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ベンチャー法務の部屋

会社の未来は4つしかない


みなさんが何かの事業を行うために、会社を設立するとき、会社の未来にどの程度、想いを馳せるでしょうか。

理念や志、経営戦略、ビジネスモデル、事業ドメイン、マーケティング、資金調達、、、etc.起業家や経営者が考えることはたくさんあります。

それらは極めて重要なことばかりであり、実際に起業家や経営者は考えていることでしょう。

しかし、会社が順調に成長した場合、どのような未来になるかまで考えられているケースは、多くないように感じます。

事業会社の未来は、基本的に以下の4つしかありません。

① 上場(IPO)
② 買収される(M&A)
③ 事業承継(相続)
④ 破産・清算(事実上の破綻も含む)

そして、この4つの未来のどれを志向するかは、予め決めておいた方がよいでしょう。もちろん、状況に応じて、途中で変わることは十分ありうることですので、実際には、「現時点では」「ざっくりとしたイメージとして」という形になることが多いでしょう。また、ビジネスモデル等の経営戦略によってどれを志向すべきかということが自ずと決まる場合もあり得ます。

①の上場(IPO)とは、基本的には「公の会社になる」ということです。いつでもだれても会社の株式を買ってもよいという状態になりますので、株式市場に対して常に誠実な態度と取らなければなりません。上場には、優れた人材が集まりやすい、市場から資金を調達することができる、上場前からの株主やストック・オプション保有者が上場とともに個人資産を形成できる、会社の事業継続が大株主の相続問題に巻き込まれにくい(全く巻き込まれないわけではない)等といったメリットがあります。一方、重要な会計情報等を開示しつづけなければならないという義務が課されます。したがって、ある程度の規模であることや将来の企業成長が予想されることが求められますし、継続開示に耐えうるような社内体制の整備も求められます。社長の地位は、多くの株主に信任が得られそうな人物のなかから現社長や取締役会が選ぶことになります。

②の買収(M&A)とは、基本的には「どこかの会社のものになる」ということです。上場会社の子会社になる場合は、その上場会社の傘下に入るということを意味し、事実上の上場に近い効果もあります。100%子会社になる場合や全部の事業の譲渡の場合では、既存の株主は、これまでの株式に代わって現金や株式を手にすることになります。社長のイスは、親会社の意向で決まります。

③の事業承継(相続)とは、「非公開会社で居続ける」場合です。多くの日本の中小企業がこれに当てはまります。この場合、「次の社長はだれか」という事業経営の後継者の問題と、「大株主の保有する株式をだれが相続するか」という相続問題の両方を解決しなければなりません。

④の破産・清算は、最初から志向する人はいません。夜逃げでからっぽに幽霊会社になるケースもこれに含まれます。破産の場合は、社長も併せて個人破産するケースがほとんどです。利益を生み出す事業が残っている場合は、民事再生や会社更生という手段がとられることもあります。

①から③までのどれを志向するか、明確になっていると、ファイナンスの戦略だけでなく、社内体制の準備もできます。チャンスがあれば、上場することや買収されることを考えている場合、いつ提案があっても、提出を求められた資料を提出できるように資料を整理しておくでしょう。M&Aの場面では、事業の継続性についてのリスク高い場合、売却価格が下がってしまいます。普段からの社内体制の整備しだいで、相当の金額の差になるかもしれません。将来、①のIPOや②のM&Aを考えている場合は、早い段階から弁護士に相談して、ビジネスモデルや契約書、各種議事録をチェックしてもらうことが、外から見た会社のリスク評価を下げることに繋がるのです。

①でも②でもない場合は、会社の主要株主の株式が相続されることに想いを馳せておかなければ、主要株主が亡くなった後に、会社が相続問題に巻き込まれるリスクが高くなります。株式は、法定相続されると、相続人間で共有されてしまいます。100株を保有する株主について相続が生じ、相続人が、妻1人、子2人の場合、その100株は、妻50株、子25株ずつとなるのではなく、その100株総てが共有となってしまうのです。こうなると遺産分割協議か株式の権利の行使者を誰にするかの合意がまとまるまで、原則として権利行使できなくなります。遺言でその株式を誰に相続するかを予め決めておくことが会社を継続することに繋がります。

これから起業される方、起業して間もない方におかれても、上記の①から③までのどれを志向するのか、頭の片隅にでも置いていただけると、よいのではないでしょうか。

2010年09月22日 08:30|カテゴリー:企業法務||コメントはまだありません

司法試験にも役立った「国家」の概念


先日の司法試験の発表の後、大杉教授のブログ“おおすぎ Blog”のエントリー「新司法試験合格発表・雑感」に、触発されて、このエントリーを書きました。

大杉教授の内容の以下の部分です。


そもそも、法とは、正義とは・・ って考えすぎるとドツボに嵌まる危険もありますが、(1)の「論点を深く考える」際には、「そもそも良い法律論(解釈論)、悪い法律論って、どういうものなのだろうか」という、少し高い視点を持つことが有用ではないでしょうか。


私は、大学時代に、政治思想史をほんの少しだけかじっただけの市井の法律家ですが、司法試験を受ける際に、その後の実務生活で法律について考える際に、よく立ち返る概念があります。大杉教授は、サンデルをお薦めされておられましたが、私は、職業としての政治 (岩波文庫)
が参考になった記憶があります。

この本は、政治家にはどのような人がなるべきかという点について、ウェーバーが1919年にミュンヘンにて講演したものを書籍化したものです。第一次世界大戦後のドイツでの講演という背景を理解して読む必要のある文献ですが、古典の中では非常に読みやすく、定価310円で買えますので、お薦めです。内容的に、司法試験と露ほども関係なさそうな文献ではありますが、私が影響を受けたのは、この本に出てくる「国家」の概念です。

大学生時代に受講した初宿教授(初宿正典教授。憲法、カール・シュミットの専門家)の「国法学」という講座では、「国家」の意味や要件は、論者や時代や文脈によって大きく異なり、100以上の定義があると教わりました。「国家」という概念は、それ自体に大きな意味があるものではないため、多くの定義があっても、不思議はありません。私も、ウェーバーの「国家」の定義のみが絶対に正しいというつもりは全くないです。ただ、この「国家」の概念は、法律・法規範というものを考える上において、極めて重要な概念ではないかと今も考えています。

