式を買ってもよいという状態になりますので、株式市場に対して常に誠実な態度と取らなければなりません。上場には、優れた人材が集まりやすい、市場から資金を調達することができる、上場前からの株主やストック・オプション保有者が上場とともに個人資産を形成できる、会社の事業継続が大株主の相続問題に巻き込まれにくい(全く巻き込まれないわけではない)等といったメリットがあります。一方、重要な会計情報等を開示しつづけなければならないという義務が課されます。したがって、ある程度の規模であることや将来の企業成長が予想されることあることが求められますし、継続開示に耐えうるような社内体制の整備も求められます。社長の地位は、多くの株主に信任が得られそうな人物のなかから現社長や取締役会が選ぶことになります。

②の買収(M&A)とは、基本的には「どこかの会社のものになる」ということです。上場会社の子会社になる場合は、その上場会社の傘下に入るということを意味し、事実上の上場に近い効果もあります。100%子会社になる場合や全部の事業の譲渡の場合では、既存の株主は、これまでの株式に代わって現金や株式を手にすることになります。社長のイスは、親会社の意向で決まります。

③の事業承継(相続)とは、「非公開会社で居続ける」場合です。多くの日本の中小企業がこれに当てはまります。この場合、「次の社長はだれか」という事業経営の後継者の問題と、「大株主の保有する株式をだれが相続するか」という相続問題の両方を解決しなければなりません。

④の破産・清算は、最初から志向する人はいません。夜逃げでからっぽに幽霊会社になるケースもこれに含まれます。破産の場合は、社長も併せて個人破産するケースがほとんどです。利益を生み出す事業が残っている場合は、民事再生や会社更生という手段がとられることもあります。

①から③までのどれを志向するか、明確になっていると、ファイナンスの戦略だけでなく、社内体制の準備もできます。チャンスがあれば、上場することや買収されることを考えている場合、いつ提案があっても、提出を求められた資料を提出できるように資料を整理しておくでしょう。M&Aの場面では、事業の継続性についてのリスク高い場合、売却価格が下がってしまいます。普段からの社内体制の整備しだいで、相当の金額の差になるかもしれません。将来、①のIPOや②のM&Aを考えている場合は、早い段階から弁護士に相談して、ビジネスモデルや契約書、各種議事録をチェックしてもらうことが、外から見た会社のリスク評価を下げることに繋がるのです。

①でも②でもない場合は、会社の主要株主の株式が相続されることに想いを馳せておかなければ、主要株主が亡くなった後に、会社が相続問題に巻き込まれるリスクが高くなります。株式は、法定相続されると、相続人間で共有されてしまいます。100株を保有する株主について相続が生じ、相続人が、妻1人、子2人の場合、その100株は、妻50株、子25株ずつとなるのではなく、その100株総てが共有となってしまうのです。こうなると遺産分割協議か株式の権利の行使者を誰にするかの合意がまとまるまで、原則として権利行使できなくなります。遺言でその株式を誰に相続するかを予め決めておくことが会社を継続することに繋がります。

会社の将来についての戦略をExit戦略等ということもあります。ただ、Exitとはいえ、会社が終わるわけではなく、継続して成長していくために、言わば、どのように脱皮してゆくのか、という観点から今するべきことを決めると考えていただく方がよいかもしれません。

これから起業される方、起業して間もない方におかれても、上記の①から③までのどれを志向するのか、頭の片隅にでも置いていただけると、よいのではないでしょうか。

2010年09月02日 08:30|カテゴリー:未分類||コメントはまだありません
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