さて、その「国家」の概念とは、以下のものです。


国家とは、ある一定の領域の内部で―この「領域」という点が特徴なのだが―正当な物理的暴力行使の独占を(実効的に)要求する人間共同体である、と。国家以外のすべての団体や個人に対しては、国家の側で許容した範囲内でしか、物理的暴力行使の権利が認められないということ、つまり国家が暴力行使への「権利」の唯一の源泉とみなされているということ、これは確かに現代に特有な現象である。(マックス・ウェーバー著、脇圭平訳『職業としての政治』(岩波文庫)9頁、10頁)

国家も、歴史的にそれに先行する政治団体も、正当な(正当なものとみなされている、という意味だが)暴力行使という手段に支えられた、人間の人間に対する支配関係である。(引用終わり。同10頁、11頁)



この議論には、極めて有意義な議論が多く内包されています。ただ、1つ重要な点を挙げるならば、この国家概念には、法規範と道徳規範を峻別する決定的な違いが隠されているという点です。それは、法規範、すなわち実定法によって形成される国家規範は、国家の正当な物理的暴力行使を背景にした規範であるということです。この点は、道徳規範と根本的に異なる点です。道徳に反する行為をしても、国家の物理的暴力が発動することはありませんが、法に反する行為をした場合や、法によって導き出された紛争解決に従わない場合は、国家の物理的暴力が発動する可能性があります。

このことは、日本国憲法が、国会が国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関であること(憲法41条)、国会は国民を代表した議員で構成・組織すること(憲法42条・43条)、国家が物理的暴力行使を発動するに際しては法定の手続によらなければならないこと(憲法31条)とは、密接不可分の関係にあります。

司法試験のレベルで言えば、「受験生の皆さん方が何を正当と思うか」等ということは、一切評価の対象ではなく、実定法、すなわち法律の条文から、一体、何が導けるのかということが問われていることを常に自覚しなければならないということです。そして、常に、その論理は、国家が独占する物理的暴力を正当化する論理でなければならないのです。

なぜなら、法律とは、どのような場合に、物理的な暴力を使ってでも実現すべきかという要件と効果が記載されている規範であり、既に、国会によって正当性が担保された規範であるからです。受験生の考える「正しさ」は、物理的な暴力を使ってでも実現すべき「正しさ」ではないのです。

もっと卑近な例で言えば、「思うに、」等という接続詞がでてくる答案は、採点者からすると、(極端に言えば)あなたの感想(価値観)なんて聞いていないと一蹴される答案です。あなたの思いは、法規範の正当性の根拠にはならないのです。法が何を考えているか、法の背後にある規範や価値観は何かを探りながら、未知の問題解決に道筋をつけるのが、法律家の為すべき作業なのです。

私は、常にこのことを意識して、法律を勉強し、答案を作成していました。今年、司法試験を合格された方も、残念な結果だった方も、いま、法律家になることを志しておられる方も、既に法律家になった方も、一度、この読書の秋に、『職業としての政治』を手に取られてみるのは、如何でしょうか。

なお、上記に記載させていただいたことのみをもって、「社会的相当性」等という言葉が出てくる学説はおかしい等と批判するのは筋違いです。また、このエントリーは、法律家がそれぞれ信じるところに従って己の正義を有することを否定するものではありません。これらの点、御留意の程、宜しくお願いいたします。

(追記:2010/9/22)

上記のウェーバーの本の引用にある「正当な物理的暴力行使の独占」という部分は、「正統な物理的暴力行使の独占」の方が適切ではないかという指摘がありましたので、この場でお伝えさせていただきます。ドイツ語の原文では、das Monopol legitimer physischer Gewaltsamkeit” のようであり、ウェーバーの概念を把握するにあたり、「正統性(legitimacy)」と「正当性(justification)」とは異なる概念として理解して、訳し分けておくべきであろうということでした。(@kazemachiroman さんありがとうございました) なお、上記の岩波文庫版の訳は、「正当な」となっておりましたので、そのまま残します。


2010年09月21日 16:26|カテゴリー:その他||5件のコメント

中国企業とライセンス契約を結ぶときの留意点

いま、私は、近畿経済産業局が主催している「平成22年度中国ビジネス知財戦略基盤定着支援事業」に参加し、中国の知的財産に関する法律を学びつつ、実務的な対応を検討しています。この企画、講師の弁護士・弁理士の先生方の知識レベルが高いことは勿論のこと、参加者の皆さんのレベル・意識も高く、大変刺激的です。また、支援受入企業側も、これだけの人数で議論した結果によって、プロフェッショナルからのコンサルティングを受けることができますので、双方にとって、非常に良い企画だと思います。講師の先生方には、感謝しても、しきれないくらい、多くのことを教えていただいています。

ところで、この企画において、中国の契約法353条と355条と行政法規である技術輸出入管理条例24条3項の関係についての議論がありました。非常にマニアックな論点なので、悪しからず・・・

それぞれの条文は、以下の内容である。

【関連条文:中国法】
契約法353 :  特許実施により第三者の権利を害した場合、実施許諾者が責任を負う。但し、当事者間に別途の約定がある場合はこの限りではない。
契約法355 :  技術輸出入契約…について、法律、行政法規に別段の規定がある場合は、その規定に従う。
技術輸出入管理条例(行政法規)24 III : 技術を受け入れた側が提供を受けた技術を使用し、第三者の合法的権益を害した場合、提供者が責任を負う。

【問題点】
契約法353は、任意法規規定であるため、ライセンス契約において、ライセンシー側の責任とする旨の規定を定めても、有効と解される。しかし、契約法355及び技術輸出入管理条例24 IIIによって、任意法規性が奪われ、「技術」を受け入れる旨の契約で、第三者の権利侵害はライセンシーの責任と規定しても、無効と解されるおそれがある。

具体的には、日本企業が保有している特許権について、中国企業にライセンスする場合や、中国企業から開発委託を受けて日本の知的財産権を利用して製作した成果物を引き渡す場合に、問題となる。すなわち、中国企業側の特許実施や成果物利用に際して、第三者の権利を侵害しても、(契約での規定に拘わらず)日本企業が責任を負わなければならない可能性がある。

【検討の前提】
そもそも、「法律」は任意法規であるのに、「条例(行政法規)」に強硬法規性を持たせることへの疑問もあるが、中国法において、契約の自由をどこまで徹底されるのかという根本問題に関連しそうであるし、中国の法体系秩序の問題にもかかわるので、ここでは避ける。また、結果として、渉外ライセンサーを国内ライセンサーより不利益に扱うことになるので、WTOに反するのではないかとの疑問も呈されるが、実務では、どうしようもない可能性が高いので、ここでは立ち入らない。

【検討】
ここでは、日本企業が中国企業にライセンスする場合を念頭に置いて、実務的に解決する方法がないかを考えてみる。

通常(日本国内の会社同士の契約等で、ライセンサー側が強い場合)、ライセンス契約や業務委託契約において、第三者からの侵害については、以下のような規定を置く。

■規定例(ライセンス契約)(ライセンサー優位の内容)■
ライセンシーが本発明の実施により、第三者の権利を侵害するに至ったときにおいても、ライセンサーは、その侵害についての責任を一切負わないものとする。

■規定例(業務委託契約)】(受託者優位の内容)■
委託者による成果物の利用に関して第三者の権利を侵害した場合、受託者は、その侵害についての責任を一切負わないものとする。

※ サンプルなので、簡略化した条文例を用いています。

しかし、技術輸出入管理条例24 IIIによると、提供者が責任を負うと規定しており、このような規定を設けても、無効になる可能性が高く、その場合、ライセンサーや受託者(日本企業側)が責任を負わなければならない。

■対策案1■
無効を覚悟で、規定する。そして、無効になった場合に備えて、他の規定を置く。

■対策案2■
ライセンサー側に訴え等が提起された場合に、協力すべきとする協力義務規定を置く。

■対策案3■
ライセンスの対象を出来る限り限定して、そもそも権利侵害が生じにくいようにする。

■対策案4■
ライセンサーが被った損害をさらにライセンシーに求償できる旨を規定しておく。

とりあえず、いま、考えられるのは、このようなところである。これらの対策案は、相互に矛盾しないので、実務に合ったものを適宜利用することになるだろう。■対策案1■の他の規定とは、対策案2や4の規定や、分離可能性条項と呼ばれる、「ある規定が無効となっても、他の規定は有効です。」という内容の条項を念頭に置いている。■対策案4■は、中国の人民法院の解釈で無効にされてしまう可能性も十分にあるが、理論的には、「第三者との関係では技術輸出入管理条例24 IIIで提供者が責任を負うが、当事者間では、技術を受け入れた側がその損害を負担する」と定めることは、技術輸出入管理条例24 IIIに反しないという解釈も成り立ちうるのではないかという発想に基づくものである。

いずれにせよ、問題が起きた場合には、訴訟になる前に解決できる方がよい。訴訟外での交渉では、仮に無効になるかもしれない条項があったとしても、有効となる可能性によって交渉力が得られることもあるので、適宜御検討いただきたい。

(検討終わり)

この見解は、私が備忘録的に作成したものですので、実際にライセンス契約や業務委託契約等を作成する場合は、中国法の専門家を含めた専門家の意見を参考にして下さい。(このエントリーを参考にして作成して頂いても、私は責任を負えません。)

2010年09月17日 08:30|カテゴリー:ベンチャー・ビジネス,企業法務||コメントはまだありません

有価証券届出書虚偽記載とベンチャー企業

昨日(15日)、新聞等において、「エフオーアイ社が、実際の売上高はわずか3億円弱しかなかったのに、約118億円とウソの記載をしていた疑いで、強制捜査された」旨が報じられていました。


日本経済新聞「エフオーアイ社長を逮捕 115億円粉飾決算の疑い 」

東証マザーズに上場していた半導体製造装置メーカー「エフオーアイ」(相模原市、破産手続き中)の粉飾決算で、さいたま地検は15日、上場時に約115億円の売上高を水増ししていた疑いが強まったとして、同社社長、奥村裕容疑者(60)を金融商品取引法違反(有価証券届出書の虚偽記載の疑いで逮捕した。
証券取引等監視委員会は近く、同法違反容疑で刑事告発する。
上場わずか7カ月で上場廃止となった新興企業を舞台にした粉飾決算は経営トップの逮捕に発展した。同地検と監視委は今後、財務担当の専務(46)らについても逮捕する方針で、粉飾決算の全容解明を目指す。(引用終わり)

日本経済新聞「監視委、エフオーアイ関係先を強制調査 粉飾決算事件」

監視委によると、同社は株式公募を実施する際、2009年3月期の実際の売上高がおよそ3億円だったにもかかわらず、約118億円と架空計上して記載した疑い。同監視委は「売上高の97%を粉飾しており、強制調査による実態解明を要する悪質な事案。告発に向けてさらに調査を進める」としている。(引用終わり)


有価証券届出書の虚偽記載は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又は併科です(金融商品取引法第197条第1号)。

この事件は、売上高の約97%の粉飾であり、最早、粉飾決算というレベルを超えて、詐欺罪(10年以下の懲役。刑法第246条)に近いと思います。調達金額は、50億円以上ということですので、50億円以上の詐欺事件となると、歴史上でもなかなか見当たらないのではないでしょうか。

本件については、ほぼ確信犯的に実行されていたようであり、その騙しの手口の巧妙さやチェック体制についての議論は、多くなされておりますので、ここでは、IPOを目指す会社と、有価証券届出書や目論見書の虚偽記載との関係に、議論を絞って、議論したいと思います。

IPOを目指す会社は、当然ながら、いずれは有価証券届出書や目論見書を作成しなければなりません。上場前に作成しようという段階になり、「正確かどうかわからない」という状態は、問題です。この点は、主幹事証券会社も厳しくチェックします(しているはずです)。

ちなみに、主幹事証券会社も、目論見書等の重要な事項について「虚偽記載等の事実を知らず、かつ、相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかったこと」(金融商品取引法第17条但書)、有価証券届出書のうちの重要な事項について「記載が虚偽であり又は欠けていることを知らず、かつ、財務計算書類以外の部分については、相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかったこと」(金融商品取引法第21条第2項第3号)が立証できない限り、損害賠償責任を負います。したがって、少なくとも、相当の注意を用いたと立証できる程度には、虚偽記載等がないかについての審査を尽くすことになります。これがいわゆる「引受審査」です。主幹事を引き受ける証券会社には、引受審査部という部署があり、この部署が担当します。

この引受審査を通過するには、(当然のことながら、粉飾を誤魔化す手口を巧妙にするのではなく、)予め、審査されても大丈夫なように社内の体制を整えておく必要があります。

例えば、株主の記載が問題となることがあります。有価証券届出書等においては、直近3ヶ月の株式の移動や主要株主が記載されます。ところで、株券発行会社の株式譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ有効ではありません(自己株式の処分を除く。会社法第128条第1項)。これは、いわゆる株券不所持制度を採用していても同じです。したがって、株券発行会社において、過去に株式譲渡が行われている場合、株券の交付が行われていなければ、その株式譲渡が無効である可能性があります。これは、そのまま放置すると、有価証券届出書等の株主の欄や株主が保有している株式数が虚偽である可能性があることを意味します。これらの事実が「重要な事項」か否かは、ケースや程度によることになるでしょうが、審査側としては、放置できる問題ではありません。そこで、IPOを目指す会社としては、その株式譲渡が有効であることを証拠により説明しなければなりません。そこで、実際には、株券の交付を行い、それを確認する書面を新旧の株主から取得するか、適法であることの意見書を取得する等の方策が採られることが多いです。

他にも、重要な契約について、解除が極めて容易になされる旨の条項が規定されているにもかかわらず、これを記載しないことも虚偽記載になる可能性があります。いくら当事者同士で信頼関係があるとしても、将来的に関係が悪くなって、解除されてしまうことが十分あり得ます。その時に、解除条項が開示されていないことが問題となる可能性は否定できないでしょう。したがって、IPOを目指す会社は、重要な契約については、いくら信頼関係があっても、相手方の一方的な意思表示で解除されてしまうような条項や、容易に条件が満たされてしまうような解除条項は、断固として拒絶しなければなりません。

上場準備の段階になってから、修正するのは大変手間ですし、場合によっては修正しきれず上場が延期になってしまうことさえあります。IPOを目指すベンチャー企業は、早い段階から、将来、有価証券届出書等を作成することを念頭に、社内の体制を構築しておかれることを強くお薦めします。結果的には、コスト的にも、上場のチャンスという意味でも、良い結果に繋がると考えます。

2010年09月16日 08:30|カテゴリー:企業法務||コメントはまだありません

上場すべきか、上場せざるべきか。その判断は、いつも悩ましい・・・


Facebook のファウンダー、Mark Zuckerberg 氏が上場についての次のような意見を表明したとのことである。

Mark Zuckerberg、「Facebookを近々上場するつもりはない」

われわれはFacebookを近々上場するつもりはない。われわれの株式上場に関する考えは他の多くの企業とは異なっている。多くの企業にとって株式上場こそが目的であり、上場の成功を目指して経営を最適化しようとする。われわれにとっては上場ははゴールではない。ある時点で上場が適切な選択であるようになれば上場するだろう。われわれは外部からの投資を受け入れているし、自社株を社員に給与している。最終的にこれらの株式が現金化できるようにすることは私の責務だと思う。しかし上場が短期的に行われなければならないとは考えていない。Facebook が持てる可能性を最大限に発揮できるようにすることが最優先の責務だ。(引用終わり)

この意見は、正論であり、何ら反論できるところがない。上場は会社という組織にとってのゴールではない。多くの一般投資家から資金を集めることは、その資金で事業を拡大し、引いては、会社がより永続的に発展するためになされるべきことだからである。

一方で、上場することを、going publicとも表現するように、公の会社になるという側面がある。情報を公開し、一般の株主が増えることにより、同族の経営者ではなく、より多くの株主に認められた人材を経営者とすることに資する、公の目で監視され不適切な行為が是正され易いというメリットがある反面、経営者の独断で行うようなリスキーな意思決定がしにくくなる。上場すると、高いコンプライアンスを求められ、意思決定に対するチェック機能が厳密になるのである。

google社は、経営陣の経営の自由を確保しながら、public companyとなるために、経営陣に種類株式を発行したまま上場するという手段に出たが、このような手段をとれる会社は、ほとんどない。

Facebook 社が大きなリスクを伴う開発計画が有するために、上場を延期して、非公開会社であるうちにチャレンジするということ自体はもっともな判断である。上場すると、そのようなリスクの高い経営判断は、取締役の忠実義務や善管注意義務に反すると株主に追及されかねない。ただ、以前のエントリー「ベンチャー企業のファイナンス方法の選択」でも指摘したように、VCやエンジェルから資金調達している限り、そのようなリスキーなチャレンジを理由とする上場延期をいつまでも続けるわけにはいかないのもまた現実なのである。一般的な上場準備会社にとって、上場に適した時期は、そう何度も訪れてくれるものではない。チャンスがあるのであれば、トライすべきであり、一度チャンスを逃すと、次のチャンスは当分の間訪れないことも決して稀なことではない。

そのために、法律面を含めて、変なところで上場審査に引っかかって、延期にならないようにするためにも、早い段階からIPOを意識した準備が必要である。

To go public, or not to go public: that is the question.

大学発ベンチャーのとるべき行動

先週末にアップした「ベンチャー企業のファイナンス方法の選択」の続きである。

先日、紹介した内閣府の「日本の大学発ベンチャーが悲惨な失敗をしないためのポイント ハイテク・ベンチャー不毛の地での賢い立振舞について ~モジュール化時代の日本凋落の真因 その2~」 (PDFファイル)には、「大学発ベンチャーの取るべき正しい行動」として、以下のリストがあげられていましたので、検討したい。

・融資(debt)には手を出さない。個人保証もしない。原則として、エクイティ+若干の自己資金。補助金も裏負担・支払時期などの変動リスクに十分留意する。

・成功の見込みがなくなった時点で、早期に清算する。(累積赤字を抱え込み、破綻を待つのは愚の骨頂。)

・バーン・レート(手元資金量/毎日の出費=残存可能日数)を極力引き下げる。

・創業時にマーケットの専門家を参加させる。

・できれば、創業メンバーに外国人を入れる。(出身国市場を直接・間接に理解し、パートナーシップやビジネス交渉の際に力を発揮する。資金調達等でもネットワークを利用できる可能性が高い。シリコンバレーでは自然にこうしたチームができる。)これによって、最初からグローバルな発想ができる。

これを1つずつ検討する。

1.融資(debt)には手を出さない。個人保証もしない。原則として、エクイティ+若干の自己資金。補助金も裏負担・支払時期などの変動リスクに十分留意する。

大学発ベンチャーを始めとする研究開発先行型のベンチャーは、当初、投資ばかりで、収益が生まれない状況が続くことが多い。このようなビジネスモデルでは、新株発行による資金調達の方が適していることは、前回、述べたとおりである。

融資(debt)は絶対に現金ということではないであろうが、シードやアーリーの段階ではしないほうがよい。多分、借入をしようとしても、銀行が貸してくれないことが多いであろうが、創業1年未満の場合等、公的金融・公的保証を通じて借入ができてしまうことがある。安定的な収益が得られているのであれば、安定収益とのバランスで、借入をすることは悪いことではないが、その場合であっても、控え目にするべきであろう。基本的に、急成長を目指すハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルであるベンチャー企業には、融資(debt)は、向いていないのは確かである。

前回も指摘したが、新株発行に際して締結される投資契約や株主間契約における、経営株主の買取条項は、借入の際の個人保証とはかなり異なる。経営株主の買取条項は、ある程度受け入れるのはやむを得ない。

原則として、エクイティ+若干の自己資金。とある点は、どのような意味であるかは完全には測りかねる。ただ、経営者が自己資金を入れていない場合、エクイティによる調達は難しいであろうし、経営株主の持ち分が低すぎると、IPOに際しては「安定株主がいないので、安定株主を作って下さい」等と主幹事の証券会社から指摘を受けることがある。VC(ベンチャー・キャピタル)やエンジェルの持分は、低めに抑えたいというのが社長の心情であることが多いであろうが、現実にバランスをとるのは、なかなか難しい。

2.成功の見込みがなくなった時点で、早期に清算する。(累積赤字を抱え込み、破綻を待つのは愚の骨頂。)

これはその通り。成功の可能性があるのであれば、追加投資でしのぐなり、他の方法で、生き延びるなり、検討していただいて、その成果を残す方向で検討してほしいが、成功の可能性が相当程度低くなった時点で、清算するべきであろう。借入や買掛金がない場合、「破産」ではなく、会社法上の「清算」となることが多いので、それほど手間や費用はかからない。清算するためには、株主への説明及び説得が必要なのは勿論である。会社法上、会社の解散は、株主総会の特別決議が必要である。

ただ、現実に、「成功の見込みがなくなった」と判断するのは、難しい。VCファンドも、ファンドの出資者(LP:有限責任組合員)に説明責任を負う以上、なぜ失敗と判断したのか、なぜ失敗したのかを説明しなければならないため、株主に誠意をもって説得する必要がある。

3.バーン・レート(手元資金量/毎日の出費=残存可能日数)を極力引き下げる。

わかりにくい表現であるが、おそらく、月々の支出額を引き下げて、残存可能日数を極力大きくしろという趣旨と思われる。

個人的には、やや疑問である。すなわち、やみくもに資金を出し惜しみするのは、出資の趣旨から外れることがあるからである。ビジネスモデルとの兼ね合いで、意味のない設備投資は、当然控えるべきであり、削るべき支出は極力減らすべきである。たとえば、椅子や机に高いお金を出したり、意味なく高い賃料のところに入ったり、必要最小限の人材以外の人を雇用したり、高いサーバーを導入したり、といった支出は避けるべきである。最近は、全員がスマートフォンを持って、無料のクラウドサービスを利用すれば、この手の設備投資は極力抑えられるようになってきている。

とはいえ、本来の目的遂行のためにお金を使わないことは、投資家側からすると何のために出資したのかということにもなりかねない。必要なコンサルタントは、どんどん雇って、プロジェクトをどんどんと前に進めることが必要である。そのスピードのためにVCからの資金があると言っても過言ではない。ここでは「コンサルタントを雇う」という表現としたが、最近の日本でも、様々な業務分野で、業務受託という形で参加するコンサルタントやプロフェッショナルが増えてきたので、このような各分野のコンサルタントやプロフェッショナルを、(雇用契約は出来る限り避けて)業務委託の形で、活用すべきである。本業以外の仕事や、本業の価値をさらに高める仕事を、アウトソースすべき場合は少なくない。仮に、自分で勉強すればできるといっても、プロの方が確実だし、時間のことを考えると、結局、費用対効果が良いことが多い。

4.創業時にマーケットの専門家を参加させる。

これは先の段落と通じる話であり、マーケティングなしで、開発することは、趣味の世界では許されても、投資家から出資を受けて行うビジネスの世界では許されない。ただ、マーケティングといっても、見込み顧客が求めているモノやサービスを作ることのみを意味するのではないことは、よく指摘されるところではある。これ以上は、私の専門外ではあるが、いずれにせよ、どれだけ技術系の会社であっても、マーケットの専門家は必要である。

本で読んだ知識であるが、シリコンバレーのIT系ベンチャーでは、Marketing Communications Specialistというスペシャリストが活用されることがあるようだ。シードやアーリーのステージでは、マスメディアやネット広告を大量に使うようなタイプの宣伝は、資金不足で難しいことが多い。そこで、少ない予算で大きな成果を上げられるようなPRを考えるスペシャリストが登場するというわけだ。日本で、真のMarketing Communications Specialistがどの程度いるのかはわからないが、是非、積極的な活用を検討されたい。

5.できれば、創業メンバーに外国人を入れる。

これも、理想としては、その通りである。スタートアップから海外を意識することの重要性は、いろいろなところで語られている。日本のベンチャー企業でも、海外の著名エンジェル投資家から資金調達できる時代である(mygengoの例等)。ただ、現実には、難しいことが多いかもしれない。また、当然のことながら、外国人であれば誰でもよいわけではない。それなりに、ビジネスの経験やベンチャーの経験のない外国人を仲間に入れても、あまり大きな意味はないであろう。できれば、シリコンバレーにいたことのある人間か、どこかでベンチャーを立ち上げたことのある人間が良い。

まとめると、内閣府のレポートについては、資金の使い方等に少し捕捉をさせていただく形になったものの、総じて同意する。議論の中で、「アメリカでは、世界中から優秀な起業家を集めるための「起業ビザ新設」の議論が進んでいる」なる記載があるが、日本でも、経済特区制度等を活用して、このような仕組みができないであろうか。優れたベンチャー企業を多く生み出すことは、経済を活性化し、眠っている人的資産・知的資産を活用することに繋がり、雇用を生み出す。折角、立ち上げたベンチャー企業であるので、実情に即して、内閣府のアドバイスを活用して頂けると、よい循環が生まれるのではないだろうか。

2010年09月14日 08:30|カテゴリー:ベンチャー・ファイナンス||コメントはまだありません

日本ベンチャー・キャピタル協会が国際会議

9月11日付けの日本経済新聞に、「日本VC協会が国際会議」という記事がありました。

日本ベンチャーキャピタル(VC)協会は11月、アジアのVC関連団体などを集めた国際会議を開く。アジア域内で国境を越えた投資が増えているため、各国のVC業界の情報を集約する組織の設立を検討する。投資マネーを日本国内に呼び込むのが狙いだ。(中略)
韓国や香港、シンガポールのVC関連団体の代表らが出席する。欧州ベンチャーキャピタル協会も参加し、これまでの取り組みを説明する。(引用終わり)

日本では、ベンチャーキャピタルに関連する数字や資料が集まりづらいことがありましたが、この動きはとても良い動きだと思います。ベンチャー業界全体の統計にもつながる可能性があります。そして、なにより、ベンチャー企業に投資家が投資をするという動きに、国境は関係ありません。投資家が海外投資家のケース、ベンチャー企業が海外のケースのいずれも増えてきたように思いますが、さらに加速するでしょう。

先日、日本のmygengoというベンチャー企業がシード・ラウンドで、$750,000 (約6300万円)という金額を、Dave McClure等の著名エンジェル投資家から資金調達したという記事がありました。

myGengo、国内外のエンジェル投資家ら10者から総額約5,000万円を調達

Transalation startup myGengo raises $750,000

この会社は、代表も親会社も米国人ですので、シリコンバレー式の言語の壁やシード・ラウンドのファイナンスに慣れておられると推察できますが、このようなケースが日本のスタートアップに増えてくることが、経済の活性化につながると思います。ビジネスに、国境はありません。シンガポールの投資家をLPに持つ日本のVCが、ベトナムのスタートアップに投資して、それが香港市場でIPOする、等というケースが起きるのも、そう遠くない日の出来事かもしれません。

2010年09月13日 08:30|カテゴリー:ベンチャー・キャピタル||コメントはまだありません

平成22年新司法試験の結果分析

先の9月9日(木)に、新司法試験の合格発表がありました。

新司法試験の発表も今年で5年目です。今年は、「「4人に1人」の狭き門」(読売新聞)「合格率、最悪の25% 4回連続で低下 合格者数、目標遠く」(毎日新聞)等の合格率が25.41%であり、そもそもの約束(2010年に3000人という閣議決定)を大幅に下回ったという点、「今回、3回目の不合格となった806人が受験資格を失った」(日経新聞)等3回までしか受けられないといういわゆる三振制の是非が話題となりました。ちなみに、既修者の合格率は、37.02%、未修者の合格率は、17.30%でした。

合格者の皆様は、本当におめでとうございます。プロフェッショナルである法律家は、毎日勉強です。これからもずっと勉強です。一緒に、頑張りましょう。

さて、私自身は、個人的な趣味で結果を毎年分析しているので、今年も行いました。折角、このブログをつくりましたので、このブログに掲載したいと思います。

【経年変化】

■ 受験者数は、年々増えている。ただ、増え幅は、減少している。
新司法試験が始まった平成18年は、当然のことながら受験者数自体が少なく、年を経るごとに、受験者数は増加してきました。三振制と5年まで受験可能ということを考えると、あと数年で、受験者数の増加は落ち着くと思われます。

~受験者数の推移~
平成18年 2091
平成19年 4607
平成20年 6261
平成21年 7392
平成22年 8163

■ 合格者数は、この3年間、2000人強で固定されている。

~最終合格者数の推移~
平成18年 1009
平成19年 1851
平成20年 2065
平成21年 2043
平成22年 2074

■ 合格率は年々下がっているが、下げ幅は縮まってきている。
合格率は、平成18年新司法試験の48.25%から落ちてきていますが、年ごとの下落幅は、年々小さくなってきています。受験者数が落ち着くとともに、合格率は下げ止まるでしょう(年2000人程度というラインが変わらない限り)。

~合格率の推移~
平成18年 48.25%
平成19年 40.18%
平成20年 32.98%
平成21年 27.64%
平成22年 25.41%

■ その他
他の傾向としては、全体における未修者の占める割合は、受験者数、合格者数ともに、増えてきています。未修者合格率は、どうしても既修者合格率より低いため、未修者不合格者の方が翌年に回る可能性が高いということが影響しているものとみられます。なお、未修者は、他大学法学部卒業生ということも多く、おそらくは、この
「他大学法学部卒業生」の「未修者コース生」に占める割合が増えているのではないかと推測します。

【今年の大学院別結果】
私は、母数が多い方が有利になるため合格者数を重視せず、合格率で分析しています。今年の大きな特徴としては、慶應義塾大法科大学院の躍進があげられるでしょう。最終合格率で、これまで1位を維持してきた一橋大法科大学院が2位になり、昨年5位だった慶應義塾大法科大学院が1位になりました。一橋大法科大学院は、論文合格率は今年も1位ですが、短答合格率が例年より低かったです。国立大学ロースクール(京都大学法科大学院等)が短答式に弱い傾向は、今年も見られます。実務で必要なのは、論文で試される論理構成力等は勿論ですが、短答で試される基本的な知識も必要です。法律相談で即答しなければならない場面を頭に思い浮かべて、短答の勉強も頑張りましょう(私も択一試験が苦手でしたので、えらそうなことはいえないですが・・・)。

~合格率の大学院別順位~

短答 論文 最終
1位 学習院大法科大学院 一橋大法科大学院 慶應義塾大法科大学院
2位 千葉大法科大学院 慶應義塾大法科大学院 一橋大法科大学院
3位 慶應義塾大法科大学院 京都大法科大学院 東京大法科大学院
4位 北海道大法科大学院 東京大法科大学院 京都大法科大学院
5位 東京大法科大学院 中央大法科大学院 千葉大法科大学院
6位 中央大法科大学院 北海道大法科大学院 北海道大法科大学院
7位 京都大法科大学院 千葉大法科大学院 中央大法科大学院
8位 一橋大法科大学院 大阪大法科大学院 大阪大法科大学院
9位 東北大法科大学院 名古屋大法科大学院 東北大法科大学院
10位 神戸大法科大学院 早稲田大法科大学院 名古屋大法科大学院

最終合格率のみを見ると、どうしても既修者の割合が高い大学が有利になってしまいます。たとえば、早稲田大学はほとんどの受験者が未修者ですので(未修合格者数では2位の大阪大法科大学院・慶應義塾大法科大学院の44人の3倍近い125人)、最終合格率は低めに出てしまいます。しかし、未修者の合格率を見ても慶應義塾大法科大学院は、1位ですので、今年は躍進したと言って間違いないと思います。

最終合格率 既修合格率 未修合格率
1位 慶應義塾大法科大学院 一橋大法科大学院 慶應義塾大法科大学院
2位 一橋大法科大学院 京都大法科大学院 千葉大法科大学院
3位 東京大法科大学院 東京大法科大学院 北海道大法科大学院
4位 京都大法科大学院 慶應義塾大法科大学院 東北大法科大学院
5位 千葉大法科大学院 名古屋大法科大学院 大阪大法科大学院
6位 北海道大法科大学院 大阪大法科大学院 早稲田大法科大学院
7位 中央大法科大学院 中央大法科大学院 愛知大法科大学院
8位 大阪大法科大学院 山梨学院大法科大学院 名古屋大法科大学院
9位 東北大法科大学院 北海道大法科大学院 金沢大法科大学院
10位 名古屋大法科大学院 千葉大法科大学院 東京大法科大学院

注: 既修合格率の算出において、合格者が1桁の法科大学院は排除しています。

未修合格者数
1位 早稲田大法科大学院 125
2位 大阪大法科大学院 44
3位 慶應義塾大法科大学院 44
4位 東京大法科大学院 40
5位 中央大法科大学院 34
6位 名古屋大法科大学院 34
7位 明治大法科大学院 34
8位 北海道大法科大学院 23
9位 九州大法科大学院 18
10位 東北大法科大学院 18
11位 金沢大法科大学院 16
12位 京都大法科大学院 16


今年の結果を見る限り、未修者にとっては、千葉大法科大学院や北海道大法科大学院、大阪大法科大学院等は、お薦めかもしれません。既修者は、1位から8位までが合格率50%以上です。1位の一橋大でさえ、66%は超えていません。上位校の既修者でも半分以上受かるが3分の2は受からない試験になったと言えます。

受験者のみならず、多くの法科大学院関係者も結果についての様々な感想があるかと思います。この結果を踏まえて、さらによい教育を提供しようと努力されていることもあると思います。ただ、やはり全体を見ていて思うのは、流石に法科大学院の数が多すぎるのではないかということです。受験者数が100人を超えているのに、合格者数が1桁の法科大学院の数は、決して少なくありません。これは関係者皆にとって、望ましい状態ではないように思います。問題の所在も多岐にわたり、解決も一筋縄ではいかないことは十分に承知しております。しかも、私は、この問題の解決に携わっているわけでもなく、偉そうにものを言える立場でもないです。ただ、法曹の世界の一員としては、法科大学院の存在が社会にとって有意義であると認知してもらい、且つ法科大学院の生徒が納得のいくような状態になること切実に願っています。

2010年09月11日 10:00|カテゴリー:その他||コメントはまだありません

ベンチャー企業のファイナンス方法の選択


資金調達(ファイナンス)方法の選択は、会社の一生を左右する。

会社の投資資金や運転資金を、誰から、どのように調達するかは、経営者が決めるべき、重要な経営判断事項である。ファイナンスによって、会社は、生きもするし、死にもするといっても過言ではない。

会社が誰からも資金を調達することなく、利益を上げ、その利益で、次の投資をしたり、運転資金の拡大に対応できるのであれば、理想である。

しかし、そのような会社は、皆無といって、差し支えないであろう。少なくとも、設立時には、発起人から資金を得るし、その後も、誰からも資金を受け入れない会社は多くはない。逆に、ファイナンスをしないことが会社にとってチャンスを失う場合もあり、成長スピードが要求される業界ではファイナンスしないことが致命傷となるケースさえある。したがって、会社が誰かから資金を調達することは、普通の事業会社であれば、経験することである。

ファイナンスは、大きく分けると2種類ある。借入と増資である。この2つは、根本的に異なるので、その特質に応じて、上手く利用する必要がある。


1.借入

法的にいえば、金銭消費貸借契約ということになる。上場企業ともなれば、社債の発行という形をとることもあるが、調達サイドにとっての性格は大きくは変わらない。

主なプレーヤー(資金供給者)は、銀行である。

MBAのファイナンス講座的には、(1)期待収益率が低いとか、(2)タックスシールドがあるとか、ということになるだろうが、実務的に一番大きな特徴は、「返さなければならない」ということだ。さらに、附随した大きな特徴は、「社長の連帯保証を求められることがほとんど」ということである。よく、「利息だけ支払って、借り換えをしていけばよい」という話があるが、相手(銀行)が借り換えに応じてくれず、支払期日までに支払うことができなければ、その時点で、破産+社長の個人破産である。いわゆる貸し渋りが起きてしまえば、研究開発がどれだけ上手くいっていても、会社は終わりということである。

内閣府が作成した「日本の大学発ベンチャーが悲惨な失敗をしないためのポイント ハイテク・ベンチャー不毛の地での賢い立振舞について ~モジュール化時代の日本凋落の真因 その2~」 (PDFファイル)という優れた資料では、この点について、明快に指摘している。

・先が「読める」世界で有効。フォロワー型経済では的確に機能する。財務分析、他社比較ができる。
・リスクは禁忌。失敗を金利ではカバーできず、日本の場合は、担保や個人保証(生命保険を含む)でカバーし、実績重視のため口座開設さえ数年を要する。
・ベンチャーの失敗時には再起不能となる。財産没収、一家離散という経済的死のみならず、物理的死も。
・不確実な事象、例えば、開発の遅れ、交渉の遅れ、入金の遅れ、補助金の見込み違い、突然の解約、社内紛争、役員離脱、知財訴訟などが確率pで発生する創業ベンチャーは確定返済期限のある銀行融資に頼ってはいけない(確率pで、会社と人生が破綻する)。国際水準のハイテク・ベンチャーで、銀行融資で立ち上げたものは、日本を除き皆無。


政府作成の文書とは思えないような、やや過激な表現も散見されるが、決して大袈裟ではない。

「返さなければならない」という性質をもつ借入資金は、開発等の消えてなくなることには使えない。先の読むことが比較的容易なビジネスであれば、借入は優れたファイナンス手法ではある。例えば、これまで100店舗展開してきて、さらに1店舗出すという飲食チェーン店や量販店を想定してもらえば、よい。しかし、多くのベンチャー企業では、先を読むことができないケースが多い。その場合に、借入に手を出すことは、最終的に会社の首を絞めることがある。

時に、CB(新株予約権付社債)であれば、よいということをいう経営者もいるが、CBといえども、基本的には借入であるので、上記と同じリスクを抱えていることを認識しなければならない。(実務上、ベンチャー企業のCB発行の場面では、個人保証は免除されるケースはある。)CBの場合は、上手くいけば、最終的に返さなくてよくなるかもしれないという利点があるので、借入よりはベンチャー企業向きであるが、当面、すなわち株式に転換されるまでの期間において、会社が抱えるリスクとしては、借入と何も変わらない。


2.増資

増資とは直接的には会計上の資本金の増加であるが、実質的には株式の発行による資金調達を意味する。新株発行ともいう。

非上場のベンチャー企業における主なプレーヤー(資金供給者)は、ベンチャー・キャピタル(VC)とエンジェル(個人投資家)である。

会社法的には、「第三者割当」という方法を採ることがほとんどである。

増資による資金調達の最大のメリットは、「返さなくてよい」ということに尽きる。ベンチャー企業にとって、このメリットは計り知れないくらい大きい。したがって、原則として、ベンチャー企業は、増資(新株発行)により資金調達するのが基本である。

先程の内閣府の「日本の大学発ベンチャーが悲惨な失敗をしないためのポイント ハイテク・ベンチャー不毛の地での賢い立振舞について ~モジュール化時代の日本凋落の真因 その2~」 (PDFファイル)では、

・読めない世界に適応する。技術トレンドを熟知している、先端技術・新市場・チームの潜在価値を読めるなど「技術の目利き」が必須。自らの経験とネットワークを駆使した「ハンズオン」によるリスク低減・価値創造の能力も重要。
・リスクは積極的に取る(変化を先読みして、現在価値と自分が投資しサポートした場合の将来価値の差をキャピタルゲインとして獲得する)。ポートフォリオ投資を活用し、打率3割で一流(=数本の大きなキャピタルゲインによって7割の失敗を許容する)。
・起業家側のリスクは少なく、失敗しても再起可能。家族扶養権は、連邦破産法第522条や州法が保証してくれる。起業家が失うものは少ない。(日本には、国際水準のキャピタリストは少数である。証券・金融系列の日本のVC会社では、個人保証をとり、買取条項を入れるところも多く、本来のequity financeから大きく逸脱していることに留意が必要。)


とある。

日本では、家族扶養権について、破産法が保証してくれるなんてことはないが、基本は同じである。「個人保証」「買取条項」については、誤解していただきたくないのは、日本であっても、単にお金が返せないというだけでは、まずこれらの条項は発動しないということである。通常、買取条項の発動は、投資契約違反、表明保証違反等の場合に限定されている。VCファンドの満期到来が買取条項に入っているケースがあり、この点については議論があるが、投資家(VC)サイドとしては満期前に現金化しなければならないため、やむを得ない部分もある。社長個人も買取義務を負わさせられるのは、会社に買取義務を負わせたところで、会社法上の自己株式取得規制の壁(財源規制等)に阻まれ実効性がないためである。契約違反や表明保証違反等であれば、社長が買取義務を負うのは不当ではないという価値判断が背景にある。

ベンチャー企業は、増資(新株発行)により資金調達するのが基本といっても、調達を試みる会社は、なぜ「返さなくてよい」お金を出してくれるのかについては、理解しておかなければならない。株式の引き受け手は、なぜこのような高いリスクをとるのか。それは、リターンが大きいからに他ならない。期待収益率が高い資金と言い換えることも可能であろう。貸付によって得られる利益は最大限利息制限法の最高限度額(年15%)である。帰ってこないお金を提供するのに、このようなリターンしか得られないのでは割に合わない。株式を引き受けることにより、将来、その株を売って大きく利益を得られると考えるので、ベンチャー・キャピタルやエンジェルは、資金を提供するのである。したがって、増資(新株発行)によって資金調達をしたベンチャー企業は、最終的に上場かM&Aによって、株主が株式を売却できるようにしなければならない。上場すれば、株価が数倍になることも珍しくはない。

逆にいえば、最終的に上場かM&Aによって、株主が利益を得られるようなプランを事前に描けなければ、ベンチャー企業は、ベンチャー・キャピタルやエンジェルから資金を得ることができない。

以上がベンチャー企業のファイナンス方法の選択の基本である。

ファイナンス方法は詳細な論点はいろいろとあるが、ここに書いた基本は変わらないので、常に念頭におかれて検討していただくのが良いと思う。

2010年09月10日 08:00|カテゴリー:ベンチャー・ファイナンス||コメントはまだありません

中之島・北浜界隈ランチ事情

私の事務所は、中之島から栴檀木橋(せんだんのきばし)という橋を渡ったところにあります。

この界隈は、証券会社が多く、オフィス街なのですが、まだまだ良いランチ場所を探し切れていません。

その少ない経験の中で、私のお薦めのランチをお伝えしたいと思います。

■ レストラン中之島倶楽部

中之島にある中央公会堂の地下にあるレストランです。

天井が高く、レトロな雰囲気がお薦めです。

高そうに見えますが、ランチ限定の当店名物オムライス(スープ付)は、680円!

大盛りにしても、780円です。

■ 但馬屋 蔓萬 北浜店

ランチに、肉を食べたくなったらココ。

個室もあるので、落ち着いた雰囲気で、ゆっくり話ながら食べるのもOK。

良く食べるのが、ステーキ丼(1000円也)。ヒレ肉のステーキ丼も確か1400円で、good!

■ 和厨房 佐海屋

北浜界隈では、和の定食系の店は、決して少ないわけではないのです。しかも、ここがとびきり上手いというわけでもない。

なぜ、この店を選んだかといいますと、CP+メニューの豊富さです。

700円~800円前後で、それなりに満足にいく定食が食べられるという安定感が良いです。

ただ、この安定感に魅かれて、御昼時には、かなり並びますので、要注意。早めに行くとよいでしょう。回転も速いので、多少の列であれば、並んでしまいましょう(笑)。
他にも、きっと良いランチがあると思うのですが、探し当てられてないので、もしご存知であれば、教えて下さい!

2010年09月09日 12:00|カテゴリー:その他||コメントはまだありません